【完結】この素晴らしいまちカド世界に祝福を!   作:のろとり

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第二十二話 神々の奇跡!? アークプリーストの蘇生魔法!

「えっと……落ち着いたか?」

 

「ひぐっ、ぐすっ……ごめんなさい。少し取り乱してしまって」

 

 一通り泣いて落ち着いたようで、席に座りながらリコが変化させたタオルで目を拭くシャミ子。まだ朝食を食べていないだろうからと、マスターが用意してくれたサンドイッチを頬張る。

 

「つーか俺の顔を見て泣き出すなんて何があったんだ? 俺別に『スティール』で優子のパンツを盗ったりしてないよな?」

 

「盗ったことあるのかしら?」

 

「いやねぇよ、ねぇから弓を此方に向けるのは止めろ!」

 

 弓を向けて自身に撃とうとしてくるミカンに、手を挙げてしたことが無いと抗議するカズマ。あくまでシャミ子からは盗った事が無いだけで、異世界ではジョブが盗賊の冒険者や王族に仕える貴族、挙げ句の果てには仲間からもパンツを奪った経験はあったりする。

 

「昨日、お主はカズマの記憶に潜っていた筈だが……そこで何か見たのか?」

 

 いつの間にか依り代に魂を移していたリリスが会話に参加し、昨日の出来事を振り返る。リリス自身はカズマの記憶を見ていないため、記憶の中で何があったのかを知らないのだ。

 

「昨日は、カズマさんの記憶に潜ってこの世界に来た原因である杖を見てました。杖を見ればイメージ力が上がって、なんとかの杖でも変形出来るようになると思いましたので」

 

「俺がこの前頼んだやつか」

 

「はい。それで杖を確認した後は、カズマさんが異世界でしてきた冒険を見てました。その中で、雪山でカズマさんの顔と身体が二つに別れる記憶がありました」

 

「え"っ!? ゆ、幽霊!?」

 

「ミカン落ち着いて、呪いが出てる」

 

 人間は顔と身体が離れたら死亡する。これは全人類共通の認識であるが、目の前に座っているカズマはピンピンしており、机の下を覗くが透けること無く2本の脚が生えている。

 

 もしや生霊なのではないかと、怖がりなミカンはジリジリとカズマと距離を取ろうとする。そんな行動中にも、ミカンの呪いは発動する。

 

「何もしてないのに椅子が壊れたわ~」

 

「ごめんなさい、私の呪いのせいで」

 

「いや、構わないさ。それで優子君、続きを話せるかい?」

 

 椅子が一つ、脚が唐突に破裂したが特に驚くこと無く話を進めようとするマスター。古くなっていたから丁度買い換えの時期であったし、カズマに頼めば直るかもしれない。それよりも今はカズマの記憶の方が重要である。

 

「その後は目が覚めて、カズマさんの事が心配になって……」

 

「あすらまで来たってことか」

 

 そうして今に至る。過去にカズマが死んだことのあるような言い方であったが、目の前なカズマは生きている。身体が透けていることも、脚が無いこともなく、心臓も動いている。

 カズマの記憶を見てる途中で夢でも見たのだと、少し無理矢理過ぎる結論だが、誰もがそう思った。しかし、カズマ本人だけは違っていた。

 

「なぁ優子、その俺の顔と身体が別れさせた奴って、将軍みたいな格好してて刀を持ってなかったか?」

 

「はい、持ってました」

 

 何か心当たりがあったのか。それともシャミ子が見たのは夢ではなく、本当にカズマの記憶だったのか。シャミ子が見た通りの特徴を述べて合致がいったような反応をした。

 

「やっぱり冬将軍か! あのときは日本人転生者のせいで死んだな~」

 

『!?』

 

 あの時は死ぬほど痛かった、実際に死んだけど。と呟くカズマに、思わず全員驚いて距離をとる。死んだことのある事実もだが、それ以上に昔はヤンチャした思い出話程度の軽さで死んだと言われては誰もが驚くだろう。

