地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「……モスクワを中心としたユーラシアに対する復興支援に関しては、先程の内容にて合意が結ばれた。その認識で構わないな?」
『えぇ、構いません』
『……うむ』
〈ファウンデーション事変〉における戦闘の終結から、数日後。オーブの執務室にてカガリの発した言葉に、モニターに映る大西洋連邦のフォスター大統領とプラントのラメント議長は首肯した。
その両名の顔には、疲労の色が濃い。そして場を取りまとめるように言葉を発したカガリもまた、同様の様子であった。
つい先程まで、支援物資や復興作業に従事する人員の拠出について鎬を削るような論戦を繰り広げていたから……というわけではない。
そもそも国家間での交渉や協議における取り決めのほとんどは、大西洋連邦の大統領やプラント議会の議長のような国家のトップ同士の間ではなくその部下──外交官などの実務を行う者の間で為されるものである。
トップ同士のやり取りは、ほとんどの場合は確定事項の確認や或いは国際社会への表明であると考えていいだろう。
実際のところ、今回のコンパス参加国代表の行ったユーラシアへの復興支援に関する会談において定められた、市民感情を考慮してナチュラル──大西洋連邦がユーラシアの復興に従事する人員の大多数を拠出する代わりに物資・資金をプラントが五割、オーブが三割、残りを大西洋が負担するという結論。
それを導くまでの間に為された論争──ファウンデーションへと多数の同調者を出したプラントは相応の負担を負うべきであるから、拠出のうち七割は出していただきたいというフォスターの強い主張。
それに対するラメントの反論、カガリによる仲裁を経ての妥協という会談における流れは地球とプラント双方の市民に対して相手の主張を唯々諾々と受け入れたわけではないという、今回の争乱によって再び燃え上がりつつあるナチュラルとコーディネイター間の敵対感情を刺激しない為のいわば一種のプロレスであった。
それだけに、エルドラの惨劇後の緊急会談におけるフォスター・ラメント両名の対応は異例だったと言えるだろう。
では彼らの浮かべる疲労は何に起因するものであるのかと言えば、単純に〈ファウンデーション事変〉が世界に与えた影響であった。
例えば、自国民や地球上の領土には直接の被害を受けた訳ではなくレクイエム攻略において尽力したことで国際的発言力を更に増した代償に、自国の保有する宇宙艦隊の実に約七割を喪失し経済的・安全保障的に大打撃を受けた大西洋連邦の立て直しに奔放するフォスター。
例えば、保有する軍事組織──ザフトに所属する将兵の多くがジャガンナートを筆頭にしたクーデター軍に参加しファウンデーションへと同調。結果、プラントにとっては値千金と言える貴重な人員を多数喪失。更にはファウンデーションの指導者層だったアコードに対して、ただの殺戮者とする者と真の救済者とする者とで市民が割れるプラントにて指導者として立つラメント。
〈ファウンデーション事変〉においていち早く行動を起こしたことで更に国際的影響力を強めた代わりに
三者三様、連日のように積み上がる職務をこなさなければならない彼らが疲労するのは至極当然のことであった。
「では、以上を以て今回の会談を終了しようと思う。……お忙しい中、貴重な時間を割いていただきコンパス総裁代行として感謝を申し上げる」
『なに、構いませんとも……ではこれにて』
カガリが畏まって締めくくる言葉を告げれば、先程まで激しい論争を繰り広げていたとは思えない穏やかな声で答えたラメントの顔がモニターから消えた。
思わず気が緩みそうになるカガリだが、そういう訳にはいかない。コンパス総裁代行として、コンパス参加国間のユーラシア復興支援に関する会談は終わった。
『お疲れのところを申し訳ありませんね、カガリ代表』
『なに、それはお互い様だろう』
だが、今からはオーブ代表としてフォスター大統領との私的な会談を行うからだ。
