今回もよろしくお願いします
サマーシーズン到来!
トレセンの夏合宿が始まりウマ娘達は秋からのデビューや重賞レースに向けて各々がトレーニングに励むまさに熱い季節!
しかし、この夏はあるビッグニュースが界隈を更に熱くさせていた!
【サトノクラウンの凱旋門賞の出走取り止め】と【サトノクラウンの香港ヴァーズ出走登録】
昨日の宝塚記念で大敗を喫したこともあり世間からは不調説、更にはピークアウト説まで囁かれていた中での発表は界隈を大きく沸かしていた!!
そんな渦中の人であるサトノクラウンは今…
「トレーナー!どうかしら!」
「ああ。タイムが伸びているのに昨日より息があがっていない。走るフォームも崩れていなかったし確実に体力が付いてきている!」
「好!ノルマ達成ね。」
「でも、まだまだ最終目標は遠いからな。次からは距離をもっと伸ばそうか。」
「無問題!どんなトレーニングだって言ってちょうだいね。こなしてみせるから!」
これまで以上に熱くトレーニングに励んでいた!
「クラウンさん…すごいな…。」
「うん。これまで以上に張り切ってるよねクラちゃん。」
「この間の宝塚記念…走り終わった時、クラウンさんすごく沈んだ表情だったから心配だったけど…もう立ち直って真っ直ぐに努力している。やっぱりすごいや…。」
「私たちも負けてられないね!よーし!一緒に並走しようシュヴァルちゃん!」
「わ、ま、待ってよキタサン…!」
そんなサトノクラウンの脳内は年末の香港ヴァーズに向けての熱意だけでなく…
(秋からはトレーナーと同じ屋根の下!)
全く別の熱でも浮かれていた!それは遡ること前回…
『活動の場を香港に移さないか?』
『9月からは香港に住んで向こうでトレーニングを行うことで、向こうの芝や空気といった環境に合わせて香港ヴァーズに完璧に備えるんだ。』
『日本に戻るのはジャパンCの前2週間か1週間だけにして可能な限り香港での練習にしようと思うんだけど、どうかな?』
『…perfect!流石ね相棒!』
『香港にはトレセン学園に勝るとも劣らないサトノ家専用の練習施設があるもの!向こうで確実に鍛えつつ調整をしていけば完璧に香港ヴァーズに向けて備えることができるわ!』
『是非行きましょう!秋からは香港へ!』
『決まりだな!じゃあ、早速申請書類を書かなきゃいけないな。』
『そうね。期間はあまりないのだし急いで準備しなきゃ。』
『まあ実はこの時の為に書類は準備してあるんだけどな。あとはクラウンの欄を埋めるだけだから。』
『…真係?あなたからの信頼はとっても嬉しいけど、どこまで予想して準備していたの?』
『予想とかじゃないな。俺はクラウンと一緒に走りたい。君に栄冠を掴んでほしいだけだからさ。』
『っ…!トレーナーったら!』
急にそんなこと言われたらずるいわよ!もう!
本当にこの人は…どこまで無自覚に人をときめかせるのかしら!
『そういえばクラウンは宿泊先はどうする?トレセン学園からの支援も受けられるけど、クラウンなら向こうに家があるもんな。』
『そうねー。私は住みなれた家があるからそこは…』
その時サトノクラウンに電流走る。
(トレーナーと2人で海外遠征…これってチャンスじゃないかしら?)
(香港には私の家や別荘がある。つまり…4ヶ月間もトレーナーと一緒にいられる…?)
『トレーナー。あなたは4ヶ月間どこに滞在するの?』
『どこって俺は学園指定のホテルしかないけど…』
『NO!ダメよそんなの。』
『異なる環境に身を置くというのはストレスになりやすいもの。ましてやホテル暮らしが4ヶ月も続くとなるときっと仕事にも支障が出るわ。』
『そこは俺は頑張って慣れるから大丈夫。今もトレーナー寮暮らしだしその延長って思えば…』
『そこでなんだけど、あなたもサトノの屋敷に住むというのはどうかしら!あなたに最高の環境を用意できると約束するわ!』
『…え?』
トレーナーが随分と間の抜けた表情をしている。驚くのも無理はないけど、だからこそ畳み掛ける。
『いやいやいや、流石にマズイんじゃ。それにそこまで迷惑はかけられないぞ。』
『No problem!客間なら使っていない部屋がいくつかあるから問題はないわ!それに、他ならぬあなたならきっとお父様もお母様も快く受け入れてくれるわ!』
『良い点はそれだけじゃない。』
『私のコンディションが朝にすぐわかればトレーニングがスムーズに始められるし、食生活の栄養管理もしやすい。ミーティングだってすぐに始められるし良いこと尽くめじゃない?』
『サトノ家が有するトレーニング施設もすぐに使えるわ!もう決まりじゃないかしら?』
『う〜ん…まあ確かに…クラウンがそういうなら…』
『好!じゃあ秋からの香港遠征はトレーナーもサトノの屋敷に泊まることで決まりね!』
『これでいい…のか…???』
こうした理由から前回から夏合宿の間まで、サトノクラウンは絶好調なのであった。
「暗くなってきたし今日はもうあがろうか。」
「OK啦!ところでトレーナー。あなたはこの後予定とかはあるかしら?」
「この後は特に無いかな。帰ったら今日の結果を元に明日の練習内容を少し調整するぐらいか。」
