ウマ娘の寿命が現実の馬と同じ世界線の恋愛事情   作:daidains

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おかげさまで総合日刊ランキングに入ることができました!私が確認できた限り、総合27位が最高だったと思います。応援してくださった皆様に感謝します!

ところで今回の話は、感想で教えてもらった素敵なメジロブライトのイベントから着想を得て書きました。ありがとうございます!

【追記】誤字の修正に伴って少しだけエピソードを追加しました。ストーリー全体としては変更していません。


メジロブライトの場合

 時が経つのも忘れ、私は思い出のカカオの樹の前で佇んでいた。

 彼女の指から零れ落ちたカカオの種は今や私の心にまで根を張り、カカオの実のように甘く、時に苦い彼女との思い出を想起させる。

 

 思い出特有の、あのどこか遠くにあるような、それでいてこの上なく身近なあの風味――いや、むしろ私はまだ彼女のことを一つたりとて思い出に出来ていない。そう表現した方が正しいのかもしれない。

 

 あの頃は良かった、なんて言葉を吐くつもりはないが、少なくともまだ彼女が隣にいた頃は彼女の一挙手一投足に一喜一憂するだけの単純な生き物だった。

 「ほわぁ」とおっとりした声で鳴く、そんな彼女に私はいつしか夢中になっていた。きっと私は彼女に出会う為に生まれてきたのだ。そう思える程に、彼女は私にとって特別な存在だった。

 

 だからこそ。

 

 だからこそ――彼女との記憶の品を手放さなければならないことが、悔しく、辛く、苦しい。

 

 

******

 

 

 私が彼女、メジロブライトを初めて目にしたのは、トレセン学園の入試会場でのことだった。今でもその時のことを昨日のことのように思い出せる。

 

 

 輝いていた。

 

 

 彼女に対する第一印象はそう表現するしかない。

 待機室で大勢の受験生がぎゅうぎゅう詰めで座り、試験が始まるまでの時間を潰している中、彼女だけが一際輝いていた。力を張ることなく、それでいて一本筋が通った姿で座る彼女は、私の視線を否応なしに惹きつけるのには十分過ぎた。既に体が本格化を迎え急成長し始めている時期とはいえ、どこか幼い雰囲気を残しつつも既に女性としての美しさが芽生え始めていた彼女に、当時の私は一瞬で虜になっていた。とはいえこの時の私の彼女に対する気持ちは、恋とは似て非なる、もっとこう、純粋な憧れに近いものだったように思う。

 

 実技試験で彼女が自分のところに来てくれないか――トレーナーとして当時試験の担当官をしていた私は、そんなことを考えていた。

 後から聞いた話だが、そんな邪な考えは同僚たちからあっさり見抜かれていたらしい。私は急遽別教室の筆記試験の監督をするようお達しを受けた。贔屓を防ぐための処置だったらしい。自分の内心が見ぬかれているとはつゆ知らず、当時の私は内心歯噛みしながら彼女のいる会場を後にしたのだった。

 

 再び彼女と出会ったのは、彼女が入学した後の選抜レースでのこと。

 巨大なターフの中心では、緑のむせ返るようなにおいがする。雨の日などは荒々しい森林のような空気感に包まれ、人によっては息苦しささえ覚えるほどだ。

そんなターフの中心に彼女は立っていた。悠然と佇む彼女は、遠目からでもその存在感を示していた。

 むしろ彼女が立つ場所がターフどころか世界の中心なのではないか――その存在感は当時の私を本気でそう思わせるほどだった。

 

 悔やまれることだが、私が到着したころには彼女の選抜レースは終わっており、私はまたも彼女の走る姿を見ることができなかった。

 周りに聞いてみると、彼女はその選抜レースであまりいい結果を出せていなかったらしい。私が見たのは敗北後の彼女だったということだ。

 しかし、走る姿を実際に見ていないのにもかかわらず、しかも負けていたのにもかかわらず、私は迷わず彼女をスカウトした。この決断は、当時の周囲から見れば軽率なものだったかもしれないが、今振り返れば、それがどれほど正しかったかを実感している。

