地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-43 All or Nothing

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 互いに手傷を負いながら開いた距離。それを活かそうと意識を弾き飛ばされたシュベルトゲベールに向けた瞬間、頭を過ぎるヴィジョンに反応して機体を翻す。

 

 迸る光条を尻目に、遠ざかるシュベルトゲベール──決め手になり得る得物から引き離された事に軽く舌打ち。

 ショルダーキャノンとガトリングの照準を向けるが、トリガーに置いた指を引き絞らない。いや、引き絞れない。チラリと意識の片隅で認識した情報。ただ狙って撃ったところで躱される、というのもあるがそれ以上に──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《威勢のいい言葉をこちらに投げつけた割りには、随分と消極的ですねぇ?まぁ、エネルギー残量が五割、実弾兵装の残弾が三割を切っていれば致し方もありませんか》

 

 《…………イヤーン、アイシュさんのエッチ♡》

 

 《思考を簡単に覗き込ませる、貴方がイケないのですよ》

 

 《うーわ、変態の言い分じゃん……》

 

 《はて、これは貴方が先に言い出した理屈では?》

 

 《……わかった、この話はやめよう。ハイ!!やめやめ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お聞きの通り、チラリと意識しただけの情報をこうも簡単に把握される。分かってはいたつもりだが、やはり読心においてはアイシュの側はコチラを上回り、四手五手は先を読まれている。下手に凝った攻撃をしようにも丸裸同然だろう。

 辛うじて、俺の持つ敵意や殺意が絡む攻撃に対しての察知能力がずば抜けている関係でアイシュの読んだ四手五手先の俺の行動。その間に回避を割り込ませることができる為にアイシュの攻撃も決定打にならないからこそ戦いは成立しているようなものだ。

 

 片手を奪い、ついには胸部のフェムテク装甲に傷をつけることが叶ったのに勝敗の行く末を示すだろう天秤は平衡のまま。

 平衡が崩れたこともあったが、その数回も俺の意図の外のようなもの。あるいは、運がよかった程度のものだろう。

 アイシュの冷静さを崩す為の意図的な挑発めいた言動に対しても、慣れてきたのか返す言葉のキレ味が増す一方だ。

 

 

 それこそ、本当に。一か八かの博打に全賭けするぐらいでも無いと、この手に勝利は掴めないんだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《そこまで把握していらっしゃるのであれば、降伏でもなさってみては?私とここまで拮抗出来る能力の持ち主であれば、我々の作る世界でも冷遇はされないと思いますよ》

 

 《またまたァ、心にも無いことを……。それにしたって、随分とロマンティックさに欠けた口説き文句だァね。運命なんてお題目を掲げてる割りにそんなんじャ、駄犬といえど尻尾の一つも振れないねェ!》

 

 

 

 

 

 

 投げかけられた言葉に、心の底からの所感を投げつけながら機体を操る。

 

 いくら綺麗に花が咲いても、人はまた吹き飛ばす──なんて諦観に満ちた言葉をこぼした何度も戦ってきた相手を前に。

 いくら吹き飛ばされても、僕らはまた花を植えるよ、きっと──ってそれこそ綺麗事を大真面目に言えるくらいのロマンティックさは欲しいんだよねェ、こちとらァ!!

 

 黒騎士に対して全速力で距離を詰める。僅かな困惑を感じるが、アイシュにとってはこのヤケクソめいたコチラの行動は願ったり叶ったりと言ったところだろう。

 ある程度の警戒を抱きながら、それでも真正面から受け止めるように黒騎士は動いた。アチラも下手な射撃は無意味だと分かっているのだろう、ビーム刃の伸びたビームライフルを油断なく構える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ふふ、ならばこう言いましょうか?我々ならば、未来永劫踏み荒らされることのない花園を創れると。共にその花園を維持していきませんか、ゼフォー・ローワン!》

 

 《大勢の人たちの血と涙で作り上げたソレをォ?趣味が悪いったらありャしないなァ、誰が有り難がるんだよ!そんなモンさァ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その上で余裕綽々と言わんばかりに伝えられる思念を斬って捨てても、幾ばくの狼狽もなく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《真の平和と安寧をデスティニー・プランによって享受する、より大勢の無辜の市民がですよ。キラ・ヤマトを筆頭とした者たちが嘯いた、自由などという度し難い熱狂に犯されてしまった自身の生きる世界の礎となった尊い犠牲を悼みながら!》

 

 《…………ッ。なるほど完璧な未来予想図っスねーっ、不可能だという点に目をつぶればよぉ〜》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭を巡る血が湧き上がる感覚、衝動的についさっきのような後先考えない殺す為の行動を取りそうになるのを抑え込んで、悪態をつくことで落ち着かせる。

 大義名分の下、多大な苦痛を味わったコチラに当てつけるような。恩人を貶すような物言いは、間違いなくコチラの怒りを激発させようとした意図的なワードチョイスだろう。

 それこそ言葉を武器にする外交官の本領と言ったところか。

 

 

 

 尤も、コチラにはそれにノッてやる理由も義理もない。深く息を吸って、一か八かの大博打──心を、閉ざす。

 

