御機嫌よう、ダレカちゃんでございますわ。
ふふっ…月光の照らすアビドス駅、とっても幻想的ですわ。雑に人なんて居なくて、ダレカちゃんとセンセだけが外のベンチに座って……へっ!クッソ気まずいんだよォ!!
センセ…大人なんだから先に何か言って?やくめでしょ。じゃないとダレカちゃんが単なる宇宙服の置物になっちまうよ…
「……えっと、ダレカちゃん」
「はいはいダレカちゃんですわ」
「ホシノとは何を話してきたの?」
「ナンパしてきただけですわ。でもフラれてしまいましたわ。グスンですわ、悲しいですわ、虚しいですわ」
「そっか……で、なんで似非お嬢様言葉?……まあ、ダレカちゃんだから考えるだけ無駄かもね」
似非とは失礼な。リアルお嬢様なゴリラと紅茶中毒者から学んだし……ん?あの人たち、別にですわ口調じゃなくね?
ちくしょうめ!孔明の罠だな…ッ!!
そもそも、あの学校さぁ…お上品に見せかけただけのゲテモノだし。トップ層が万年椅子座りお嬢様とかPOWER is JUSTICEなゴリラゴリラゴリラとかセクシーセイアとかだし。
他のも顔が怖いシスター頭に、高度な救護脳。やべぇ奴をピックアップすると、自称一般生徒のペロロ狂い、変態ムーブ大好き女、無差別死刑ちゃん、氷の魔女(笑)。
え、もしかしてトリニティってマトモなお嬢様がいない感じ?……そりゃあダレカちゃんもお嬢様ムーブをラーニング出来ないし、センセからも似非って言われるわ。
「んで、センセ。アダルティーなダレカちゃんは単刀直入に言ってやろう。渋々、仕方なく、苦虫を噛み潰して苦渋を飲んで、センセと仲直りしてあげよう。ほら、ごめんなさいは?」
「なんて上から目線で高圧的なんだろう……」
「げへ、ゲヘヘ……そのぉ…よ、宜しければダレカちゃんめと仲直りを……ヒッ!すみません!!……ダレカちゃんごときがセンセ様と仲直りだなんて烏滸がましいですろね……へ、へへ……貴女様の一派の端っこにでも入れて頂ければ……」
「なんて下から目線で消極的なんだろう……」
「ふんっ!べ、別にセンセと仲直りをしたいなんて思ってないんだからね!……で、でも?センセがどうしてもって言うなら……ふふん!仲直りすることも吝かじゃないんだからね!!」
「なんて中から目線でツンデレ的なんだろう……」
「ねえ?センセはダレカちゃんと仲直りしたくないの?ダレカちゃんはこんなに誠意を見せているのに、センセは応えてくれないんだね……そっか、どうせダレカちゃんが全て悪いんだよね。ホント、センセは昔からそう……アレでしょ、ダレカちゃんが居なくなった方が別の生徒を秘書に出来るから、仲直りなんてしなくないんでしょう?」
「なんて斜め上から目線でメンヘラ的なんだろう……」
「オデ……オマエ、ナカナオリ……ソシテ、タベル……」
「なんて斜め下から目線で原始的なんだろう……」
「…………何やってるん?ダレカちゃん達は」
「…………仲直り?」
何故疑問形なのか。……その答えを、ダレカちゃん達はいつも探しているのかもしれないね。
――
「…プッ、クク…!」
「………はぁ、ダレカちゃん。ふざけすぎだよ?」
「なんだよ、嫌かい?」
「まさか。君と私なら、これくらいが丁度いいんじゃないかな」
「え、何ですか口説いてるんですか?ごめんなさい別にセンセの事は嫌いじゃないしどちらかと言えば好き寄りだけどそーゆー好きって感じではないので今は無理ですゴメンなさい」
