シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ムメイは先生と邂逅する

 

――ダレカちゃんが姿を消してから、四日が経った。

 

その間、私の情けない心情が吐露される事もなく、アビドスの彼女達を取り巻く問題だけは増え続けた。ブラックマーケットではダレカちゃんが居なくなった後に、色々とあって闇銀行で銀行強盗をして。

 

その後すぐに便利屋68のみんなが何かの手違いなのか、柴関ラーメンを跡形もなく爆破してしまって。

彼女達と交戦しているところに次はゲヘナ風紀委員会が乱入して……端的に言って、疲れ果てた。ダレカちゃんとの一件で寝不足気味だし、その上ゲヘナ風紀委員会は私を狙っていたと聞いた。

委員長であるヒナが止めてくれなければ、今頃は私の身柄はどうなっていたのだろうか…?

 

斯くして偶然と策謀が重なった結果、カイザーがアビドス砂漠で怪しい動きをしているとの情報が手に入った。明日はアビドスのみんなと調査に行く予定。

 

…詰め込みすぎて何を言っているのか分からないと思うけど、私だって理解が追い付いていない。

 

 

でも、それよりも目下の問題は――

 

「…………」

 

「……………こ、こんにちは…?」

 

「…………」

 

「お、お散歩……ですか…?」

 

「…然り」

 

怖い怖い怖い怖い!!

 

なんでアビドス高校の前に鎧武者がいるの!?え、なんかこの人だけ画風が違くない!?

腰に刀を刺してるし、背はそこそこなのに甲冑のせいでかなりゴッツイし……何より、声が渋い…!ダレカちゃん助けて……!!

 

私の動揺を察してか否か、鎧武者さんはおもむろに懐へ手を突っ込み、何かを取りだした。……え、受け取った方がいいの?

 

「……汝に、此を」

 

「え?………これ、発煙筒…?」

 

「然り。……求めよ、然らば与えん」

 

「…えっと、困ったときに使えってこと?そしたら助けてくれる、と……」

 

「否…ムメイは、汝の厭う世を斬るのみ。挑め、望め、臨め――ならば、刹那の時を共に在ろう。気高き嘶きを響かせよ。憧憬の果て、汝を一太刀の元に、刹那の主と定めようぞ」

 

「…………ごめん、端的に換言して?」

 

「………其れを使え。助ける」

 

なんだろう……物凄く、呆れられてる気がする。いや…だって仕方ないよね。言い回しが独特だし、なんちゃって武士言葉みたいな…言うなれば詩的な表現だから解釈の仕方も複数あるし。

 

多分、この怖い武者は中身がとっても面白い人だ。てか声が渋いからきっと強いし。ダレカちゃんも言ってたし、声が渋い人は全員ユーモアに溢れていてかっこよく、そして強いんだって。

 

「有難いけれども……どうして助けてくれるんだい?貴方は、私を知っているのかな」

 

「然り。カチカチ山のゴン太郎、其れが汝の名であり、在り方だ」

 

「違うよ!?」

 

「………失敬、シャーレの先生だ。少々、噛んだ」

 

「どう噛んだらカチカチ山のゴン太郎って言うのさ……もしかして、わざと?」

 

「かみまみた」

 

「なっ……わ、わざとじゃない!?」

 

うん、わざとじゃないから仕方ないかぁ…だよね。厳格な武者さんがボケを挟んでくるわけがないもの。私とした事が初対面の人に失礼を働くだなんて、本当に申し訳ない。

 

……それにしても、改めて見ても奇怪な格好だ。

 

黒と紺をベースにした甲冑と、作務衣に足袋。刀の鞘まで殆ど同色だというのに、どうして真っピンクのハート型ゴーグルをしているのか…声の渋い武者さんの事だから、きっと私なんかでは想像もつかない程の深い理由があるに違いないけど。

やっぱりリアル武者はかっこいいね。私もいつかは立派な武者になってみたい……何処かで甲冑とか売ってないのかな。

 

鎧姿で夜中のシャーレを彷徨いて生徒を驚かせたい。そしてダレカちゃんに尊敬されたい。………後でユウカに交渉してみよう。私の財布の紐はユウカに握られているからね。

 

「…………」

 

「……む、何用か」

 

「写真、とってもいいかな?私の大事な生徒…相棒にも見せてあげたくて」

 

「ッ!……こ、断る……魂が抜かれる、故…」

 

「っ!」

 

すごい…理由がそれっぽくて良い!もう疑わない、疑いようもない……この人は低レベルなコスプレなんかじゃなくて、戦乱の世から来た本物の武者だ!!

