今回は三本立てです。
・杏里ちゃん、カズマの恐ろしさを知る
・異世界でも現実は甘くない
・カズマ、フライパンを直す
【杏里ちゃん、カズマの恐ろしさを知る】
マスターに頼まれて商店街へとお使いに来たカズマ。本当は喫茶店でゴロゴロと休みたかったが、お釣りは貰って良いと言われて食い付いたのである。
大金が貯まると冒険に行くのを止めて引きこもったり、冒険者を雇い魔王の留めだけ貰う事を企てたりと、何かと動こうとしない男ではあるが、金が必要な場合は流石に動く。特に今は無一文な状態なのだ、スカスカの懐を潤す意味でも、金はいくらあっても困ることはない。
「お、カズマさーん! 良い肉入ってるよ~、買っていくかい?」
「お、そうだな。よし頼むわ」
「毎度あり~」
頼まれた物を買い終わり、いざ帰ろうとしたら精肉店で働いている『佐田杏里』に声をかけられた。
異世界でも初めてギルドを訪れた時に「RPGだと、ギルドで働いてるお姉さんは実はとんでもなく強いって過去を持ってる」と語り、打算で動いていた過去がある。この世界でも何かあったときのためにと、縁を作ろうとするのは変わらないようだ。
「オラ退けェ!」
そうして買ったものをエコバッグに入れて精肉店を離れた時、誰かがカズマへとぶつかる。いくら魔王を倒したと言っても、カズマのステータスは平均以下で一般人の域を出ない。そんなカズマはバランスを崩し、その場に倒れる。
「カズマさん大丈夫!?」
「あの野郎、俺の買った肉を!」
杏里はその場から身を乗り出し、カズマとぶつかった男の二人を見る。そして男はカズマの持っていたエコバッグを奪っており、当然その中には精肉店で買った物も入っている。
軟式テニス部に所属しており、体力もそこそこはある杏里ではあるが、既に引ったくり犯とは距離が空いている。それにカウンター越しのためここから出るのには多少時間がかかり、今は動きにくい格好のため、追うにしても見逃す可能性の方が近いだろう。
「『スティール』ッ!」
「ぶべっ」
だがこの男にとっては関係無い、目に見える距離こそが射程距離なのだから。カズマはスティールで引ったくり犯に奪われた荷物を取り返し、犯人は持っていた荷物が突然無くなった事でバランスを崩し、その場で躓きかけた。
「おお、カズマさん凄いね! 引ったくりから荷物を取り返すなんて」
「て、てめぇ。返し……」
「『スティール』」
杏里はカズマが魔法を使ったことには特に驚かず、荷物を取り返したことを称賛していた。この街には魔族や魔法少女が住んでいるため、大抵の事は「変わってるなぁ」で簡単に流されるのである。
そして敵対者には容赦無く、魔王軍からは手段の選ばない戦い方から外道や鬼畜と恐れられてきたのだ。荷物を取り返した程度で、この男が止まることはない。
再度犯人にスティールを使い、今度は犯人の高そうな財布奪い、中身を確認してから、中々入ってんじゃねぇかと呟いて自身のポケットへと仕舞い込んだ。
「え? いやあの、カズマさん?」
「『スティール』『スティール』『スティール』」
カッコよかったカズマから嫌な雰囲気を感じ取った杏里は、遠慮がちに声をかけるが、カズマの耳には何も入ってこない。
ひたすらにスティールを使い、売れそうな物はポケットへと仕舞った。挙げ句の果てには靴、Tシャツ、ズボンと身に付けてる物すら奪っていき、最終的に犯人の元には今履いてるパンツだけが残った。
「てめ、ふざけ」
「『クリエイト・ウォーター』『フリーズ』」
「ばっくしょん!」
諦めが悪いと言うべきか。犯人は自分の行いを忘れたかのように、持ち物を奪ったカズマへと反抗して殴りかかろうとした。
けれど既にカズマは次の行動に移っていた。犯人へと水をふっかけ、フリーズで犯人の身体を冷やし尽くしていた。
今が8月と言えど、パンツ一丁の状態で冬のような寒さが突然身体を襲ったのだ。犯人はくしゃみを繰り返し、その場で凍え始めた。