 

「え、カズマ君。死んだことあるの?」

 

「怖いなぁ~、マスター清めの塩ってどこにあるん?」

 

「お主、余と同じように魂だけの存在なのか?」

 

「うわあああ! やっぱり!」

 

「ゆゆゆゆ、幽霊よ! お祓いしなくちゃ!」

 

「カズマさん、痛くないようにするのでゆっくり眠ってください」

 

 カズマに直接塩を撒こうとしたり、カズマを幽霊と思い込んで呪いが発現したり、幽霊となったカズマを鎮めようとしたりと、カオスな状況となった。

 

「待て待て待て待て! 説明してやるから落ち着けって!」

 

 そういえばアクアの蘇生魔法について話したことが無かったと考えながら、まずは何処から話すべきか悩む。冬将軍や蘇生魔法についても説明しておきたいが、まずはシャミ子が疑問に思っていた「日本を知っている理由」からにしよう。そうすればアクアについても説明出来るのだから。

 

「えっとだな……優子がさっき言ってた俺を殺した奴、冬将軍の説明をする前に最初に俺が死んだ所から説明するぞ」

 

「俺はまず、この世界とは別の日本で死んで女神に異世界に居る魔王を倒すよう頼まれたんだ」

 

 突拍子の無い話に思わず頭を抱える全員。まるで実際に体験してきたほど具体的な異世界の話、自身が知っている魔法とは別物と言って言い程のスキルの数々、シャミ子の証言。

 

 ここまで揃えば異世界人が嘘とは思わない。思わないが、女神に異世界に送られて魔王を倒すように頼まれた? 冗談も休み休みに言ってほしいものだ。真剣な表情で言っており、カズマはそんなつまらない嘘を吐く性格では無いため、本当の事なのだろうが。

 

「それってカズマさんが色んなスキルを使えたり、運が良かったり、悪知恵を使って色んな事考えてたり、何か凄い力を持っていたから?」

 

「運が高いだけでどうやってモンスターと渡り合えって言うんだよ! 悪知恵はゲームで、運は産まれた時から持ってるもので、俺にそんな凄い力はねぇよ」

 

 カズマの行動を見るに、その二つも充分チート級の効果があるように見えるが、それはあくまで使い手次第なのだろう。

 悪知恵は兎も角として、運はあくまで高いだけである。もしその運を自由自在に発動できて、尚且つなんでも出来るのなら、少なくとも日本で死ぬ不運な出来事は起きなかっただろう。

 

「あと異世界に送られるのは若く死んだヤツ限定で、モンスターに対抗出来るようチート特典を一つ持っていってな」

 

「チートですか!? カズマさんはどんな特典を選んだんですか!? なんでも斬れる剣ですか、それとも最強の魔法ですか!」

 

 興奮しながらどんなチートを貰ったのか聞くシャミ子であったが、少なくとも今あげた二つは無いだろう。

 カズマの装備は殆ど出番の無いちゅんちゅん丸や、弓矢と言った一般冒険者らしいモノであり、初級魔法しか満足に使えないカズマが最強の魔法を持っていても、魔力が足りなくて宝の持ち腐れだろう。

 

「女神だ。俺を転生させようとした女神の態度にムカついて、嫌がらせに女神アクアをチートとして選んだ」

 

 カズマの話から察するに女神の性格は相当に悪かったのだろうが、わざわざチートを貰える権利を嫌がらせに使う辺り、この男とてそうとうに性格が悪いと言える。

 

「ってあら? アクアさんって、カズマさんがよく話すパーティーメンバーと同じ名前ね」

 

「そら同一人物だからな」

 

 まさかの同一人物で全員が驚く。蘇生魔法を使える女神を以てしても、生きるのが厳しい異世界に対しても驚いたが、それ以上に女神がカズマに面倒事を持ってきてたのかと。そちらの考えの方が勝っていた。

 

「あとアクアはアクシズ教の御神体だ」

 

「あぁ……」

 

