はい、ダレカちゃんです。
本日は『ダレカちゃん』とは異なる
あー、気分最悪やわぁ…寝ゲロした時と同じくらい気分最悪。てか寝ゲロしたし、さっき。チッ…ゲロしか芸がねぇのかよ、つまんねぇ体だな。
久し振りに所属校の寮でシャワーを浴びて、鏡に映るゾンビみてぇな顔色のクズに舌打ちをする。あーあ、『
テキトーに髪も乾かして、二種の片翼もバサバサと動かして水気を払う。尖った片耳と普通の片耳、それよりも上に付いてる二種の獣耳。聴覚の化け物かよ、ウケる。とりま水が入って不快だから綿棒でテキトーにグリグリとやる。
ホント、めんどくせぇ身体です。簡単な手入れすら他の生徒の何倍も掛かるし、無駄に生えてる角のせいで寝る姿勢まで工夫しないといけない。龍尾だって普段から宇宙服に押し込むのも大変だし……
とりま明らかにオーバーサイズなフード付きパーカーとサルエルパンツで出来る限り顔と体型を隠して、ヘルメットを被りまして。
そんでそんで――
「やって来ました百鬼夜行!なのでつまり、やって来ました百鬼夜行」
まず前提として、今日は『ダレカちゃん』に代わる新しい姿を調達しに来てます。でも残念なことに、そもそも『ダレカちゃん』として振舞って不審者ムーブしているのは今の世界線がハジメテです。
だからトーゼン、いっちゃん最初の世界で連邦生徒会長から買って貰った宇宙服以外の全身お隠し衣装は持っておりません。何処にあるのかの予備知識も御座いません。ダレカちゃん…逆に貴様は、何なら持ち合わせているのだ!は?天才的な頭脳と容姿端麗な外見と圧倒的な力だが?
はいはい、そんなワケで。
ダレカちゃんはセンセが確定で来ない百鬼夜行連合学院でそれっぽい衣装を買いに来ました。ぬへへ、お宝は眠ってるかな〜?
ですがモチロン、アテなんてあーりませーん。だから目に入った店に突撃するのみ!うおぉぉ!看板や暖簾なんて見てる暇ねぇぜ!!
「へい、テンチョーさんや」
「……なんだい」
「この店に顔と体型と素肌全てを隠せる服って売ってるかい?」
「そりゃあオメェ、鏡を見ろってモンだ。顔も体型も、何なら素肌すら隠してる不審者が映ってるハズだ………つーかよォ、そもそもウチは甘味処だが」
「お宝ってのは、隠してあるモンなんだよ。ダレカちゃんは詳しいんだ!他人の家の壺を割ったりタンスを開け散らかしたりしたら、なんかいい感じのが見つかるんだ!!ミレニアムの問題児が言ってたんだい!!」
「バカヤロウ、そりゃあお前…自分家で自分のモンを仕舞ってるだけだ。一張羅の一つや二つ、普通にあるだろうさ」
「確かに。あ、みたらし団子三本ちょーだいッス」
「あいよ。………おいコラ、棚を勝手に開けるな。そこの壺も持つな。割ったら腹切って弁償させてやるからな」
「冗談やって…おやっさん、怖ぇよ…」
はい、一件目にはなーんにもありませんでした。そしてみたらし団子を手に入れました。あんのオッチャンめ…前に来た時よりも値段一割増しだったぞ。前って言っても不審者の格好をしてなかった頃だけど。
うんうん、これはダレカちゃんを尾行してる災厄の狐さんにあげよう。どーせ後で襲ってくるだろーし、お土産くらいは持たせてやるってのがデキる人間ってヤツだよね。
にはは、モテすぎて困っちゃいますね〜!はっちゃ!……いや、はっちゃってなんやねん。多分言ってる本人も分からなそうだけど。
そんで次の店ね。
「へいへーい!ここはなんの店だい!?」
「看板見ろや不審者」
「看板娘は居ないが?可愛い子とお話したかったのになぁ…後でバイトを探してる女の子を紹介しましょか?猫耳で可愛くて貯金が趣味な、将来的にダレカちゃんを養ってくれる予定の黒猫だけど」
えへ、えへへ…あの子を紹介するだなんて……て、照れてないが?他意もないが?別に、単に割のいいバイトを探してそうなセリカさんを多少贔屓してついでに看板娘にもなってもらって定期的に通おうかなって考えてるだけだし。
まあ…百鬼夜行まで来るのは大変そうだし断られるだろうけど。ごめんね、オッチャン。あんたの期待には応えれそうにねぇわ。