「告白してないのにフラれた……そうじゃなくて!私は確かに、ダレカちゃんについては知らない。本当に、何にも…今の性格だって本来の
「さあ?どうやろね」
少なくとも、『ダレカちゃん』や『戸久銘ムメイ』になってからは素の自分は捨てた。前々からの知り合いだったホシノさんやワカモさんが気付かない程度には切り離しているし、心の中ですら『ダレカちゃん』で在り続けてる。
千の貌を持つモノとして、たかが原初になんて執着する必要性ももう感じない。そーゆーの、邪魔なだけだし。
「探る気はないよ。でも、だからって私はダレカちゃんとの付き合い方を変えるつもりもない」
「…あーね?そっか…で、自分で言ってるコトの意味、理解してる?」
「もちろん。この先…例え君が何に成っても、変わらなくても、何処かに行こうとしても。私は他でもない『君』の隣に居続ける。拒まれても、粘着する所存」
「………ホントさぁ、強情じゃない?相変わらず」
「でも、それがダレカちゃんの"識る"私だよ。ダレカちゃんがずっと必死であるなら、私だってそうするさ。だって――私は
……相変わらず、ズルい大人だ。
突き放しても寄ってくるし、偽っても内心に寄り添おうとする。ホントに酷い…最低だ、大嫌いだ。そうやってダレカちゃんの唯一無二になってしまうから…諦めれないんだ。
何千と繰り返しても、一度だってセンセを見捨てることは出来なかった。
考えたこともあったよ?もしかしたら、ループを終わらせる条件はセンセを見捨てて生きる事なんじゃないかって。
だから罠に嵌めた。銃を向けたことだってあるし、陰では敵対組織に属して色々と仕向けようとしたこともあった。
――なのに、最後には絶対に
単に、ダレカちゃんはそう在れない。自分を曲げる事が得意で、姿も心も変貌させてきたのに……センセを見捨てて自分だけの道を探すことが出来なかった。
「センセ」
「なんだい?」
「ダレカちゃんはさ、センセに何にも期待してないよ。大義を成すのは
「――じゃあ、ダレカちゃんが私に想う理想はなんだい?そこまで大した人間ではないけど、君がやれて当然と思う以上の私って?」
「只々、
「………じゃあ、ずっと近くで見ててね。ダレカちゃんは私の言葉なんて信用しないし、結果の伴わない戯言なんて虚しいだけだって思うでしょう?だから、生きて証明するよ」
…よく分かっていらっしゃる。ムカつくくらい、ダレカちゃんを理解している。
雲に遮られていた月光が差し、センセを照らす。なんだよ…生存フラグでも建ててくれてんのかよ。ホント、クソッタレな世界だ。
「―― 一年、十年、何十年……その先も、私を見張っててくれるかい?」
「……ケッ、しゃーないっすね。今の世界に限って、センセが死ぬまでは監視してるよ。願わくば、死因は寿命であってくれよな」
「斯く、ありたいモノだね」
別に、すぐに死ぬセンセを信じたんじゃない。センセのアンチだし、言葉を尽くされた程度で信じたりなんかしてやるものかよ。
『ダレカちゃん』が信じたのは、この世界で生きる今の貴女だ。雰囲気に流されただけかもしれないし、後悔するかもだけど……幾千の世界線が在れども、そっくりなだけの別人が何千と存在したとしても、たった一人の貴女を信じる。
死ぬなよ、センセ。……信じさせてくれよな。
◆◆◆
そんで翌日。
なんとなんと、廃校対策委員会の部室からホシノさんの退部届けと心冷えまくるお手紙が見つかりました〜!
皆の顔面は青白くなってるでしょうねぇ。…………ま、ダレカちゃんはその場には居ないんやけどね?
