「準備出来たで~」
桃はウガルルを抱えるような形で、巨大なパチンコに寄りかかる。リコとミカンは寄りかかっている二人を引っ張り標的を合わせる。
「桃、ウガルル、頼んだわよ!」
「オレに任せロ!」
「いつでも行けるよ!」
「よし……行け!」
カズマの掛け声と共に、桃とウガルルが発射される。その速さはまるで銃弾のそれである。しかしこの程度では終わらない。桃はウガルルをロボッターの胸部分へと投げる。
「ウガルルッ!」
さらに加速を付けたウガルルは爪を立てる。狙うは一番傷が付いており、貫けそうな胸部分である。しかしウガルルは一瞬、本当に貫けるか心配になった。メソポタミアの怪物と言えど、精神年齢は赤ん坊のような存在である。不安になるのも仕方がないと言えるだろう。
「貫きなさい、ウガルル!」
そんな不安を抱えるウガルルを応援するかのように、主人であるミカンがウガルルを勇気づける。ウガルルはミカンの使い魔である。主人の願いを、主人の住む街を守れずして何が使い魔だ。
「ミカンノ、ボスの街はオレが守ル!」
『ピピピ、魔力所持者発見』
ロボッターが飛んでくるウガルルを感知するが、既にウガルルはロボッターの胸を貫いていた。ウガルルは胸部分の機械をまるごと爪に食い込ませて抉り取っていた。
『損傷率57%、胸部破損。体内ノ心臓部分、時空転送装置破損致シマシタ。胸部破損ニヨリ四次元ポケ〇ト内ノ、数多ノ武器、ゴ主人秘蔵ノアダルト本、漫画、ゲーム機ガ紛失致シマシタ。心臓部分破損ニヨリ、予備エネルギーニ移行致シマス。』
ウガルルが貫いた部分がロボッターの心臓部分だったようだが、予備のエネルギーを使用して未だに動くロボッターが停まる気配は無い。
心臓部分をウガルルが貫いたのは嬉しい誤算ではありつつも、まだ動くのは想定内である。リコは変化能力を使い、葉っぱをペイント弾にして桃に向けて投げる。
「ありがとうございま、す!」
『二名ノ魔力所持者発見。排除致シマス。』
ウガルルを投げたあと、ロボッターの魔力感知を作動させるためにロボッターの懐へと入り込んでいた桃。リコが投げ渡してきたペイント弾が潰れないよう、優しく掴んで空へと跳ぶ。
桃と変化したペイント弾を二人の魔力所持者と勘違いしたロボッターは、それが罠だと知らずに脚を変形させて、空を飛ぶ。
「そこっ!」
桃は空を飛んできたロボッターへ向けて、ペイント弾を投げる。傷がつくような威力では無いが、目的はそこではない。ペイントを……正確には、
『魔力所持者ガ分裂。身体ニ張リ付イテイル、魔力所持者を排除致シマス。』
ロボッターは自身の身体に付いた
「カズマさん!」
「黒より黒く闇より暗き漆黒に、我が深紅の混淆を望みたもう」
桃の合図と共に、カズマは爆裂魔法の呪文を唱え始める。カズマの手の間に、炎の塊が丸く形を作っていく。端から見れば綺麗な炎であるが、少しでも気が抜ければ近くのリコとミカンを巻き込んで爆発するような、危険なモノである。
「覚醒のとき来たれり。無謬の境界に落ちし理。無行の歪みとなりて現出せよ!」
カズマは呪文を続ける。それは異世界ではネタ魔法と呼ばれしモノであった。どんな天才でも使えば魔力が切れて動けなくなり、地形を変えてパーティーメンバーも巻き込む無駄に高威力な魔法である。
「踊れ踊れ踊れ、我が力の奔流に望むは崩壊なり」
ある異世界には、爆裂魔法しか使わず、爆裂魔法以外を覚える気がない頭のおかしい爆裂魔が居た。爆裂魔はネタ魔法を使う度に周りから距離を取られ、パーティーを組んでくれるような人物は居なくなっていた……ある少年を除いて。
「並ぶ者なき崩壊なり。万象等しく灰塵に帰し、 深淵より来たれ!」
その爆裂魔と一緒にパーティーを組んだ少年は、最弱の冒険者であった。そんな少年も最初はネタ魔法しか使えない魔法使いを嫌がっていたが、いつしか爆裂魔と過ごす日々を楽しく感じるようになり、爆裂魔法を毎日のように見るようになった。
「これが人類最大の威力の攻撃手段、 これこそが究極の攻撃魔法」
毎日のように見ていた少年は、その日の爆裂魔法の調子が分かるようになった。少年は、爆裂魔法を見る内に詠唱を、仕草を暗記していた。そして少年は溜まりに溜まったスキルポイントで、爆裂魔が使用するネタ魔法、爆裂魔法を覚えた。
「『エクスプロージョン』ッ!!」
