地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
《……ッ!?コレは、ゼフォーか…………フッ、なるほどね》
急にイメージを送るのは流石にヒルダさんを驚かせてしまったようだった。
だが、直ぐに俺だと把握した上で彼女が漏らした声に、読心なんて大層なモノを使わなくても脳裏にハッキリと
どうやら俺が送ったモノ──桃の差し色と青の差し色の黒騎士二機がマーズさんとヘルベルトさんを墜した時のイメージ、そしてその二機の今の場所のイメージは大層お気に召して頂けたらしい。
『ちょっと目を離した間に、ずいぶんな男前になってるじゃないか…………
カラミティの様子を見てとったらしいヒルダさんのアメリカンジョークめいた言葉の後の、端的な問い掛けの意図は明瞭に伝わった。
つい先程確認した機体の状態を顧みる。酷く口が渇くが、ヒルダさんと同様に出来る限り端的に言葉を返した。
『あのチンピラどもの鼻っ面にそれぞれ一発が精一杯……ッてとこスかね?』
『ハッ、そいつは結構。……ヤツらに一泡吹かせてやるよ!こっちが合わせる。好きに仕掛けなッ、ゼフォー!』
『イエス、マムッ!』
あんまりにも頼もしいお言葉に、背筋が伸びる思いで返事にも力が入る。
そのままモニターに映るゲルググを見遣れば、既にその軌道はコチラへと寄せている。
軌道の軸線を合わせて、加速。心を固く、硬く閉ざしながらそのまま眼前のデスティニーの分身を突き抜ける。
《クッ、舐めっ……コイツも読めないだとぉッ!?また何も考えていないヤツなのかッ!?》
失礼だな、閉心だよ。少しばかり分身との距離があったせいか突撃するコチラに反応したものの、心が読めない──有り得ない筈の事態に動揺してか動きの悪い、片手だけになっている桃の差し色の黒騎士。
その無事な左手に握られたライフルをマウントされたシュベルトゲベールのビーム砲で撃ち抜けば、小さな爆発。
すかさず最大加速、爆発に煽られ体勢を崩したそのマヌケ面をカラミティの足裏で視界ごと踏み付ける。
《私を、踏み台にッ!?》
そのまま蹴り飛ばす事で加速した上で、リミッターを解除しての正真正銘スペック上の最大加速。
一直線に闇を駆け抜けて目指すのは、青の差し色──ダニ野郎の駆る黒騎士!
《あいつらの、仇ッ!》
《ぐあああああッ!!》
《きゃあああああっ!!》
《いやだあああああッ!》
《うああああああ!!》
ヒルダさんの裂帛の気合、直後に頭に響く四人分の思念が混然一体となった悲鳴。
連携の為、思考を共鳴させていたのが運の尽き。一人がヒルダさんに討たれたことによる死の衝撃が伝播したのだろう。
ただ知覚しているだけの俺ですら頭痛を覚えそうな、強烈な衝撃。ご愁傷様、というやつだ。
……まぁ、尤も。俺がダニ野郎に情けをかけてやる理由には、なりはしないのだが。
《来るなあああああッ!?》
《滅ェェェェッ!!!》
分身を突き抜けて現れたカラミティへと、文字通り錯乱したかのようにダニ野郎が振るった対艦刀。
そのヌルい太刀筋を見極めて、上半身を捻り左のビームガントレットから伸びる刃を剣の腹へと裏拳を打ち込む要領で叩き込めば、実体剣部分が溶断されて斬り飛ばされる。
《殺ッ!!!》
残った対艦刀の実体剣部分を払いのける為に、左腕をそのまま外側へ振り切る。その勢いを、右手でグリップを握ったシュベルトゲベールへと乗せて黒騎士の首元へと振り下ろす。
そのまま一息に叩き斬るつもりが、フェムテク装甲の強度に刃が止まる。
《いやだ、死にたくな──》
《己の悪因悪果を呪え、ダニ野郎ォッ!!》
叫び声を上げながらシュベルトゲベールのグリップを左手でも握り込み、渾身の力で振り切って今際の際の言葉ごと黒騎士を首元から縦一文字に斬り捨てた。
バチバチと紫電を走らせた黒騎士だったモノが、爆炎へと変じたのを見てとって深く息をつく。
周囲に視線を走らせれば、デスティニーが残った二機を殆どタイムラグなく同時に撃破していた。
……二機をほとんどタイムラグなく同時に撃破していた?
