シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃんは準備を怠りません

 

――ダレカちゃんと出会ってから、一週間が経った。

 

私もそれなりにシャーレの仕事にも慣れてきたと思う。いや、何かと面倒…もといやり甲斐のある仕事が多いけれども、生徒達からの依頼がない内は同じような日々が続くのだろう。

 

そんな日常が確立されていく日々……毎日毎日、私の目にはソファで寝転がる宇宙服の生徒が映る。……脱がないのかな、アレ。

本人も動きづらそうなのに、何で着続けているのかが分からない。多分、ダレカちゃんが変人だからだとは思うけど。

 

それはそれとして――

 

「………ねえ、ダレカちゃん」

 

「なーにっすかぁ?」

 

「君、私の秘書だよね?」

 

「はぁ…そーゆー肩書きでお給金ウハウハだね。フヘヘ、かっちょいい時計とか買っちゃおうかなぁ〜」

 

「そっかぁ…で、ダレカちゃんは私と出会ってから一週間、何してたんだっけ?」

 

「へへっ、何だと思う?」

 

「友人に内緒で誕プレを買った子供みたいな反応しないで?……じゃあ質問を変えるね。君の仕事って何?」

 

「秘書だが?」

 

「そっか。じゃあ君の仕事って何?」

 

「秘書」

 

「そっか。じゃあ君の仕事って何?」

 

「秘書だっつってんだろゥ!?耳腐ってんのか先公よォ!!」

 

「だから内容を聞いてるんだって!秘書秘書って言いながら今日まで何もしてないよね!?」

 

――この一週間で私が学んだ事と言えば、ダレカちゃんには遠慮とか配慮は不必要だってことくらいだ。

 

この子、いつ見てもダラダラと過ごしている。今みたいにソファで寝転がったり、持ち込んだ液晶ディスプレイで映画を見たりゲームをやったり。

本当に、ダレカちゃんは何をしに来ているのかが分からなくなる。サボるのは大目に見るとしても、目の前で堂々とされるのは逆に注意しにくい。

 

「なんか、こう…秘書っぽい事とかしないの?」

 

「だって現状、ダレカちゃんが出来る仕事ってないっしょ?予定が詰め込まれてるならスケジュール調整だってするし、依頼があれば優先順位とか悪戯とかの区別もしますし。でも、そーゆーのがまだないってことはダレカちゃんは暇なワケですわ」

 

「じゃあ私の仕事を手伝ってくれても……」

 

「それ以前にセンセが作業全般に慣れてくれないと。その為に連邦生徒会(お上さん)もセンセの負担になり過ぎない程度のタスク管理をしてますっての。大体、今はまだ機能してないけどね?そっち系の手伝いはシャーレ当番の生徒がやるって決まってんの」

 

「………………」

 

「ん?なんすか?」

 

「……ダレカちゃんが、真面目に仕事の話を……しかも巫山戯てない!?」

 

「よっしゃ喧嘩だな?久々にキレちまったよ、屋上に行こうぜぇ!?」

 

ダレカちゃんには悪いけど、本当に驚いた。

 

仕事云々に関しては正直、期待していなかったからだ。……まあ、最初は頼れる子だって思ってたよ?キヴォトスのトップに選ばれた秘書で、リンちゃんも()()()()()()と認めていたし。

でも、出会ってから一度たりともダレカちゃんが働いている姿は見ていない。うん、怠惰を貪っている姿だけは飽きるほど見ていたよ。

 

「一応言っておくけど、今この瞬間に至るまで全会話でふざけ倒していたのは君だからね?むしろダレカちゃんが真面目なことを言えたって新事実を学会に発表したい衝動に駆られたけど、それを無言で抑えた私を褒めても良いと思うんだ」

 

「おうおう、センセよぉ。遠慮はどこにかなぐり捨ててきたんでぃ?ガラスの心を持つダレカちゃん、泣いちゃうよ?」

 

「ガラス…?……ああ、なるほどね。ルパートの滴の事だね。ダレカちゃんにピッタリだと思うよ!」

 

「――そんなことよりセンセ、十秒後にメール送られて来るよ?この電波は…アビドスかな?」

 

