地球連合所属属性多め憑依転生者 in 世界平和監視機構コンパス 作:ガンダムおじさん(にわか)
「言いたいのはそれだけだから。じゃあね〜」
チラとこちらに視線を向けるが、何事も無かったように。それこそルナマリア中尉の怒声も、俺の入室にも、今この場の空気すら気にもせずに、言いたいことは言い終わったのだから当然だと言わんばかりにさっさと出口へと向かっていく。
たぶん、アグネス中尉の中で俺の存在は路傍の石程度なのだろう。
「隊内での配置転換の話なら、アスカ大尉でなくヤマト隊長にするべきだと思うっスよ。ギーベンラート中尉」
「……なに?あんたには関係ないでしょ?」
まぁ、たいして注意を向けていない石に足が引っ掛かることは、稀に良くあることなのだが。
「いやぁ、常にではなくても同行することはあるんで流石に無関係では無いと思うっス」
こちらに向いた視線には、苛立ちが滲んでいる。その辺の石ころから、鬱陶しい羽虫程度には俺への認識はレベルアップしたのだろうか?だとしても全く嬉しくはないけど。
「あんたなんか、いたところでマトモに戦わないんだからどのMSに誰が乗ってるかなんて、無関係も同然でしょ。まぁ、
「イヤ、流石に人の身体好き勝手に弄くり回す連中を仲間とは思わないっスけど」
「ッ、アグネス!ちょっとあんた!」
ズケズケとアグネス中尉の言い放った言葉は、半分は当たっている。耳が痛い。もちろん、後半は断固として否定させてもらう。
俺の返事を聞いたアグネス中尉は、ルナマリア中尉の声に耳を貸さずに一歩分。ズイ、とこちらへ近づき指を突きつけながら言葉を続ける。
「そう、ならあんたは敵相手にもマトモに戦えない、言われたことをこなすので精一杯な
「アグネスッ!あんたなに言ってるか分かってんの!?」
「ッ!オイ、アグネスッ!」
ポンコツのあたりを強調する言い方に、言外に含むものを感じる。たぶん、俺が生体CPUであると知っている相手には伝わって、知らない相手には少しキツいだけの言い方と受け取れる言い回しだろう。
えぇ、思ってたより嫌な女としてのレベル高すぎだろ……。分かりづらくはあるけれど、この身の上を直接言葉で当て擦られたことは初めてだ。一周回って清々しく感じるくらい。
なんか、さっきまで頭に昇ってた血が下がって、一気に冷静になってきた。俺の身の上を知っているルナマリア中尉にアスカ大尉も怒鳴り始めたじゃん。
やめて、私のために争わないで!いや、マジで今後の部隊の連携に影響しそうなレベルじゃん。俺は嫌味の三つや四つ投げれればよかっただけなのに。
「いやぁ、耳が痛いっスねー」
頭の後ろを手で掻きながら発した、先の罵倒を肯定するような俺の言葉にギョッとしたような視線が二対。怪訝な視線が一対。どれが誰のものかはいうまでもないだろう。とりあえずは一触即発な空気は霧散したので、そのまま言葉を続ける。
「こないだだって、ホーク中尉にギーベンラート中尉は民間人の避難誘導をしつつの守備軍の援護を命じられて、アスカ大尉は人が多く集まるだろう政府施設の防衛を
俺の身の上を知っているヤマト隊長が、さっきの言葉に共感する人間だと思っているならば。あるいは、そんな身の上を当て擦る言葉を口にする人間だと思われても構わないのならば。
言外の意図が通じたのか、アグネス中尉の眉間に皺が寄った気がする。構わずに言葉を続ける。
「あぁ、そういえば。言われた以上のことができていたギーベンラート中尉は、何かヤマト隊長からお言葉は頂けたっスか?」
「……それこそ、あんたには関係ないでしょ」
フン、と鼻を鳴らして部屋を出るアグネス中尉。少しばかり茹だってしまった頭でつっついたら、かなりレベルの高いお方だった。ほんとにもう清々しいくらい……イヤ、もうむしろ好きだな。気兼ねなく嫌味ぶつける相手としてだけど。
「ゼフォー、その……大丈夫か?」
「すごい人っすね、ギーベンラート中尉って。なんか一周回って尊敬の念が湧いてきたっス」
「オマ、オマエなぁ……」
「あんなの尊敬なんかしたらダメよ……」
心配そうなアスカ大尉の声に、返事を口にしたら両隣から呆れ切った声がかけられた。
ただ心の内から湧き出た言葉を、腕を組みウンウンと頷きながら漏らしただけなのに。
なんて、バカなことを考えていたらアスカ大尉に両肩を掴まれて、グイと向かい合わせの体勢にされる。
「そんなことより、ゼフォー!なんで怒らないんだよ!あんなこと言われて、悔しくないのかよッ!」
えぇ……。思わずルナマリア中尉を顧みれば、額に手を当てて天井を仰いでいた。
「あー、俺が言ってもイイっスか?」
「……えぇ、まぁ。譲るわ」
「えッ、なんだよその反応は……というかルナまでッ!」
アスカ大尉には、この反応に思い当たる節が無いらしい。なんだか、あれほど頭に血を昇らせたのがアホらしくなってきてしまった。
「怒らないで聞いて欲しいっス。さっきのと同じくらい侮蔑されてたんですから、アスカ大尉こそ怒らなきゃバカみたいじゃないっスか」
