区切る場所分からなくて今回は長めになりました。
この作品はまちカドまぞく二期(原作4巻)以降の内容は伏せてるけど、うっかり内容書いてそうで怖いな。
「はい、此方喫茶店あすら」
『カズマさん大変です!』
動物園で遊んだ翌日。疲れている身体に鞭を打ちながら働いていると、あすらの電話がプルプルと音を出し始めた。誰かが電話を掛けてきたのだと、近くにいたカズマが出ると、相手は何か焦った様子のシャミ子であった。
「おう、優子か。何かあったのか?」
『桃が……桃が闇落ちしました!』
「今なんて?」
思わず聞き返したカズマ。闇落ちを抑えるのは効果が出るまで数日ほどかかる。その効果が出るまでの間に闇落ちする可能性は多少なりともあったが、それがまさか翌日になるとは。
『桃が闇落ちしてしまったんですよ! このままだと、桃が、桃がァ……!』
「はぁ……しょうがねぇなあああ! 今すぐそっち向かうから待ってろ」
『お、お願いします!』
冗談かと思ったカズマであったが、シャミ子がそんなつまらない冗談を付くとは思えない。それに電話越しとは言えど、必死な声を聞けば誰であろうと動こうとするだろう。
「マスター、ちょっと用事を思い出して」
「言い訳せずとも、聞こえていたよ。桃殿を救ってきてくれるかい?」
鬼畜や外道な面が目立つ男であるが、仲間を助けるためなら全財産を使うのも惜しく無いお人好しである。しかし、馬鹿正直に「人を助ける」とは言えない不器用でツンデレ気味な男であった。
そんなカズマの行動は筒抜けだったようで、生暖かい目で桃の所へ行こうとするカズマを見送るマスター。
解決策が思いつかず、闇落ちから誰かを救えるような力も無い。助けることも出来ず、カズマに任せるしか無いマスターは自分自身の無力さに歯痒いを抱えていた。
信じるしかない。これまでカズマの異世界話を聞いてきたマスターは、あのふざけた異世界で生き延びて数多くの格上を葬り去る奇策を実行してきたカズマなら、桃をきっと救ってくれるのだと。
「ウチに任せとき~。カズマはんが居ない分、ウチ一人でも回したるで~」
「あの、一応僕も居るんだけど」
「わりぃ。じゃあ行ってくる!」
マスターとリコの漫才のような会話を見て、肩の力が抜けたカズマは、その辺りを散歩するような感覚で出掛ける挨拶をし、急いでシャミ子の元へと急ぐのであった。
「入るぞ桃!」
「カズマさん」
ばんだ荘に着き、表札を確認してから桃邸へと入ると、シャミ子とミカン、そして黒系の露出多めな格好をしている桃が目に入った。
「今はどういう状況だ?」
「前に闇落ちから戻した方法を試したけど、失敗したからどうしようか考えてる所よ」
「…………優子」
「どうしました? カズマさん」
ミカンから事情を聞いたカズマは、シャミ子を手招きして耳元で小さく会話をする。闇落ちスタイルの桃を見てから、どうしても確認したい事があったカズマ。
桃とミカンの2人には聞かれてはまずく、そしてこの会話を共有出来そうなシャミ子だけに話をする。
「桃のあの腰紐ってどうなってんだ?」
「分からないです。引っ張ろうとしたら桃に反撃されました」
カズマは桃を見てからずっと、スカートの横に付いている腰紐が気になっていた。そのデザインは引っ張ってくださいと言わんばかりであり、カズマはその腰紐も引っ張りたい欲に駆られていた。
「優子、お前の仇は俺が取ってやるから安心しろ」
「私死んでないんですが!?」
「『スティ━━━』」
シャミ子の突っ込みを聞こえないフリをし、手に魔力を貯めるカズマ。そのまま相手の持ち物を盗む『スティール』で、桃の腰紐を奪って確かめようとした。
「そうくると思ってましたよ」
しかしその行動は既に読まれていた。シャミ子がしてきたのだから、カズマも同じ行動をするのだろうと。カズマがスティールを発動させる前に、カズマを床に倒して腕を背中に回すような形にして固定した。
「あいたたたたた!! ギブ、ギブだから!」
「シャミ子のように私の腰紐を取ろうとしたんでしょう?」
「シャミ子、そんなことしてたのね……」
ギブアップと叫ぶカズマを離して、シャミ子にも同じことをされたと話す桃。そんな会話を聞いて、ミカンは2人の行動に引いていた。
「だって気になるじゃないですか! あの腰紐はただの飾りなのか、それとも引っ張ったらスカートとか落ちてくるのか!」
「そうだそうだ! 桃、お前は俺たちの夢を邪魔するのか!」
