やっはろー、ムメイだよ。
今はアビドス砂漠にてオートマタ集団をぶち殺し中です。ま、単に手足をキリキリして行動不能にしてるだけやけど。カイザーさぁん、後で修繕頑張ってね?やくめでしょ。
この場において、ムメイの目的…というか予定は、テキトーにオートマタをそこそこに蹴散らしてから逃げること。ここでオートマタを減らすことで後々のカイザー関連でセンセの死亡率を減らせるし、それはこの場でも同様ッス。
それにシャーレのヤバさってのを知らしめるチャンスだし。デッケェ企業の一部を簡単に潰せるんだぜって、キヴォトス全体に猛アピールキャンペーン!そーしたらセンセを狙うクズ共も多少は減るだろ。知らんけど。
べっ、別に…センセが心配だからオートマタを蹂躙しているワケじゃないんだからねっ///いやマジで、自己満足やから。つまりセンセの黒歴史をばら撒くのも自己満足♡
そんで。地味にちょっとずつセンセ達から離れまして……天誅ァーーッッ!!喧嘩を売る相手を間違えたなァ!!
十
なんやかんや殺ってますと、より基地内部に突っ込んでいたセンセ達がカイザーPMCの兵隊に囲まれております。そして同時に、ムメイイヤーは遠くの空からヘリが飛んでくる音を捉えまして。
カイザーPMC理事が運送されてるね。今から落ちて死ねばいいのにね。サッちゃん、ばにたすして?とくいでしょ。
理事め、夏になったら覚えてろよ……ボッコボコにして砂に生き埋めにしてやるからな。
はいはい、ちゃんちゃん。じゃけん一体でも多く減らして現場を離れやしょうね。戦闘中にはぐれるだなんて有り触れてるし、センセもムメイが消えたとて変には思わんでしょ。
それでも心配するのがセンセの良いところなんだけどね。………はぁ、死なせたくねぇなぁ…
…なんて、クソをする程の価値もねぇ感傷は便所に流して、スタコラサッサと逃げましょう。ムメイの状態だったらクッソ重い宇宙服よりもマシだし、風にだってなってやりましょう。へへっ、逃げ上手のムメイって呼んで欲しいな。
テキトーに離れましたら、嫌がらせ程度に石を投げてヘリを墜落させましょ。全身凶器なムメイが持てば石だって立派な武器なのさ。
なーに、キヴォトスの住民は頑丈なんだ。砂のクッションもあるし、ヘリを墜落させたくらいで死にやぁせんよ。ザンネンながらね。
――それから300年が経ち、そこから299年と11ヶ月29日12時間程遡り。
つまり逃げ帰ってから12時間が経ちまして。夜中です。真っ暗だね、つまり真夜中だってことだね。ってことは漆黒よりも明るくて純白よりもドス黒い感じだね。意味わからんから陸八魔アルをぶち殺すわ。
一旦帰ってから鎧を脱いで、宇宙服を着ます。へっ、ムメイの名はダレカちゃんが置いてきた。修行はしたが…ハッキリいって、この闘いにはついていけない。
つーことで、ダレカちゃんが復活しやした。ま、鎧でも宇宙服でも不審者だってのには違ぇねぇッスけどね。
実際はアビドス高校に行くのにムメイのままだと色々と問題があるってだけやけどね。ダレカちゃんも伊達に精神年齢を重ねてないんだから、そろそろ嫌なことに目を瞑るのは止めます。具体的に言えば、センセと仲直りでもしてあげましょ。
そんで夜のアビドス高校に行きますと――
「だ、ダレカちゃん!?」
「ああん?」
ちょーど学校から出てくるセンセがおりまして。お疲れ気味やね、しゃーないけど。アビドス砂漠でドンパチやった後だし、ホシノさんとお話して精神的にも疲れてそう。まあ、顔には出さないだろーけど。
「あー、センセ。どもっす」
「えっと…その、ダレカちゃん!私は――」
「あ、ゴメン。忙しいから後でいい?ちょっとホシノさんに用事があるから」
「えっ、あっはい」
