地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-44 女神が微笑みかけたのは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸部に刺突。右前腕部を失い、退路は塞がれ、ハイブリッド重厚合金で造られたシュベルトゲベールの切先はフェムテク装甲を食い破り、黒騎士のコクピット部分へと突き立てられた……。

 それでもアイシュは生きていた。

 

 

 切先を突き立てられ、フェムテク装甲が食い破られた瞬間にカラミティと黒騎士の相対速度を合わせて逆進。

 しかもショルダーキャノンやガトリングの射線に入らない位置を維持し続けながら。

 

 文字通り首の皮一枚を繋げた、ムダにムダの無いムダな神業。アコードとして与えられた全て──読心に高い身体能力、セカンドステージを上回る黒騎士の性能をフル活用しての悪足掻き。

 オマケに切先をより深く食い込ませようとスピードを速めても、逆に射線へ収めようとして緩めても、上下左右に機体の進行方向を変えようともコチラに合わせて黒騎士は追従してくる。

 

 

 ワァオ、息ピッタリ。これって社交ダンスかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《こちとら男と男で社交ダンスる趣味はないんですけどォ!?》

 

 《奇遇ッ、ですねぇ……私もなんですよぉ!》

 

 《だったら観念しろやオラァン!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 スラッシャー映画の殺人鬼めいたしぶとさを見せる黒騎士に対して、叫びながら右手のビームサーベルを叩きつければ予定調和のように銃剣で防がれる。大人しく敗北を受け入れて、どうぞ。

 とはいえやはり胸部へのダメージは深刻なのか、パワーダウンは否めない。その証左に、先程までなら軽々と弾かれていただろうビーム刃はバチバチに火花を散らしながら拮抗していた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《アナタはぁ……ッ、分かっているのですか?!人間の能力の範疇にあるコーディネイターでさえ妬まれるこの世界で、私達やアナタのような存在がどう扱われるか!例え受け入れられているように思えても、今の世界のままでは危機的状況が過ぎれば周りから向けられる視線が孕む感情は簡単に変化するでしょう!》

 

 《虐殺なんてやらかしたブタ野郎が、今更言葉をこねくり回して懐柔しようとしてんじャねェーぞボケがッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アイシュの苦悶の交じった思念が頭に響いて問い掛けてくる。尤も、マトモに対応してやる義理もないから切り捨てるだけだ。

 相手の言葉に動揺して少しでもカラミティの右手の操作を誤れば、今はギチギチと拮抗している黒騎士の持つ銃剣の銃口が文字通りコチラへ火を吹くだろう。読心なんて大層なモノを使わずとも、それこそ火を見るよりも明らかだ。

 

 視線を動かしモニターで周囲の状況を確認する一瞬、頭に過ぎるヴィジョン。

 切先を握る左手へと黒騎士が繰り出そうとしている右膝蹴りの出始めを、先んじて繰り出した左膝蹴りで潰す。

 ほォら、油断も隙もありャしない……ッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ボケているのは!世界に平和と安定をもたらすという使命をアウラ陛下から与えられた私達を、平気な顔で邪魔をするアナタたちだろうがっ!!デスティニー・プランを否定することのどこに合理性がある、正当性があるっ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 捲し立てられる言葉。その俺の事を少し買い被っているだろうそれに、申し訳ないが訂正を入れされてもらう事にする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《悪いねェ、別に俺はキラさん達が正しくてアンタらが正しくないからこうしてるワケじャねェーんだ》

 

 《ハッ!またアナタお得意の、愛って奴ですかぁ?!だとしたらアナタの勘違いだ!デスティニー・プランの実施された世界に愛がない訳ではないのですから!私達だって、アウラ陛下に愛されているのですよぉ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……………………。

 

 アイシュから返された言葉に、ふとした疑問が思い浮かぶ。そしてそのまま、それは口からこぼれ出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《俺、バカだからよく分かんねェーけどよォ……世界を導くッて使命を終えたお前ら(アコード)ッて、どんな風になるんだ?》

 

 《…………何?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宰相のオルフェは、世界の統治って役割があるから分かる。秘書のイングリットやアイシュも、政治の補佐をするんだろうなとは想像ができる。

 ……シュラを筆頭にした近衛師団(ブラックナイトスコード)の連中は、お前らの言う安定した平和な──武力が要らない世界で一体どんな役割があるッてんだろうな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 《ポイッ、なんじャねーの?核で焼き払ったイシュタリアとエルドアみたいに、役目を終えちまったんならさァ!》

 

 《……私達は新人類と呼ばれるに足る、優れた存在だっ!為そうとすれば、どのような事も……っ》

 

 《デスティニー・プランなら、もっと適正のある人間が割り当てられんじャねーの?あるいは相応しい人間()が創られるだけじャね?それこそ──アコード(お前ら)みたいに》