………………。
細かいコトは、しーらないッ!シンさんがスゴイッてことで、いいでしョ。
なんて思っていれば、当のシンさんからの通信。
『ゼフォー、一旦ミレニアムに戻って補給を!その後は直掩についてくれ。俺は──』
『シン!』
『レクイエムを破壊するッ』
『了解ッす!』
コチラへと合流したルナマリアさんとともにレクイエムへと向かうシンさんからの指示を快諾し、ミレニアムへと踵を返す。機体の消耗に加えて、酷い口の渇き──グリフェプタンの禁断症状一歩手前の状態だ。無我夢中だったが、気付かぬうちにかなり限界に近づいていたようだ。
ヒルダさんはミレニアムの直掩につく為に、もう既に小さく見えるぐらいの距離になっている。俺も急ごう。
『シン!』
『おっさん!』
『おっさんじゃないッ!お前の装備だ、受け取れ!』
通信からムウさんとシンさんのやり取りが聞こえる。どうやらムウさんも無事でいたらしいとホッとして──。
ゾクリ、と。小さな、小さな寒気。だが確かに感じた、戦場に立つ限り感じるモノ──敵意。
自身に向けられたモノではないのだろう、微かなソレ。機体を制動させて反転。
その出所を目を皿のように、精神も開いて探り──。
「……ッ!見つけた!」
ムウさんの飛来した方向、星々の瞬きの一部に見えるソレ。伸ばした精神の触手が、そこからのムウさん達への微かな敵意を。
その狙いを探り当てた。
《ムウさんッ!!》
『ッ……!ゼフォー!?シン、ルナマリア!避けろ!』
『『!?』』
咄嗟に送ったイメージが功を奏して、ムウさんの声に反応したゼウスシルエットとミーティアユニットをそれぞれ装備した直後のシンさんとルナマリアさんが、遠距離から放たれた幾筋ものガナーザクウォーリアの長射程ビーム砲の熱線を紙一重に回避する。
その光条の出所には、グフイグナイテッドをも複数擁する恐らくはザフトのクーデター軍のMS隊の姿。
今、シンさんは対拠点攻撃用のゼウスシルエットへと装着している。対MS戦闘に向いているとは言えない。おまけにMS隊はレクイエムとは殆ど反対方向に位置取っている。
シンさん達が相手をするには手間取って、相手をしないのならオルトロスに背を狙われる厄介な配置だ。
それを見てとって俺は、スキュラを放ちながら吶喊する。距離があるせいで壊滅とまでには至らなかったもののガナーザクが一機に、もう一機が装備していたオルトロスを破壊できた。そして、連中の注意がコチラへと向いたのを感じる。
そもそもレクイエムがいつ次が撃てるのか分からない以上、一刻も早く破壊しなければならない。あんな連中の対処にシンさん達を拘わせるわけにはいかない。
幸い、デスティニーやミーティア装備のMSの速度なら数分どころか一分でも足止めすれば問題ないだろう。禁断症状も経験上あと十分程度は大丈夫なはず。ならば無理をしてでも、俺が気を引かないと……!
『アイツら、このタイミングを狙って俺の後を……!』
『アイツらは、俺がッ!』
『ゼフォーッ!?無理するんじゃない!』
グフを先頭にした機動力に長けるだろう機体群が、コチラへと向かって来る。
失礼は承知で、シンさんの声を無視して宙を駆ける。先頭のグフ達の放つビームガンの弾幕、その安置を読心で探り機体を滑り込ませる。
今度はコチラがショルダーキャノンとシュベルトゲベールのビーム砲を放った後に、それを回避した先へガトリングの射線を置く。
一機はそれで墜ちるが、ビームをシールドで受ける冷静な判断をしたグフ達が左右に別れる。
右手に持ったシュベルトゲベールの刃先を左下へ向けながら右手側へと加速、直後に頭を過ぎるヴィジョンに急制動。
グフの影に隠れていたブレイズザクの放った、加速したままなら迎撃できない軌道を描いていたファイヤービー誘導ミサイルをガトリングで迎え撃つ。
そして、左から伸びてくるスレイヤーウィップを避けようと──。
ドクン
「グッ、ガァ……アアアァァァッ!!」
身体に走る激痛、思ったよりも遥かに早い最悪のタイミングでの禁断症状の発現。動きの鈍ったカラミティの足へと、赤熱化した鞭が絡みつく。
おまけに反対側からスレイヤーウィップが伸び、そちらは右腕へと絡みつく。
どうにか対応しようとするものの、身体に走る禁断症状の激痛が判断力と動きを制限する。
あれよあれよという間に、左右にそれぞれスレイヤーウィップを引き絞られてカラミティは磔のような体勢に。
そこにブレイズザクのビームマシンガンの狙いが定まる。
……ここまで、なのか?
そんな諦念に満ちた視界の中。銃口を向けるブレイズザクが突如シールドを構えたと思えば、そのシールドが勢いよく弾け飛んで晒された胴体へと流れるように閃光が突き刺さる。
《!?》
頭に流れ込むグフのパイロットの驚嘆。視界の端に、回転する光の刃が映り込む。
フラッシュエッジ!?……いや、違う。
あれは、
そのまま、その光の刃がスレイヤーウィップを引き裂いた。引き絞っていたスレイヤーウィップを切断されて体勢を崩すグフ達。
そこへと躍りかかる白い影、同時にコクピットのスピーカーから通信が響いた。
『
どうにか体勢を立て直したらしいもう一機のグフが、僚機の仇と言わんばかりに腕のビームガンをウィンダムへと向ける。
だが今度はそこへ紫に近い濃い紺青色に機体を染めた、I.W.S.P.を装備したウィンダムが手にした実体剣タイプの対艦刀で躍りかかってその射撃を阻止する。
その間にどうにかグリフェプタンのおかわりを投与し終えた俺へと、トリコロールのウィンダムが向き直る。
その左肩には、竜に騎乗する騎兵を模ったエンブレムがあった。
『よぉ色男、間一髪ってところだったな?』
『ケン!軽口を叩く暇があるなら手を動かせ!敵はまだいるんだぞ!』
『わーってるよウルセェなぁ!お前は俺の母親かってんだ!』