闇落ちして大変な時に、そんな行動をするのは平常運転で安心するが、もしその夢が達成されていたら、変態と言う二つ名を手に入れていたのだが、本当にそれで良いのだろうか。
「カズマさん。私は魔力が全開だから、上手く力の制御が出来ないんだよね。何を言いたいか分かるよね?」
「はい、すみませんでした」
隙があればスティールを発動させようとしていたが、流石に自分の命が惜しいカズマは簡単に諦めた。この世界にはアクアが居ないため、蘇生は使えないのだ。仮に怪我で済んだとしても、カズマ程度のヒールでは治るのに時間がかかるだろう。
「それで、話は戻すけど闇落ちから戻る方法思い付かない?」
「俺の経験談でも闇落ちした奴なんて居ないからなぁ。精々、アクアに会うたびに浄化されかけて、身体が透けてたリッチーなら知ってるけど」
「そのリッチーさんはいったい何があったんですか」
「同じ消滅の危機って話なのに、なんだか温度差が凄いわね」
そのリッチーはアクセルの街で魔道具屋を営むほど人畜無害であり、機動要塞デストロイヤーがアクセルに攻めてきた時は冒険者と一緒に協力をしているが、肝心のアクアが悪魔やアンデットを嫌っているのだ。
事あるごとに自身を消そうとするアクアにビクビクしているリッチーと、そのリッチーを顎で使うアクア。いったいどっちの方が悪魔なんだろうか。
「カズマさんでも思い付かないか」
「精々俺が出来るのは『ドレインタッチ』で魔力を渡して、消滅までの時間稼ぎだな」
「なら私の魔力を『ドレインタッチ』で吸ってもらって、それを桃に」
「それは止めた方が良いかもしれないわね」
「どうしてですか!?」
カズマのドレインタッチで魔力が送れるなら、カズマ経由で自分の魔力も送ってもらえばと考えたシャミ子であったが、それはミカンに止められてしまった。
「今の桃は闇落ちしてる状態だから、そこにシャミ子の魔力。つまり闇の一族の力を与えたら、桃が身体を保てなく可能性があるわ。その状態で闇落ちしてるとなると、より消滅が早まるかもしれないわ」
「そう、ですか」
闇落ち状態から魔族の魔力を貰った事象は聞いたことがない。予想にしか過ぎないが、今の桃は一時的に闇属性となっているのだ。そんな状態で
「私の出番かな?」
「うおああああああ!!!!!」
「キャアアアアア!」
今の所、時間稼ぎの方法しか思い浮かばない。どうすれば闇落ちから元に戻せるか考えていると、突然天井裏から誰かが出てきた。
シャミ子家の誰でもなく、見覚えの無い人物にカズマとミカンは悲鳴をあげる。その人物が天井裏から出てきた事に加えて、黒髪ロングで有名な幽霊を思い出させる容姿なのも、その恐怖に一役買っているのだろう。
「小倉さん!」
「え、何。優子の知り合いか?」
「はい。同級生で魔法とかを色々研究してる『小倉しおん』さんです」
「こんにちは~、異世界人の佐藤カズマさん。私は小倉しおんだよ~」
カズマはこの世界で「カズマさん」と呼ばれる事が多い。少なくとも名字の「佐藤」を呼ぶ人物は居ない。それに異世界人だと説明したのは、あすらやシャミ子邸でした自己紹介の時だけである。
小倉しおんは何処でそれを知ったのだろうと、天井裏から出てきたことも含めて警戒をする。今は平和な日々を暮らしているカズマであったが、これでも格上の魔王軍幹部と渡り合った男である。そうでなくとも、個人情報を知られているのに警戒しないのが無理と言えるだろう。
「シャミ子、説明はその辺りにして、まずはミカンの呪いを」
「あぁ、目が回る~」
リリスの声の方向を振り向くと、窓から侵入した蛇がリリスを襲っていた。あくまで像のため毒は効かないと思うが、何故だか色が紫に変色し始めていた。
逆さまに咥えられているのも含め、毒が回りリリスは平衡感覚が無くなっていた。
「ミカンさん落ち着いてください! 幽霊とかゾンビの類いでは無いですから!」
「大変だね~」
ミカンに声をかけて、呪いを落ち着かせる。すると蛇はリリスに興味が失せたのか、窓からスルスルと外へと出ていった。小倉しおんはリリスが襲われている様子を他人事のように見ていたが、元の原因は幽霊のように出てきた自身である。
「ありがとうシャミ子、少し落ち着いたわ」
「つーかシャミ子、コイツが天井裏から出てきたことには何も言わないのか?」
「そうでした! 小倉さん、どうして天井裏に居たんですか?」
「そこに天井裏があるからだよぉ」