 他のみんなはアクシズ教とはと、頭にハテナを浮かべていたがシャミ子だけは理解した。あの頭のおかしい集団の元締めはその女神なのかと。

 今までアクアがしてきた言動をカズマの話を記憶越しで知っているためか、不思議と簡単に納得した。

 

「そうして俺とアクアは異世界に転生して、めぐみんやダクネスと言った仲間を集めて冒険して……ある日、雪精の討伐に出掛けたんだ」

 

「雪精? 僕は聞いたことがないけど、もしかして精霊の類いかな」

 

「あぁ。なんでも一匹倒すと冬が半日早くなるって言われててな。冬は強いモンスターが多いから、倒せば倒すほど春が早くなって弱めのモンスターが増えるんだ」

 

 冬には強力なモンスターが多い。ジャイアントトードのような弱いモンスターは冬眠か巣に籠っているかの二択であり、そんな冬に冒険するのはチート持ちの日本人転生者だけである。

 

 しかしそんな冬でも弱いモンスターは居る。今カズマが話した雪精である。雪精は手のひらサイズで綿のような見た目をであり、カズマが刀を振るっただけ簡単に倒せる程に弱い。そして報酬も美味しいクエストとなっている。

 

 これを聞いて「なら弱い雪精を狩って金を貯めるのは?」と思うかもしれないが、美味しい話には裏がある。特に異世界ともなれば、簡単に稼げる=死の可能性が高いクエストである。

 

「俺は知らなかったんだが、雪精を沢山倒すとその親玉である冬将軍ってのが現れるんだ」

 

「私が見た奴ですね」

 

「冬将軍は出会った奴の思念を読み取って実体化した強力な精霊なんだ」

 

「迷惑な話やな~」

 

 どんな人物が何を事を考えて、冬将軍を誕生したのかは分からないが、迷惑な話である。魔王軍が人類を脅威にさらしているのに、さらには冬将軍である。そいつには魔王軍と必死に戦っている、チート転生者達の爪の垢を煎じて飲ませたいものだ。

 

「そんなのが産まれたのは「冬と言えば冬将軍」ってイメージした、日本人転生者が原因だけどな」

 

『…………』

 

 まさかのチート転生者が原因であった。全員、思わず口を閉ざしてカズマから目を逸らす。転生者含めて、異世界にマトモな生物は居ないのだろうか。

 

「で、俺はそいつに殺されたんだ。本来なら蘇生は一人一回までで、日本から異世界に転生する際にその一回を使った俺は、消滅する筈だったんだが……アクアが蘇生魔法を使ってくれてな。こうして生きてるって訳さ」

 

 カズマが口を閉じて全員に視線を向ける。

 思った以上に残酷で、過酷で、ふざけた世界の冒険譚である。もしアクアと一緒に居たら「蘇生があるから無茶出来る」と考えるだろうか。

 

 答えは否、怖いものは怖い。特に死の恐怖と痛みはどんなに頑張っても乗り越える事は出来ないだろう。それを乗り越えて魔王退治なんて、仮にアクア以外にもう一つ、チートを持っていようとごめんである。

 

「異世界で最初に死んだのがその時で、木から落ちて死んだり、ヒュドラに食われて死んだり、魔王と相討ちになって死んだり……」

 

「何回死んでるんですか!?」

 

 死の恐怖と痛みを乗り越えているかは兎も角として、カズマは思った以上に死んでいたようだ。今度からちょっとカズマに優しくしよう。話を聞いたものは心の中でそう誓った。




 次回は短編集その3です。その次にママァの子どもを生成して4巻の範囲は終わりますね。

【第二回】この作品で好きなキャラ投票!

  • 佐藤カズマ
  • 吉田優子(シャミ子)
  • 千代田桃
  • 日夏樹ミカン
  • マスター
  • リコ
  • リリス
  • 吉田良
  • 吉田清子
  • 佐田杏里
  • 小倉しおん
  • 犬のお姉さん
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