………ども。誰でもない一生徒です。
自分の学園の寮に戻ってきました。
今は忍ペロくんの着ぐるみは脱いでるし、ダレカちゃん足り得る為の宇宙服も修理中。授業は免除されてるから、学園の制服も着ないで私服です。
……ま、別にゲーム開発部云々に関しては『ダレカちゃん』も『忍ペロくん』も必要ない。だからセンセが依頼を請け負っている最中ならどこに行っても良いし、だからこそ戻って来た。
関わるべき所とそれ以外は区別したい。
今は普通にぶっかぶかのフード付きパーカーを着ている。気味の悪い外見だし、こういうのを着ていた方が誰も傷つかないから安心出来る。……センセだけは、眉ひとつ動かさずに受け入れてくれるんだろうけどね。変な大人……あの女とは全然違う。
……今は『ダレカちゃん』みたいに気を張る必要もないから、内心とはいえ勝手に弱音が吐露される……本当に、嫌いだ。大嫌いだ、意味の無い感情に左右される自分が。
部屋に着く。
鍵を開けて部屋に入って、敷布団に体を落とした。相変わらず、何も無い部屋だ。ループの開始地点はシャーレの第二休眠室だから、この部屋はループする前の拙い頃に暮らしていた場所だ。…無色透明な自分と重なってる様な気がして、気味が悪い。
この部屋が昔の自分なら、今の自分は勝手に自室にしたシャーレの第二休眠室だと思う。物があり過ぎて、ごちゃごちゃ。自分でも…もう何も分からなくなってるし。
「………疲れた…鎧持って、またミレニアムに…行かないと」
…行きたくない。ミレニアムじゃなくても、センセの死に際が過ぎる場所になんて行きたくない。
でも、足は止めれない。
まだ足があるなら、千切れるまで進まないと。足がないなら、手で這ってでも進め。もう自分に対する甘えなんて十分与えただろ……死んでも、進めよ。次こそはセンセを救って見せろよ。
……狂ってる自覚はある。何千と繰り返して、センセに執着し続けて、精神がマトモなわけがない。そもそも、恩は感じているし護りたい人ではあったけど、ここまでする程の理由はあるのか…多分、昔はあった。でも…もう思い出せない。
センセを救って、平和になったら…センセを護りたい理由も思い出せるのかな……?
◆◆◆
――コンコン、とドアがノックされる。
来客なのだろう。珍しいが、その生徒にも所属校での立ち位置がある。故、誰かが訪ねてきても不思議はなかった。
無論、その可能性のある者もまた限られるのだが。古い寮の端部屋は、それだけで人は寄り付かず、部屋に住んでいる者の存在を知らない生徒が殆どだろう。
部屋の主は陰鬱とした表情でパーカーのフードを深く被り直し、服の下で二種の片翼と龍尾を身体に巻き付ける。シルエットや身体的な特徴を隠す為だ。
「……だれ?」
「わっ!…い、いらしてたんですね…お久しぶりです。その……」
「…なにか、よう?……寮長」
名前は覚えていないが、自分が暮らす寮の管理を受け持っている生徒であるのは分かる。そも、それ以外の付き合いがどの世界線でもなかったのだから、『寮長』とだけ覚えていれば十分だろう。
瞳の上半分を長い前髪で隠した寮長は相も変わらず、オドオドとした様子で視線を泳がせ、要件を端的に伝える。
「あ、あの方がお呼びです。居なければ大丈夫とは言われたのですが……珍しくお戻りになっていたので。つ、伝えましたからね…?」
「ん、ごめん……伝えといて?"アルバイトで忙しい"って、メッセージ」
「え゙っ……ま、またですか!?ここ、怖いんですよ!?あの御方、全く親しみの籠ってない微笑みで『そうですか』ってしか返さないし……なんか無言の圧力を感じるんです…っ!!」
「……愛情の、うらがえし?」
「裏返っても大した愛になりませんよ…アレは。無関心っていうか…ゼロは逆にしてもゼロでしかないみたいな…」
「…うん、どんまい。…高い紅茶でもあげたら?たぶん、好感度がぷらすいちになるよ」
「いえ、別に好かれたいわけでは……」
「いがいと、失礼だね…」
そも、今の世界線においては一般の生徒に対して、その生徒は自分がシャーレの秘書である事実を隠している。
無論、前までの世界線では素顔で先生の隣に居たので立場は公言しているに等しかったが、今は宇宙服や着ぐるみ等で顔を頑なに隠している。それ故に敢えて正体や所属校を公言する必要性はないのだ。
