これからよろしくお願いします。
トゥインクルシリーズ後、私の3年間の軌跡を纏めた特番が放送されることになった。
夕方時のカフェで多くのウマ娘達が番組を観ており少し気恥ずかしかったが、短い内容だがトレーナーへの独占インタビューもあるというのをダイヤ達から聞いたことで知り一緒に観ていた。
どうしてトレーナーは私にインタビューのこと教えてくれなかったのかしら?やっぱり恥ずかしいから?
などと考えつつ番組を見ていたら遂にその時がやってきた。
『では、トレーナーさんよろしくお願いします』
『ええ。本日はよろしくお願いします』
『改めてサトノクラウンさんとの秋シニア三冠にURA中距離部門の制覇!お見事です!』
『ありがとうございます。ですが、全ては彼女本人の努力があったからです。常に努め、備え、努力し続けるクラウンだからこそ掴めた栄冠です』
そうしたお決まりとも言える挨拶の後でこの三年を振り返ったコメントや胸の内といった、私の記者会見で何度も行われたやり取りをしていた…。
みんなの意識はテレビから離れかけ、私もよくある内容かと思いかけたその時、記者からのある質問で一気に意識がテレビに戻された。
『ズバリ!どうしてサトノクラウンさんを担当しようと思われたのですか⁉︎』
確かに気になった。私もこれまで何度か質問したが、彼はいつも恥ずかしそうに笑いながらはぐらかしていたからだ。
なんでトレーナーは私のことを担当しようと思ったのか?サトノ家の担当という名声のため?それともデビュー前から期待されていた私を担当することで新人でも箔をつけたかった?
不、あの時の彼の熱意からはそんな打算的な想いは感じなかったし、彼がそんな人ではないとわかってはいる。それでもそんな不安が頭をよぎった。
啊、知りたいけど聞くのが怖い。そんな考えの中彼が口を開いた…。
『一目惚れでした』
「キャー!一目惚れ!熱々だねクラちゃん!」
「トレーナーさん、そんな前からクラちゃんのこと…!」
そんな2人の会話がとても遠くに聞こえた。
ダメ、顔が熱くなる。恥ずかしさとそれ以上の喜びで今すぐ顔を覆いたいけど画面から目が離せなかった…!
『初めて会った場所は学園内の練習場でした。クラウンは雨が上がったばかりのグラウンドで1人練習をしていたんです』
『その姿に心を奪われた…ということですね⁉︎』
『はい。とても強く鋭く走る姿に目が離せませんでした。思わず声をかけたんです。そして彼女の自信に満ちた瞳に…』
『恋に落ちた…と』
『ええ。この子だと、組むなら絶対にこの子がいいと直感したんです。』
『後日に模擬レース後のタイミングで猛アタックしました。君をスカウトしたい、俺と契約してほしいと。彼女の夢に近づくためのプランを思いつくままに話していました。』
それから私と仮契約から正式に契約するまでの日々をある程度略しながらも、しかし熱量が、想いが伝わってくるほどに熱く語っていた。
初めて会った時からトレーナーがこんなにも私のことを想ってくれていたなんて…!胸がドキドキするし頭の中が焼けるような幸福感でポカポカした…!啊、トレーナー…私も貴方のことが…!
しかし、茹だっていた私の頭が急激に冷えたのは最後の質問だった。
『ここまでありがとうございました。最後にお聞きしたいのですが、これからのご予定やキャリアはお考えですか?』
『トレーナーさんは新人でありながらG1ウマ娘を排出したトレーナー。恐らく学園内のみならず名門からの逆指名なども考えられますが、トレーナーさん自身はどのようなプランをお考えかお聞かせいただけますか?』
トレーナーが、彼が私の側を離れるなんて考えてもいなかった。
しかし、確かにトレーナーとしてのキャリアを考えたらそれは当然だ。彼の優秀さなら数多のウマ娘が契約を希望するだろうし、
彼ならどんな子とも上手くやっていけるだろう。しかし、彼が他の子の横で微笑む姿、勝利を喜び合うのを想像しただけで胸が張り裂けそうだった
不、行かないで。ずっと側にいて私を支えてほしい。ずっと二人で歩んで行きたい…そんな不安な考えは彼の言葉を聞いてすぐに吹き飛んだ。
『私はこれからもずっとサトノクラウンと走り続けたいです。』
『現時点では凱旋門賞など海外遠征も視野に入れており、クラウンと一緒にプランを考えています。』
『また、これはまだクラウンには言えていないのですがドリームトロフィーリーグも視野に入れたプランも考えています。』
『彼女が望んでくれる限り側にいたい。彼女が認めてくれたパートナーとしてずっと努めていきたい所存です。クラウンは私の最高のパートナーですから。』
今にも叫びそうだった!彼が私と同じ気持ちだったなんて!啊!
「私もよトレーナー!好きよ…我愛你…!」
思わず席を立ってしまっていた…頭が蕩けて、幸せの絶頂にいた…自分の想いが口から出ていたことも気にしていなかった!
…そんな私を現実に戻したのは周囲からの視線だった。顔を赤らめた恥ずかしそうな視線、ニヤニヤとした生暖かい視線、そしてとても嬉しそうにニコニコと私を見つめるダイヤと目があったところで完全に思い出した!ここが夕方のカフェだということを!!!
「哎呀ーーー!!!」
これは私の恋の物語。この世で最も理解し合えているからこそ、叶わないと諦めかけていた恋を叶えるまでの物語。
読んで頂きありがとうございました。
今後もよろしくお願いします。