地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス   作:ガンダムおじさん(にわか)

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PHASE-51 Tempt fate for freedom

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バチバチとその砲身に火花を走らせる、ユークリッド上部の大型砲──クレイヴ・ソリッシュ。

 その射線上へと飛び込んだ、エンジンはおろかブリッジすら失ったナスカ級。

 その特徴的な水色の船体は、それこそ戦艦の主砲が直撃したかのように吹き飛んで大小多数のスペース・デブリと化していた。

 

 その向こう側、ナスカ級が身を挺して庇おうとしたレクイエム。それを守るように展開された、陽電子リフレクターの緑の煌めきは陰ることなく。

 だがしかし、その光の盾の内側にはどういう訳かもうもうと爆煙が立ち込めていた。

 

 

 

 

 

 

 PPHE(Positron reflector Piercing High Explosiv)あるいは、徹光榴弾。

 ダグラス少佐の内心を読み取って知った、地球連合の開発した対光波防御帯特殊兵装。

 

 

 それがどのようにして目の前の光景を生み出したのかを簡潔かつ大雑把に説明するのなら、中に高性能爆薬を埋め込んだ対光波防御帯派生装備用攻撃モードを発動したアドラーll(仮)の槌頭だけを大型レールガンによって秒速8.5kmという極超音速で撃ち出したから、ということになる。

 

 すなわち、極超音速で撃ち出した砲弾を高出力のビームスパイクによって陽電子リフレクターなどの光波防御帯を相殺する事によって貫通させた後に、内蔵された高性能爆薬を起爆。それによって生じる爆風効果及び破片効果によって攻撃対象を破壊・損傷させる兵装。

 文字通り、光波防御帯を貫き徹す榴弾。

 

 

 ……なんでアドラーに、この特殊兵装の機構を組み込んだんだ?いや、逆にアドラーll(仮)の方が先だったのかもしれないけれど。

 どのみち俺には連合の技術者が極度の疲労から変なクスリでもヤってるのか、としか思えないけれど。

 

 

 

 

 そんな風に、愚にもつかない鶏と卵のジレンマもどきを頭に浮かべている俺を他所に状況が変わる。

 徹光榴弾の爆発によって発生機構に損傷が生じたのだろう。陽電子リフレクターの齎す緑の煌めきが瞬くように不安定になってから、掻き消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『陽電子リフレクター、反応消失!』

 

 『……やったか!?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あ゛あ゛〜ッ!フラグの立った音ォ〜ッ!!

 

 通信から聞こえたケンさんの言葉、その直後にリズ少尉の声が響いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『まだですっ!ナスカ級の所為で入射角とタイミングがズレている筈です!恐らく防護シャッターを抜けていません!!』

 

 『だったらトドメを刺せばいい!クレイヴ・ソリッシュ第二射用意、徹甲弾装填!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 悲鳴に近い声で分析した状況を口にするリズ少尉に対して、ダグラス少佐が指示を飛ばした瞬間。

 耳をつんざくようなアラート音が、その声を掻き消すように響き渡る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『冷却系に異常!?砲身、温度下がりません!……嘘っ、もう!?エネルギー反応の増大を検知!レクイエム、発射段階に入っています!?』

 

 『チッ、ウチの技術者連中にファウンデーションのヤツらの爪の垢を煎じて飲ませたいぐらいじゃないか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次々と舞い込む不利な状況を示す情報の数々に、リズ少尉が叫ぶように声を上げる。ソレを聞いてなお、冗談めいた物言いのダグラス少佐。何も知らなければ諦めの境地にいるのだろうかと思うような態度。

 だが、そういう訳ではないと俺は理解している。

 

 

 撃ち掛けられる幾条もの閃光や後を追う数多の誘導弾をものともせずに、月面を滑るように駆けながら光の翼が羽ばたいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『聞いての通りだ!情けない限りだが、後は頼んだぞ!デスティニー!!』

 

 『言われなくったってェッ!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 シンさんの声がスピーカーから響く。凄まじいスピードでデスティニーが月面にポッカリと口を開けるレクイエムの砲口の直上へと滑り込んだ。

 その行動を阻止しようと後を追い縋ろうとする多数の誘導弾、ファウンデーションとザフトクーデター軍のMSたち。

 

