地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
投稿が遅れてすみませんでした。
数多の犠牲者を出した〈ファウンデーション事変〉。その終結から約三ヶ月が経ってなお、世界は平穏からは程遠い。
ファウンデーションのレクイエムによる報復によって首都であるモスクワに壊滅的な被害を受けたことは、ユーラシア連邦に多大な政治的混乱を齎すこととなった。
幸いにも公務の一環でモスクワを離れていた事で被害を免れた一部の首脳陣による臨時政府が迅速に発足され、大西洋連邦が後ろ盾になった事でどうにか国家体制を維持する事が出来た。
だが、これにより第一次連合・プラント間大戦時から強まっていたユーラシア連邦への大西洋連邦の影響力が更に増したことによって、極めて大きな問題が発生することとなる。
ユーラシア連邦軍内部での政府への強い反感、それに伴った大規模な脱走である。
彼らはミケール大佐という指導者を失い組織的な動きが困難となったブルーコスモスの残党と合流し、新たな勢力を結成した。
その名は
コーディネイター及びそれに迎合した裏切り者の手からユーラシアに住まうナチュラルの解放を叫び、反コンパス参加国を標榜する武装勢力であった。
「何がナチュラルの解放だ!クソォッ!!」
ダガーLのコクピットで年若いパイロットが叫びながら、厚い雲に覆われた鉛色の空の下で燃える都市を進撃する鋼の巨人たち──ENLFの105ダガーたちへとビームカービンを撃ち放つ。その背に焼け出された大勢の市民を庇いながら。
ユーラシア連邦西部、旧EU領。ENLFが持ち合わせる軍事力の矛先に選んだのは、ナチュラルでありながらコーディネイターの甘言に乗せられて反旗を翻した裏切り者。第二次連合・プラント間大戦から独立の機運の高まる地であった。
今宵、その地方の中の一つがENLFの手によって行われた夜半の砲撃を皮切りに、破壊と混乱の渦の中へと放り込まれた。
『援軍はまだなんですかっ!?』
『初手の砲撃でデカい基地は吹っ飛んでる!そんなもん期待するんじゃねェ!』
『なんでだよォ!?コーディネイターが憎いんなら、もっと他を狙……ウアアアッ!!』
スピーカーからは心をへし折らんばかりに絶望的な知らせばかりが飛び出してくる。
それでも彼は懸命に耐ビームシールドを掲げながら、抵抗を続けていた。
だが、そんな抵抗を嘲笑うような光景が目の前に現れる。
山のように聳える、黒光りする鋼鉄の破壊者。懸命に対抗する守備隊が撃ち掛けるビームを光輝く盾で悉く弾き飛ばして、幾多の光条が無造作にばら撒かれる。
それだけで街が、ビルが、MSが。そして逃げ惑う人々が炎に呑まれて消えていく。
MA形態のデストロイは、都市の上空を悠々とその巨体を進めていた。特徴的な円盤状のフライトユニットの周囲に装備された熱プラズマ複合砲"ネフェルテム503"は整備不良かあるいは部品が足りないのか、虫食いのようにところどころ熱線を撃ち出す事が出来ていない。
その背に背負った巨大な高エネルギー砲"アウフプラール・ドライツェーン"も、本来は二連装砲塔が左右に一対。計四門であるはずなのに、左右で一門ずつ欠けていた。
そんな不完全な状態であっても、ソレは抗うことの出来ない破壊の化身として都市を蹂躙していた。
『ひっ……!』
スピーカーから引きつったような悲鳴が聞こえた。破壊の化身が、懸命に抵抗する年若いパイロットの乗るダガーL──正確には、彼が戦友たちとともにその背に庇っている市民たちへと、その背に携えた巨大な砲の筒先を向けたのだ。
市民たちの上げる悲鳴やどよめきをダガーLのセンサーが拾い上げて、スピーカーから出力する。
目の前に迫る破壊の化身たるデストロイが齎すものを想像して、大勢の市民や大多数の守備隊のパイロットたちは思わず目を閉じた。
だが、年若く負けん気の強い彼はモニターに映し出される目の前の光景、死を齎さんとするデストロイを噛み付かんばかりに睨みつけていた。
だからこそ、彼はそれを見る事が叶ったのだ。
守備隊が必死になって撃ち掛けたビームを事も無げに弾き返していた、まさに無敵の盾であった陽電子リフレクターがまるで薄紙のように貫かれる様子を。
掠めるだけで戦艦を爆沈させるほどの熱量の熱線を撃ち放つ、今まさに放たれようとしていたアウフプラール・ドライツェーン。それがバックパックに接続しているアームごと、大きな爆発によって吹き飛ぶ様子を。
その爆発によって円盤状のフライトユニットに不具合が生じたのか。今まで何人にも覆すことなど叶わない破滅が如く振る舞いで空を飛んでいたデストロイが、情け無くフラフラと地面へと墜ちていく姿を。
