「カズマさーん!」
「優子か。どうした?」
「どうしたもこうしたも無いですよ! カズマさんに話したいことがあるからあすらに行ったら居ないじゃないですか」
カズマに自身の気持ちを伝えるために、あすらへと向かったシャミ子だが、そこにカズマの姿は無かった。既に帰ったのかと動揺したが、丁度あすらに居たマスターが「河川敷の方に行った」と教えてもらい、今に至る。
「アクアに渡すお土産に、川の水でも汲もうと思ってな」
「そんなことされたらアクアさん泣くと思いますが!?」
カズマなりの冗談……とはちょっと言い切れ無いが、きっとこの街を見て回りたいんだろう。アクアを雑に扱っているからと言っても、水の女神だから川の水渡せば喜ぶだろなんて、そんなことは考えていないだろうと、シャミ子は思い込むことにした。
「それはそうと、俺を探してた理由って?」
「あっ、そうでした!」
シャミ子は大きく音を立てる心臓に手を当てて、緊張して固まっている身体を解すように、大きく深呼吸をする。
「カズマさん……私は、カズマさんがこの世界に残ってほしいと思っています」
「これは私の単なるワガママなのは、自分でも分かってるんです。分かっていますが、カズマさんと離れるのは寂しいんです!」
「アクアさん達が居る世界と、私達が居る世界の片方しか選べないのは分かってるんです! でも! 私達の……いえ、私の側に居てほしいんです!」
帰れる準備が整ってからすぐ、シャミ子達に「帰る」と連絡した行動から考えるに、カズマが元の世界から帰る決意は変わらないのだろう。
それでもこの気持ちは伝えたかった。例えワガママでも、無理な事でも、カズマを困らせてしまう事でも、伝えなければ後悔していた。後悔を引き摺ったままでは、カズマを笑顔で見送れないだろうと。
「カズマさん。駄目、ですか?」
「…………優子、一つだけ言わせてさせてくれ」
「はい、なんですか?」
目を強く瞑り、カズマの返事を待つ。一秒か、二秒か。実際の時間ではその程度であるが、シャミ子にとっては何時間にも感じる沈黙であった。
その沈黙が終わり、カズマはシャミ子に一つ言いたい事があると話した。いったい何だろうと、シャミ子の緊張はより高まる。
「俺はロリッ子は恋愛対象外なんだ」
「へ?」
シャミ子は思わず、高まっていた緊張すらも忘れて、何て言ったと聞き返すような返事をした。いや、実際に聞き間違えと思ったのだろう。
勇気を振り絞って出した気持ちの答えが、ロリッ子は恋愛対象外? あまりにも酷い聞き間違えだが、この瞬間だけ自分の耳は悪くなったのだろう、そうなのだろうと怒りを沈めた。実際は気持ちが身体に追い付いておらず、フーフーと威嚇する猫のような息遣いをしているが。
「めぐみんのヤツもロリッ子だけど、あいつはまぁ特別だな。あいつはああ見えても、魔性の女だし」
「カズマさん……!」
聞き間違えでは無かった。シャミ子は先程まで抱えていた、不安や緊張の感情を全て怒りへと変えた。ギリギリ……とはシャミ子の握力では鳴らないが、強く拳を握る。
「どうした?」
「全然違います! さっきの愛の告白としての意味ではなくて、兄のような存在としてです!」
「あ"あ"!? てめぇ、また俺の純情を弄んだな!」
「弄んで無いですよ! カズマさんが勝手に勘違いしただけでしょう!」
本当にカズマが勘違いしただけなのだが、紛らわしい言葉を発したシャミ子もシャミ子だったりはする。しかし二人にとってそんな事は関係ない。子どもの喧嘩のように、はたまた兄弟喧嘩をするかのように、目の前の相手に怒りをぶつけることだけしか考えていないのだから。
「はぁ? ふざけんなよお前!
