ガンプラが出てない?知らんなぁ…
箱は出てるから(なお、何のキットかは…)
「はぁ…」
「有咲ちゃん?どうしたの?」
「羽沢さん…生徒会長ってやっぱ大変だなって…」
「市ヶ谷さん…。でも、いきなりどうしたんですか…?」
「燐子先輩が会長だった時も大変そうだったのは分かりましたけど、奥沢さんを見てると…」
「美咲さんはミッシェルもやってますから猶更大変だと思いますよ!!パレオには到底真似出来ません!!」
「それがミサキさんのブシドー精神ですよ!!」
「きゃー!!イヴちゃーん!!」
「それでは…皆さん!!本編へ参りましょう!!」
「って言っても、私以外みんなの出番無いけどな…」
有咲達と別れてから自宅に戻らずに大学へとやってきた紗夜。
彼女は教室に入ると有咲から貰ったノートを広げて授業を受けていたが―――
「…」
「ふえぇ~…紗夜ちゃ~ん…!!」
彼女の意識は目の前で行われている授業とは違うものに向けられており、隣の席に座って同じ授業を受けていた花音の言葉も届かない。
そうしているうちに授業が終わっても紗夜は席を立とうともしない。
余りにもおかしい紗夜の様子に花音は若干の恐怖を感じながらも彼女に話しかけていた。
「紗夜ちゃーん…授業終わったよ…?」
「…」
「あれ…?聞こえてないのかな?紗夜ちゃーん!!先生がずっとこっち見てたよ~!!」
「―――私は一体何がしたかったでしょうか…? 」
「ふぇ?」
「…あら?」
花音が勇気を出して声をかけるも、全く意味の分からない言葉が返ってきたことに花音は首を傾げる。
しかし、紗夜はここでようやく花音の存在に気が付くといつも通りの様子を取り繕って彼女に話しかけていた。
「松原さん?どうかしたんですか?これから授業が…」
「それはこっちのセリフだよ~!?もう授業終わっちゃったよ!!」
「えっ…?」
紗夜は何をトチ狂ったのか未だに授業が始まる前だと勘違いしており、その間違いを指摘されるとすぐに時計を確認して、自身の間違いに気が付いて思わず顔を顰めてしまった。
「紗夜ちゃん、変だよ?」
「変…そうかもしれませんね…」
「何かあったの?だったら無理しないで休んでも―――」
「……そうですね。今日は自主休講とします」
「ふぇ~!?紗夜ちゃん!?」
「では、失礼します」
「ふえぇ~!!」
そんなおかしな紗夜に対して花音は心配そうな表情を向けて、紗夜を心配する言葉をかけたが、紗夜から返ってきた言葉は花音の想像の斜め上に突き抜けていた。
あの紗夜が授業を休むと言ったことを花音は目を丸くして驚いていたが、そんな彼女を他所に紗夜は席を立つとそのまま教室を出ていってしまった紗夜はそのまま学校から出て自宅―――ではなく、ある場所へと向かっていた。
「ここが、市ヶ谷さんの家の蔵…。先に入っててくれと言われましたが…」
紗夜は有咲の家の蔵にやって来ていたが主である有咲は未だに学校にいるためこの場にはおらず、ゆっくりと入口から下へと降りてきたが1つだけ問題があった。
「あるものは使っていい…と言ってたけれど、私のギターはあそこに置いてきてしまったわね…」
紗夜はあろうことかギターを自身が飛び出してきてしまった際に置いてきてしまっていたのだ。
だからと言って手慰みに有咲のキーボードなど触る気も起きない彼女は自身のスマホを取り出そうとしたが、昨日の朝から全く充電していないし、今朝から完全に沈黙していることから充電も切れてることを察したが、紗夜は動こうという気力すらわかずにソファーに力なく寝ころんだ所でテーブルの上にあるモノが目に入った。
「タブレット…動画の配信サイト…。時間を潰すにはちょうどいいわね…」
テーブルの上には一台のタブレット。
それがソファーから動くことなく手が届きそうな場所に鎮座していたのを見た紗夜はそのままタブレットを手に取って画面の電源を入れると、そこに映し出されたのは動画の配信サイトを見た紗夜は時間を潰すにはちょうどいいと何気なく画面をスワイプし始めた彼女だったが、その目には気になるものが映っていた。
「これは…ガンダム…?…っ!!」