 

「どうしてわたくしを選んでくださったんですの~?あんまりいい走りじゃなかったと自負していますのに~」

 

 選抜レースでスカウトを受けた彼女は、人差し指を自分の頬に当てつつ首を傾げてそんなことを言っていた。私はどう答えたものか一瞬悩んだが、短く

 

「直感」

 

とだけ答えた。実際走る姿を見てすらいないのだからそうとしか言いようがない。私の答えに彼女は目をぱちくりとさせ、長いまつげを揺らしていた。

 そして少しの静寂の後、ふっと顔をほころばせると、

 

「直感……まあ~。なんだか素敵ですわね~」

 

と言って私の手を両手で包み込んだ。レース後の彼女の熱が、私の手にじんわりと染み込んでくる。

 

「不思議な方ですのね~」

 

 これが私とメジロブライトの出会いだった。

 

 

 この時に明確な理由もなくスカウトしたというのはメジロ家の方から相当な警戒心を招いてしまったらしく、彼女をスカウトしてからというものメジロ家からかなりの冷遇を受けた。無理もない話だ。どこのウマの骨ともしれない男が名家の令嬢に言い寄っているのだから。私はそれでも諦めず1,2か月ほどブライトに会わせるようしつこく要求し続けた。その結果、私はメジロ家に呼び出されていろいろと詰問を受ける羽目になってしまった。内容も、それを問う人物も様々だったが、一番記憶に刻まれているのはメジロラモーヌからの問い。

 

「貴方はブライトの何をご覧になりましたの?」

 

 そのように問うメジロラモーヌの周りには、まるで抜き身の刃を首筋に突き付けられているかのような圧迫感と緊張感が漂っていた。彼女ほどではないとはいえ、それは他のメジロ家の者も同様だった。名門メジロ家の令嬢を預かるという責任の重さを、この時私は改めて実感することとなった。

 

「彼女の『走り』でもなく、『メジロ家の令嬢』としてでもなく、私は『彼女』しか見ていません」

 

 メジロラモーヌの問いに対し、私は緊張ですっかり乾ききった口をどうにか動かして答えた。

 

「随分と月並みで退屈な口説き文句ですこと」

 

 依然として刺すような威圧感を放ちながらも、そう言うメジロラモーヌの口元は少し笑っていた。彼女の目に、私の姿はどう映っていたのだろうか。今となっては知るすべもない。しかし彼女はその後、

 

「いいでしょう。メジロの将来の担い手を預かるというのです。生半可な覚悟では許しませんわよ? 」

 

とだけ言って、私にチャンスを与えてくれたのだった。こうして私はめでたく自分の望み通りブライトの担当トレーナーとなった。

 

 

*******

 

 

 ブライトのトレーナーとして過ごす日々は、私の中で夢のような時間として過ぎていった。その時々の細かな詳細は、私と彼女の間だけでの秘密としたいので語るのを差し控えるが、彼女と過ごした時間の中で印象深かったことは枚挙にいとまがない。一つだけ言うのならば、「あらあら~」ところころ笑う、そんな小さな仕草一つでさえも美しいと感じるほどにブライトが魅力的な人物であったことは疑いようもない事実だ。

 

 彼女がメイクデビュー戦に臨むことになった時、周囲からの期待はそれほど高くなかった。実際、レース前の人気も最下位に近いものだった。レースが始まると、彼女はスタートで出遅れ、序盤はほぼ最後方でレースを進めていた。彼女のマイペースな性格は周知の事実であり、私自身も彼女がこのような展開になることを予想していた。だから、私の期待は彼女が無事に走り終えることにあり、彼女についてもう少し学べればと思っていた。

 

 しかし、彼女はその予想を遥かに超えるパフォーマンスを見せた。直線に入ると最後方から驚異的な追い込みを見せ、大外からまさかの差し切り勝ちを遂げたのだ。メジロ家の人々を除けば、彼女の潜在能力を理解していたのは私だけだと思っていた。だが、その時私は自らの中にある疑念、彼女への信頼の不完全さを痛感した。私の心の中の小さな不安が、彼女の大輪の才能を完全には信じ切れていなかったことに、深く恥じ入ることになった。