「ククッ……」
「ぬっへっへ」
ダレカちゃんは黒服と談笑中でした。ぬっへっへ、ププッ……にははっ、キヒヒ!キャァッハッハッハー!!……いやなにワロとんねん。ぶち転がすぞ。
まー、談笑っつーか牽制?的なやつだけど。余裕を滲ませるのが大人の交渉術やで。いや知らんけど。この人、いつもククッてるし。
「…はて、何故笑っているのでしょうか?」
「アンタが『ククッ』って笑ってるからだよ?ダレカちゃんはね、つられて笑っちまうタイプなのさ。ちゃんとメモしろよ、テストに出るから」
「ええ、ええ。覚えておきましょう。それで――ダレカさん、アナタは何故ここに?」
「その説明をする前に今の銀河の状況を理解する必要がある。少し長くなるぞ。あとダレカちゃんって呼んで?」
「………ククッ…では気長に聞きましょうか」
「暇だから来た。以上。質問ある?」
ホントに暇なんだよね。センセはこの後に黒服とお話に来るし、他のみんなは調べ物中。いやー、見事にダレカちゃんってばやることないってばよ。
故に質問タイムだね。黒服は直接的にセンセを害することはないと思うし、
「質問ですか…ええ、ありますとも」
「そうだな。センセのえっちな本は自宅の押し入れにしまってあるダンボールの中。それの保存食って書かれてるやつで、一番下の空のシチューレトルトパウチ内にあるよ。褐色ロリのやつだよ」
「そうですか、聞かなかったことにしましょう。……それで、ダレカさん。アナタはどのようにしてこの場に辿り着いたのでしょう?」
「へへっ、どーやってだと思う?あとダレカちゃんって呼んでね」
「…招かざる者は入れない筈なのですがね」
此処、所謂異空間っていうか…固有領域みたいなモンなのよね。特定の場所に存在するけど、人によっては"存在しない"ことになる場所。
ゲマトリアの謎技術だね。あんま万能なモンでもないから忍び込むことなんて普通に出来るけど。"認識"をしてれば誰でもいけるし、目と耳が良いダレカちゃんから隠せると思うなよな。
「流石、闇の跳梁者と言うべきでしょうか?」
「あんま関係ないよ?貌の一つだけど、本質ではないし。ま、最初からこの場所の欠点を知っていただけ」
「なるほど。ククッ…やはり興味深い。アナタは最高級のモルモットにも、私共の同志にもなり得る。いつまで子供の皮を被っているつもりで?」
「はぁ?まだぴっちぴちの子供ですがぁ?見ろよダレカちゃんの潤い肌!子供の唯一性だろ!!」
「宇宙服で見えませんが?」
「じゃあ次は服が透ける眼鏡でも作れば?神秘神秘〜って言ってるよりは健全だぜ」
「……大人である事と子供である事を両立させる。矛盾の具現化、実に混沌としていて…アナタらしい」
「へーへー、どーぞ好き勝手な解釈してくださいな。ダレカちゃんはゲマトリア共みたいな頭堅物と違って、神秘と恐怖に表裏を関連付けるつもりはねぇし、我思う故に我あり派なんだ」
「ククッ…クククッ!思想の違いこそ、利用し合う私共とは異なり、共同者足り得る素質ですとも。私は観察者であり、探求者であり、研究者。私は――アナタが欲しい」
「え、何ですか口説いてるんですか?ゴメンなさいまず異形は無理ですし愛のない交際は歪で拗れるのでマジで無理ですゴメンなさい」
「……………」
あっ、黙っちゃった…でも黒服が悪いんだよ。センセにすらキレた地雷を踏み抜くし、挙句に気持ち悪い勧誘してくるし。ぶち殺さないだけマシに思えってんだ。
でも、コイツはコイツでマシな方だよ。マダムよりは話が通じるし、『ダレカちゃん』の中身を知ってる上で実名で呼ばない。
いやー、紳士的だね。は?紳士的なヤツはホシノさんをモルモットにはしないんだが?やーい!やーい!お前の計画ぜーんぶセンセに潰される予定でやんの〜!!ざーこ♡ざーこ♡
「ねー、黒服。有益な情報をあげるからお小遣いちょーだい?」
「……これはまた、予想外の提案ですね。ええ、ええ…良いでしょう。大変興味深い」
「よっしゃ十万ね!……さて、
「ほう、なんと……して、原因は教えて頂けますか?」
「え、ヤダ。アンタらは敵だし」
「私としては敵対するつもりはないのですが……ええ、では約束通り。お受け取りください」
ひゃっほう!チョロいぜ!!最近はムメイ装備で所持金を使い果たしていたから助かるわ〜。どーせゲマトリアは崩壊しても黒服は死なねぇんだし、この程度の情報なら与えてもモーマンタイ。
暇潰しと金稼ぎは終わったし、そろそろ帰ろうかな。じゃないと此処でセンセと鉢合わせになっちゃうし。言い訳とか色々と面倒だからね。バレないうちに帰ろー。
「じゃあ帰るけど、ダレカちゃんが来たことは秘密にしてね」
「ええ、心得ておりますとも」
「あと、一時間後くらいに何も知らないアホ面なセンセがトコトコとやってくるけど、ヨロピクね。あの人と喋れば結構なインスピレーションを得られるハズだから」
「成程…では心待ちにしておりましょう。ククッ、ククク……!」
笑い方のクセ強いなぁ…クルルかよ。次に会うことがあればカレーでもプレゼントしよう。