恋愛でも道悪巧者のサトノクラウン   作:メトロん

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サトノクラウンの史実での通算成績を知っているとより楽しめるかもしれません。また、この物語は育成イベントの「その瞳には、」(サトノクラウンの育成のエンディング)よりも時系列的に前に位置付けております。
URA後〜エンディングの間とお考えください。
今回もよろしくお願いします


違和感の正体

あれから日々が過ぎ、宝塚記念も間近に迫り練習も佳境に入っていた。しかし、ダイヤとの並走の時に感じた違和感が私の身体からなくなることはなかった。

練習で普通に走る時は軽い違和感だが並走や模擬レースとなった時、それは大きな負荷となり私の身体を蝕んでいた。

 

本番前最後の並走の日、遂にその違和感の正体に私は気付いてしまった。

「ハァッ…ハァッ…くっ!」

(思考が纏まらない!今までなら展開を予測して進むべき道が見えたのに!)

走る直前まで脳内にあったプラン通りに走れず、あったはずのリカバリープランも頭に出てこない。足取りは重く息は上がり、焦る気持ちが余計に私を追い込んでいた。

そのまま差し切ることが出来ないまま後続に抜かれ、この並走で私は最下位に終わった。

 

「大丈夫かクラウン?俺のプランに穴があったか?」

「いや、なにより走ってる間ずっと表情が優れなかった。もしかしてずっと調子が悪かったのか。」

「…ごめんなさい。少し調子が悪かったの。それに気を取られて本来のプラン通りに走れないばかりか、リカバリープランも失念してしまったわ。」

 

違う。本当の理由はもうわかっている。けれどトレーナーにそれを言い出すことはできなかった。

 

「…反省とミーティングは明日の練習の時に回そう。今日の所は一旦帰ってゆっくり休んでくれ。」

「…わかったわ。」

「巻き返してみせる…っ!」

 

 

sideトレーナー

「…やっぱり予想通りか。」

ずっと感じていた違和感が、嫌な予感が的中してしまった。そうであってほしくはなかった。

今すぐ励ましてあげたい。新しいプランを提示して支えてあげたいという気持ちを堪える。

「後はクラウンがこの事実を受け入れて、俺に話してくれるかだな…。」

プランはもう練ってある。でも、俺から言い出すことではない。それをクラウンが受け入れてくれた時に話すべきだ。その時

トォォルルルン!ルルルン!

「はい、〇〇です。…たづなさん。お疲れ様です。」

「いえ、その件でしたら…承知しました。明日の放課後にでも。」

 

 

翌日、練習に向かう前にトレーナーから30分程遅れるから先にトレーナー室で待っていてほしいと連絡がきた。

「彼が練習の時間に遅れるなんて珍しいわね…」

そんなことを呟きながら時間を潰すために遠回りでトレーナー室に向かっている時、会議室の前を通ると部屋の中から聞き覚えのある声が聞こえてきた。

 

『…たづなさん。そのお話は以前お断りしたはずです。』

『ですがトレーナーさん。どうかご一考頂けないでしょうか。』

『知っての通り、トレセン学園においてトレーナー不足が問題視されています。デビューしたくてもトレーナーが付かないというウマ娘の子達は大勢います。』

『それは存じております。』

『今すぐチームを持てという話ではありません。どうかトレーナーの皆さんには、一人でも多くの子を導いてほしいのです。』

『それがトレーナーさんの今後のキャリアにも繋がります。』

『…サトノクラウンとの専属契約は双方合意の上で行っていることです。私の一存では変えられません。』

『ですがどうかトレーナーさんの今後のキャリアの為にも、ここは担当する生徒を増やすようお考え頂けないでしょうか…』

 

気付いた時にはその場から駆け出してトレーナー室に走っていた。私の彼と2人でいたいという願いが、彼のキャリアを縛っている。他の子から挑戦の機会を奪っている。そう考えると酷く自己嫌悪に襲われた。

「でも…それでも私は、彼と世界を獲りたい…!」

 

トレーナー室に着いても私の思考は堂々巡りしている。私のせいで彼の未来の栄冠が失われているのかという不安と、自分の中のわがままな願望がないまぜになっていた。

落ち着かず部屋の中を歩き回っていると、ふと彼のデスクの上に見慣れないノートを見つけた。

「このノート…普段彼が使っている物じゃないわね。」

幾つか付箋が貼られているそのノートが嫌に気になり、私はそれを開いてしまった。そこには

 

【ピークを過ぎたウマ娘との接し方】

①本人が気付き、受け入れるまでこちらから言うべきではない

②本人の意思を限りなく尊重する

③こちらから定案する場合は言葉を選び、しっかりと相手に気持ちを伝えるように

 

「…なんだ。気付いてたのね。」

「そうよね。私の異変に彼が気付かないはずがないわ。一番の理解者だもの。」

フラフラと、椅子に座り込んでしまった。頭の中が真っ白になり、身体が震えだしそうなのを必死に抑える。時計を見るともうそろそろ彼がトレーナー室に来る時間だった。

「…決心が着いたわ。どんな結果でも受け入れるしかない。」

彼が来ないうちにできるだけ思考を落ち着かせる。今は宝塚記念に、目の前のレースに集中しなきゃ。彼が来るまでに昨日の反省を思い出さなくては。だってーーー

 

これが彼と2人だけで走る最後のレースにするのだから




今回もありがとうございました。次回もよろしくお願いします。
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