「あ?必要ねぇっての……ウチは鍛冶屋だ。ガキと戯れたいなら別んトコに行けや」
「愛想がねぇぞ親方。で、鍛冶屋ってことは刀でも売ってんの?てか打ってんの?」
「刀でも銃の部品でも、ご要望通りにやってんよ。ケッ、今の時代に刀なんて使う物好きはいねェけどよォ…部屋に飾りてぇって馬鹿は腐るほどいやがる。チッ…使わずして何が刀だ…」
「おっ、いいねぇ。じゃあ親方が自信あるエモノをちょうだい。こう見えて武器の大半は使えるんだ」
「好きにしやがれ。……ほらよ、銘はねぇ。本当に使うんだったら手前で付けろ」
「うおっ…お高い。ま、払えるけどね。じゃあサンキューです、親方!たまに整備してもらいに来るっす。酷使する予定だから」
「ケッ、心待ちにしておいてるよ」
なんか良さげな刀をGETしたぜ!全体で100cmくらいの、それ以外は何の変哲もない刀。あ、
欲を言うなら、鍔は付けてくれても良いんじゃないかな……刀を使ってくる敵はいなそうだから大した問題ではないけどさ。
今日は珍しく愛銃も持ってきてるし、クッソ重い宇宙服も着てないから…え、過去一最強じゃん。まだループ開始から大して時間も経ってないから体調も悪くないし。
今だったら一人でアリウス潰せるわ。変なのを使ってない純粋なアリウスだったらだけど。
そんでそんで、次のお店へGO!
「ヘイヘイヘーイ!邪魔するぜ旦那ァ!!」
「ヒィッ!ふ、不審者…!?」
「失礼な。ダレカちゃんのどこが不審者だって?言ってみんしゃい」
「フードを深く被って顔が見えないし……なんか服の下がボコボコしてて体型も性別も分からないし、しかも腰に刀を携えているから…?」
「そっかぁ…ならしょうがないかぁ…」
服の下がボコボコなのは、しゃーないやろ。羽とか耳とかツノとか尻尾を無理やり突っ込んでるし。むしろこれらを違和感なく収納出来ていた宇宙服がおかしいんだって。
……ホントか?ホントに違和感なかったか?……うん、ナカッタ。宇宙服を着て歩くのは、キヴォトスでは犯罪ではありません!キリノさんも言ってた気がする。多分、きっと、恐らくは。
「そ、そそそれで……何の御用でしょうか…?」
「ここってなんの店?」
「ヒィッ!すみません!!」
「会話になんねぇや……見た感じ、防具でも売ってんのかな。へぇー、シールド売ってるやん。ツバキさんが使ってるのと似てるね」
「ヒィッ!すみません!!」
「んー、おっ!甲冑あるやん!!良いよね武者スタイル!隙間から肌は見えそうだけど…下は作務衣を着るとして、足袋も一緒に買うか。頭は…包帯でいいや。目は不格好だけどゴーグルで隠すしかないかな。旦那ァ!これ全部でいくらだい!?」
「あっ、その……これくらいになります…」
「高ぇ!?でも買っちゃう!六回払いでおねしゃす」
「素性が不明なので、それは……」
「………ええい!今月は水だけで生きてやらァ!一括払いだぁぁ!!」
「ま、まいどあり〜!……防具袋は、オマケします……ヒィッ!すみません!!」
「さっきからダレカちゃんは何に対して謝られてるんだ?」
「ヒィッ!すみません!!」
とってもこころがピエンなの。だからこそ、とってもこころがピエンなの。
はい、ダレカちゃん無限買物編は終了!意図せず武者になっちゃいそうですね。名前はどうしようか…『ダレカちゃん』は使えないから、ナナシ…トクメイ…ムメイ……よしっ、決めた!『
ついでに武器も手に入ったし、ダレカちゃん改めムメイのなんちゃって剣術が光るぞ〜!!
「……………」
とりま多目的トイレでちゃっちゃと着替えまして。
ムメイと名乗る以上、今から面倒臭いことになりそうだから着替えておきたかった。大きな意味はないけど、敢えて言うのであれば
着替えてから適当な空き地に出て、横にして三つ積まれた土管の上に正座する。え、ムメイかっこよくね?よしよし、チョーカー型の
「――来たか、災厄の狐よ」
うおっ、ムメイの声渋っ!
じゃなくて。今は彼女に警戒しないとなぁ……今は負けないけど、ループ初期頃では負けた事もあったし。まあ?今は負けないけど!
