地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「そんなこと、少し考えれば分かることになんの対策もせずMSと人を送り込んで、ほぼそのままなうちの大統領が悪いというだけだと思うがね。まあ、自分の手が足の指を勝手に叩き潰そうとしたとでもいうべき出来事の所為で一杯一杯なのは理解できるが……で?他には、何かあるかね」
「ミリカ少佐、そういう物言いはちょっと……」
「そんなことっスか……。まぁ強いていうなら、気を抜いたところで急な接敵からの戦闘っスかね。体調に影響ありそーなのは」
「ゼフォー君も少しは気にして欲しいなぁ!?」
オルドリンでの作戦行動、そこでの普段より早い禁断症状の発生。その心当たり──
ミリカ少佐の言葉を聞いて素直に慰めだと思わずに、ホントにそう思ってるだけなんだろうな……。と思ってしまったのは、ヒアリングの最中、モニターに映るマイカ中尉からの報告データに目を向けたままなところとか、そんな普段の言動が悪いと思います。
ライ大尉の顔色が、ミリカ少佐のデリカシーに欠けたあけすけな言葉と、それに慣れてしまって流して話を続ける俺の所為で青と赤を行き来しているのは、ちょっと申し訳ない。何か飲み物でも後で差し入れしよう。
ヒアリングは特段ミリカ少佐の興味が向くものが無かったのか、そのまま終了。
採血、脳波測定を行ってメディカルチェックは終了した。
コンパス旗艦、ミレニアム。プラントの首都となるアプリリウス市へと、一ヶ月ぶりとなる休暇の為に向かう足取りの中。
俺は作戦行動外の日常業務とでもいうべき作業──オルドリンでの作戦行動、その顛末の纏められたメールを自身に与えられているタブレット端末でもって確認。ミリカ少佐の研究の為に試薬を接種した状態でのシミュレーション、その後のメディカルチェック。あるいは、純粋な訓練。その合間につらつらと思考を続けていた事がある。
きっかけはそう、オルドリンでの作戦行動でもう映画本編が始まっているのではと思い至ったことだ。そして思考を続けた結果、分かったことがある。
全く以って、わからん。ふざけている訳ではなく、真面目に向き合った結果である。
大前提として、俺の持ち合わせている知識。それは二十年以上前に流し見たSEED、SEED DESTINY本編。映画の存在を知って軽く視聴したダイジェスト動画に、映画PVを数種類。あとはSNSやインターネットでネタにされていたようなものだけだ。
強いていえば、その他にもライトなオタクネタのようなモノもあるにはあるが。
それらだって、この身体に憑依したであろう時からの経験に時間経過でかなり劣化してしまっているのだ。少しは嗜んだ覚えのある、転生憑依をネタにしたWEB小説の主人公は、そう考えるととんでもないな。
何をどうすればあんな事細かに知識を覚えていられるのか、教えて欲しいくらいだ。
オマケに、俺自身が明らかな異物でしか無いのだ。僅かに残った知識も、もはやどこまで頼っていいのやら。ここまで来たら、もうこの世界に生きる元生体CPU──ゼフォー・ローワンとして変な前提知識をぶん投げた方がいいのでは?
そう結論づけたのは、ミレニアムがアプリリウス市のコロニーへと到着するまで後僅か、というところだった。もちろん、結論づけたからといって簡単に実行に移せるものではないだろうが、オルドリンからこれまで、軽く沈んでいた気持ちは僅かながらに軽くなった。
と、そういえば。自身の搭乗するウィンダム・カスタムに、元はヨスタ曹長と半ばお遊びでシミュレーターのデータ上にでっち上げたアンカーワイヤー装備。
それを知り実戦使用できるモノを作り上げて、装備として完成させてくれたミレニアムの技術責任者であるハインライン大尉に、何も言っていなかったことに思い至った。
出撃前にはお礼を言おうと思っていたのに、今の今まで思い至らなかったとは。自分で思っていたよりも、思い悩んでいたらしい。
思い立ったら吉日、自身の居室で手遊びに開いていたタブレット端末をスタンドへと備え付けた。そのまま流れるように、どうせなら差し入れでもとレクリエーションルームに向かった。
自販機でコーヒーを買って取り出したところで、ふと気づく。そういえば、ハインライン大尉は今どこにいらっしゃるので?