 読まれるから当てられないなら、読ませないようにするしかないじゃない。

 ぶっつけ本番、少なくとも手本とも呼べるモノがあった思念を送る事やイメージを送るのとは全くの別。

 完全な手探りで、どうにか閉ざそうと四苦八苦する。周囲に伸ばした精神の触手を引っ込める。固く扉を閉ざすイメージ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《フン、心を閉ざすということがそう容易く出来ると……何ッ!?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 固く閉ざすイメージを強めるごとに、頭に響くアイシュの思念が徐々に小さくなっていく。

 これは、少なくとも読みづらくはさせられただろうか。であるならば、出来がいいとはいえない頭を必死に回転させてどうするかを思考する。

 視界の片隅にチラついたモノも含めて、ある程度は形になった。あとは──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《……ッ、付け焼き刃が上手くいくなどとぉ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 小さくなっていた思念が、徐々に強くなっていく。だが、むしろそんなことは想定内だ。

 俺が閉ざした心へと入り込もうと強くなるアイシュの思念──精神波動を捉えた上で、あえて心を開け放つ。

 そして。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 闇に堕ちろ、だっけかァ?!アイシュ・ガローテェェェ!!────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 溢れんばかりの敵意を、アイシュの元へと送り込む。それとほとんど同時に機体を大きく動かしてカラミティの手で視界に入り込んでいたモノを掴み取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《な、めるなああぁぁぁ!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 強い思念と共に叩きつけるように放たれたビームを敢えて紙一重に躱し、再び固く心を閉ざして大事なコトを読まれないようにしながら右腕を大きく後ろへと引き絞りながら黒騎士へと肉薄する。

 そして右手に掴んだ破壊されたアドラーll(仮)の槌頭を勢いよく前方へと突き出した。

 

 ビームサーベルだと思った?残念、それよりリーチの長い高密度高質量高硬度な特殊合金製のデッカくて鋭いモノを喰らえィ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ふっ。残念ながら、見えているんですよぉ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな思念とともに、バネ仕掛けよろしく跳ね上げられた黒騎士の左膝が胸部の傷痕に迫った鋭い槌頭を勢いよく上へと弾き飛ばす。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《心の強さで、もう一回!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが、コチラもそれで終わるつもりはない。その勢いにわざと逆らわず跳ね上げた右腕からビーム・ガントレットの一部を分離、グリップを握り締めて発振されたビーム刃を振り下ろす。

 

 

 

 バチィ、と散った火花がそれを受け止められたと告げる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《付け焼き刃の閉心術で、裏をかけるだなどと思わないで頂きたい!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 思念でそう告げながら、ギリギリとサーベルを受ける銃剣の銃口をコチラの胸部へと調整していく。

 それでも今度は左腕を突き出そうとすれば、響くアイシュの思念。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《この私に朧げにしか心を読ませないとは……流石と評して差し上げましょう。それでも、無駄です。こちらが照準を合わせて撃つ方が早い》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実際、基礎性能の差もあって振り下ろす形のコチラのサーベルを無理のある姿勢で受けているにも拘らずこれ以上押し込める気配は無い。

 もう、その銃口はほとんどコチラのコクピットへと向けられている。余裕ぶって思念をコチラへと向けても、まぁ、しょうがないだろう。

 

 

 だが、その優越感(傲慢)が貴様を殺す……ッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《しゃあッ》

 

 《だから、無駄だと……ッ?!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突き出した左手、そこにあるモノ──握られているとは思いもしなかっただろう斬り飛ばされたシュベルトゲベールの切先にアイシュが僅かに息を呑む。

 

 

 

 一か八かの大博打、それに勝ったと僅かに口元が緩む。初めッから心の内を全て隠し通せるとは思っていなかった。

 だから、ただ一点。左手のシュベルトゲベールだけを隠し通すつもりでいた。

 

 

 

 ここまでの戦いで、アイシュは本当に想定外の事態に遭遇するとその事に意識が僅かに向かうことは分かっていた。

 その数瞬の逡巡、刹那の意識の空隙が今この場では致命的とも言える隙になる。

 

 

 

 

 

 アイシュの意識が左手に集中した瞬間、右の手首を倒す。ナックルガード状の部分から発振したビーム刃に合わせて防いでいた関係で、真っ直ぐに伸びたサーベル部分が手首とともに倒れて黒騎士の首元へと迫る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《くっ……!しまった!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 咄嗟にそれを左手を跳ね上げることで防いだアイシュは、すぐにそれが悪手だと気づいただろう。

 正面戦闘の少なさからか、臆病なほど慎重に相手への攻撃よりも自身への被害を防ごうとするこのクセも俺へと味方していた。

 これが無くては、少なくとも黒騎士のフェムテク装甲の使用箇所に気づいた時に手足を犠牲に俺はアイシュに墜とされていただろう。

 

 

 だが、それも過ぎたこと。今ではアイシュはほぼ詰みだ。

 

 右へと動いて迫るシュベルトゲベールを避けようとすれば、支援AIによって照準されたガトリングの射線に飛び出す。かと言って上に行けば同様にショルダーキャノンの射線へとその身を晒す。

 左側へと動けば、シュベルトゲベールへと突っ込む形になり論外。下へはほとんど動けない為に選択肢にならない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《こ……こんなことが、こんなことが許されて──》

 

 《着剣ッ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、鋭い切先が黒騎士の傷痕へと。その向こうのアイシュに向かって突き立てられた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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