「ムキー! そんなに言うのなら勝負です! 今日の私にはなんとかの杖がありますからね、そう簡単には負けませんよ!」
「上等だ! そっちがその気なら俺も手加減はしないぞ。優子がヒーヒー泣きわめくまで、魔力を『ドレインタッチ』で吸い取ってやるよ!」
シャミ子はなんとかの杖を取り出し、カズマはドレインタッチと言いながら、なんとか杖を奪うためスティールを発動させようとする、
「カズマさん、覚悟ー!」
「『スティ━━━……いや待て優子」
そうして二人が対決を始めようとした時、カズマがそれを止める。先程まで怒っていた筈だが、今はそんな気配を感じられず、多くの戦いで積んできた冒険者としての勘と察知能力を最大限に高め、周りの警戒をしていた。
「なんですか、怖じ気づいたんですか?」
「そうじゃねぇよ。俺の敵感知に反応があったんだ、さっきの優子のも含めて二つだ」
その様子に、シャミ子は自分の不戦勝だとクククと能天気に笑うが、今の状況はそれどころではない。焦る気持ちを抑えながらカズマは冷静にシャミ子に状況を伝える。
「私も含めてってことは、もう一人誰か居るんですか?」
「あぁ。しかも凄いスピードで迫ってくるぞ」
潜伏で隠れようと考えたが、隠れるよりこの速さでは相手が着く方が速いだろう。それに潜伏は、あくまで気配を消すスキルである。姿は消せないため何処かに隠れる必要はあるが、ここは河川敷だ。隠れられるような場所柄など無い。
「な、なんですかアレは!?」
「あれは……ロボット?」
そうこうしている間に、二人の目の前に敵意を見せてきた相手が空から現れた。その姿は普通の女性に見えるが、脚が人のそれとは違った。
身体の内側はどうなっているのか、本来なら脚がある部分はロケットとなっており、そこからエンジンを放出する事により、空中を飛ぶのを可能としていた。
『ピピピ』
「優子構えとけ」
「は、はい!」
『魔力探知完了。二名ノ微量ナ魔力所持者発見、ご主人ノ命ニヨリ排除致しマス。』
ロボットとエンジンを停め、そこから人のモノと同じ脚を生やした。もし姿が今の状態で、機械音声で喋らなければ、街中であっても一般女性としてスルーしていただろう。
ロボットは腕を体内へと仕舞い、代わりに刀を生やしてカズマへと斬りかかる。カズマは視界に捉えてかわそうとして反射神経が追い付かなかったが、運良く自動回避が発動してかわすのに成功する。
「うおアブねぇ! 優子、アイツの気を引けるか?」
「別に倒しても構わないんでしょう?」
「ちょっおまそれ死亡フラグ」
「なんとかの杖! 『ミカンさんの武器コピーモード』ッ!」
「ああもう! 『スティール』ッ!」
気を引くように頼まれたシャミ子は、なんとかの杖をミカンの弓矢に変形させて攻撃する。弓矢が棒状なのか疑問は残るが、杖の変形範囲は
死亡フラグを立てたシャミ子に一言申したいカズマであったが、シャミ子が相手の気を引いている今がチャンスだと、スティールを発動させる。
今ロボットが所持している刀を奪い取れれば有利になるためであり、刀以外の武器も仕舞っている可能性があるため、それを奪えたら……と言う考えである。
「ちぃ、外れか!」
しかしスティールで取れたのは、ボロボロな手帳であった。ロボットに殺された人物の手帳なのか、ロボットの産みの親が書いた手帳なのか、ロボットの弱点が載っているかもしれないが、戦闘中に読む暇は無い。
カズマは手帳を乱暴にポケットへと仕舞う。スティールが失敗した今、どうするか頭をフル回転させて考える。
スティールが失敗する主な原因はレベル差がある場合だ。カズマは魔王軍幹部のベルディアにスティールを発動させたが、失敗して何も奪えなかった時がある。
弱った時は成功したため、相手が弱体化していれば成功する確率は上がるが、今の状況でそれを望むのは難しいだろう。何故なら……
『損傷率3%、魔力所持者ヘ攻撃ヲ開始シマス。』
シャミ子の攻撃が終わったのに、ロボットが殆どダメージを受けていないからである。これはシャミ子が弱いのが理由ではない。
なんとかの杖の効果は絶大だ。魔力さえあればどんな敵も倒せるズルい武器にも変形出来、先程の弓矢も大まかな性能はコピーしているのだ。
ただ、二つだけ誤算があったなら、シャミ子がズルい武器を生み出せるほど魔力が無い点と、ロボットが強すぎる点だろう。
「うぎゃー! カズマさんカズマさんカズマさん! 何か、何か無いですか!? 姑息な作戦やスキルでもなんでも良いですからー!」
「あるならとっくに使ってる!」
『魔力所持者ヘ攻撃ヲ開始シマス。』
「優子!」
「カズマさ」
なんとかの杖を使った攻撃を警戒したのか、シャミ子へと迫るロボット。カズマはシャミ子を押して攻撃の軌道から逸らした。その軌道に、自分が残る形となって。
珍しく運が悪かったのか、カズマの身体はシャミ子を押した状態から動かなかった。つまりは、
そのままカズマは刀で真っ二つに斬られ、
「ふぅ、なんとか間に合ったね」
る事無く、カズマとロボットの間に入るようにして、変身した桃が刀を白羽取りで受け止めていた。
「も、桃ー!」
「助けに来たよシャミ子、カズマさん」
批判多めになりそうだなぁ……と呟いてたのが、第三章はシリアスちょっとで戦闘シーンが多いからなんですよね。
六話の人気うんぬん言っていたのは、戦闘シーンに関する反応が気になったので。先に言うと、ここから先はギャグはあっても日常シーンは修了しました。
次回は桃の戦闘からですね。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
-
佐藤カズマ
-
吉田優子(シャミ子)
-
千代田桃
-
日夏樹ミカン
-
マスター
-
リコ
-
リリス
-
吉田良
-
吉田清子
-
佐田杏里
-
小倉しおん
-
犬のお姉さん
-
犬