【完結】この素晴らしいまちカド世界に祝福を!   作:のろとり

17 / 44
 予約投稿です。

 最初は「植物系にご用心? 異世界での可愛らしいモンスター!」の予定でしたが、バトル風のタイトルに見えたので変更しました。今回はバトルシーン一切無いですし。


第十七話 植物系にご用心? 異世界でのモンスター話!

「……どうして」

 

「優子はんとのデートを邪魔したのはホンマ悪いと思っとるわ~」

 

「デートじゃないです」

 

 本来ならシャミ子、桃、ミカンの三人で来ていた筈の動物園。しかし待ち合わせ場所に行くとマスター、リコ、カズマがシャミ子と一緒に来ていた。

 

 実は弁当用にとリコが用意してくれた重箱があるのだが、大きさが6人用と少々大きく、三人ではとても食べきれないだろうとリコが悩んでいた。

 するとチケットがまだ三人分余っているのを思い出したシャミ子がその事を話して、今日はあすらの営業を休みにして、三人が一緒に来たのであった。

 

 そうして六人で動物園へと来たのだが、桃はシャミ子達と合流して以降、ずっと不機嫌である。本心ではちゃんと謝っているリコであるが、のらりくらりとした態度ではそうは見てない。

 いつもならマスターがリコに小言を言って、代わりに謝罪をしてくれているだろう。けれど今はそういかない。

 

「ぐおおお!」

 

「マスター、大丈夫ですか?」

 

「湿布を貼るのはこの辺りで良いかしら」

 

「すまないね。わざわざ付き合ってもらって」

 

 腰を痛めてベンチから動けなくなっているのだから。本来四足歩行のバク(マスター)であるが、人間社会に溶け込めるようにと、無理に二足歩行で歩いてるため、よく腰をヤってしまうのだ。

 特に今日は重い重箱を背負いながらここまでやってきたのだ。むしろ動物園まで身体を持ったのが奇跡と言えるだろう。

 

 カズマと出会った時にも、様々な事情で松葉杖を使うほどまでに怪我をしていたマスター。しかし数日ほどでその怪我は軽傷にまで治っていた。何故なら……

 

「ほらマスター。気休め程度だけど『ヒール』」

 

 カズマが居るからである。怪我を治すスキル『ヒール』を使って、腰の痛みを消していくカズマ。あまり魔力を持っていないため、あくまで痛みを引かせる程度の効果しか無いが、日常的な動作をするには支障が出ることはないだろう。

 それこそバク宙熱々おでん等の激しい運動をしたり、何か腰を痛めるような行動をした場合は痛みが再発してしまうだろうが。あくまでヒールは今の痛みを消すのであって、病気や二度とその箇所が痛まないといった効果は無い。

 

「本当に器用ね」

 

「カズマさん、回復も出来るんですよね」

 

「まぁな。アクアは「私の存在意義が無くなる」って、ずっと駄々捏ねてたから、習得するのにだいぶ時間がかかったがな」

 

 回復(ヒール)隠密行動(潜伏、敵感知)妨害行動(スティール)遠距離攻撃(狙撃、千里眼)、他にも相手の魔力を吸うドレインタッチ、料理スキルや鍛冶スキル……日常的にも戦闘でも痒い所に手が届くスキルを習得しているカズマ。

 悪く言うと器用貧乏。特にカズマのステータスで平均なため、それがより浮き彫りになるが、欠陥だらけのカズマ君のパーティーには無くてはならない人材である。

 

「湿布とヒールでだいぶ楽になったよ。あまり私に構っていては動物園を満喫出来ないだろう? 気にせず見に行って構わないさ」

 

「そうですか。では遠慮無く」

 

「駄目です!」

 

 歩けるようにはなったが、また腰を痛めるかもしれない。自分がこの調子ではシャミ子達が動物園を楽しめないと、自分を置いて先に動物園を見てて良いと話すマスター。

 

 あの戦闘の件(第六話参照)もあり、若干気まずく感じている桃。マスター達とどう接したら良いか分からなかったが、相手がそう言うならとその場で置き去りにしようとしたが、シャミ子が遮る。

 

「マスターさんも一緒に楽しみましょう!」

 

「一緒に行こうやマスター」

 

「しょうがねぇなあああ! ほら、俺が弁当を持つよ」

 

「すまないね」

 