「えっ……あっ、本当に来た。差出人は……本当にアビドス!?うわぁ……ダレカちゃん、電波とか認識出来るんだ……へぇ…」

 

………怖っ。

 

なんで発信源まで分かるの?銃弾と爆弾の飛び交うキヴォトスでは大体の出来事には寛容で在ろうと心掛けているけれども、ここまでやられるとSFの世界観でしかない。

流石にキヴォトスの人全員が可能だとは思いたくない……プライバシーが一切守られなくなるからね。

 

「ねえねえ、何で引き気味なの?流石に冗談だから。いくら優秀でカッコよくて美人で最っ高の秘書ことダレカちゃんだとしても、電波までは感じ取れへんて」

 

「じゃあ何で分かったの?」

 

「ふっふっふ、ダレカちゃん独自の情報網さ!」

 

「そっか。それで本当は?」

 

「……へぇー、信じてくれないんだね。ところでセンセ、自宅のタンス…下から三番目の引き出し、底板が二枚あるよね?そこの間にエ――」

 

「ハッハッハ、ダレカ様はとっても頼りになる秘書だね!在り方が尊敬できるし、その宇宙服もイカしてる!そんな君が独自の情報網だって言うんだったら、きっとそうなんだろうね!!」

 

「手首ゆるゆるな胡麻擂り職人だったりする?……ま、じゃあダレカちゃんは部屋に戻って()()してくるね。遠出することになるし」

 

「え?」

 

淡々とした声質で言い残し、ダレカちゃんは完全に私物化した第二休眠室に戻って行った。

 

……やっぱり、底が見えない。独自の情報網というのも半分は嘘だろうし、でも常識的に考えて電波を読み取って発信源を探るなんて芸当、まず不可能だ。

まるでダレカちゃんが未来を識っているかの様な言動だった。今だって、何故かメールの内容も見ていないのに遠出する――つまりはアビドスまで赴くって断言している。

 

ダレカちゃん……君には、何が見えているのかな。私には見えないその瞳で、何処までを見通しているの?

 

取り敢えず、私もアロナに急かされながらアビドスからのメールを確認した。

 

◆◆◆

 

はーい、第一死亡フラグです。

 

ダレカちゃんは知ってます。このセンセ、いっちゃん最初に死ぬのがアビドスです。ま、正確には――センセが長生きする方のルートでは最初の依頼でアビドスに行くのが正解なんですが、そのアビドスでもあんの野郎ォは死にやがります。街中で遭難したり、アビドス砂漠で干からびたり、交戦の流れ弾で死んだり。

 

くっっっそ死ぬやん?馬鹿なん?ぶっ生かすぞ?

 

何よりも悪質なのは、センセが最初にアビドスに行かないと色々と詰みポイントが生まれることなんです。

ヒフミとの繋がり、黒服との邂逅、カイザーPMC理事をぶっ飛ばす、対策委員会の皆をシャーレに所属させる、対策委員を――砂狼シロコの日常を守り、絶望させない。

 

タスクが多すぎませんこと?ま、全部後に繋がるんですけどね。タッハー、秘書としての腕がなるってモンだ。でも働きたくない。タダ飯を食らいながらシャーレでサボり散らかして、お給金だけ貰いたい。

 

そんな我儘が罷り通るほどダレカちゃんに優しい世界ではないけどね。何百何千とループしている時点で精神的に殺しに来てますし、開き直りがなければとっくに心がぶっ壊れてる。

……んー、もしかしたら既にぶっ壊れてるかもだけど。

 

そも、ダレカちゃんは繊細な生き物なんですっての。

 

恩師を一度死なせただけで死ぬほど曇ったし、二回目は絶望して、三度目では幻想の如き希望に囚われながら絶望を直視し続けた。

え?改めて振り返るとダレカちゃんの人生、ハードモードじゃね?今でもくっそ絶望してるし、そのせいで何度か色彩と邂逅して恐怖(テラー)に反転もしてるし……まあ、センセが死んだりダレカちゃん自身が死んだ時点で初期ポイントに戻るし、そうなったら全てがリセットされるから恐怖(テラー)も元に戻るんだけどね。

 

ていうか、ダレカちゃんも含めて生徒の誰かが恐怖(テラー)に反転した時点で殆ど確実にセンセが何かしらの要因で死ぬんよなぁ。

 

