『おはようトレーナー。昨日のインタビュー見たわよ。』
『え、言ってなかったのに。』
『一目惚れだなんて、可愛いじゃない!』
『だから言わなかったのに。よしてくれよ…』テレテレ
こんな感じにトレーナーをからかいつつ距離を詰めようと考えいたのに…いたのに!
「お、おはようトレーナー。その…いい天気ね!」
「おはようクラウン…?今日はちょっと曇り気味じゃないか?」
昨日のことを思い出しただけで恥ずかしくなってトレーナーの顔が直視できないわ…自分でも顔が赤くなっているのがわかってしまう。
「大丈夫かクラウン?体調が悪いのか?」
彼が心配そうな顔で私に歩み寄る…近過ぎないかしら⁉︎普段ならなんともないのに、今はこの距離感だけで恥じらってしまう。
「だ、大丈夫よトレーナー!安心して。それよりも聞きたいのだけれど…」
「どうしたんだ?なんでも聞いてくれていいけど」
「その…一目惚れって本当なの?」
その瞬間、全てを察したのか彼も赤くなる。顔を片手で覆いながら聞いてたきた。
「あ〜…昨日のインタビューみたんだな?だから言ってなかったのに…」
「…その通りだよ。インタビューで言った通り一目惚れだったんだ。…君の人生がかかっていることなのに、こんな理由で嫌だったよな。ごめん…。」
「そんなことないわ!」
彼の手を取り、ぎゅっと握りしめながら見つめる。
「クラウン⁉︎」
「嫌じゃなかったわ。寧ろ嬉しかった。貴方がそんなにも強く私を想ってくれていたのが。」
「クラウン…ありがとう。」
彼もしっかりと握り返してくれる。お互いの熱が掌から伝わってくる…。トレーナーに私の想いは伝わっているのかしら。彼は私をどう想っているのかしら…。
そして、周囲の朝練中の子達から送られてくる視線に気付いて2人して我に帰った。
「さ、さあクラウン!始めようか!まずは軽目のペースでグラウンドを2週して身体を温めてくれ!」
「え、ええ!わかったわ!」
既に身体は充分火照っていたが恥ずかしさから走りだす。そして彼から充分遠くまで離れたところで1人口にする。
「あの反応…やっぱり彼も私に好意があるわね!」
この道悪な恋でもひっくり返す方法は確実にある。そう確信した私の足取りは軽やかだった。
その日、サトノクラウンは朝から尻尾が喜びで荒ぶっていたとクラスメイト達は語った。
時間は過ぎてお昼のカフェテリアで。ダイヤ達と昼食を取ろうとしていた時。
「あ!クラちゃんクラちゃん!あそこ!列にトレーナーさんがいるよ!」
「ええ。今はトレーナーもそこまで忙しくないしここで食べるでしょうね。」
「トレーナーさんに2人で食べようって誘いなよ!」
ダイヤが嬉しそうに告げてくる。私は…驚きで持っていたスプーンを落とすところだった。
「ダイヤ⁉︎なにを言っているの⁉︎」
「トレーナーさんと前からたまに一緒に食べていたけど、これからは毎日一緒に食べたら良いんじゃないかな?」
「あ、あれはレース前とかに一緒にプランを練ったりしてたからよ!それに…」
昨日のことを思い出してしまう!お昼時のカフェテリアでそんなことをしたら周囲からどんな目で見られるか…!
「それだよダイヤちゃん!」
「クラちゃん!ダイヤちゃんの言う通り、ここは行くっきゃないよ!」
キタサンまで乗ってしまった!もう断れる雰囲気じゃないわね…。2人の前で諦めないと誓った手前、ここは行くしかないじゃない!
「わ、わかったわよ!行ってくるわよもう!」
2人の声援を背に受けながらトレーナーの元まで向かう。
トレーナーがうどんとミニカツ丼のセットを受け取り席を探そうとしているところに…
「你好!トレーナー。貴方もお昼ご飯?」
「ネイホウ!丁度今から食べるとこだったんだ。クラウンもこれから?」
「そうなのよ。トレーナーさえよかったら一緒に食べましょう?」
「よろこんで。一緒に食べようか。」
好!自然にトレーナーを誘うことができた。それだけなのに嬉しくて自然と笑顔になってしまう。
「それでクラウン、なにか相談かな?」
「君が誘ってくるということはレースの話?それともお父さんのお手伝いのこと?」
トレーナーは優しく笑顔で聞いてくる。けれど…
「いいえ違うわ。悩みや相談がある訳じゃないの。本当に、貴方と一緒に食べたかっただけなの。」
「ダイヤちゃんやキタちゃんとじゃなくて、俺で良かったのか?」
「ええ。貴方と食べたかったの。パートナーと一緒に食事をしながら語らうのも大切なことでしょ?」
「貴方は嫌だったかしら…?」
少し不安になって訪ねてしまう。するとトレーナーはニコニコと笑ってくれた。
「クラウンから誘ってくれて嬉しいよ。クラウンさえ良ければ、これからも一緒に食べよう!」
「そうね!明日からも、こうして一緒に食べましょうか!」
これからもトレーナーと一緒にご飯を食べる約束を取り付けられた嬉しさに思わず声が弾んでしまう。なにより、トレーナーが嬉しそうに快諾してくれたのが本当に嬉しい!
そうして2人で談笑しながらご飯を食べている時
「トレーナーが食べてるミニカツ丼も美味しそうね…」
「食べたい?良かったら分けてあげるけど。」
「ただ貰うのも申し訳ないわ。そうだ!私の麻婆豆腐と交換しましょうか!」
「いいね。じゃあ一口貰おうかな。」
トレーナーがそう言った瞬間、私の身体は反射的に動いていた
「トレーナー。はい、あーん。」
こっちを向いたトレーナーの口に麻婆豆腐を突っ込んでいた。私が、さっきまで、使っていたレンゲで。
「⁉︎」
………なにをやっているの私は⁉︎お昼のカフェテリアで⁉︎みんなの前で⁉︎あーんで間接キス⁉︎
自分の行いに恥ずかしくなる…!彼も顔を真っ赤にして驚いているし、周囲からの驚きや好奇の目線が…
「クラウンも。はい、あーん」
トレーナーも真っ赤になりながら返してくれた⁉︎
「あ、あーん…!」
私の口元までカツ丼を運び、口に入れてくれた…!さっきまで!トレーナーが使っていたお箸で!
「お、美味しいわね、トレーナー。」
「ああ。すっごく、美味しいな。」
2人して真っ赤になりながらご飯を食べ終える。
間接キスのことですっかり頭がいっぱいになり、ご飯の味は全然覚えていかなった…。
明日も一緒に食べる予定なのよね…。
昨日のインタビューを観てから自分の中にあった理性のストッパーがなくなったことを実感する。彼と付き合える頃には私はどうなっちゃうのかしら…。
既に付き合えることを前提に考えている掛かり気味のサトノクラウン。そして
「「や、やったー!」」
「流石クラちゃん!私達にできないことを平然とやってのける!」
「そこにシビれる憧れるね!ダイヤちゃん!」
きゃーきゃーと盛り上がる焚き付けウマ娘達であった。
ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。