「……後で構ってやるから、先に駅でグワシグワシとケツでも掻きながら待ってなって。ついでにエナドリを買っててくれたら褒めてあげるよ」
「色々とツッコミたいところだけど……うん、分かった。待ってるからね」
「え、いまダレカちゃんが儚くも美人で憂い顔の似合う高嶺の華な最高最強秘書だって言った?」
「ううん、おにぎりが食べたいなって言っただけだよ」
「は?なんで急に穀物の塩化ナトリウム漬けの話を…?お腹すいてるなら足元に砂が沢山落ちてるけど…」
「足元の砂を食べろと!?………うん、もう全部私が悪かったって事でいいや。空が青いのも、アビドスに借金があるのも、ダレカちゃんがアホなのも、全部私のせいだね」
ほう、分かってんやん。ダレカちゃんは根っからのセンセアンチ勢だし、センセが非を認める姿が大好きだよ。ざーこ♡ざーこ♡
チラッとダレカちゃんをアホ扱いしたセンセのケツを蹴り上げてから校舎に入って、ダレカちゃんイヤーで物音のする方向に向かう。
この後のホシノさんは黒服と契約をするつもりだろーし、今頃は部室に退部届けでも置いている頃だろうね。その退部届け、一応は顧問のセンセは認めないから無効になるぜ?言わんけど、予定が狂ったら困るし。
相変わらずクッソ重い宇宙服を馬鹿みたいな筋力で支えながら学校を闊歩していると、あーら不思議。部室前にピンク髪の女の子がおりまして。
「へい、お嬢ちゃん。お茶でもどーだい?」
「っ!……こんばんは、ダレカちゃん。昼間ぶりだね」
「…おいおいキョーダイ、『ダレカちゃん』は数日ぶりだぜ?」
「そっか。まー、別に言いふらす気もないけどね。それで?こんな夜中にお散歩?それとも不法侵入かな〜?」
おいやめろ。この格好だから洒落にならんぞ。でも…言い訳をするのは三流だ。いや、ただの三流じゃねぇ…ド級の三流、ド三流だ。
出来る秘書ならば、この誤解も上手く利用するのさ。……ん?いや、別に誤解でもなくね?……まあ、それは永遠に斜め後ろに置いとこう。
「デートのお誘いだよ、ホシノさん」
「うへ、ごめんね。不審者はちょっと無理かな」
「泣くぞ?」
「二割は冗談だって」
「うーん、冗談ならしゃーないか。で、少しだけオハナシしようぜ?
「っ!……なんで、知ってるのかな?先生にも話してないんだけどなぁ」
「全部知ってるよ。退部届けを部室に置いてきた事も、やっとセンセを信用出来たことも――黒服との契約につ………おっと。ホシノさん、急に銃を向けないで?」
怖い怖い……眼が据わってるよ、ホシノさん。
…にしても、人目のない所で弱みを突いたらこーなるんだね。得体の知れない人物に向ける視線ってヤツかな?刺激的だね、心地好くない方の。
銃口を向けられるのは予想外だったけど……モーマンタイ。撃たないでしょ、ホシノさんは。自分からは裏切れない質なんだから。
「キミ、何者?」
「ダレカちゃんだよ」
「昼間は戸久銘ムメイって名乗ってたよね」
「ダレカちゃんは千の貌を持っているからね。顔も声も性別も姿形も、信用しない方がイイよ」
「そっか。で、質問は終わってないよ。何者なのかな?」
「答えないよ?どんなに貌があっても、ダレカちゃんはセンセの秘書だし。他に重要なことってある?」
「………狂ってるんだね、君は」
「ダレカちゃんへの理解度が少しだけ上がったね。ちなみに、アヤネさんは既にそこに至ってるぜ?可愛くて将来有望な後輩を持ってるようで羨ましいね。……んで、そろそろ銃は下ろして?」
「……………」
あっ、本当に下ろしてくれた。まー、ダレカちゃんに敵愾心は最初っからないし、それを理解した上でホシノさんはダレカちゃんを脅そうとでもしてたのかな。
モチロン、ダレカちゃんは脅しになんか屈しないけど。ダレカちゃんは強いし?とっても強いんだし?