 

 彼女が見せたその驚異的なレースは、周囲の期待をはるかに超え、私自身の中にあったどんな不確かな感情も吹き飛ばしてくれた。まさにその瞬間、私と彼女は真に出会ったと言えるだろう。

 

 その後の彼女の学生生活は、矢のように駆け抜けた。クラシック路線での戦いは惜しいものが続き、GⅠのタイトルは手に入れられなかった。しかし、彼女のレースごとの成長は著しく、彼女が示す潜在能力の片鱗に、私は何度も心を打たれた。レースの結果を超えた、彼女の内に秘める無限の可能性を信じ、私たちは共に歩んでいくことを決めた。

 

 そうしてシニア級に上がりすぐのバレンタインデーのことだった。

 

「親愛なるトレーナーさま。今日はバレンタインデーですので~、プレゼントがありますのよ」

 

 少しお付き合いいただけないでしょうか、と彼女に誘われてしまえば、行かないという選択肢は私にとってハナから存在しない。それが飛行機で7時間かかるような地であろうとも、だ。

 

 飛行機から降り彼女に導かれるがままについていくと、私たちは湿度が高く、空気が甘く香る熱帯の地へと足を踏み入れた。彼女はウマ娘らしい軽やかな足取りで先を歩き、私はその後をついて行った。私たちの目的地は、カカオが豊かに育つ地形――肥沃な土壌と豊富な降水量に恵まれた熱帯雨林の一角にあった。

 

 周囲は緑に溢れ、生命の息吹があらゆるところに感じられる。陽光が木々の間を縫うように地面に届き、その一部はカカオの木の葉に反射していた。

 

「ほら、見てくださいませ~。この可愛らしい……『カカオの樹』」

 

 聞けば私のために植樹したらしく、「一本まるまる差し上げますわ~」と言っていた。私は、何かを願いたくなるほどの、何の汚れもない茶色の真っ直ぐな幹を前に、しばし心奪われたように佇んでいた。

 

「最初の実がなるまでにはあと4年ほどかかりますが……カカオの樹は50年もの間実を成らせるらしいんですの~。ですから収穫できるようななったら、最初の年だけではなく、その間毎年毎年チョコをお作りしたいのです」

 

 ブライトの言葉には、未来への期待とともに、私たちの関係が今後も長く続いていくという確かな約束のようなものが感じられた。彼女の目は、言葉以上に多くを語っており、その茶色い瞳の中には無限の時間が広がっていた。

 

 私よりずっと短い一生しか生きられない彼女が、なぜそんな目をすることができるのだろうか。思わず足を止めてしまった私のことを振り返ってじっと待つ彼女を見るうちに、なんだかこみ上げるものが抑えきれなくなってしまい、私はごまかすように彼女の手をぎゅっと握った。

 

 

******

 

 

 あのバレンタインの後、私たちはシニア級で天皇賞春を勝った。ブライトにとって、そして私にとっても初めてのGⅠ勝利だった。

 

 ウイニングライブでセンターを飾る彼女を見て、私は妙に「つまりはこのことだったんだな」と腑に落ちたのを覚えている。

 「光の子」と形容される歴代メジロ家のウマ娘――それに連なる存在として、彼女は名前(ブライト)にふさわしい光を放っていた。今でも人々の間に生まれながらの貴賤の別は存在しないと強く信じている私だが、それでも、もしも元々の魂に美しいということがあるのなら、それは彼女のことを言うのだろう。そう思わせるだけの力が、彼女には備わっていた。

 

 メジロ家がもっとも重視するそのタイトルを私たちが手に入れたことは、私たちのみならずメジロ家の人々にとっても大きな意味を持っていたのだろう。彼らの私に対する態度は明らかに軟化し、私はメジロ家の邸宅を自由に出入りする許可をもらった。卒業まで残された時間は短かったが、その許可が得られたことで、私とブライトの関係はより一層深まることとなった。メジロ家の広大な敷地内を二人で散歩する日々は、私たちにとってかけがえのない時間となった。ブライトは時折、家族の歴史や競バにまつわる話をしてくれた。それらの話は、彼女が名家の令嬢としてどれほどのプレッシャーの中で生きてきたかを教えてくれた。私は心からの敬愛をこめて彼女の話を聞き、彼女と触れ合い、生涯の思い出を刻んだ。