 

 《…………そんなモノ、お前の勝手な妄想だっ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺の言葉を切り捨てながら黒騎士の左手に力を込めて銃剣を押し込もうとしたアイシュに、ビームサーベルでビーム刃を右へと受け流しながら更に言葉を叩きつける。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《なら言ってみせろよォ!例え自分以上に役割を果たせる存在が現れても、()()()()()()()()()()愛される……ッてなァ!!》

 

 《……ッ!そ、れは──》

 《今ですッ》

 

 《なっ、この……!》

 

 

 

 

 

 

 

 アイシュの明確な動揺に合わせて、大きく進路を変える。とはいえそれだけではすぐにアイシュも対応してくる。

 結果的に、進路が僅かに変わっただけだ。ついさっき周囲を確認した時に目についた、元は艦艇だったのだろう大きな──それこそMSを叩きつけることもできそうな、アイシュが的確にそちらへの進路を取らせないようにしていた大きさのデブリに向かって。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《やってくれましたね……っ!あんな稚拙な論点のすり替えで……》

 

 《すり替えェ?バカを言うなよ、アイシュ・ガローテ。こちとら初めッから論点は一つッきりなんだよォ……平和で安定した世界?まるで夢にまで見たよな世界だなァ………………そこに愛はあるんか?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 自身に課せられた役割から逸脱するような誰かへの思い遣りを生むような。

 見ていて思わず口角が持ち上がるくらいに微笑ましくなる、壁になって吸い込みたくなるような甘酸っぱい空気を生むような。

 敵わないかもしれない強大な相手に、それでもと立ち向かう決意を湧き上がらせるような。

 

 

 

 

 

 

 …………04-Lo1なんて英数字の羅列が呼称だった生体CPUなんて厄介でしかない代物を、何のメリットもないのに、ゼフォー・ローワンという一人のヒトにまでしてくれて。その上で生きていく明日をも保証してくれた。

 

 

 そんな、柔らかくて、暖かくて、甘酸っぱくて、キラキラと美しいモノ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《愛をくれた人達を、嘲笑うように踏み躙って創った世界なんて……世界中の全てが望んで認めてもォ!俺は、俺だけはァァァッ!!認めるわけにはいかねェーんだよォォォ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 叫びと共に、スラスターを全開。猛スピードで直進、黒騎士の悪足掻きに目もくれずにデブリへと全身でぶつかる。

 その衝撃で、黒騎士の胸部──コクピット近くの切先が更に深く沈み込んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《がッ、ああああああああぁぁぁぁ──》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 これまでのどれよりも強烈な叫びが頭に響いて、やがて静寂が訪れた。荒い息を整えながら、カラミティの左手を刃が全て沈み込んだ切先から離す。

 ピクリとも動かない黒騎士に背を向けながら、右手のサーベルをマウントして腰のレールガンを持つ。

 シンさん達の援護に向かわないと……。

 

 

 

 

 

 スラスターを吹かし、デブリにめり込むように擱座した黒騎士から距離を少し取った時。

 ガクン、と衝撃。次いで頭に過ぎるヴィジョンに機体を翻せば、迸る光条。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《業腹ですがァ、認めますよぉ。ゼフォー・ローワン……ッ》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 右手から伸びるワイヤーをコチラの左脚へと絡ませ、ライフルを向ける黒騎士から血反吐を吐くような。

 いや、血反吐とともに吐かれた思念がアイシュの生存を俺に知らせる。コイツ……閉心術で、死んだフリ──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 「グッ、ギイイィィィッ!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如頭を駆け巡るまるで焼けるような、内臓を挽き潰されたような感覚に思わず唸るような声が漏れる。

 歯を食いしばりながら視線を下に向けても、何の変化もない身体が視界に入るだけ。

 

 

 ……イメージだ。アイシュが、自身の身体に走る感覚をコチラへと送り込んでいる……ッ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《デスティニー・プランはぁ、社会に安定と平和をもたらすが……ッ。個人の幸福を保証ぅッ、するわけではないと……私達アコードであっても、愛され続けるわけではないとぉッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 苦痛を堪えながらなのだろう、途切れ途切れの思念とともにワイヤーを巻き上げながら黒騎士が左肩から微かに虹色の光を漏らしながらコチラに迫る。

 当然コチラも黙って見ているわけもなく、叩きつけられる痛みを堪えながらロックオンした黒騎士へと消費の激しいスキュラを除いた兵装で一斉射撃を行う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《……ッ!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胴体を狙った筈の射撃が、狙いからブレる。黒騎士が回避したのもあるが、ワイヤーで繋がっている以上大きくは避けることは叶わない筈なのにどれもが脇をすり抜ける。