「はぁ……それで、何を企んでるの?」
「ちょいと、ホシノさんを助ける予定でして」
「……はい?」
「ほら、これからホシノさんって黒服との契約に応じるやん?だから、その上で助けるよ。じゃないとわるーい未来になりそうだからね」
マジでなるんだけどね。ほら、ホシノさんってアビドス高校の最初の壁で最後の盾やん?俗に言う最強格ってやつ?だから居ないとアビドスがヤベェし、センセの生存にも関わるから死なせる訳にもいかない。
個人的にもホシノさんは助けたいし、それでセンセの未来にプラスしかないんだったら、笑顔で腕を伸ばすよ。本人が拒絶したとしても、引っ掴んで連れ戻す。
色々と御託を並べてるけど、ダレカちゃんが言いたいのは――
「楽になろうとするな。責任から逃げるな。センセに、全てを投げ出そうとするな」
「………止める気?」
「いや?別に止めないよ。黒服のトコに行ってもダレカちゃんは止めたり告げ口をしたりはしないし、ホシノさんを傷付けるつもりはないよ」
「…それは、ちょっと困るなぁ……もしも私がアビドスと敵対したら、ダレカちゃんに私のヘイローを壊してもらう予定だったのに」
「とんでもねぇ責任をぶち込まないで?」
きっと、ホシノさんにとって一番可能性を感じていたのがダレカちゃんだったってだけの話だ。未来を担う後輩に殺させるのは気が滅入るし罪悪感もある。
でも、ダレカちゃんだったらホシノさんにとっては良くも悪くも思い出なんて薄いし、どんなに非情な決断だとしても後輩に手を汚させるよりはマシだって考えたんだろうね。
でも、だからこそ――断言出来る。
自分の責任や立場を捨てて、大切な人と敵対する。そんな未来が
自己犠牲なんて美徳なわけがないだろ。結局は自己満足の延長線上だし、自分の罪悪感に人を巻き込むなって話だ。
「ホシノさん、簡単に死ねると思うなよな。アンタも他の皆も、センセの未来に必要だったら寿命までぶっ生かしてやる」
「本気で言ってるの?ダレカちゃんはもう少し、現実主義な性格だと思ってたんだけどね」
「馬鹿みてぇな夢を掲げれない奴が理想なんて叶えれるかよ。理想郷に辿り着けるなら、いくらでも馬鹿になってやる」
「うへ…若いねぇ。おじさんはもう歳だから、そーゆーのは向いてないかな」
「はぁ…ホシノさん、賢いフリなんてやめたら?あんたはダレカちゃんよりも馬鹿だ。馬鹿な先輩に感化されて、馬鹿みたいに駆けずり回っていた頃。…理想を謳う先輩に近付いてるなら、そりゃあホシノさんがちゃんと馬鹿になれてるってことだろ」
「………本当に、君は何処まで知ってるのかな。あの人との思い出を、少なくとも他人に言って聞かせたことはないんだけど…」
「さぁ?もしかしたら、他人じゃないのかもね」
遠い記憶の果て……薄れてる原初の記憶。あの人の支配から度々抜け出して、キヴォトスを旅していた頃。馬鹿な人と、賢いフリをした馬鹿と過ごした僅かな時間。
現実主義っぽく見えるらしいダレカちゃんが理想を追い続けているのは、どっかの馬鹿達の影響もあったのかもしれない。
あの頃から全てが変わって、別人になって。それでもホシノさんを助けたいって純粋に思うのは、別にセンセの為だけって話でもない。
基本的にダレカちゃんはやりたい事をやる。センセをぶっ生かしたいから、無茶を重ねる。ホシノさんにはまた馬鹿になって欲しいから、それまでは死なせない。
「……最後に聞くけど、何をするつもり?」
「基本的には何もしないよ。切っ掛けはセンセが作って、歩むのはホシノさんの後輩達――だったら、道くらいは造るさ。あの子たちが手を伸ばせるくらいにはね」
「そっか………でも、油断しないでね。私が敵として現れたら、キミだけには手加減しないから」
「そりゃあなんでだい?」
「だって、キミ…不審者だよ?不審者が夜の学校を徘徊してるんだから、合法的な手段の元で成敗出来るなら願ったり叶ったりでしょ」
「終いにゃ泣くぞ?」
「あまり大声で泣かないでね?心霊現象だって勘違いされちゃうから。………じゃあ、
「うっす、じゃあまた後日」
短く言葉の余韻を残して、ホシノさんはアビドス高校を去った。そして……
………ごめんね、ホシノさん。
これだけは伝えれなかった……ホシノさん、アンタ…あんなに格好付けてんのに、別に敵として前線で出てくることはないんだぜ…?
アイツらが求めてるのって兵士としてのホシノさんじゃなくて、アビドス随一の神秘を誇るモルモットだし。
敵として出てくるなら脅威にカウントするけど、囚われのお姫様だったら今作戦で困る要素もない。
普通にセンセの指示の元で動こう。あ、指揮は受けないけどね?恩恵が大してないし、寧ろ危険だし。
ダレカちゃんレベルになると、シッテムの箱の領域で可視化される爆発予測ポイントとか弾丸の予測線とか、サポートがなくても何となくわかる。それに加えてセンセの口頭での指示はダレカちゃんの思う『最善』に向かって動いてる最中にやっと届くから、遅くてテンポが狂うし。
今の状態だったら、シッテムの箱のサポートはダレカちゃんに大した利点を齎さない。故に拒否ってる次第。強くなってね、センセ。
強さだけじゃあ全ては救えないけど、力が無ければ目の前の人を救えないからね。