全く答えになっていない。かといってこれ以上追及するのも怖く感じる。同級生で大事な友人だと思っているが、いまいち掴み所が無いため、気になることを聞いてもその謎の雰囲気に押されて何も言えなかったり、今のように答えられてしまうのだ。
「じゃあなんで俺の事を知ってるんだ?」
「シャミ子ちゃん家を週五で巡回してたからねぇ。あと御先像にちょっと盗聴機を仕掛けてたからねぇ」
カズマは「よしコイツはヤバイ。近寄らないようにしよ」と。勝手に盗聴機を仕掛けたり、勝手に天井裏に住むような人間はマトモではないと。
アクシズ教や紅魔族のように、頭のおかしい奴の気配を感じたカズマ、小倉しおんとは極力関わらないように極めた。
「それより千代田さんを闇落ちから治す方法あるよ。知りたい? ねぇ知りたい?」
「…………お願いします!」
「言いたいこと全て飲み込んだのね」
「おい優子、コイツとは関わらない方が良いと思うぞ。俺の長年の経験が言ってる、コイツはアクシズ教並にヤベェ奴だって」
色々と言いたいことはあるが、まずは桃を闇落ちから救うのが先だと、喉から出かけていた言葉を全て飲み込んだシャミ子。
カズマが忠告をしてくるが、興味本位で動くことはあっても、小倉しおんは決して悪意で動いたことはないのだ。シャミ子に蝙蝠の羽根を移植しようとしたり、電流をながそうとしてもだ。悪意は無いのだ、悪意は。ただ小倉しおんの中には倫理観が存在しないだけで。
「闇落ちから治す方法は簡単だよ。千代田さんが最近スゲー嫌だったことを洗いざらい吐けば治るよぉ~」
「そんな簡単に治るものなのか?」
「あくまで精神的に不安定になってるだけだからねぇ。心の闇を払えばパーッと綺麗になるものなんだよぉ」
思ったより簡単な方法で拍子抜けする三人であるが、小倉しおんの言葉を聞いた桃は表情を曇らせる。それどころか、すぐにでもその場から逃げられるように腰を浮かしている。
「それじゃあ千代田さん」
「嫌です」
「おい貴様逃げる気か!」
「最近嫌だった事は何一つ無いです」
「目を見て話しなさいよ!」
「ほれほれ~、早く言うのだ千代田桃よ。言えば楽になるぞ~」
「安心しろって! 精々その事をネタにして弱みに付け込んだりしないからさ!」
嫌だった事を話すのを拒否する桃。何もないと嘘を付くがバレバレだったようで、リリスとカズマからはその嫌だった事を弱みにすると、言葉の裏を読み取るまでもなく、表情から分かってしまう。
「リリスさん、カズマさん。私は今、力の制御が効きません。なので触れたらうっかり「何か」を握り潰すかもしれないですね」
「大人しくしてます」
「なぁ桃、魔力大丈夫か。俺の『ドレインタッチ』でもっと送ろうか?」
遠回しに「弱みとして握ったら潰す」と脅された2人は、すぐに諦めた。弱みを握るより先に命を握られると察した2人はすぐに撤退をした。また弱みを握れるようになったら、懲りずに握ろうとするだろうが。
「桃、私は桃がそのまま消えてしまうなんて嫌です!」
「私も! 貴方にはまだ借りがあるんだから、それを返し終わるまで消えるなんてマネ許さないわよ」
「はぁ…………昨日、シャミ子のお弁当を味わって食べれなかった。あとカズマさんの話で虎の赤ちゃんを撫でるのに集中出来なかった」
リコに色々と邪魔されてお弁当を味あえずに、カズマから聞いた安楽少女や初心者殺しの話を聞いた後だと、虎の赤ちゃんを純粋な心で楽しめなかったのだと。そう嫌だった事を吐いた桃は机にうつ伏せとなった。
「貴方、それで闇落ちしたのね」
「そうです。私は心が狭い人間です。このまま消えたい……」
「本当に消えそうな時に言う台詞じゃないだろ? 優子、今から弁当の用意とか出来るか? 俺の魔力はそこまで持ちそうにないから、なるべく早く頼む」
「今からお弁当と言われましても……あ」
身体が消えかけている桃に魔力を送るが、消滅までの時間を伸ばせても精々数分だろう。カズマの送る魔力よりも、桃が放出している魔力の方が大きいため供給が間に合っていないのだ。それが無くとも、カズマはあまり魔力が無いため、魔力切れも視野に入れる必要がある。
今からお弁当を作るにしても時間が無いと焦っていたが、一つだけ方法があった。実はあすらでお弁当の作り方を教わる前に、一人で挑戦していたのだ。
結果としては茶色ばかりのお弁当となり、色とりどりでもっと美味しそうなお弁当を作りたいと思い、リコの所へ行ったのが
「ちょっと待っててください!」
