「ねぇ桃」
「なに? ミカン」
ロボッターの元へと向かう道中、ミカンは頭の片隅にずっと気になっていた疑問を桃にぶつける。
「シャミ子を置いてきて良かったの? 納得してないようだったけど」
「シャミ子は足手まといだから」
桃の事を知らない人物が言葉だけを聞くと、置いてきた事に何の感情も抱いておらず、合理的な判断をした冷たい性格に思われるが、それなりに長い付き合いのあるミカンには、桃の考えは筒抜けである。
「素直じゃないわね。正直に戦いに巻き込みたくないって言いなさいよ」
「別にそんなんじゃ」
「はいはい。でもカズマさんもあすらに残すのには驚いたわ」
表には出さないが、ミカンは桃が建前として言った「シャミ子が足手まとい」なのは一利あると思っている。命のやり取りをする以上、戦闘や死の恐怖に慣れていないモノが居ては、そちらに気を取られてしまうからだ。
しかし、カズマなら異世界で戦闘に慣れている。死の恐怖は本人自身が何度も死んでいるため、死に対して恐怖を抱いてるかはミカンには分からないが、少なくとも誤って利敵行為するような人物ではないだろう。
カズマ本人は魔力を消耗していて、コソコソする事しか出来ないと言っていたが、相手に潜伏を使って近付いたり、ミカンと一緒に狙撃したりと、前衛には立てなくともサポートとしては充分役に立つだろう。
「カズマさんはこの街の問題とは関係ないからね」
「確かにそうだけど、今回は強敵よ? 少しでも人手があった方が」
「カズマさんには帰りを待ってる仲間が居るからね。死ぬようなマネはしてほしくないんだよ」
桃はミカンの顔を見ず、それが当然だと言う態度をする。桃は桜が失踪して以来、シャミ子と関わりを持つまでの10年間、自身の帰りを待ってくれる人間は誰も居なかった。
桃は一人で暮らす家の広さを知っている、帰りを待ってくれる人物が居ない寂しさを知っている、桜がいつ帰ってきてくれるのか分からない不安を知っている、シャミ子と関わってからの暖かさを知っている。
カズマをあすらへと残しておけば戦いに巻き込まれないだろうし、面倒事が嫌だと散々言っていた。今頃はマナタイト擬きを使用して、無事異世界へと帰っているだろう。
「はぁ……そういうことね。相変わらず不器用ね」
「私は不器用じゃないよ。現に『フレッシュピーチハートシャワー』を寸止めさせられるよ」
「そういう意味じゃないわよ。っと、そろそろわよね?」
桃の天然な台詞を軽く流し、ロボッターが見えてきた頃には脚を止める。話には聞いていたが、やはりデカい。下手に近付けば踏み潰されるだろう。
「アレカ!」
「話には聞いとったけど、大きいなぁ~」
「どんな攻撃をしてくるか分からないから、注意して!」
「桃、私は遠くから狙撃するわ! ウガルルと一緒に前衛を頼めるかしら! それとリコさんちょっと……」
「なんや~」
桃とウガルルがロボッターへと向かう中、ミカンはリコをその場に止めてある作戦を伝える。これは戦術とも言えないような、即興で思い付いた作戦だ。
効果があるか分からないが、やらずに全滅よりも、やるだけやった方が何か突破口が見つかるかも知れないと言う考えの元である。
『ピピピ、強大ナ魔力所持者
「来るよ!」
そうしてミカンとリコが話している間に、桃とウガルルはロボッターの間合いへと入った。魔力を感知する範囲が狭いのか、ロボッターはミカンとリコの存在を認知していなかった。
ロボッターは自身の一番近くに居たウガルルへと、拳を放つ。ただの拳ではあるが、全長五メートルのロボットから放たれているのだ、カズマのように一般的な肉体強度であれば怪我程度では済まないだろう。
だがウガルルは人ではない、メソポタミアに伝わる怪物である。ウガルルは拳を爪で受け止める。しかしあすらの時のように爪痕を付けられず、力が対抗してその場で身体が止まる。
「アイツ、オレの爪で傷付かなイ!」
「はぁ!」
ウガルルがロボットの攻撃を押さえている内にと、桃はロボットの胴体へとドロップキックを決める。巨体に比例してかスピードは遅く、防御が間に合わなくロボットは地面に背を着けて倒れる。
『損傷率0.1%、戦闘ヲ続行シマス』
「やっぱり強いね」
カウンターのような形で攻撃したが、殆どダメージは入っていないようだ。単純計算であれば、今と同じ攻撃を千回当てれば倒れるが、それまで体力が持たないだろうし、千回も同じ行動させてくれるほど、相手も甘くないだろう。
「あまり効果が無いとなると……狙うは一点集中! ウガルル、アレの首元を狙うよ!」
「今度こそオレの爪で倒ス!」
このままだとジリ貧であると、桃は一点のみを狙って部位破壊する作戦を立てた。ウガルルもそれに続くように、ロボットの首元を狙い始めた。
「今の話聞こえてたで~ミカンはん、桃はんは首元に一点集中するみたいやで」
そしてその会話は、獣耳が生えているからか、人間以上の聴覚を持つリコにも聞こえていた。リコはその会話の内容をミカンにも伝えて情報を共有する。
「つまりは私もそこを狙えば良いわけね。それとリコさん、さっきの件頼めるかしら?」
「ウチに任しとき~」
その言葉と共に、リコは桃達が戦っている前線へと上がっていく。ミカンは弓矢を構え、いつ撃てるチャンスが来ても良いようにと、精神を統一させる。
『装備変更、刀デノ攻撃ニ変更致シマス。』
「そんな棒よリ、オレの爪の方が硬イ!」