「そうなのね。…もしよかったらこのまま少し海岸沿いを散歩でもしない?」
「今日は縁日があるけど行かなくて良いのか?ダイヤちゃん達が行くって話していたよ。」
「それなら朝に誘われたわ。でも、お祭りの気分じゃなかったから断ったの。それよりも今は…」
「トレーナー。あなたと一緒にいたい気分なの。」
「っ…わかったよ。じゃあ一緒に散歩しようか。」
一瞬、彼がぎこちない表情をしたように見えた。けれどその表情や声色に不快そうな感じはしなかった。寧ろあの感じは…
「じゃあ行きましょうか。」
そう言って私はトレーナーの手を握る。トレーナーは動揺したのか一瞬ピクッと手を振るわせたが、そのまま優しく握り返してくれた。
そうして2人手を繋いで砂浜を歩き出す。本来は賑やかな祭りの喧騒もずっと遠くに聞こえて、ここには波と私達の足音だけが響き渡る。
まるで私たちしかこの世界にいないかのような、静かで落ち着いた時間だった。
「誰もいないわね。みんなお祭りに行っているのかしら。」
「だろうなぁ。地元の人達はみんなこのお祭りが大好きで、街一体で盛り上げてるそうだ。」
「なるほど、だから毎年あそこまで盛況なのね。夏合宿の人気イベントになるのも納得だわ。」
「ふふふっ♪」
「クラウン?」
「いえ、以前のことを思い出しちゃって。」
「またこの砂浜を私たちだけで独占できるということね。」
「ははっ懐かしいな。あの時もこうやって2人で夜の砂浜で話をしたっけ。」
「あの時はあなたに断られたと思ってたのよね〜。」
「そうそう。まさか最初はお誘いだったなんて思わなかったからな。でも、あれがあったからこうして気持ちだけじゃなく言葉でも伝え合えてる。」
「ええ。あの一件が私達の絆をより深めてくれた。本当に、あなたは最高のパートナーよ。」
「…そう真っ直ぐに言われると照れるな。」
「ふふ!トレーナーったら顔が赤くなってるわよ!こーら、片手で隠さない!あははは!」
照れて顔を隠そうとする彼の手も掴む。こんなに照れる彼を見るのは初めてなのもありとても嬉しく、なにより愛おしかった。
「今度もまた2人で香港に行けるのよね。」
「ああ。でも今度は旅行じゃない。君の夢を、栄冠を掴みに行くんだ。」
「!…もちろん。頼りにしているわ。相棒。」
彼と2人で見つめあいながら強く手を握る。彼の熱い信頼が、想いが、私の中に伝わってくる。
それを感じるほど、私の中にある彼への想いが高まっていく。胸が熱く高鳴り、熱を帯びた視線を送ってしまう!あぁ!
「トレーナー…!私…!」
その瞬間
ドン!ドンドン!……パラパラパラ…
彼の後ろの空で大きな破裂音が鳴り、大輪の花が夜空に咲いた。
「…あら、もう花火大会の時間なのね。」
「クラウン、今なにか言いかけて…」
「なんでもないわ。それより!丁度いいしここで見ていきましょうか。」
そう言って彼の横に並び2人で夜空を見上げる。
…危なかった。自分の想いを口に出すところだったわ。でもまだ時期尚早。ここで想いを伝えるべきではない。
気持ちを切り替えて花火を見ることに集中する。
トレーナーと2人立ったまま寄り添い、手を繋ぎながら花火を見る。彼と見る花火はこれまで見てきたどの花火よりも美しく感じられた。
「綺麗…」
「ああ…とっても綺麗だ」
花火を見上げながらゆっくりと手の繋ぎ方を変えて、そのまま指を絡めていく。彼もなにも言わず優しく指を絡め返してくれる。
お互いの心が指先を通じて繋がり、絡みあっていくのを感じた。言葉はなくてもお互いの想いは同じだった。
そのまま花火が終わった後も私達は指を絡めあったまま寄り添っていた。トレーナー…我愛你…。
side トレーナー
花火を見終えた後もずっとクラウンと指を絡めあい寄り添っていた。そんな中、縁日の明かりが消え出したのが見えた瞬間俺の意識は現実に引き戻された。…今何時だ⁉︎
「クラウン。そろそろ旅館まで戻らないと。」
彼女はなにも言わずに絡めていた指を解いていく…が、それでも手は繋いだままだった。
…しょうがないな。そのままゆっくりと手を引いて旅館までエスコートした。
旅館の近くまで着いた。流石にここまで来たら他のウマ娘の目につく可能性も高いので手は繋げない。離した手を振りながら別れの言葉を言う。
「おやすみクラウン。また明日。」
「ええ。トレーナーもお休みなさい。」
そうして部屋に戻っていくクラウンを見送りながら頭の中で自分のしたことを思い返す。
…俺はなにをやっているんだ。相手は生徒だ。学生だ。なのに俺はあの時クラウンと寄り添いなにを思っていた。拒まなくてはならない好意を受け入れて、同じ気持ちを抱いていた自分に自己嫌悪する。
だが、あの一時を思い出すだけで胸が高鳴り脳内が甘い幸福感で満ちていくのを感じてしまい、自分の中にある好意を自覚してしまう。なにより花火を見つめるクラウンの横顔が本当に…
「綺麗だったな…。」
この恋を差し切るために着々と歩みを進めるサトノクラウン。理性と好意に揺れるトレーナー。
夏後編にご期待ください。
今回もありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。