「…………」

 

 シャミ子だけでなく、桃以外の全員がマスターの事を心配している。桃はモヤモヤした感情を抱えながら、マスター達と動物園を回り始めるのであった。

 

 

 

 

 

「かわいい~!」

 

 モヤモヤとした気持ちを抱えていた桃であったが、カズマがふと溢した「VIPチケットのVIPって何が対象なんだ?」と言う言葉と共に、虎の赤ちゃんと触れ合えるコーナーを思い出し、急いでそのコーナーへと向かった。

 

 その桃に付いていくようにして、全員がそのコーナーへと向かい、虎の赤ちゃんを撫で始めた。

 余談だが、あまりの速さに置いてかれないようにと、急ごうとしたマスターが腰を痛めてカズマのヒールで治してもらった。

 

「ほんまやな~お腹空いてくるわ~」

 

「リコ君止めたまえ!」

 

 赤ちゃんの可愛らしさに、メロメロになっていた雰囲気がぶち壊しである。リコの言葉を理解したのか、それとも生存本能からか、虎の赤ちゃんはリコに近寄らなくなった。

 

「ムニムニムニムニムニ」

 

「可愛いわね桃~、って聞いてないわね」

 

 そしてあれほど不機嫌であった桃は何処へ行ったのやら。今では一心不乱に虎の赤ちゃんと戯れており、ミカンの声は耳に入っていない。

 全員が赤ちゃんに夢中になっていたかのように思えたが、一人だけ違う人物が居た。

 

「だ、大丈夫だよな……?」

 

「あれ、カズマさんどうしました? もしかして猫科苦手でしたか?」

 

 そう、カズマである。

 何故だかカズマは虎の赤ちゃんを恐る恐る触っており、時折「ここはあんな異世界じゃないから大丈夫な筈だ」と、うわ言のように呟いてるのを見て、シャミ子はカズマに無理をさせてるのではと心配になった。

 

「いや、苦手じゃないんだ。異世界でちょむすけって猫を飼ってるしな。あとついでにゼル帝って言う、アクアがドラゴンだと思い込んでる雛も居るぞ」

 

「後半の話が気になりますが。ならどうしましたか?」

 

 ゼル帝とは、アクアがドラゴンの卵だと騙されて買った鶏の卵である。誰がどう見てもその卵は鶏のそれであり、産まれた雛もドラゴンとは見えないものであった。正真正銘、ただの雛なのだから当然であるが。

 

 しかしアクアはそれをドラゴンの子どもだと言い張っている。ただの雛であるが、アクアやめぐみんなど、魔力の高いものに卵を暖められたため、とてつもない魔力を持っている。ただし普通の雛であるため、魔法を使うこともマトモな攻撃も出来ない存在である。

 

「無害そうでかわいい系の生物を見てると、異世界でのちょっとしたトラウマを思い出してな」

 

「虎馬?」

 

「虎と馬じゃなくてトラウマな。俺達の世界に安楽少女って言うモンスターが居てな」

 

「なんだか可哀想な名前ね」

 

 虎と馬が合体した謎の生物を想像したシャミ子だが、正しくはトラウマである。

 可愛い虎の赤ちゃんを見て思い出すトラウマとはなんだろうかと、全員耳を傾ける。しかしカズマの口から出たモンスターの名前は、トラウマの要素が何処にあるのかと言いたいほど可哀想な名前であり、ミカンはその名前を聞いて思わず眉を寄せた。

 

「植物系のモンスターでな。ある程度の知能があって、怪我をした幼い少女のような見た目が特徴なんだ」

 

「怪我してるモンスターなんですか? それは治療が必要ですね」

 

「見るだけでも心配になりそうなモンスターだね」

 

 名前はだけでなく、見た目すらも心配になるモンスターを聞いて、誰がそんな名前を付けて、酷い見た目にしたのだろうと、若干ながら怒りが溢れる。

 

「その見た目を相まって、可哀想だと思った冒険者や商人が、安楽少女の元に自分が死ぬまで生活するんだ」

 

「う、うぅ……」

 

「私、その子の元に行きたくなってきたわ」

 

「悲しいモンスターやな~」

 

 異世界でも自分と同じ考えを持つ者は居るのだと思い、そこまでして安楽少女に尽くそうとする人達の話を聞いて、思わず涙が溢れそうになる。

 