紗夜の目に映ったのはガンダムの文字に彼女の中で嫌なモノが蘇ってタブレットを投げ捨てそうになったが、投げ捨てる直前に有咲の持ち物だということを思い出した彼女は最後の最後で踏みとどまることに成功し、タブレットは彼女の手に収まったままだった。
「はぁ…はぁ…!!」
だが、日菜やあことのことを思い出してしまい、激しい頭痛と共に呼吸が乱れだしていき、今にも限界を迎えそうになっていた。
「「紗夜先輩!!」」
「奥沢さん!!」
「了解!!紗夜先輩!!大丈夫ですか!!」
そのタイミングで蔵へと飛び込んできたのは美咲と有咲。
2人は紗夜の様子を見た瞬間に彼女の元まで向かうとタブレットを取りあげてから彼女に声をかけると少しの時間を経て紗夜は何とか落ち着きを取り戻していた。
「すいません…」
「まぁ…こころ達に比べたら可愛いもんですよ」
「いえ、流石に…」
「紗夜先輩、そこまで気にしないでいいですから…」
「まぁ、それで…昨日から何があったんです?」
「っ!?」
「流石に、こんなになってるのを黙って放っておけないよな…」
昨日から余りにも様子がおかしい紗夜に対して2人は思わずその理由を聞こうとするが、その言葉を聞いた瞬間に紗夜の顔から一気に血の気が引いていき意識が切れそうになっていくが、美咲によって手を捕まれたことで切れそうになっていた意識をなんとか保つことが出来ていた。
「大丈夫ですよ。怒ってる訳じゃないんですから、とりあえず話してみてくださいよ」
「奥沢さん…」
「ほら…私、生徒会長ですから」
「私はもう卒業して…」
「OGだろうと関係ないですよ?ほら、Roseliaとかには話せなくても微妙な距離の私達になら話せるかもしれないでしょ?」
紗夜の様子を見て美咲は諭すような口調で話しかけるが、紗夜は素直にその言葉を受け入れることが出来なかった。
「ですが…」
「いいですよ。話聞いて迷惑かけられる程度で紗夜先輩が楽になるなら安いもんですよ」
「でも…」
「ほら…紗夜先輩?」
提案を断ろうとした紗夜だったが、美咲はハロハピでこころ達の様な強引さで迫り続けられてしまった彼女は折れてしまい、たどたどしい口調だが最近起こったことを話始めていた。
パスパレがガンプラのイベントに出ること―――
それを知らずに紗夜の安請け合いでRoseliaも出ることになってしまったこと―――
初めてのガンプラバトルで日菜におもちゃの様に弄ばれたこと―――
バトルの練習であこに八つ当たりのような態度を取った後に飛び出してしまったこと―――
飛び出した後に日菜に会って昔のような劣等感のせいでキツク当たってしまったこと―――
そして、その直後に美咲と有咲に会って今にいたったこと―――
「―――これが全てです…」
「そうだったんですね。でも、何となくわかります。こころとか薫さんもなんでもすぐに出来ちゃいますからね」
本当に今回の出来事の全てを語った紗夜、その全てを2人はただただ黙って聞いていた。
日菜なら殆ど無自覚で人の事を抉るようなことを言ってしまうのも納得して、美咲は共感するような言葉を述べたがここで綺麗に終わるようなことにはならなかった。
「それで…紗夜先輩はどうするんですか?」
「…っ!!」
「ちょっと市ヶ谷さん!?」
このタイミングで有咲が紗夜に今後の事を聞いたが、紗夜はその言葉に身体を震わせてしまい、美咲も有咲の言葉に驚きの声を挙げていた。
だが、ここで優しい言葉だけをかけても紗夜の為にはならないことを感じた有咲は心を鬼にして紗夜を詰め始めた。
「確かに紗夜先輩に色々あったのは分かる。でもさ、このままじゃ何にもなんないだろ?」
「市ヶ谷さん。そうかもしれないけど、今の紗夜先輩にそんな言い方は…」
「だったら、このままなぁなぁで放って置く方がいいのか?」
「そういう訳じゃないけど…」
「紗夜先輩。先輩のせいで全く関係ない分野にRoseliaのメンバーを巻き込んだし、一緒のタイミングで始めたことで日菜さんに練習でボロッカスにされたのも分かったけど…
それで紗夜先輩はどうしたいんですか?」
「わたっ…私は…」