連邦生徒会長がシャーレへ付与した権限は絶大であり、完全中立な『先生』がまとめているからこそ、キヴォトスにおいて絶妙なバランスを保っている。
そこに所属する生徒数は無制限ではあるが、然し明確な立場や役職は与えられていない。各校の生徒会長であろうと、入学したての一年生であろうと、『シャーレ』の枠組みの中では同等の立場でしかない。
故に連邦捜査『部』でありながら『部長』は存在しない。先生が顧問であり、他は所属生徒でしかないのが現状だ。
そんな中、先生に続く明確な二番手が生徒に与えられたらどうなるのか――至極簡単だ。その生徒が所属する学園はシャーレの超法的権限を利用した補助があるのではと疑われ、正当性は証明出来ず、先生の望む『平等』からは遠ざかる。
その生徒が所属する学園のおかげで公平な立場では在れるが、三大高などに所属していた暁には政治的な介入が必ずと言って良いほど絡んでくるだろう。
それ故に、顔を隠している今世界線の『シャーレの秘書』は無益な争いを減らす為に
無論、前までの世界線でも、シャーレ所属として先生の隣にはいた。然し平等性を欠く要因にはなり得たのは事実であり、先生の死に繋がった事は記憶に新しい。
「その……あ、アルバイトって…?」
「連邦生徒会の、てつだい…的な」
「……前々から思ってたんですが、お偉いさんとの繋がりが多いですよね……何か気に入られるコツ、みたいなのはあるんですか…?」
「ん、ある」
「え、本当ですか!?もし宜しければ教えて頂けたり…」
「身売り」
「…………………ごめんなさい、もう大丈夫です。あー、あー!お偉いさんの闇なんて私、何も聞きたくありませんよー!!あの優雅な方達が……わ、私…これからどんな目であの方達を見れば……」
「…がんば…?」
「誰のせいですか……聞いた私のせいですよね…」
ゲンナリと肩を落として、寮長は軋む床板を踏み締めながら去って行った。
◆◆◆
はぁい、戸久銘ムメイだッス。
ミレニアムに戻ってきました。別にどーでも良いんだけど、内心での口調って忍ペロくんの時みたいに変にしなくてもいいんかな。や、自分のコトなんでどーでもいいんだけどね?
ムメイが考えるに、『戸久銘ムメイ』は"カッコつけてナンボ"なキャラだから、内心は何でも良きなんだよね。忍ペロくんはそもそもキャラを知らんのだし。イブキさんに聞いてみよか?ヒフミさんは怖いし。
……ん、閑話休題っす。キヴォトスでは、閑話は犯罪ではありません!
――そんで。
ムメイは今、『廃墟』に来ております。てかシャーレ秘書としての権限的なアレで普通に侵入出来ますよ。ムメイ、天才なんで。天才って褒めて?綺麗な心と、比例するように美しい外見を褒めて?
と、オートマタ惨殺ふらり散歩に洒落込んでぶらり旅ってますと――
「…………むっ」
おっ、センセとロリ共がいるやーん!またG.Bibleを探しに来たんだね。オートマタと戯れていらっしゃるし、乱入しよー。ムメイも混ぜて〜!
テキトーに鞘に迷剣ナナシを仕舞いまして、なんちゃって居合風に構えまして。ダレカちゃん衣装の時よりも軽いから、それっぽいライトノベル味濃い目の瞬歩を再現してみましてっと。
「――瞬式・堕楼斬」
「っ!?なっ…だ、誰!?」
「ひぃっ……お、オバケ!?」
おいコラ、モモイさんや。オバケとは失礼な。亡霊と呼んでおくれ。鎧武者は亡霊かコスプレの二択だし。………てかこの格好で出るとしたら百鬼夜行じゃね?和風の姿だし。
とりま邪魔なオートマタの腕をポンポンと切り落としまして、ドローンには手裏剣…はセンセに正体バレに繋がるので、さっき拾った鉄塊を投げます。
ミレニアムには普通に鉄塊が落ちてます。だってミレニアムだから。てかミレニアムなので。つーかミレニアムだし。
「……!ユズ、これはレアエネミーですか?」
「ち、違う…と思う…?」
「ミドリ見て……あ、アレだよ…!クロノススクールで出版されてる月刊キヴォトスに載ってた、キヴォトス七不思議の一つ!!」
「………む?」
「まさか…ミレニアムを彷徨う鎧武者……!?」
ちな、マジで七不思議になってるよ。
ミドリさんがさっき言った、ミレニアムの『廃墟』を彷徨う鎧武者。あとはアビドス砂漠に出現する人間大のペロロとか、キヴォトスの各地から目撃情報のある宇宙服。
