「う、うーん……」
「目が覚めたかい?」
杖を使ったカズマが見た光景は、知らない天井であった。カズマが居た世界のような中世ヨーロッパ風の建築物ではなく、木製の日本特有の天井であった。また、カズマはベッドで横になっており、誰かが介抱してくれたのだと思った。
本当に日本に戻ってこれたのだろうかと、まずは周りを確認する。もしかしたら欠陥魔道具で全く知らない場所にテレポートした可能性もあるからだ。
「あ、あぁ。だいじょ……」
「店の裏側で倒れていたからね。心配したよ」
バクが居た。
普通のバクとは違い、二足歩行で言葉を喋っている。今までの異世界ライフで空飛ぶキャベツや、大昔の転生者が泥酔した勢いで機動要塞を動かしたら止められなくなって歩く災害となったり、日本での常識が通用しない事や、理不尽な事は多くあった。
だがバクが喋るのは初めて見た。異世界でも見たことはないが、あのふざけた世界ならバクが喋るのは普通の事なのだろう。そうなると、ここは日本じゃなくてまだ異世界なのだとカズマは考えた。
「あ、目が覚めたんやな~」
「リコ君。料理の下拵えは終わったのかい?」
「バッチリやで~マスター」
リコくんと呼ばれる白い耳と尻尾を生やした少女は、カズマにさほど興味が無いのか一瞬だけ視線を向けると、流れるように今度はバクへと視線を移した。
「も、モンスター!?」
カズマはバクとリコを見て、モンスターだと勘違いした。正確には魔族ではあるが、カズマが勘違いするのは仕方がない。カズマの世界では巨大なカエルやドラゴン、スライムなど異世界らしい生物をモンスターと呼んでいる。
また、その中には少女の姿をしている植物型モンスターの安楽少女、様々な生物を吸収する人型のグロウキメラなど、人の形をしているモンスターも居るため、二人の姿を見てモンスターと思ったのである。
「ウチの事をモンスター呼ばわりなんて悲しいわ~」
「リコくんはモンスターではなくて魔族だよ。ちなみに僕も」
「ま、魔族? モンスターとは違うのか?」
モンスターと魔族は何が違うのか。カズマはベッドから立ち上がり話を聞いた。当然の事ながらいつでも攻撃が出来るよう、警戒しながらではあるが。
「光の一族に闇の一族かぁ」
自分が日本に居た頃には一度も聞いたことの無い言葉であった。バク曰く、この世界では光の一族である魔法少女と、闇の一族である魔族が血を血で洗う戦いをしているようで、勿論世間一般で平和と言われている日本も例外ではないようだ。
ただしこの多摩市は例外となっており、光と闇の戦いの中立地帯となっているようで、カズマはその街で倒れていて、そこをバクが見つけて看病してくれたと説明してくれた。
「そんなの聞いたことが無いな」
もしそんな話を知っているなら、日本に居た頃に「一族としての力を貰ったらやりたいこと」を厨二病のように考えていただろうが、今まで考えたことが無い。つまりはそういうことである。
「幸か不幸か一族に今まで関わりが無かったのかもしれないと思ったけど、僕もカズマ君が日本で住んでいた地域は聞いたこと無いな」
「色んな場所を渡り歩いてきたけど、ウチも聞いたことが無いで」
異世界にある嘘を言うとチンとなる魔道具があれば分かるのだろうが、少なくともカズマには目の前のバクが嘘を付いているようには見えなかった。
モンスターは言語を話せたとしても、基本的には人間に敵対的である。人間からモンスターになったため友好的な者や、人の死体を養分として吸い取るため友好的と見せかけてくるモンスター自体は居る。
しかし目の前のバクには後者のように見えない。少なくとも後者であれば、わざわざカズマをベッドで安静にさせたり、光や闇の一族の説明など、無駄に凝った回りくどい説明はしないだろう。
「じゃあ俺の居た日本とは別の世界なのか?」
「恐らくは。並行世界と言うやつだね」
並行世界。
もしあの時にこうしていれば、別の方法をしていればと所謂IFと呼ばれるモノを指す別称である。もしもの世界を考えればキリが無く、それは数えるなんて次元の話ではないだろう。