「日菜がやってないことに逃げても……すぐに日菜がマネしてすぐに追い抜かして……学校の勉強でもなんでも……同じ時期に始めたものはいつも日菜が上だった…」
「紗夜先輩」
「分かってます…これがただの遊びなのは分かっているけれど…。だけど、1回だけでいいから…」
紗夜はぽつぽつと言葉を零していくが、徐々にその言葉にはしっかりとしたものになっているのを感じた2人は黙って紗夜の言葉を待っていた。
そして、紗夜は自身の内側に貯めていた暗いモノを吐き出して、最後に残った純粋な想いをハッキリと口にした。
「私は…日菜に勝ちたい…!!」
「紗夜先輩。言えたじゃないですか」
「市ヶ谷さん…やりすぎだよ。まぁ結果オーライだけど」
「ったく、ヒール役はガラじゃないっての…」
自身の想いを語った紗夜の表情はいくらか明るくなると、それを見た2人はこれで事態は好転するかもしれないと思って安堵の表情を浮かべていたがすぐに紗夜の表情は曇ってしまった。
「でも、どうすればいいのか分かりません…」
「まぁ、想いだけでどうにか出来るもんじゃないですからね」
「市ヶ谷さん…あそこまで言っておいて…」
「あっ…」
「市ヶ谷さん?どうかしたの?」
「いや…そう言えば…ちょっと待ってろ…どこだったけな…」
想いだけでどうにか出来るものではなく、それの打開策が無ければどうしようも無いことを理解してしまった紗夜。
美咲はそこまで焚きつけておいた有咲にジト目を向けていたが、彼女は何かを思い出してそのまま蔵の階段の引き出しを開けて何かを探し始めた。
2人は有咲が何を探しているのかは全く分からず彼女を見守っていたが、そんな中で有咲はお目当てのモノを見つけるとそれを紗夜へと差し出した。
「これは…」
「市ヶ谷さん?ガンプラなんて興味あったの?」
「あはは…実は、ばーちゃんが知り合いの古物商から引き取って私に渡してきたんだけど…オークションでも売れないし、作るつもりも無かったから蔵の肥やしになってたんだよ…」
有咲が差し出したのは1つのガンプラ。
ガンダムに興味の無さそうな有咲が蔵からそれを引っ張り出したことに2人は驚いていたが、そんな2人に彼女は苦笑いを浮かべてガンプラがあった理由を答えていたが、すぐに真面目な顔になっていた。
「想いだけでも力だけでもダメってことですよ」
「想いだけでも…力だけでも…?」
「確かに日菜さんは操作が上手いかもしれないですけど、あの性格じゃガンプラを丁寧に作るってことはしないと思いますし、操作は練習で差を埋めて、後はガンプラの完成度でひっくり返せるはず…」
「最後ははずなんだ…」
「しゃあねぇだろ?調べただけでやったことねぇんだよ」
「はいはい…」
「さっきの話ではスケールも一緒だけど、調べたら普通に作るにもそれなりに難しいし、そこから手を入れて丁寧に作ったら本番に間に合うかどうかは分かんないですけれど…どうします?」
「私達も出来る限りは手伝いますから」
最後の言葉にツッコミを入れた美咲に有咲は若干顔を赤らめて反論するが、美咲はそれを軽く流してから紗夜へと視線を向けるとそんな中で紗夜はゆっくりと顔を上げ――――
有咲が差し出した箱へと手を伸ばすのだった。
「「「言えたじゃねぇか…」」」
「本番が楽しみになってきましたね!!」
「ふえぇ~…」
「あこちゃん?それにマスキ先輩も巴先輩も何言って…?」
「3人の気持ちも分かるけどさ~…。てか、巴はあこの事で怒ってると思ってたけど」
「沙綾、確かに怒ってたけど紗夜さんのあれ見たら…な?」
「因みに見てなかったら?」
「そりゃ…ソイヤっ!!してソイヤっ!!してソイヤっ!!だ!!」
「あはは…何言ってるの…?ってそうだ次回予告…託された剣。それに向き合い始めた紗夜先輩。刻々と時期が迫っていく中で彼女は何を響かせるのか…次回!!"託された剣"立ち込める暗雲を切り開け、ガンダム!!」
「沙綾、ガンダム出てねぇだろ?」
「ますき!!最後なんだからちゃんと〆させてよ!?」
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