 

是非とも握手したい…けど、安易な接触はダメかな。模写は……残念ながら私には大した絵心もないし、描いたとて誰も信じてくれなそう。

このモノホン武者さんが普段からアビドス高校付近に生息しているなら話は別だけど、少なくともセリカがダレカちゃんを初見で『化け物』って言ってたからには武者さんの事も知らないだろうし。

 

……よくよく考えたら、まだ名前すら知らないね。一人称で何となくわかるけど、苗字か名前かも分からないから。交流を持つなら、フルネームくらいは知っておきたい。

 

「…貴方のこと、なんて呼べばいいかな。武者さんって呼び続ける訳にもいかないからね」

 

「――ムメイは、戸久銘(トクメイ)ムメイだ。誇り高き戸久銘(トクメイ)家より武者修行に、各地へ赴いている」

 

「トクメイ……ん?匿名無名…?」

 

「汝……シャーレの先生よ、我が名が何か?」

 

「あ、ううん。何でもない…気の所為だと思うから」

 

この秘密主義丸出しな安直ネームセンスには何処と無く覚えがある気がするけど、きっと気の所為だ。あの子はこんなに畏まった真面目な喋り方なんてしないからね。

 

それにしても、不思議そうに首を傾げる動作にも風格がある。しかも声も渋い……声が渋いから風格があるのか、風格があるから声が渋いのか…非常に難しい問題だ。

 

そもそも、刀を持ってる時点でムメイは異様でかっこいい。だって、銃とか爆弾が挨拶代わりに飛び交うキヴォトスで、刀一つで武者修行をしているんだ。きっとスタイリッシュに銃弾を斬ったり、なんなら斬撃をドゥパァ!って飛ばすに違いない。

ムメイの実力に興味津々な反面、もしも拝むことが出来るとしたら私やアビドスのみんながピンチに陥って、手渡された発煙筒を使ってしまった時だろう。

 

そんなピンチがないことを、先生としての私は願うばかりだ。……プライベートで剣技とか見せてくれないかな。是非連絡先を……いや、武者だから携帯端末なんて持ってないか。普段から糸電話か伝書鳩で仲間と連絡をとっているに違いない。

 

「――シャーレの先生よ」

 

「うん?」

 

「努々、忘れるな。其れは幻影されども、汝と共に在らん。逢いたくば()()…在るべき形を欲する者にこそ、答えは訪れる」

 

「……端的に言いまして?」

 

「…………求めるものがあるなら、声にしろ。()()ならば応える」

 

「…そっか」

 

残酷なまでに簡単で単純で、でも難しい……ムメイには私やダレカちゃんについて、全て見透かされているような気がした。

 

 

それだけを話して、ムメイは私に背を向けて去っていった。そして………そっちは私の帰り道でもあるんだよね。

このまま追ったら色々と格好がつかないので、取り敢えず一旦はアビドス高校に戻って武者を見たって主張した。そしてノノミに優しい顔で膝枕された……いいよね、膝枕。ひざまくら、だいすき。

 

◆◆◆

 

はい、ノルマ達成。

 

どーもどーも、ムメイです。センセと会わなかったら無事死亡するって謎ルールに振り回されている武者っ子ムメイです。

センセに最強で無敵なムメイを魅せてしまって…へへ、罪作りでごめんよ?……死なせてるから本当に罪作りだね。どうした?笑えよ、ベジータ。

 

…これまでの記録を纏めるに、最長で一週間。短ければ四日会わないだけでムメイは死にます。心臓が止まったり破裂したり…なーんか面倒臭いね、面倒臭いところも好きになって?ムメイは面倒臭い子は苦手だけどね。

 

そーゆーワケで、割とアバウトな感じでムメイとセンセの運命って変わるワケでして。マジで、ホントならもっと確かなデータが欲しいところだけど?でもでも死ぬのは苦しいし辛いから、悠長に死に続けてデータなんて集めてられっかよ。

 

……して、明日だね。

 

明日、センセ達はアビドス砂漠で怪しい動きをしているクソ企業…カイザーPMCと明確に敵対します。簡単に言えば、カイザー側が『おんどりゃあぁぁ!テメェらなに勝手にウチと敷居跨いどんねん!ゲヘナだとぶち殺されてもモンク言えんぞォ!?』的なことを言ってアビドス高校の変動金利3000%上昇とかってバグを起こしまして。