 マトモに命中したのは黒騎士の構えるライフルだけだ。それもすぐに投げ捨てられたことで本体へのダメージはない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 《……虹色の、光ッ!》

 

 《油断、大敵ですねぇッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 センサーへの欺瞞効果が、まだ生きて……ッ!グン、とこれまで以上の速度で黒騎士が迫る。この感じ、リミッターを外して……?!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《確かに、歪んだモノなのでしょう!母さんの向ける愛はぁッ!…………それが、どうしたぁッ!!確かに向けられた、向けられていた愛にぃ、報いようとして何が悪いッ!!!》

 

 《……ッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 即座にスキュラを撃とうとした俺へと叩きつけられた、アイシュの思念。これまでと比べれば論理的でも、合理的でも、正当性もあったものではない、粗野とも言えるその叫びは。

 これまで以上に、俺の心を震わせた。トリガーを引き絞る指を、鈍らせた。

 

 

 強い衝撃。辿り着いた黒騎士が、カラミティへと組みついたのだ。左手が伸び、コチラの二の腕部を握り潰すような勢いで掴みレールガンの銃身を左脇に挟んで固定する。

 そして、ヴィジョンが走る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《自、爆ゥ!?》

 

 《お前のその考えは、存在はぁ……ッ。オルフェ達を、私の愛する兄弟達を惑わす……ッ!だから、私とともに……ここで死ねぇッ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に流し込まれる致死性の痛みを堪えながら、現状打破の手段を模索しようとして──。

 

 

 もう、十分なんじゃないか?そう、甘い囁きが頭に浮かぶ。

 

 

 アイシュは排除出来るんだから、後は俺なんかよりも強くて頼もしい人達に任せてしまっていいんじゃないか?

 こんなにボロボロになったんだから、もうこれ以上頑張らなくても、いいんじゃないか?

 

 

 

 そんな考えに流されるように、意識が少しずつ遠くなって──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──子どもを戦わせるような、碌でもない大人の我儘を一つ。聞いてくれますか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 優しい声、レンズの向こうで濡れた瞳が脳裏に蘇る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──生きて帰ってきてください。貴方が傷ついたり、ましてや死んでしまったら悲しむ人間がいることを忘れないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《それでもォッ!!!》

 

 《……ッ!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭に浮かんだふざけ散らかすにも限度がある弱音を、裂帛の叫びでかき消した。

 機体を操作して、カラミティの頭部を思い切り黒騎士の頭部へと叩きつける。

 同時に左手のガントレットからサーベルを分離し、掴む。そして黒騎士の右腕を脇下から斬り上げて、脚に絡まるワイヤーごと切断。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《帰りたい場所が、あるんだァァァァッ!!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 頭突きの衝撃で僅かに生まれた胸部と胸部の隙間に勢いよく振り下ろしたサーベルのビーム刃を通し、黒騎士の左手をレールガンの銃身ごと肘から切断する。

 すぐさま起きる小さな爆発で、自由になったカラミティと黒騎士との間に距離が生まれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《この程度でぇッ!逃すかぁぁぁ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 当然、それを詰めようとスラスターを吹かそうとするアイシュ。だが、無意味だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《この距離なら、スキュラは使えるなァ!?》

 

 《!?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 絞り込んだトリガー、カラミティの胸部から放たれるのは極太の熱線。それは黒騎士の胸部にぶち当たり、装甲の表面で散らされる。

 ビームの飛沫が僅かにコチラすら焦がすが、射線を修正しながら構わずに放ち続ければ、黒騎士の体躯が押し出されて距離が開く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《リデル、リュー、ダニエル、グリフィン、シュラ、イングリット、オルフェ……母さ──》

 

 《チェェェェェストォォォッ!!》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 譫言のようなアイシュの思念。叫び声と傷痕へと飛び込んだ熱線で、ソレは黒騎士の姿とともにかき消される。

 

 直後、とうとうスキュラの放つ熱線の熱量に耐えきれなくなった黒騎士は爆発。今度こそ、アイシュ・ガローテとの闘いに決着がついた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「………………クソが」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 胸に湧き上がる様々な感情を、三文字の言葉に込めて吐き捨てる。自分の中にある愛の為に誰かの愛を命ごと踏み躙るような、排泄物を汚水で煮込んだようなクソッタレな戦争は、まだまだ終わってはいないのだ。

 

 

 

 相手を肯定するだけが愛じゃないだろうとか、勧善懲悪な物語のようにただぶっ飛ばして気持ちよくなれるような相手でなかったと突きつけられた感傷は身体を鈍らせるだけだ。

 

 

 

 

 それでも捨てきれない感傷を心の奥にしまい込んで、今度こそシンさん達に加勢するべく宇宙を駆けた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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