 

 

 そして、卒業後、私たちはそれぞれの道を歩み始めた。ブライトはメジロ家の後進の育成に注力し、私はトレセンでトレーナーとして勤務を続けた。時には遠く離れていても、私たちの心は常につながっていた。そして、その絆は日々強くなるばかりだった。

 

 そうして絆を深め続け、バレンタインデーから4年後、私たちは結婚することになった。プロポーズはあのカカオの樹の下で行った。彼女が私に見せたかったその場所で、私は彼女に永遠の愛を誓った。カカオの樹はすでに実をつけ始めており、その実は私たちの愛の象徴のように感じられた。彼女は涙を流しながら「はい」と答え、その瞬間、私たちは新たな人生の旅を始めた。

 

 結婚式は、メジロ家の広大な庭で行われた。競バ界の多くの人々と、私たちの家族や友人が集まり、私たちの結婚を祝福してくれた。ブライトは白いドレスを着て、まるで天使のように美しかった。彼女の手を取り、誓いの言葉を交わすとき、私はこの世で最も幸せな人間だと感じた。彼女と共に過ごすこれからの日々が、どれほど美しいものになるかを想像するだけで心が満たされた。

 

 結婚後私たちは彼女がバレンタインデーに私に語ったように、毎年カカオの実を収穫し、二人でチョコレートを作るという新たな伝統を始めた。作り始めた年のバレンタインデーには失敗してしまったが、翌年は案外うまくいった。ほのかな苦みが自家焙煎で淹れた酸味の強いコーヒーによく合った。毎年2月に入ると二人でチョコレートのレシピを探し、材料や道具を準備しながら、私たちはこの贅沢な行事を楽しんだ。二人で調べたり探す過程で、再び本を読んだり、棚の奥から引っ張り出してきたレースの映像を見返すこともあった。そうしたことは彼女の新しい側面を私に見せてくれたし、また私にとっても彼女と過ごす時間はかけがえのない時間だった。

 

「いつか二人で小さなチョコレートショップを開くのもいいかもしれませんわね~」

 

 ある時、チョコを作りながらブライトはそんなことを言っていた。彼女の立場を考えるとショコラティエになるというのは難しい夢だったが、私もそんな未来を想像して「素敵だね」と笑い、ほほえましい気持ちになった。

 

 だからこそ、彼女のささやかな夢の代わりに、私はこの伝統がいつまでも続いていくことをひそかに願っていた。

 

 しかし――今思えば身に余る幸福に対するしっぺ返しだったのかもしれないが――終わりは突然やってきた。

 

 

******

 

 

「心臓発作です」

 

 ブライトは突然死んだ。享年10歳だった。あまりにも急すぎて、私はその事実を理解するまでにかなりの時間を要した。ブライトの遺体と対面した時でさえまだ現実として受け止めることはできなかったのだから。

 

 彼女の突然の死後、メジロ家は大きな悲しみに包まれた。後を追うように、ラモーヌもブライトの死から一年後、老衰でこの世を去った。彼女たちの死はメジロ家にとって計り知れない損失だった。家の重鎮が相次いでこの世を去ったことで、メジロ家は次第にその勢力を失い、没落の一途を辿ることとなった。

 

 ブライトとの結婚によりメジロ家の一員となっていた私は、この頃家の経営にも携わる立場となっており、彼女とラモーヌの死後、私は家の立て直しに尽力した。しかし、年々スピード化していく競バ界の変化、経済的な困難、そして何よりもメジロ家の中心となるべき存在の不在が、家全体を蝕んでいった。やがてメジロの家を去る者も増え、使用人やトレーナーの不足により運営に支障をきたした。金を工面するために、少しずつ財産を抵当に入れたり売ったりしていたが、既にメジロ家を維持できるだけの力は失われていた。私たちの努力は虚無へと吸い込まれていくばかりで、ついぞ没落を止めることはできなかった。

