地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-40 悪意は空隙を縫って

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 高出力のビームを纏った高硬度高密度の高質量金属製の槌頭(鷲の嘴)が、黒い装甲を焼き焦がしひしゃげさせて鋭く食い込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「チィ……ッ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咄嗟に身を捩る事で左肩──ビーム発振デバイスを犠牲にして胸部への直撃コースだった渾身の一撃を凌いだ黒騎士に舌打ちを一つ。その直後に頭に過ぎるヴィジョン。

 発振器を破壊されて霞んでいくマント状のビームが最期に生み出した斬撃。それがアドラーll(仮)を引き裂いたのは、反射的に行った操作でマニピュレーターをグリップから離した直後であった。

 

 

 グッバイアドラーll(仮)、フォーエバーアドラーll(仮)……ッ!来世はもっと使いやすくなって生まれてきてくれよな!

 モードの切り替えにいちいち変形を挟まないといけないのを辞めておいてくれれば最悪、ほんッとに最悪ビームライフルとウォーハンマーっていう、適正距離が正反対な機能をガッチャンコなんて真似は許すから……ッ!

 

 

 そんなアホ丸出しな思考を垂れ流しながらも、機体操作は滞りなく続けていく。

 フリーになった両手でそれぞれシュベルトゲベールとレールガンを握りすぐさま追撃を仕掛けようとして、感じる悪寒。駆け巡るヴィジョン。

 感覚に従って機体を操る。スラスターを駆使して仰け反るように機体を右回転させながら逆進。黒騎士が跳ね上げた左腕、構えられたライフルから放たれた光条が迸る。

 躱し切れず、右翼端部のガトリングが撃ち抜かれて弾け飛んだ。

 

 身体を揺さぶる衝撃に耐えながら、機体の勢いをそのままに──むしろ加速させながら左脚を思い切り振り上げる。鈍い衝撃と共に虚空に火花が散り、装甲を展開して赤熱化したチェンソーの刃のような機構を覗かせながら迫っていた黒騎士の前腕部が跳ね飛ばされる。

 

 

 すかさずシュベルトゲベールを振り抜いてワイヤーケーブルの切断を試みるが、不規則な動きを読み切れずに躱される。軌道の制御に無人MSの技術を応用しているのか、アイシュの思考からその動きを読み取れない。

 幸いにして、攻撃の直前に漏らす敵意でどうにか反応できるもののこれではイタチごっこもいいところだ。

 そうこうしているうちに、瞬きの間に異形の腕は宇宙の闇の中へと溶けて消えた。

 

 

 それどころか、アイシュの駆る黒騎士の姿そのものが消えていた。素早く周囲に視線を向けるが影も形もない。

 

 …………。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《アッハハハ!得意なはずの口八丁でも上手くいかなくて敵前逃亡ッてワケですかァ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自分でも白々しいほどにあからさまな挑発を吐き散らすが、何の反応もない。直接話しかけられたのかと思うような先ほどまでコチラに届いていた明瞭な強い思念はおろか、苛立ちの感情も知覚しない。

 本当にごく僅かな、敵意の欠片──或いは残滓とでもいうようなチリチリと首元を焦がすような感覚だけが感じ取れる。

 

 ……防御手段を失ったから、撤退を選んだ?交戦を続けることに明確なメリットがあるのはおそらくコチラだけだ。

 増大した撃墜のリスクを冒してまで戦い続けることを、アイシュが選ぶのだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「チッ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 戦闘におけるその場その場での判断ならともかく、戦略みたいな大きな枠組みでの考えを詰めるには今のおクスリキメたラリパッパな頭じゃ無理だ。

 ……アイシュは撤退したんですか!コッチの心読んで後の先を取って来るようなチートヤローの相手は終わりッて事でいいんですか!!ヤッター!!!