「その並行世界? の日本にカズマはんは居たんやったら、今は殆どお金持っていない宿無しってことやね」
「ウッ!」
「リコ君! 確かにそうなるが、もう少しオブラートに包んだらどうかね」
バクはカズマのフォロー回ろうとしているが、実際にリコの言葉通りである。転生前に持っていた小銭程度の日本円は今も持ってはいるが、ここは並行世界である。
硬貨の造りが多少なりとも異なって使えないかもしれない。下手したら偽物扱いされて逮捕されるだろう。仮に持っているお金が使えたとしても生活するにしては雀の涙程度である。どんなに切り詰めても3日と持たないだろう。
「はぁ、仕方ない。元の異世界へと戻るか。なぁ、俺が持ってた杖を知らないか? その杖を使ってこの世界に来たんだけど」
「杖? 少なくとも僕がカズマ君を見つけた時は見掛けてないな。カズマ君が持っていたのは何かが書かれた紙と、腰に差してる刀ぐらいだったよ」
バクもといマスターはベッド近くへと置いてあった、カズマの刀と紙を手渡す。店長からすれば刀は兎も角として、紙は何が書かれているか分からなかった。
冒涜的な絵が描かれていた訳でも、恐ろしく汚い字で書かれていたわけでもなく、読めなかったのである。暗号のように思えたが、異世界について知った今では、何かが書かれた異世界の言語なのだと理解した。
「はぁ!? ふざけんなよ、あのポンコツ魔道具が!」
「どうしたのかねカズマ君!?」
「そんな怒ったら血糖値が爆上がりするで~」
「俺、元の異世界に帰れなくなった……」
カズマは二人に説明書の内容を説明した。杖に魔力を込めれば日本にテレポート出来ること、注意書きとして杖を持ち込めないこと、杖が無いので異世界に帰れないことを。
「あああああどうすりゃあ良いんだ! 異世界と違ってモンスター倒して金稼ぎなんて出来ないし、そもそも戸籍自体ねぇし!」
今までのようにモンスター討伐で生計を立てることが出来ず、尚且つ戸籍も無いので就職も出来ない状態である。最も、仮に就職してもヒキニート体質の彼が長く仕事が出来るかは別の話ではあるが。
「…………カズマ君。帰る手段が見つかるまでの間、良ければ僕の店で働かないかい? 住み込みの三食賄い付きで」
「え?」
思わぬ方向からの救いの手。カズマからすれば明日食うものすら無い状況から、急に衣食住が補償された条件が出されるのは願ったり叶ったりである。
「けど、良いのか?」
「勿論だとも。こう見えても僕は喫茶店の店長をしていてね。今は身体を痛めていてリコ君一人で回してもらっているんだ。ただ、リコ君は接客がちょっと……」
「ウチはいつも通りに接客してるだけなんやけどな~」
「敬語を使うようにって毎回言っているだろう!」
バクもといマスターは自分と同じように、周りに振り回されるタイプなんだと知ったカズマは、店長に親近感を覚えた。
「じゃあ、これから宜しくな。えっと……」
「マスターと呼んでくれたまえ」
「リコでええよ~」
「宜しく。マスター、リコ」
こうして異世界で魔王を討伐した冒険者の喫茶店生活が幕を開けるのであった。
まちカド側で最初に出てくる原作キャラは、シャミ子や桃ではなくマスターとリコでした!
シャミ子は家族が居るのでカズマさん拾っても一緒に住まないでしょうし、桃は異世界うんぬんを疑って拾わないでしょうから。ミカンも桃と同じ理由。
なら誰が行けそう?となったらマスターとしかないです。マスターの元なら働き口もあって所持金の問題を解決出来る。そして尚且つ原作と絡めるので。
話の初期にカズマさんを一人暮らしさせたら年中引きこもって誰とも絡まなそうですし。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
-
佐藤カズマ
-
吉田優子(シャミ子)
-
千代田桃
-
日夏樹ミカン
-
マスター
-
リコ
-
リリス
-
吉田良
-
吉田清子
-
佐田杏里
-
小倉しおん
-
犬のお姉さん
-
犬