最初に作ったお弁当は捨てるのが勿体無いため、冷蔵庫で冷やしたのである。みんなに見せるには恥ずかしいお弁当であるが、桃を救うのはそれしか無いと急いで持ってくる。
「持ってきました! 桃、どうぞ。あーん」
力を制御出来ないだろうからと、桃にあーんしてお弁当を食べさせるシャミ子。それを二、三回繰り返した後に桃は一瞬にして普段着へと戻った。
「あ、戻った」
「良かったわ桃~」
「うんうん。今回は無事戻れたみたいだね」
「これも小倉のおか……今何て言った?」
身体が透けることもなく、消えている感覚もない。完全に闇落ちが止まったのだと、これからは闇落ちに悩まされる事は無いだろう。そう考えていた桃に、小倉しおんから爆弾が発射された。
「
この体制は続いていくのかと、桃は頭を抱えるのであった。
小倉さん初登場で筆が乗った。
小倉さん可愛いよ小倉さん。凄い知的だけどシャミ子より体力無くて、一度夢中になるとそんな体力無いのも忘れて、高い所から降りれなくなるのはまるで猫みたいで、ちょっと抜けてる所があるギャップが良いよね。完璧のように見えて意外にも倫理観が抜けているのも魅了の一つだよね。倫理観ガン無視で動くから予想外の行動をするけど、そんな予想の付かない行動も面白くて素敵だと思うよ。きっと小倉さんに目を付けられたら、知らない内に実験材料にされてそうだけど、それも良いよね。小倉さんは可愛いからね、それぐらい許容範囲だよ。それと一人だろうと実験を続ける行動力と継続力も素晴らしいよね。実験の結果を知るまでは全て過程だと思っているのか、シャミ子の魔力を活性化させる薬を作った時は一切の躊躇無く食べさせてたのも印象的だよね。自分が頑張って作ったモノを実験のために手放せるかって言ったら難しいからね、その勢いの良さも可愛いよね。その後一切高解像せずに次の実験に移ってるのも良いよね。私も小倉さんの実験に協力したいものだよ。シャミ子が何か言う前から魔族の存在を知っていたり、先読みするような行動をしてたりと、不思議な雰囲気を醸し出してる小倉さんだけど、一番の魅力と言えばやはりジト目一択だよね。あのジト目ら見たもの全てを魅了する魔性の目だよ、可愛らしいね。自分は恋愛に微塵も興味無くて、異性に好かれる要素も無いと思ってる小倉さんの助手になって、ふとした瞬間に押し倒して「えっーと何してるのかなぁ……?」って頬を赤くしながらあのジト目で見つめてほしいものだよ。
次回はカズマの記憶を見る回です。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
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佐藤カズマ
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吉田優子(シャミ子)
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千代田桃
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日夏樹ミカン
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マスター
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リコ
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リリス
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吉田良
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吉田清子
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佐田杏里
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小倉しおん
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犬のお姉さん
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犬