そう言えば、アスカ大尉は面食らったように静かになった。嘘でしょ……。
思わずジト目で見れば、しどろもどろに口を開いた。
「イヤ、でも、アグネスの言うことにも一理あって……」
「それ、俺が口にしたら納得してくれるんス?」
「あー、その……」
「まったく、美人な彼女が代わりに怒ってくれるからって。羨ましいっス」
「なッ、今ルナは関係ないだろルナはッ?!」
「……やっぱりホーク中尉とデキてたんすね、アスカ大尉」
手でハートを作ってボソリと呟けば、顔を赤くして口をパクパクしているアスカ大尉。金魚かな、可愛いね。
表情筋が死んでるから、こういう会話の時は大袈裟なジェスチャーなしだとイマイチ盛り上がらないから、仕方ないのだ。ホントダヨ。
「違うんスか?」
「違わないッ……ケド」
「えっ、じゃあチューは?チューはしたんスか?」
「……ウォッホン。ローワン特務少尉?珍しくこっちに来たってことは、何か用があるんでしょう?」
イヤな空気感は変わっているから、まぁイイか。少しばかり顔の赤いルナマリア中尉に、敬礼をしながら返事を返す。
「うっス、ハインライン大尉の場所を知りたくて来ました」
「ハインライン大尉?あの人になにか用?」
「ウィンダム絡みで追加装備とか……ほら、アレやコレやしてもらったんス。だから、差し入れ持っていってお礼も言おうかと思ったっス」
パイロット控え室の窓、そこからちょうど見えるウィンダム・カスタムを指差して説明を終えた。
「それなら……たぶん、ここだと思うけど」
ルナマリア中尉は、ちょうど手元にあるあったタブレット端末で艦内マップを呼び出すと軽く操作をし、おそらくハインライン大尉がいるであろう区域を示してくれた。
「アザっス。それじゃあ、これからの休暇は若いお二人で仲良くゆっくりとっスね。スっスっスー」
お礼と共に、戯けた言葉を口に手を当てながら呟いて部屋から抜け出る。
「ゼフォーッ、何を言って……いやそれを笑い声は流石に無理だって!」
アスカ大尉の言葉を背に浴びながら、この身を開発区画へと向かわせる。どうやら、ミレニアムの技術班にとってはこの休暇は休暇足りえないらしい。
キョロ、と見渡せばお目当てのハインライン大尉はなにやら技術士官の方々へと罵りの言葉を投げている様子だった。
どうやら、新たに開発している装備に関して問題があるようだ。正直言って、極めて声を掛けづらい。
「おやぁ、こんなところで珍しい。なにか用ですか?ゼフォー特務少尉」
「あれ、本当だ。誰かに用なのかい?」
そんな俺に声が掛かる。コノエ艦長とヤマト隊長の両名だった。
「おはようございます。コノエ艦長、ヤマト隊長」
思わず姿勢を正して、敬礼と共に固い言葉が口をついて出る。階級だけが理由でない緊張が、そこにあった。
「まぁ、そう固くならなくても結構ですよ。そうでしょう、ヤマト准将?」
「えぇ、僕も畏まられるのはあまり。もっと、気楽にしてもらってもいいんだよ?」
「ザフトと連合では勝手が違うでしょうから無理に、とは言いませんがね」
「……うっス。お言葉に甘えさせてもらうっス」
軍人らしからぬ、柔らかな雰囲気の二人。その言葉に甘えて口調を崩したが、内心の緊張は取り切れてはいない。階級の差があるからでなく、世界を救った英雄の前に立っているからでもなく。
脳裏をよぎるのは、
「実は、ハインライン大尉に話がしたかったんスけど……」
「あぁ……うん。ちょっとタイミングが悪かったかなぁ?」
視線の先には、早口での罵りがヒートアップしているハインライン大尉。よくアレで部下の人たちはついていけるな……。
「僕の方からハインライン大尉に話をしておいても良いけど、それで大丈夫……かな?」
「ありがとうございます。ウィンダム・カスタムの変更点でお礼と、あと差し入れでコーヒー渡したかっただけなんス。よろしくお願いしちゃってもいいスか?」
「あれのことかぁ、ハインライン大尉は『気分転換には丁度いい作業でした』なんて言ってたから気にしなくてもいいと思うけれど……」
そう言ってコーヒーを手渡した。そういえば。
「ヤマト隊長は、帰らないんスか?確か、家があるのって……」
「コラコラ、あまり人の事情に口を挟むものじゃありませんよ。まぁ、気持ちとしては私も同感なのですがね」
「……ハハ、すみません」
なんだか、訳アリみたいだ。そういえば、機械関係にも強かったんだっけか?ヤマト隊長は。
「いえ、こっちこそ失礼しましたっス。それじゃあ、お身体にお気をつけて」
「うん、そっちこそ……無理は、しないでね」
「了解っス!」
ヤマト隊長の言葉に敬礼と言葉を返しながら、自身の居室へと向かう。この身体になってから、妙にモノの形や位置を把握できるようになって、上手く出来そうだからと手遊びにしている落書きをこの休暇で集中してやってみようかなんて、
だから、知らなかったのだ。最悪の訪れ、それが近いことを。