一方、ロボッターは右腕を身体の中へと仕舞い、刀を取り出していた。一般的な大きさであるため、巨体なロボッターには持ちにくそうに思えるが、器用に振り回してウガルルの攻撃を受け止める。
「そのまま押さえとき~ウチの変化大サービスや~」
『多数ノ微力ナ魔力所持者確認。脅威デナイト判断致シマス。』
その間に、リコはロボッターの周りに大量の葉っぱをばら蒔く。そしてそれがばらまき終わると、葉っぱが全て弓矢を構えているミカンへと変化して、弓矢を放つ。
しかし本物のミカンのような威力は出せないのか、機械の身体に弾かれる。ロボッターからも脅威で無いと判断され、無視を受ける。
「それが命取りよッ!」
しかしそれは作戦の内であった。ミカンは遠くから、ロボッターの首元へと狙いを定めて弓矢を撃つ。それは外すこと無くロボッターへと命中し、ロボッターは体勢を崩す。
体勢を崩したことにより、刀を落としてウガルルの攻撃を喰らう。引っ掻き傷がロボッターへと付いたが、擦り傷程度のため、あまりダメージにはなっていないだろう。
『謎ノ攻撃、対象ヲ捜索中……不明、私ノ範囲外デス。』
「ミカンはんが言ってた通りやったな~」
ロボッターは弓矢を撃ってきた相手を探すが、魔力の気配を感じずミカンへ攻撃をする気配は無かった。その間も、ミカンはひたすらに攻撃を続ける。
「リコさん、それって……いや、今は此方ですね」
桃はリコの言っていた言葉が気になるが、聞いてものらりくらりとかわされるだろうし、今は戦闘中だと後回しにする。
ミカンはロボッターの話を聞いてから、ある引っ掛かりを覚えていたのだ。どうしてカズマの不意打ちが効いたのかと。
魔力を感じ取れるのなら、不意打ちを喰らわないだろうと。何か魔力を感じる条件があるのかと……そう考え、思い付いたのは、魔力を感じ取れる範囲がもの凄く狭い可能性だ。
これならカズマが後ろに居て気付かなかったのも納得が行く。ミカンがその結論に至る頃には、ロボッターは目の前であった。
結果、ロボッターに近付いた桃とウガルルは魔力を所持していると感知され、後ろに居たミカンとリコは感知されなかった。
遠くにいれば感知されないと理解したミカンは、リコに変化を使って相手の手札確認、及び魔力感知の確認をお願いしたのだ。そして今、リコが相手を翻弄して、ミカンが安全圏から弓矢を放つ図が完成したのである。
『損傷率1%デス。魔力感知外。攻撃場所ヲ割リ出シ中……。』
だがそう上手くはいかないのが現実だ。ロボッターは攻撃が来た場所から、ミカンの居る場所を割り出し始めた。こうなれば魔力の感知なぞ関係ない、時間の問題となるだろう。
「ジリ貧ね」
ミカン達は未だ無傷ではあるが、戦況は不利である。ウガルルが攻撃を受け止めて、桃とリコが一点集中で攻撃、ミカンが援護射撃と言った図になっているが、これはジリ貧である。
ウガルルがやられたら守る人物は居なくなり、桃かリコがやられたら攻撃力が足りなくなり、ミカンがやられたらサポートが居なくなる。体力と魔力と言う制限時間がある中、ロボッターをどう倒せば良いのか。ミカンは援護射撃をしながら、ひたすらに頭を回転させるのであった。
ミカンさんが主役みたいな回でしたね。カズマさんが前に行ってた「手札を増やす」を意識したミカンさん書けたらなぁ~と思って、司令塔になってもらいました。難しいな……
今回でカズマさんと合流させようと思いましたが、ここで合流させたら、まちカド組が噛ませや踏み台に見えるなぁと思って止めました。
次回はあすらを出たカズマさんのターンです。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
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佐藤カズマ
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吉田優子(シャミ子)
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千代田桃
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日夏樹ミカン
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マスター
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リコ
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リリス
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吉田良
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吉田清子
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佐田杏里
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小倉しおん
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犬のお姉さん
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犬