思うまま破壊を齎していたデストロイに、鉛色の厚い雲を吹き散らして
死が迫ってなお前を向き続けていた、彼だけが目にする事が出来たのだ。
『こちらは世界平和監視機構コンパス。ENLF、貴官らに最終通達を行う。武装を放棄し、直ちに投降せよ。コレが為されない場合は、実力を行使する!繰り返す──』
ダガーLのスピーカーから、コンパスのMS部隊の指揮官と思われる声が力強く響いた。
世界平和監視機構コンパス所属、ウラノス級機動惑星強襲揚陸戦艦
それが擁する第一軌道降下強襲MS小隊第一分隊。通称キャバルリー隊。
その指揮官であるヒューロン・ダグラス少佐は、眼下の都市で大規模な破壊活動を行うENLFの人員へと多大なる怒りと僅かばかりの憐憫を抱きながら投降を呼びかけていた。
その呼びかけに対する返答はすぐさま為された。
105ダガーたちやストライクダガーの上半身をダガーLに置き換える事でドッペルホルン連装無反動砲を装備したゲルズゲーの改造機、自走榴弾リニア砲やミサイル発射車両。そして地上に降り立ってMS形態へと姿を変えた特徴的な胸部の三門のスーパースキュラのうち左右の砲門が塞がれ左腕の欠けた姿のデストロイによって一斉に撃ち放たれるビームや砲弾によって。
「バカどもが…………ッ」
だがしかし、クレイヴ・ソリッシュを撃ち放ったダグラスの乗るユークリッドEの左右に控えていた僚機がすぐさま陽電子リフレクターを同期展開させる事でスッポリと三機のユークリッドEを覆った光の盾が、その悉くを防ぎ切る。
それを見て取って、デストロイが右腕──シュトゥルムファウストを分離させて展開された陽電子リフレクターの死角を取ろうとする。
自身の防御を貫ける存在を、一刻も早く排除しようというのだろう。
「クレイヴ・ソリッシュ第二射、弾種徹甲弾。発射シーケンス、オールグリーン」
『カウント3で陽電子リフレクター解除、即座に反撃。目標はデストロイ!ヴァルキリー1、4は離脱してシュトゥルムファウストの迎撃だ!』
『了解!』
ダグラスの後ろから、主に砲手やオペレートを行う副操縦士であるリズ・プラズ・ダグラス少尉が声を掛ける。
相手が投降勧告を受け入れなかった場合を想定したダグラスの指示に、完璧に答えた形だ。
胸中を走る虚しさを無視して、ダグラスはすぐさま指示を飛ばす。銃を持ち続ける相手に対して情けをかけ続ける結果がどうなるかは、イヤというほど理解している。そして、コチラを撃ち抜いた銃口がすぐさま無辜の市民へと向けられるだろうことも。
その力強い指示の声に、キャバルリー隊の面々はまるで一人の声だと錯覚するほどに息を合わせて答えた。
『3、2、1……今ッ!』
3カウントの後、ダグラスの読み通りの敵の攻撃の空隙。それに合わせ解除された陽電子リフレクター、間髪入れずにユークリッドEが放ったビームと砲弾がそれぞれデストロイの胸部と背中の円盤部左右に存在するスラスターをそれぞれ撃ち貫き、小さな爆発。
だが、まだコクピットは健在だ。すなわち、シュトゥルムファウストの操作は死んでいない。
飛翔する剛腕がその手を開き、五連装ビームガンでユークリッドEたちの無防備に見える横っ腹を撃ち抜こうとする。
しかし、最も近いユークリッドEの後部側面。流星の如き速度で二機のMSが飛び立ち、瞬く間にシュトゥルムファウストと交錯した。
「着⭐︎剣ッ!!」
珍妙だが裂帛の叫びで振り抜かれた、光刃を宿した大きな得物が剛腕を両断した。
瞬間、空中に大きな炎の花が咲き誇る。
『
『了解!』
大気圏降下前、簡易ブリーフィングで決められた割り振りをダグラスが再度声に出して確認する。
先程同様に、異口同音に答えた彼らはそれぞれ行動を開始した。
側面に弓矢を模したエンブレムの描かれた、機体上部にヒュドラ多連装誘導弾発射筒を装備したアローズのユークリッドEは都市の東側に展開するENLFの砲兵陣地へと。
側面に竜に騎乗した騎士を模したエンブレムの描かれた、クレイヴ・ソリッシュを装備したドラグナーズのユークリッドEは後部側面からMSを展開してENLFのウィンダムを中心とした航空戦力との戦闘を開始。
そして──。
『ッ……!ポイントアルファにゲルズゲーの改造機複数の接近を確認ッ!!ヴァルキリー4、吶喊しまァす!!ヴァルキリー1援護願いまッス!』
『待てッ!ゼフォー
左肩にコンパスのエンブレムを、右肩に翼の生えた戦乙女を模したエンブレムの描かれたヴァルキリーズに所属する白と黒のツートンカラーのMSが、複数のENLFの戦力が迫るポイントアルファ──非常事態の際に市民が避難することになっている、年若いパイロットの乗るダガーLを含めた守備隊が防衛している地点へと猛スピードで急行していった。