「それで、私に確認したい事柄……というのは?」
『えぇ、まずはこちらの画像をご確認いただけますか?』
そうフォスターが口にした直後、モニターに複数の画像が一枚ずつ表示される。
思わず顔に出そうになる動揺を、カガリは必死に抑えた。そんなカガリの様子を気にも留めずに、フォスターが口を開く。
『ジャスティスとフリーダム、デスティニー。これらはNJCを搭載した核動力MS、ということはご理解いただけますね?またインパルスとデスティニーは前大戦においてザフトが運用したMS……これも当然、そちらは把握しているはずですね?では、カガリ代表。なぜこれらのMSが〈ファウンデーション事変〉においてオーブから出航したミレニアムの指揮下にあったのか、お聞かせ願えますか?』
そう問い掛けるフォスターに、カガリは密かに息を吐いた。どうしても伏せていたかったフリーダム──キラとラクスが戦闘終結後に何処へ消えたのかという問い掛けでなかった事に安堵した事を悟らせぬように、努めて厳めしく表情を作りながら想定済みの質問に対して答える為に口を開く。
「まず、核動力MSだが…………何か問題があると?」
『…………』
「核動力MS、より厳密にはNJCの兵器等への搭載の禁止はユニウス条約──プラント・地球連合間で結ばれた講和条約によるものだ。そして、オーブはユニウス条約の対象ではない」
『…………………………ですが、コンパス参加国であるオーブが核動力MSを保有しているのは不適切では?』
「あぁ、すまない。この言い方は誤解を招くな」
『誤解……ですか』
カガリの口にする半ば屁理屈じみた論理に、けれどもフォスターはすぐには口を開かない。事実ではあるからだ。
だがそれでも倫理的観点としては充分に問題視される事柄であり、世界平和監視機構コンパスの参加国としても問題発言だろう。
しばしの黙考の後、彼女が口にした言葉へカガリが返した答え。それに思わずといった様子で眉を顰めながらフォスターは聞き返す。
「インパルスとデスティニー、本来ならザフトのMSであるとそちらが言った二機を含めてオーブ国防軍の所属ではなく。私、カガリ・ユラ・アスハが私費を投じてジャンク屋から購入した、個人で所有しているMSだ」
『はあ…………はあ!?』
一国のトップ──それも様々な事象が重なり、国力が衰えていると言えど世界有数の大国の指導者として滅多に声を荒げる様子を見せないフォスターが思わず声を上げて驚く様子に、カガリは表面上はすました顔を維持しながらも内心ではしてやったりといったところだった。
もちろん、これが公的な──記録が残る会談であればこの暴露はけして褒められたものではないが事前にハッキリと、フォスターの口から
「前大戦の終戦直後、ジャンク屋が回収していたのを確認してな。すぐさま契約を持ち掛けて購入した次第だ。それで解析や新技術の試験の為にモルゲンレーテに預けていたのだが……いや、まさか持ち出されるとは思わなかった。それが巡り巡って〈ファウンデーション事変〉を解決に導いたのだから、世の中分からないものだ。……嘘だと思うのなら、ジャンク屋連合に確認してみればいい」
『……………………』
いけ図々しくもそう話してみせるカガリに、フォスターは押し黙る。ジャンク屋連合とモルゲンレーテの関係は、フォスターの知る限り良好だ。少なくともオーブに不利になるような言葉は引き出せないだろう。
「そうだ、私からもそちらに確認しておきたい事柄があった。この画像を確認していただけるか?」
そんなフォスターへと、さも今思い出したかのようにカガリが問い掛ける。
そして、モニターに画像が表示された。
「これは、〈ファウンデーション事変〉の際に得られたものだ。……どういうことかお聞かせ願えますか、フォスター大統領?」
それはウィンダムたちをその身にしがみつかせているユークリッドEを尻目に、ミラージュコロイドステルスを展開してその姿を消そうとしている最中のガーティ・ルー級四番艦。ハーデスの姿を捉えた画像であった。