その少年の名は佐藤カズマ。日本からの転生者にして、最弱の冒険者であり……そして、なんやかんやで人を助けるお人好しで、ネタ魔法と呼ばれし爆裂魔法で、魔王を葬った異世界の勇者である。
「きゃっ!」
ロボッターが爆裂魔法で葬り去られると共に、遠くに居たミカンの元まで爆風で押し寄せてきて、吹き飛ばされる。
受け身を取りつつ、数メートル吹き飛ばされた辺りで身体を起こす。話には聞いていたが、それ以上の威力であった。空に向けて撃ったからこそ被害は無かったが、もしこれを河川敷を巻き込むような形で撃っていたら、どうなっていただろうかと、顔が青ざめる。
「ミカン、オレやったゾ!」
「凄いわねウガルル」
ウガルルが爪に突き刺さった、ロボッターの胸を掲げながらミカンの元へと走ってくる。ミカンは、ウガルルの頭を撫でて子どもの話を聞く母親のような顔をする。
「けほっ、けほっ……」
「桃、傷だらけじゃない!」
姿を表した桃の元へと駆けていき、ミカンは桃の容体を心配する。重症と言う訳ではないが、身体中擦り傷だからである。いくら魔法少女の身体が魔力で構成されていると言っても、心配なモノは心配なのである。
「これは爆裂魔法の爆風で吹き飛ばされただけ。それより、カズマさんとリコさんは?」
「ここやで~」
桃の声と共に、カズマを背負って表れるリコ。背負われているカズマは爆裂魔法を撃った影響で動けなくなり、受け身の取れないまま爆風で吹き飛ばされて、頭を打ったようで気絶している。
「アレを倒し終わった事やし、ウチはマスターの元へ帰ってるで~」
「ミカン、早くボスの所に行こウ!」
「そうね」
一刻も早くマスターに元気な姿を見せたいのか、カズマを背負いつつ一足先に帰るリコ。そんなリコに続くように、ウガルルもあすらへと向かう。
「…………ねぇ、ミカン」
「なにかしら?」
「私、この街を守れて良かった」
「私もよ」
姉である桜が守ってきた街を、自分の……否、みんなで力を合わせて守れて良かったと、桃は誰に向けるわけでもなく、自然と微笑むのであった。
長かった戦闘ですが、今回で終わりです。今回で終わりです!
ちなみにですが、リコの変化能力で相手を誘導する作戦思い付いたとき「私天才じゃーん!」と思ったけど、ロボッターの魔力感知能力弱すぎて「空中に投げても反応しないやん」と悩んで、ペイント弾にしました。
マナタイト擬きは今回で使ったので、杖を使って帰れなくなりましたが……カズマさん、どうするんでしょうね。
次回は気絶から目を覚ましたカズマさんのシーンからですね。
【第二回】この作品で好きなキャラ投票!
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佐藤カズマ
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吉田優子(シャミ子)
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千代田桃
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日夏樹ミカン
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マスター
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リコ
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リリス
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吉田良
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吉田清子
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佐田杏里
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小倉しおん
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犬のお姉さん
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犬