 

 やがてメジロ家は、その長い歴史に幕を閉じることとなった。

 

 家が解散する日、私は一人、かつてブライトと歩いたメジロ家の敷地を歩いていた。庭は以前のように手入れされておらず、かつての栄光の面影は残っていない。かつては色と匂いに満ち溢れていたこの場所は、いまや無味乾燥で、死そのものの気配が漂っているように私には思えた。

 

「……時代って案外早く変わってしまうんですね」

 

 庭には先客がおり、腰掛けている私にそう話しかけてきた。メジロライアンだった。

 

「寂しいものです。それ以上に悔しい。……家を守れなかったこと、本当に悔しくてたまらない」

 

私の返答に対し、ライアンは「そうですね……」と寂しげに答えることしかできなかった。

「この庭がこんなになるなんて、思ってもいませんでしたね」と、庭を見渡してから言う。私は「まったくです」と言ってから再び沈黙した。この庭の変わりようを前に、私たちはただ黙ってその現実を受け入れるしかなかった。

 

「……家の財産はもうほとんど残らないんですか?」

 

 しばしの沈黙ののち、メジロライアンは私にそう問いかけた。彼女のこの質問は、決して自分の財産の取り分を気にしているわけではない。ここで育まれた思い出や絆が宿る、思い出の品々や建物を捨てきれない、そんな気持ちの表れだと感じられた。

 

「ほとんど残せません。……でも、本当に大事なものがあるのなら、それ1つだけなら、各自の手元に残せるように努力します」

 

 私の言葉にライアンは少し顔を上げ、遠くを見つめながら静かに「ありがとうございます」と言った。その目には過去を懐かしむ哀愁が宿っていた。彼女にとっても、メジロ家はただの居場所ではなく、多くの記憶と経験、そして成長の場だったのだろう。彼女が選ぶ「本当に大事なもの」は何なのか、私には分からなかったが、それが彼女にとっての希望の灯りであることを願った。

 

「でも、○○さんも辛いですよね。……ブライトとの思い出を手放さないといけないんですから」

 

 ライアンの言葉に心が締め付けられる。確かに、ブライトとの思い出は私にとって何よりも大切な宝物だ。彼女との思い出が詰まった品々を手放すことは、まるで彼女自身をもう一度失うようなものだった。

 

「ええ、正直それはもう……。でも、ひとつだけ残すものはもう決めているんですよ」

「……何を残すか、聞いてもいいですか?」

「もちろん。でもその前に、ちょっとだけ昔の話に付き合ってくれませんか?語り合いたい思い出が沢山あるんです」

 

 今を逃せば、もうブライトの話を他人にできる機会は滅多にやってこないだろう。そして私はそう自覚しているからこそ、ライアンに、そしてこの場にもういないブライトに対して語りたいことが山ほどあるのだ――私がそう言うと、彼女は微笑みながら「ぜひ」と答えた。

 

 

*******

 

 

 トレセン学園の近隣にひっそりとたたずむ、隠れ家的なチョコレートショップは、その日も控えめながらも温かい光を放ち、訪れる人々を迎え入れていた。この小さな店は数年前に静かにオープンし、始めのうちは地元の住人たちにさえほとんど気づかれずにいた。しかし、その絶品の味と店主の温かな人柄が徐々に口コミで広がり、今では選ばれた人だけが知る、隠れた名所となっている。

 

 特にバレンタインデーには、店主が心を込めて作った特別なチョコレートが売り出される。この日ばかりは、幸せそうなカップルやチョコレート愛好家たちで、店の前は長い行列ができるほどだ。

 

「このチョコレート、特別なおいしさの秘密は何ですか?」と、来店者が毎年尋ねるのに対し、店主はいつも同じ答えを返す。

 

 

 

「うちはカカオから作っていますから」

 

 

 




このSSにも遂によみあげ機能がつきました……!
自分はしょっちゅうこの機能使うので、自分のSSにも搭載されたのがめちゃくちゃ嬉しいです。

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