 だが俺やルナマリアさん、アスランさんに果てはデュエルに似たMSやインパルスへとミーティアを渡したバスターのようなMS。

 そしてドラグナー隊の面々が放ったビームや誘導弾にレールガンの砲弾の弾幕によって、その悉くが宇宙を彩る炎の華へと様変わりした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『こっちの番だァァァッ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 徐々に開かれていく防護シャッター。その最奥、奈落の底で鎮魂を嘯きながらいくつものコロニーやモスクワを焼き払って数多の命を奪い去り、今もまたオーブを焼き払わんと湛えられた光。

 

 酸鼻を極める運命を人々に押し付けようとするソレを、怒れる瞳が射抜くように。

 いや、射抜くために睨みつけるのはかつては運命の守護者たれと、乞われるままに戦った者。

 そして、今はその胸に義憤を滾らせて自分の意思で理不尽な運命に逆らい、ソレを打ち払う為に戦う者。

 

 

 

 

 

 

 

 

 『シンさん!』

 

 『シン!』

 

 『デスティニー!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺を含めて思わず口を突いた様子の、複数の呼び掛ける声に応えるように。シンさんの駆るデスティニーが、その腕に構えた長大な砲身を今にも臨界を迎えビームを放とうとするレクイエムへと向けた。

 

 

 そして──。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 『おおおおおおっ!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その砲身を赤熱化させながら、地中貫通砲弾(バンカーバスター)雷霆(ケラウノス)の如く猛烈な勢いで撃ち下ろされ、奥底に湛えられた光ごとレクイエムを貫いた。

 

 一瞬の空白、離脱したデスティニーのいた高さまでレクイエムの砲口から巨大な炎の柱が立ち上る。

 それは、数多の惨劇を生み出したレクイエム──ソレの完全な破壊を成し遂げたという証明であった。

 

 

 

 

 

 

 万感の想いを胸に周囲の様子を見遣れば、ミレニアムやその援護のために付き従っていた地球連合の艦隊を構成する艦たち。それにオーブのクサナギなんかの主だった戦艦たちが次々と赤、青、緑の順に信号弾を高々と打ち上げて宇宙空間を鮮やかに色づかせていた。

 

 

 停戦を意味するその色彩に、どうやらこの長いようで短かった乱痴気騒ぎも終わりの刻が来たようだと息を吐く。

 そんな中、いまだにドラグナー隊と戦術リンクが繋がっているために本来のカラミティの性能以上の距離を捕捉できる関係で、光の尾を引く流星のようにも見えるモノ──フリーダムの存在に気がついた。

 

 地球へとその進路を向けているフリーダムに、ふと思い立って意識を集中させる。

 

 

 

 

 

 おや?おやおや?おやおやおやおやおやおや?

 

 

 

 

 

 意図せず、フリーダムのコクピットの中にキラさんとラクスさんのお二人がいらっしゃる事を知覚して口角が持ち上がる。

 それと同時に、少しばかりの悪戯心も湧き上がった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 《MSの二人乗りでハネムーンですか、お土産はラブラブツーショットで良いっスよ?》

 

 《ゼフォー!?君はいきなり、何を!?》

 

 《えっ、ゼフォーさん?》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 返ってきた反応に、クツクツと小さく笑いを漏らす。

 

 …………少なくとも、優しいあの人たちがアコード連中と対峙して何かを思い詰めていないかというのは、俺の考えすぎだったようだ。

 あるいは外交官という役割柄、身内以外の人間との接触が多かったのだろうガローテ筆頭外交官殿の複雑な心持ちが例外だったのかもしれないが。

 

 

 

 

 

 

 

  《なぁんて、半分は冗談っスよ冗談。お二人とも、どうかこれからごゆっくりなさってください。普通の人の十倍は軽く見積もれる程度には、世界の為にと頑張ってらっしゃったんですから。少しぐらい自分の為だけの時間を過ごしても、文句は言われないと思うっスよ?……言わせるつもりは無いですが

 

 《……フフ、そうかもしれませんわね》

 

 《ゼフォー……アレ?今半分冗談って──》

 《それじゃあ、後は若いお二人にお任せって事で》

 