トリニティ自治区で発見された異形の生徒に、戦車を振り回して追い掛けて来る謎のスカルマンモドキ。
残りは24時間365日コンビニバイトをしてる中学生とか、裏社会を牛耳ってるファウスト様とか。
うーん、ネタ記事かな。怖いね。
「む、ムメイ…?ムメイだよね!?」
「然り。ムメイはムメイ
「先生、知り合いなの?」
「えっと…紹介するね。彼は戸久銘ムメイ……と、友達?…関係性がよく分からない。前に助けて貰ったし、恩人ではあるけど」
「否、生徒で良い」
「えっ?」
「むっ?」
「せ、生徒だったの!?声が渋くて大人っぽいから、てっきり歳上かと思ってた…」
「………先生、普通に失礼ですよ…」
言ったれミドリさん!得意の飛び膝蹴りを繰り出しながら先生が泣くまで言い聞かせたれ!!や、そんな事をし始めたらミドリさんを殴り飛ばすけど。そんでついでにモモイさんも殴るけど。
にしても、むむむ…ちょっとばかし声を渋く設定し過ぎたかな。おじ武者な声だし。でも武者だしなぁ…声を妥協したくない。武者だし。
ま、多様性ってコトで。ぬへへ、おじ声でもロリっ子でも、生徒になれるんやで。
「…?疑問。ムメイはここで何をしているのですか?」
「……我が剣術は暴食の極。故、旅をしている。絡繰人形の
「えっ…あの、カラクリ人形って…?」
「双子の妹御よ、見れば判る。ムメイは目で、耳で、鼻で、肌で――凡百の情報を得る。経緯は兎も角、正体程度は見抜けて当然。ムメイは天才故」
「あっはい」
「せ、先生……この人、ゲームの世界から…飛び出して、来たんですか?」
「違うと思うよ?……うーん、やっぱり異常だよね。身近に割と出来そうな生徒がいつもいるから、感覚が狂っちゃう……」
へー、一体どんな天才美人な最高の秘書なんだろうな。ムメイにはさっぱり分からんけど、センセはその人をめちゃくちゃ褒めて甘やかして、給料の半分を毎月渡すべき。知らんけど。
ま、この後にペイペイと自己紹介を終えまして。
ついでに現状の説明もしてもらいまして。いや、分かってるんやけどね?だって三時間前まで一緒に居たし。忍ペロくんは気まぐれだから旅に出たって設定だったけど、そもそもの大前提としてこの先の展開までちゃんと知ってるし。
そろそろ預言者として一儲けしよっかなぁ。そこそこに有名になったらマダムがセイアさん宜しくぶち殺そうとしてくるし。
いずれは仕方なくやるけど、今はまだ種まきだけ。てか黒服に一つだけ予言してやったし、察して警戒だけはしてくれるでしょ。
「――ってなワケ!ムメイさ、G.Bibleしらない?」
「じー…ば、ばい…?……済まん、ムメイは横文字には疎い」
「ほら!武者だから英語に疎いんだって!!しかも声が渋いんだ!!」
「先生のテンション高っ!えっ…こういうの好きなんですか?」
「うんっ!」
「わぁ、嘗て聞いた覚えがないくらい元気な返事…」
「分かってないなぁ、ミドリ。先生だけじゃなくて、鎧武者は全人類の憧れなんだよ?どのゲームでも確実に鎧武者は出てくるし、世界が肯定してると言っても過言じゃないね!」
「ものすごく過言だよ、お姉ちゃん……少なくとも恋愛系のゲームには出てこないし」
「アリスがプレイしたゲームには出てきてましたよ?ムメイのソックリさんが」
「ゲームジャンルに偏りがあるからだよ…」
「あ、アリスちゃんには…RPGしか薦めてないからね…」
元気だなぁ、ミドリさん。なにか良い事でもあったのかい?ユメさんに聞いてみよか?あはっ☆もう聞けな…うっぷ……冗談でも言うもんじゃねぇ……口の中がすっぱい……死のっかな。や、センセを救うまでは死なんけど。
とりまミドリさんが騒いだせいで寄ってきたオートマタをキリキリしまして。そんで折角だから同行するって伝えまして。
理由とかは考えんのもメンディーですので、センセの人徳ってことにしよ。日頃から良い子にしてるセンセをムメイサンタが助けてあげよう。
まぁ、同行するって言っても。センセの周りをウロチョロとしながら雑魚を殺すだけなんだけどね。ヴォーパル魂がしょぼくれるじゃんね☆
とりま、端的に換言しまして。
「パンパカパーン!ムメイが仲間になりました!!」
そ。アリスさんのナレーション、略してアリナレは便利だなぁ。更に略して、ア便!……なんか卑猥…?うん、気の所為だね。
みすりーど。