自業自得だが、MSパイロットとしての立場にある上に連合からの出向であることに加えて機体も連合製の関係で、ザフト側の整備の方々との交流が薄いせいでその辺りに疎いと気づいた。
パイロット控え室からデッキを見れば、分かるだろうか?いや、そもそも誰かがいるだろうから聞いてみれば良いだけか。
そう思い、手にコーヒーを持ったまま足を進める。すれ違う人たちに会釈や軽く声をかけながら進む。
そういえば、パイロットといえば……。ついさっき出した結論を反故にするようだが、知識に全く引っかからない存在がいることが頭に浮かんだ。
アグネス・ギーベンラート中尉。ギャンを駆る、鮮やかな明るい桃の髪をツインテールにしている人だ。
正直に言ってしまえば、かなり苦手な部類に入る。こちらに対して当たりが強いところがあるから、というわけではない。
こちらはナチュラルで、あちらはコーディネイターなのだ。あの程度は当たり前のモノだろう、アスカ大尉やルナマリア中尉なんかが良い人なだけで。少なくとも露骨な敵意や物資扱いよりは。
本当に個人的な好みでしかないのだが、かわいこぶるタイプとでもいうべきか。人の目がある場合の表面上の態度と、
俺との初対面では、優しげな態度ではあったが蔑みを
なんというか、
あと、なんだか分からないがどこかでポックリ死んでしまいそうな気配を感じる。こう、なんか、
割とバカらしい思考を回しているうちに、もうパイロット控え室。その近くだ。そのまま扉へ近づく。
「いつ背中から撃ってくるかもしれない人、私だったら横にいて欲しくないもの」
果たして、先ほどの考えはフラグか何かだったのか。アグネス中尉の声が聞こえる。なんか、当たりの強いセリフが。
「アグネス!」
続いて聞こえた、ルナマリア中尉の嗜めるような声。だとすると、相手はアスカ大尉だろうか?思わず、ドアの前で聞き耳を立てる。
「ねえ、譲りなさいよ、ジャスティス」
はい、確定しました。アスカ大尉です。というか、待って欲しい。
「あんたが持っていても宝の持ち腐れよ。アカデミーじゃ技術も評価も私の方が上だったじゃない」
「ちょっと、アグネス!」
ウッソでしょ、俺に対する対応と近しいものがあるんだけど。もしかして当たりがキツかったのって、アグネス中尉の中で下に見てる相手だったから?ナチュラルとか関係なく?マウント取りたガール、ってこと?
いや、それでもアスカ大尉を下に見るのは凄いわ。アカデミー、たしかザフトの士官学校的なヤツだっけ?そこでの成績を根拠にって。
「大戦の時も、おかしいと思ってたのよね。あんたが『フェイス』だなんて。でも、結局デュランダル議長にとって、ちょうどいいコマだったってことでしょ?」
……アグネス中尉の侮蔑は聞こえるが、いるであろうアスカ大尉の反論の声は聞こえない。もしかして、その通りかもだなんて思ってしまっているのだろうか?……
「いいかげんにして!」
「失礼しまっス」
ルナマリア中尉の怒声と、入室と挨拶のタイミングが被ってしまった。なんとも言えない空気が漂うが、勘弁して欲しい。
薄れてしまった知識の上でも、もがいて泣いて苦しんできたと知っている人に侮蔑がぶつけられる現場に立ち会って……いや、そんなもの関係なく命の恩人を侮蔑されて、特に何も思わないほど冷淡な人間ではないのだ。