 

 

 

 

 「…………うぷっ」

 

 

 

 

 思わず漏れた本音を深く追求される前に、意識を外す。そして必死に押さえ込んで伝わらぬようにしていた喉の渇きと吐き気──γ-グリフェプタンの禁断症状が抑えきれなくなる前に一目散にミレニアムへと帰投するべく、カラミティを飛翔させた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ────────────────────── 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アカツキやゲルググが収まっているミレニアムのMSドック。どうにかヘルメットの中をエチケット袋代わりにする前に辿り着いた俺は、カラミティのコクピットから飛び出してヘルメットを勢いよく脱いだ。

 そうして、ゆっくりと深く息を吸った。ヘルメットをしている状態と成分的には違いなどない筈なのに、解放感ゆえか今の方が格段に気分が楽になる。

 

 

 そのまま、呆っと漂っていた俺の顔を誰かがガシリと両手で掴んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ヘァッ!?」

 

 「………………はぁ。この様子では、随分と無茶をしたようですね?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そのまま両の瞼を指で開いて瞳孔を覗き込んだり、首筋へと指を添えて脈拍と体温を確認した上で呆れたような声を発したのは、冷ややかな表情を浮かべたマイカ中尉だった。

 

 

 

 

 …………本当なら、無茶してごめんなさいと謝罪をするべきなのだろうが。今この時だけは、心の内から湧き上がる衝動に正直になろうと思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ただいま戻りました!マイカ中尉!」

 

 「…………えぇ、おかえりなさい。ゼフォー」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 誰かの愛を踏み躙ってでも帰りたかった場所に、帰ってきた事を告げる言葉を口に出せば。

 マイカ中尉は毒気を抜かれたように、柔らかな笑みとともに返事を返してくれたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「 ゼ フ ォ ー ? 」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 その余韻は、ルナマリアさんが発した私怒ってますと言わんばかりの呼び掛けで霧散した。

 油の切れたブリキのオモチャめいて振り返れば、読心なんてしなくても何を思っているのか一目瞭然な、妙に迫力ある笑顔。

 多分俺に彼女と同じ用がある筈の、隣にいるシンさんがむしろルナマリアさんの顔色を伺っているように見えるのは、俺の気のせいだろうか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「私、言ったわよね?貴方が無茶したことに対して、言いたいことがあるって」

 

 「ひぃん…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あまりの迫力に情けない声を上げることしか出来ない俺。そんな空気をバッサリと切り捨てる救世主が現れる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「申し訳ありませんが、ホーク中尉。ゼフォー特務少尉には、今は休息が必要です」

 

 「マイカ中尉……!」

 

 「いや、でも──」

 「後にして欲しい、というだけです。γ-グリフェプタンの禁断症状が出始めている今の状態では、苦痛や倦怠感でどんな言葉も右から左でしょうから……それに──」

 

 「…………マイカ中尉?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれ?なんだか雲行きが怪しいぞ?あれれ?なんかマイカ中尉が俺の肩に乗せている手から、痛みの一歩手前くらいの圧力をかんじるゾ?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「彼がどんな無茶をしたのか。とても、とても興味があるので…… ゼフォー特務少尉が快復するまでの間に、ソレについてお聞かせ願えますか?ホーク中尉に、アスカ大尉」

 

 「ハ、ハイ……」

 

 「ワカリマシタ……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 マイカ中尉の丁寧な言葉にさっきまで怒っていた筈のルナマリアさんやシンさんが、青ざめた顔でカタコトに言葉を返す。

 その元凶、背中越しに知覚するソレから逃れようと視線を巡らせれば、憐憫を向けながらコチラに手を合わせているヨスタ曹長の姿。

 …………同情するなら助けてくださいッ!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「バッカみたい……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間にかこの場にいたアグネス中尉の呟きにも気付かない程に、ゼフォー・ローワンはこれまでの人生で最も追い詰められていた。

 

 

 

 

 もう無茶なんてしないから、許してください!なんでもしますからッ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして後の世で〈ファウンデーション事変〉と呼ばれる、エルドアの惨劇に端を発した一連の紛争は一応の解決を見たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





 Tempt fateー命知らずの危険を冒す。運命に逆らう。


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