場所は移り栗東寮のダイヤとキタサンの部屋へ避難させてもらった。
「はぁ…疲れたわね。」
あれからカフェテリアでみんなから質問責めだった…。
『ジャパンカップのウィナーズサークルでの発言ってやっぱりそういうことなの⁉︎』
『クラウンさんトレーナーさんとはどこまで進んでいるんですか⁉︎』
そんな質問やどこが好きなのかとか散々聞かれてしまった…恥ずかし過ぎて半分も答えられてなかったけど。
『クラちゃんがいっぱいいっぱいだからやめてあげて…。』『人の恋路を邪魔しちゃ駄目だよ!』
とダイヤとキタサンが助け舟を出してくれなかったらどうなっていたか。
啊、まだ頭がポーっとする…。
「ダイヤ、キタサン。さっきはありがとう。助かったわ。」
「大丈夫だよクラちゃん!困った時はお互い様!」
「あんなに照れてるクラちゃんは初めてだから新鮮でした〜。」
「それは言わないでちょうだい…。」
「そ、それでクラちゃん。そのことなんだけど〜…」
「私も教えてほしいな。クラちゃんとトレーナーさんの関係!」
キタサンは少し恥ずかしそうに、ダイヤはニコニコとしながら聞いてくる。でも…
「私とトレーナーはあくまで『最高のパートナー』よ。担当ウマ娘と担当トレーナー。それ以外のなにものでもないわ。」
「彼のあの発言も私への信頼の現れであって、そこに異性への好意といった感情はきっと持っていないわね。」
「えーっ!クラちゃんトレーナーさんのことがその…好きなんじゃないの⁉︎」
「トレーナーさんとクラちゃんならお似合いだよ!そんなに好きなのにどうして告白しないの?トレーナーさんだってきっと…!」
「トレーナーのことは大好きよ。でも、だからこそ断られるってわかるの。」
「彼は理性と良識ある大人よ。私の想いを受け止めた上でトレーナーと生徒の関係を説き、私の想いは思春期からの憧れだと、一時の熱だと優しく窘めるでしょうね…」
自分で言ってて辛くなる。でも、想像できてしまう。私の告白を断るトレーナーの姿が。
一瞬強張った表情をした後、いつもの優しい表情で見つめながら私を諭す彼の顔が。
「この関係が続くなら、最高のパートナーのままでいられるのならいっそこのままでも良いって思える自分がいるの。」
「そんなの嘘だよ!」
「じゃあどうしてクラちゃんはそんな泣きそうな顔をしてるの!」
「クラちゃんはトレーナーさんのことが大好きなんじゃないの!」
「そんなに想いが溢れるほど好きなのに叶える努力も、伝えることもしないなんてクラちゃんらしくない!」
ダイヤが強く真っ直ぐに見つめてくる。その視線に思わず顔を逸らしてしまう。
「怖いのよ。この関係が終わってしまうのが。」
ポツリ、ポツリと言葉が出てくる。
「私の想いを聞いたらきっとトレーナーは一線を引くわ。これ以上私が入れ込まないように。深く結びついた絆を解くために。私から離れていく…!」
自然と涙が溢れていた。でも、涙も言葉も止まらなかった。
「彼が最高のパートナーでなくなるのが怖いの…!共に走れなくなるのが、ずっと一緒にいられなくなるのがイヤなの…!」
「じゃあ諦めちゃうの!」
「クラちゃんは断られるから、叶わないからって諦めちゃうの!私が知ってるクラちゃんはそんなことで諦めるような子じゃなかった!」
「どんな険しい道でも、叶え難い夢だとわかっててもそれを叶える為に努力して備えて、掴み取る!そんなウマ娘じゃないの!サトノクラウンは!」
キタサンの強い視線に射抜かれる。心がグラつく。諦めたくない。私は彼のことが、でも…
「私は…彼がいなくなったらっ…!」
「だから行動しなきゃだよクラちゃん!」
「サブトレーナーにしてもらってクラちゃんのトレーニングを見ていた時からずっと思ってた。クラちゃんにはこの人しかいないって!」
「トレーナーさんとじゃなかったら今までの栄冠は掴めなかったって、トレーナーさんと一緒だからどんな逆境でも頑張れたってクラちゃん言ってたよね!」
「トレーナーさんに振り向いてもらうためにプランを練って、努めて、叶えようよ!今までクラちゃんがトレーナーさんとしてきたみたいに!」
「…好。そうだったわね。」
2人の言葉で思い出せた。私がどうしてきたか。これまでどうやってマジックを、奇跡を起こしてきたか。
私の側にはいつも彼がいた。この3年間ずっと隣にいて私を支え続けてくれていた。今後彼がいない人生なんてもう考えられない!叶えずにこの気持ちを止めることなんて…できないわ!
「多謝 !2人とも!おかげで決心がついたわ。」
「きっとこの恋は今までのどんな挑戦よりも難しい道のり…最高のパートナーが頼れないばかりか、最も手強い相手になる…」
「いいじゃない!どれだけ道のりが険しくても、彼が拒もうと絶対に振り向かせて見せる!だって私は彼が認める道悪巧者だもの!」
こうしてサトノクラウンの恋愛は幕を開けた…!
今後ともよろしくお願いします。