 

アビドスあえんびえん地獄祭り開催ってか?砂祭りと一緒に即刻廃止してもろうて。

 

ま、しょーじき言いまして。

 

ムメイはこの一連の流れで戦闘以外に手を出すつもりはありませんが、しかしなればこそ思う。いや、センセお前…シャーレの超法的権限を盾にしろよ…って。

シャーレの権限って()()()()()()()()()様々な事象の捜査を、相手側の頷きを待たずして行えるってのが大きい。そこに学園だとか企業だとか、なーんにも関係ない。

 

だからカイザー側が何を言ってきても『シャーレなので!ええ、だってシャーレなので!!しかもなんとシャーレなので!!』って言い切れば法律的にはなんの問題もない。

 

そうしない確かな理由ってのもムメイには分からないけど、後のどんでん返しを期待するのであればセンセに殆どを任せるのが一番だね。

こーゆー場面でムメイが出しゃばると大体、センセが死ぬ。ムメイにはセンセの道を邪魔する権利も、手を引く価値もない。じゃけん、周りでうろちょろとする程度に落ち着きましょーね。あー、マジでバニバニ。

 

「………さて、何を持って行こうか…」

 

シャーレ第二休眠室にて、一人で声をこぼす。

 

そも、ダレカちゃん(宇宙服モード)の利点は結構デカイ宇宙服の内側に色々と収納出来る点と、そもそもが格好悪いからデカイ鞄とか持ってても違和感がなかった所だね。

でもおNewな戸久銘ムメイ(武者モード)は刀以外には何も持てないし、辛うじて鎧の下にメメント・モリを隠し持てる程度。デカイ鞄なんて持ってたらスピードを活かせないし宇宙服モードとの類似点すら出来てしまう。

 

だから荷物も限られるんだけど……センセが怪我した時用の医療セットくらいは持っていかないとだね。じゃないと簡単に死んじゃう貧弱雑魚雑魚生物やからね。今日も今日とて胃が痛いぜ!

 

「…………てか、医療セットしか持てねぇか……」

 

銃は作務衣の下に隠してるレッグホルスターに入れとくとして、医療器具は胴の微妙な隙間に括り付ければモーマンタイ。

他は諦めよう。人が揃ってるから遭難はしなそうだし、アビドス砂漠に着き次第、徘徊オートマタがいるからシッテムの箱も常に起動させてるだろーし。

シッテムの箱が起動していれば、謎バリアがセンセを守ってるから万が一が起きない…筈。シッテムの箱のサポートが途切れ次第死ぬだけだね。クソッタレかよ……

 

 

とりま、これ以上の準備なんてしても無駄だ。

 

明日は身軽な方がいいし、万が一なんて起きた想定ばかりしている時点でクソだ。保険が重荷になってたら笑う気力すら失せるってモンやわ。

あーあ、センセが防弾ベストでも着てくれたらムメイの抱えてる問題の一割くらいは解決する可能性がないとも言えないんだけどなぁ!

 

 

……さて、今日わざわざシャーレに来たのには、もう一つの理由ってのがありやす。

 

端的に言って、食料の確保だね。腹は空かないけど食わないと肉体的コンディションに支障をきたすから。無理にでも詰め込んでリバースしないように口を抑えないと。

そんで、先日の甲冑諸々購入によってムメイにはお金がまっっったくない。センセの懐事情よりも寂しい。このままだと後二週間は水だけで過ごすことになっちゃうので、仕方なくシャーレを漁りに来た次第でゴワス。

 

センセのエナドリと、センセのポテチと、センセの冷凍食品諸々と――どーせ保存食諸々は使わないんだし、貰って帰ろう。へへっ、かっこいいムメイの為だし悪く思うなよ?

 

そんじゃ、トンズラこきましょ。ぬっへっへ…ムメイに隙を与えたセンセが悪いんですからね。

 





ちょいとダレカちゃん及びムメイの正体のヒント第一段。

・秘書になった理由はお金のため(一話参照)

・連邦生徒会長から宇宙服を()()()()()()。なので本人の意思で、予定はなくともいつか使う必要性はあった。

・リンちゃんが性格豹変前のダレカちゃんを疫病神と比喩した。つまり、相応の"種"ではある。

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