 舌打ち一つ吐き捨てて、考えをポジティブに切り替え──。

 

 

 

 

 

 

 

 チクリと、気のせいとも思える微かな……けれども覚えのある感覚。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ホァジャオォンッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 感覚に従ってカラミティの体躯を翻し、小ぶりのビームシールドを発振してコクピットを庇った直後。

 まったく別々の方向から伸びる、二本の光条。

 

 

 

 

 

 

 「アイツまだコッチ狙ってるじゃないすかヤダー!!」

 

 

 

 

 

 

 どうにか攻撃を凌いですぐにレールガンとショルダーキャノン、ガトリングで反撃を仕掛けるが何の手応えもない。支援AIへと指示を出して熱反応の検知でアラームを鳴らすようにしていたのに、何の反応も無かった。

 どうやら腕だけでなく、黒騎士本体も低温ガスでの機動が可能なようだ。

 

 

 

 続けて行った操作によって、両肩のミサイルポッドからミサイルが多量の煙を吐きながら飛翔する。

 通常のミサイルを破壊した時の爆炎による物とは違う、煙幕を形成する為の特殊ミサイルによって周囲一帯へと濛々と濃い煙が立ち込める。

 さっきは咄嗟だったから勿体ない事に通常のミサイルの爆炎で代用したが、本来ならこうやってミラコロステルスに対応するつもりであったのだ。

 

 

 

 不自然に逆巻く煙の動きが、いまだに付近にアイシュが潜んでいることをコチラに教えている。

 にも関わらず、さっきの射撃直前同様にアイシュの思念は感じ取れない。だがこの力に関しては間違いなく相手の方が扱いは上手だ。閉心術、とでも言えばいいのだろうか?そんな風に自身の思念を悟らせない技術があるのだと思えば納得だ。

 その影響で流石に細かな位置までは分からないが、それで問題は無い。接近を試みようとするなら煙を突っ切る形になる以上、否が応でも煙が派手に動いて。

 射撃を行おうとしたのであるならその直前、膨れ上がるアイシュの敵意が。

 攻撃のタイミングと方向を、俺へと教えてくれる。

 

 

 

 

 

 カンペキな索敵手段が完成しちまったなァア〜!!コレでノーベル賞は俺んモンだぜ〜!!

 

 

 

 

 

 ……不可視の敵に狙われる緊張を紛らわせようとオラついてはみたものの、それでも感じるストレスがジリジリと焦燥感を煽る。

 

 

 いち早く黒騎士の位置を掴むために、目を皿のように見開いてモニター上の煙の動きを注視する。アイシュの思念を少しでも強く知覚しようと、精神の触手を更に伸ばす。

 それこそ、心を固く閉ざしたアイシュとは正反対に。まるで、()()()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 そして、その間隙を見事に縫って──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇に、堕ちなさい。ゼフォー・ローワン────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 刃物のように冷たい、悪意の触手が俺の精神を絡めとった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「…………ッ?!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その未知の衝撃に、息を呑む。恐らくはアイシュにとって、コレが狙いだったのだろう。

 

 すでに一度使ってみせた煙によるミラコロステルスによって不可視の状態の物体、その位置や動きの把握。

 アイシュの使える、自身の精神波動を漏らさないようにする一種の閉心術。

 それでも防げない、俺がやっている攻撃直前に生じる思念とも呼べない微弱な精神波動の知覚による攻撃の先読み。

 

 

 

 

 

 以上の要素を踏まえて、言わば天然のアコードたる俺に対して効果が未知数の精神干渉。

 その成功を確実にするための、状況の構築。

 

 

 即ち、ミラコロステルスで完全に不可視に。その上で逃亡したのでないと理解させ、かつ煙を使わせる為に攻撃。

 俺が煙での位置の把握を図ったのならば、焦燥感を煽る為に煙を動かして存在をアピール。

 そして閉心術で自身の精神波動を可能な限り抑えて、俺が知覚を強めるように──精神波動による影響を強く受ける状態になるように、誘導する。

 

 

 

 あぁ、ちくしょう。知っていたはずなのに。アイシュ・ガローテは、MSを乗り回して正面から敵を討つ戦闘員ではない。

 だが、巧みに言葉を操り状況を整えて。そうして相手の心を動かして、自身の目的を達する。

 

 

 そんな外交官であるというのは、分かっていたはずだったのに。

 

 

 

 だが、時すでに遅し。アイシュの精神干渉は、確実に俺に影響を与えている。

 

 抑え付けられたように頭が重い。視界がゆらゆらとかすみ遠くなる。そうしてまるで引き摺り込まれるように空虚な感覚が心を満たしていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「お、男の触手プレイとか……誰と、く──」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな戯言を最後に、俺の意識は闇へと沈んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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