「おいおい人の物を盗っておいて返してほしいだぁ? 返せと言って返す奴が何処に居るんだ? そんなに返して欲しいなら、誠意ってものを見せてもらおうか誠意ってものよをぉ!」
「ず、ずびばぜんでじだ」
「…………」
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
【異世界でも現実は甘くない】
「カズマさん、カズマさん!」
「はいカズマです」
「カズマさんが居た異世界はどんな世界だったんですか?」
本日の営業が終わったあすらが閉店し、後片付けをしながら
目を輝かせながら聞いているのを見るに、あのふざけた異世界へと転生する前のカズマのように、異世界に憧れでもあるのだろう。
「俺の居た世界? 魔王が世界征服を企もうとしてたな」
「魔王!?」
「あぁ。他にも魔王軍の幹部とか、機動要塞デストロイヤーってのが居てな」
「幹部!? 機動要塞!? ワクワクするような単語がいっぱいありますね、魔王軍の幹部ってのはどんな人が居ましたか!」
尻尾をバタバタと暴れさせながら、クリスマスプレゼントを待ちわびる子どものようにカズマの話に耳を傾ける。
遠くにはマスターとリコが二人を見ているが、カズマの話に多少なりとも興味はあるのだろう。手が止まっている二人を注意することなく、耳を傾けていた。
シャミ子の頭には、悪の道に走りながらも騎士道精神溢れるモンスターや、最弱から幹部へと成り上がったバックストーリーを持つモンスターなどを想像してるのだろう。
だがカズマの世界にマトモな人物など殆ど存在しない。それは人だろうと、モンスターだろうか関係無い。特に幹部となれば、魔王が手を焼くほど我の強い奴らが多い。
「魔王軍の幹部は色々と居てな……スカートの中に覗こうとする頭を転がすデュラハンや、しつこい宗教勧誘に参っていたポイズンスライム、レベルを1まで下げられた挙げ句、信仰する宗教を無理矢理変えられたダークプリーストとかだな」
シャミ子の尻尾がシナシナになる。それはワクワクしていた気持ちが、ガッカリに変わるのを表しているようであり、実際にシャミ子は少し目が死んでいる。
人類を脅威に晒しているモンスターだが、我の強さで言えば人類も負けていない。モンスターを精神的に追い詰めたり、信徒にしたことがあるのだ。
最初に話したデュラハンも、拠点を頭のおかしい爆裂魔に毎日爆裂魔法を撃たれ続け、わざわざアクセルへと苦情を言いに行ったこともあり、意外にも人類の思いもよらない行動で苦労してるのである。
「じゃ、じゃあ。機動要塞はどんなのなんですか?」
まだ希望はあるだろうと、シャミ子は話題を変えて機動要塞デストロイヤーについて聞いた。機動要塞なら、機動要塞ならワクワクするような話があるだろう。そう僅かな希望を胸に抱きながら。
「機動要塞デストロイヤーはクモのようにワシャワシャと動いて、子ども達に人気の要塞だな。この要塞が通った後は草も残らないって言われてるんだ」
「迷惑な要塞ですね。でもなんで、そんな要塞があるんですか? まさか、魔王軍の刺客!?」
上空からの攻撃は防がれ、魔法も強固な魔法抵抗障壁が貼っており効かず、落とし穴を掘ってもかわされるなど、人類の頑張りを鼻で笑うかのように街を蹂躙していた機動要塞。
それほどまで被害を出し続ける機動要塞は、もしや人類を滅亡させるために、魔王軍が秘密裏に作った兵器ではないかとシャミ子は考えた。
「…………それの責任者が、馬鹿な行動をし続けたら結果的に完成させて、酔っ払った勢いで乗ったら暴走状態で起動させた」
「…………あの、なんかすみません」
全然違っていた。
むしろ魔王軍が作ったよりも最悪な形であった。話を盗み聞きしていたマスターとリコも目を逸らし、何も聞かなかったことにして後片付けを再開した。
そうしてシャミ子は新たに学びを得た。例え異世界であろうとも現実はそう上手くはないこと。そして自分の居る世界は凄い恵まれているのだと。
頑張れシャミ子、カズマさんの思い出話を乗り越えて強い魔族になるんだ!