現状、一番危ないのが死の神(アヌビス)こと砂狼シロコの恐怖(テラー)化がいっちゃんヤバイ。

何が危ないって、反転する可能性が高いからだ。別に、死ぬほど死にやがるセンセよりはマシだけど、アビドス関連については最初にある程度は解決しないといけない。その後はミレニアムとトリニティを行ったり来たりだね。メンディークセェわ、クソが。

 

とりま、アビドスには万全の状態で挑みたい所存。

 

 

さてさてさーて、問題点は…宇宙服だね。

 

実はこの宇宙服、マジで超高性能です。ミレニアムのエンジニア部が本当に宇宙に行く想定で作り始めて、その途中で色々と便利機能を詰め込んだくっそ重い鎧だ。

中身の温度調節と換気は勿論、レールガンの直撃を受けても破損しない……多分、理論上は。内側には水筒やら非常食やらも程々に冷えた状態で保存出来るし、その為の電力は装着者が動いた分だけ充電される仕組みです。

 

その代わり、一般生徒では動けない程度には重いんですけどね?まじで重すぎるし。

 

一応、ダレカちゃんも連邦生徒会長から選ばれる程度には優秀で強い生徒です。だから通常時だったら各学園の切り札さん達と普通に殴り会える程のパワーはあるんですが……宇宙服、宇宙服が全て悪い。

動かなければ自室よりも快適なのに、戦闘では邪魔なだけ。いつかは脱ぐだろうし、せめて顔だけでも隠せる何かも用意しないと。出来れば頭部全体、叶うのであれば全身の肌は隠したい。

 

………全身タイツか?

 

マジかー、全身タイツデビューしちゃう?どっかの全身赤タイツ人間もいるし、探せば売ってそうだけど…うん、普通に嫌だが?

変な性癖のヤツだと思われちゃう。ダレカちゃんの場合、顔面まで隠したい所存だから更にレベルが上の変態になっちまいますわ。HAHAHA、おハーブ生えやがりますわァ!!

 

 

うん…取り敢えず、出発は明日の朝にしよう。

 

「……さて、何を持って行こうか」

 

――自室に改造した第二休眠室を見渡す。

 

端的に言って、くっそ汚いなぁ。誰だよこんなにボロボロにしたの…壁に穴空いてるやん。犯人はずばり、ループした直後のダレカちゃんだね。

うーん名推理、誰も悪くないことが判明してしまった。敢えて言うなら、前ループで死にやがったセンセのせいだね。ぶっ殺してやろうか?は?てか絶対に今回はぶっ生かしてやるし?

 

「この辺に……あ、みっけ。非常食と、AEDと…救急箱は全部持っていくか。あとは経口補水液に濾過装置は……砂漠だから使えんか。ま、体液を利用すれば……ううん、ねぇな。なしなし、代わりに水を沢山持っていくわ」

 

多少は宇宙服の中身にも収納出来ますが、鞄も必要になりそうですね…クッソメンディー。

 

「…げっ、銃が入んねぇ……まあ、要らないかな。邪魔だし、困ったら殴るなり奪うなりすれば良いや。あれ?もしかしてダレカちゃん、天才なのでは?おいおい、矢木に電流走っちまいましたぜ!やっぱパワーisジャスティス!!」

 

いやー、残念ながら愛銃は暫く使わなそうっすねぇ。

 

このキヴォトス、確かに使い込んで愛着のある銃を使えばめっちゃ強い攻撃をバンバン撃てるんですけど、まあ?シャーレ秘書のダレカちゃんですし?強すぎてごめんね?

ビナー君相手はキツイけど、企業一つくらいなら問題なく潰せるって。時間はかかるけど。

 

 

とりま、こんくらいかな?

 

あとは倒れないように寝ないとなぁ…ストレスで寝れてないし、睡眠導入剤を多用したら耐性がついちゃうからあまり使ってないし。

最強の肉体が恨めしいぜ!まあ、何考えずに五徹は身体が救急信号を発しているし…そろそろ睡眠薬くらいは使わないと死ぬ。

 

さーて、今夜頂くのは猛獣を昏睡させるヤバイ睡眠導入剤で〜zzZ

 





















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