「で、その見た目や巧みな話術で人を騙す悪女で、死体になった人間を養分として成長するんだ」

 

『…………』

 

 一瞬で涙が引っ込んだ。

 全員が無言になり、カズマの方を見つめる。今なんと言っていただろうか。死体を養分とする? 人を騙す悪女? 間違えて安楽少女とは別のモンスターの事を話してるのだろうか、きっとそうだろう。そうであってくれ。世界はそこまで理不尽ではない筈だと。

 

 しかしカズマが居た異世界は、ふざけた世界である。そんな思いが簡単に通じるのなら、これまでの冒険でカズマが苦労するような事はない。

 

「カズマさん。私の聞き間違いだと思うんですが。聞き間違いであってほしいんですが、なんて言いました?」

 

「人を騙して、そいつの養分を吸って成長する悪女」

 

 聞き間違いでは無かった。安楽少女と名ばかりの、悪魔のように人を騙す狡猾なモンスターであった。思わぬ正体に、なんと返せば良いのか分からず、虎の赤ちゃんを撫でて心を落ち着かせようとするが、全く落ち着かない。

 それどころかカズマは、そんな反応をするみんなの事が見えていないかのように、話を続ける。

 

「特に養分を多く吸ってる安楽少女は経験値が旨いからな。前に養殖して、経験値をそれなりに入ったら殺して経験値を稼ぐのを実行しようと考えたものさ」

 

『…………』

 

 どうやら本当の悪魔は目の前の男であったようだ。悪魔のような存在だと思っていた安楽少女だが、それを養殖して狩ろうとする辺り、この男はそれ以上の悪魔だろう。

 安楽少女養殖の件は兎も角として、あまりにも理不尽でふざけた世界ではないだろうか。これまでにカズマから様々な異世界話を聞いてきたからこそ、全員共通して思った事が一つある。

 

「私、カズマさんの世界には行きたくないです」

 

「私もよ」

 

「僕はモンスターの枠組みになるだろうけど、一瞬で狩られるだろうね」

 

「ウチも勘弁やわ~」

 

 絶対にカズマが居た異世界に行きたくない、と。もし異世界へと行けば、モンスターに簡単に食べられてしまうだろう。

 仮にモンスターとの遭遇を免れても、モンスターと間違われて戦いになれば、そんな理不尽な異世界で生き残り、そして冒険者をしている者に簡単に狩られるだろう。

 

「カズマさん、一発殴らせてください」

 

「おい落ち着けって! ならアレだ、猫科のモンスターの話をしてやるから!」

 

 今の話を聞いてしまっては、安楽少女が脳裏を過って、可愛らしい虎の赤ちゃんと戯れられない。消えかけていたモヤモヤが再発し、カズマを殴ろうとする。

 脳筋魔法少女に一発でも殴られたら洒落にならないと、急いで桃が食い付きそうな話題へと変更する。

 

「嫌な予感がしますが、一応お願いします」

 

 どうせロクな話では無いと諦めてはいるが、念のためである。決して猫科と聞いて食い付いた訳ではない、決して違うと誰に言うわけでもなく、内心桃は言い訳をしていた。

 

「俺達の世界には初心者殺しって言うモンスターが居てな」

 

「あ、やっぱり良いです」

 

 やっぱりロクな話で無かった。名前でどんなモンスターかを察した桃はその話題を切り、再度虎の赤ちゃんと戯れるが、コーナーが終了するまで赤ちゃんに集中する事が出来なかった。




 カズマさんのファインプレーで、虎の赤ちゃんと戯れることが出来た桃。ただし集中は出来ない。最初は初心者殺しメインで安楽少女オチにしようと思いましたが、逆の方がインパクトあると思い本編のように。

 残りの話数を数えてたら残り24話でした。まぁ最短でその話数って話だから、延びる可能性は充分にあるけど。短いようで長いですね。

 次回も動物園の話です。正確にはお弁当ウマウマ回ですが。

【第二回】この作品で好きなキャラ投票!

  • 佐藤カズマ
  • 吉田優子(シャミ子)
  • 千代田桃
  • 日夏樹ミカン
  • マスター
  • リコ
  • リリス
  • 吉田良
  • 吉田清子
  • 佐田杏里
  • 小倉しおん
  • 犬のお姉さん
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。