「……気付いても尚、敢えて尾行させていたと?」
「然り。ムメイは、当初より尾行を把握済み。なれど、問題がないと判断した次第」
「そうですか。では、
「……むっ」
ちょっ!ワカモさん!?もっとお話とかしないの!?いきなりバトルな展開ってのもワカモさんにしては珍しい気が……この人、脳筋に見えて策謀家だし。
ムメイから色々と聞きましょうよ…ちゃんと設定も練ってきたし、ちょうどワカモさんがストーキングを始めたのも百鬼夜行に到着してからだったので出身校も百鬼夜行ってコトにして壮大なストーリーを考えてきたのに!
取り敢えず挨拶代わりの鉛玉が脳天目掛けて飛んできたので、素直に刀で弾く。おぉ…刀が欠けてない。親方め、腕は確かだな。
「待たれよ、災厄の狐」
「待つ必要性を感じません」
「ムメイはセンセ…先生の寝顔の写真を入手している。故、条件次第では譲渡しよう。故に話を――」
「っ!な、ななな……ッ!」
「………む?」
「なんて破廉恥な提案を!貴方のような者があの方の傍に居ると思うだけでも…虫唾が走る!!貴方を殺し、写真も厳重な監視下の元で保管し、あの方の平穏を守らなくては…!!」
え、待って怖い。ムメイ、この子怖い。
同じ言語で、間違ってない文法を用いての発言なのに…なんか怖い。助けてセンセ……は?センセを助けるのはムメイなんだが?
「――秘剣、乱桜」
「…面妖ですね。粗末な棒一本で全て弾きますか」
「我が流派は暴食の極み。ムメイが観てきた全てを呑み、昇華するのみ」
嘘です!全て嘘です!!技名もテキトーですし、流派云々もテキトーです。てかさっき自分で言った技名ももう忘れたし……なんだっけ?奇剣・アブラカタブラだっけ?
ま、無限に技があるって設定で良いよね。ふへへ、なんかカッコイイ……いつかは二刀流とかもやってみたいね。
「埒が明かぬ……故、参る。
「は?なにを――ッ!!」
「雪羅・一太刀」
「くっ……!野蛮で、芸がないですね…!」
だって脚力にものを言わせて前に出て、刀を振っただけだもん。芸どころか技もないっての。てか普通に躱さないで?モブさんならそのまま倒れるくらいには洗練した一撃なんだし。
「二ノ太刀・裂破」
「……ッ」
「瞬靂・三ノ太刀」
横薙に、次に返す刀で燕返しモドキ。もちろんテキトーです。へへっ、この口が…この口が悪いんです…
にしても当たらない……メタナイトみたいに仮面がパッカーンってのを狙ってるんだけどね。
「――随分とお遊びがお好きなようで…!」
「ぬっ……弾けぬ、か…」
「粗末な棒を砕くつもりだったのですが…そこまで愚かでもない、ということですか」
貴様ァ!神秘を込めるなぁぁ!!買ったばかりの刀が折れちゃうでしょうが!!
クッソ、刀の使い込みも愛着もまだまだ足りないか……上手く神秘が籠らんね。銘でも付けるか…?親方も言ってたし。
よしきた、今日からお前の名前は『迷剣ナナシ』だ!オラ!神秘篭れ!篭れオラ!お前が
「…………」
うん、まだ無理。使い込みが足りぬわ。買って三十分で愛着なんて湧いてくるかよ。
「…随分と余裕そうですね。死になさい」
「否……そうか、まだ…その時ではないか」
「は?なにを…」
「次こそ、避けろ。でなければ怪我はまぬがれまい――往くぞ、
仕方ないので愛銃のメメント・モリくん登場!パチパチパチ。つっても銃自体はそこまで特別じゃないけど。精々愛着があって、これまでのループでの経験、記憶、神秘を観測者たるムメイが肯定するからこそ、ムメイにとっての唯一無二で最強な愛銃になっただけのグロック26くんだね。
そんで、これをワカモさんの足元に向けて――
「どーん!!」
「なっ!?」
ワカモさんが飛び跳ねて躱すのと同時、地面に
多少地面が揺れて、爆風と砂埃は暴力的な煙幕になってくれます。なのでこの隙に
はい、そんな感じで逃げ切りましたとさ。めでたしめでたし。甲冑は宇宙服より軽いし、めっちゃ速いよ。今のムメイは。
………あ、みたらし団子あげるの忘れてた。しゃーないのでセンセがいない間のシャーレにでも置いておこう。食べるでしょ、センセなら。
◆◆◆
「……誰ですか、貴方は……誰に、なってしまったのですか…」