★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
【カズマ、フライパンを直す】
「あれ、桃じゃないか」
「カズマさん」
ある日、カズマは『ショッピングモールまるま』で、フライパンを凝視している桃を見つけた。たまたま行動時間が合わないだけかもしれないが、外で見るのは珍しいと思い声をかけた。
「こんな所でどうしたんだ?」
「前にステッキを使って傷付いたフライパンを買い換えようと思って」
「それは何があったんだ」
一時期、シャミ子の妹である良子に魔法少女であるとバレないようにしていた時期があり、桃の家で魔法少女用のステッキを見つけた良子を誤魔化すため、ステッキはフライパンで炒め物をする時に使う物だと苦しい嘘をついたことがある。
しかし良子には前から怪しいとバレており、結果的には傷付いたフライパンだけが残った。料理をするような事は殆ど無く、当然そんなだからフライパンは使うことは無いが、そのままにするのも良くないだろうと、買い換えを決意したのである。
「ってか、傷付いた程度なら俺直せるぞ? これでも異世界で色々とやってたからな。流石に直すには工具が必要だけど」
「でしたら、私の家に行きましょうか」
カズマは異世界で『鍛冶スキル』を習得済みである。これは防具や商品の作成、修理を出来るようになるスキルである。これを使って異世界では味方の防具を直したり、日本にあった道具を開発したりと、痒い所に手が届くスキルとして活用していた。
学生の身ではありつつも、お金に困るような生活はしていない桃。けれどただより安い物は無いだろうし、話していけばカズマの人柄を多少なりとも観察出来る。
土下座と謝罪の一件から警戒はしていないが、桃にとって今のカズマは「自称異世界人で、多くの手札持ち底が見えない怪しい人」である。
何か企んでいても手は出さないだろうし、仮に出されても地の利は此方にある。その考えから、桃はカズマを家に上げることにした。
実際、この男は仲間が薄めの服を着ていても、イヤらしい目で見るだけで手を出さないヘタレであるため正解である。正確には、手を出せないヘタレであるが。
「はい、工具です」
「時間かかるからちょっと待ってろよ」
家に上げてもらい、工具を借りたカズマはフライパンに全体的に確認したあと、傷付いている部分に無言で直していく。そして桃は少しずつ直っていくフライパンをジッと見つめる。
「…………」
「…………」
「なぁ、見てて面白いか? ただフライパンを綺麗にしてるだけなんだけど」
「器用だなと思って」
「異世界に居た時は防具の修理とかしてたからな」
無言に耐えれなくなったのか、ジッと見られてるのが気になったのか。ダクネスもそんな風に、防具を直すのを見ていたなと思い出しながら、桃に言葉を投げた。
軽く一言二言ほど喋り、再び無言は続く。そうして1時間が経っただろうか。カズマはフライパンを置いて、大きく伸びをした。
「はい。直ったぞ」
「ありがとうございますカズマさん。これでシャミ子にご飯を作ってもらえる」
「お前、シャミ子にご飯作ってもらってたのかよ」
カズマからフライパンを受け取り、マジマジとフライパンを見つめる桃。傷があった場所は無くなり、新品同様の見た目となっていた。傷どころか汚れも取れているため、サービスしてくれたのだろう。
今度から自分で作れよと小声を漏らしながら家を出ていくカズマの後ろ姿を見て、手を出さないどころか無償で直してたカズマを少しは信じて良いのかもしれないと、好感を抱くのであった。
カズマさん学校行かないから、杏里ちゃんと絡む場面無いよなぁ……と思って、精肉店で買い物してもらいました。あと魔法を見てもらうため
小倉さん? 常時シャミ子の近くに居るようなモノだし、シャミ子と行動してれば勝手に生えてくるでしょ(テキトー)
魔王とかの言葉が好きなシャミ子と、現実を知ってるカズマさんとの軽い絡みを書きました。書こうと思えばいつでも深掘りした話は書けますが、それはカズマさんの帰る手段が本編内で見つかってからですかね。
それを先に書いても話が一切進まないですし。多少なりとも話が進んでから書く予定です。
三本目はカズマさんのスキル発表会です。元々はあすらの調理器具を直す予定でしたが、もう少し魔法少女組と交流が欲しかったので、フライパンを直してもらいました。
日常もといオリジナルを一切挟まずに進めるとカズマさん、4巻(二期)の範囲終わっても、ずっとあすらで働いてる「自称異世界人の怪しい人」と魔法少女組は認識してる状態になりますからね。
世界を渡る方法が見つかっても、魔法少女組からは「何か企んでる」と思われて邪魔されます。なので好感度を上げる必要があったんですよね(RTA風)。
次回はミカンさん回です。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
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佐藤カズマ
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吉田優子(シャミ子)
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千代田桃
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日夏樹ミカン
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マスター
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リコ
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リリス
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吉田良
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吉田清子
-
佐田杏里
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小倉しおん
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犬のお姉さん
-
犬