シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃんは同期します

 

こんちゃ、忍ペロくんだペロ。

 

色々あったけどミレニアムに戻ってきたペロ。シャーレ近くの電柱にのぼってカメラを覗いている変態をレッドウィンターに通報したり美食テロリストをヒナさんに受け渡したりしてたけど、無事にミレニアムにつきました………あ、ペロ。

キヴォトスはやべー奴らの巣窟、ハッキリわかんだねペロ。ついでに職質されたけど、身分証明して突破したペロ。てか着ぐるみなだけで犯罪はやってないしペロ。

 

そんで、ゲーム開発部の部室に来ておりますペロ。だーれも居ないけど。ペロ。ペロペロうっせぇなこいつ…ペロ。

 

「んー、どっすっペロかなぁ。真ん中で正座するか、ユズさんのロッカーに隠れてるか…悩ましいペロ」

 

ユズさんのにおいが充満してるロッカーが好ましいペロねぇ。てか元はあっち側の性格だペロし、ナカーマってコトで二人でロッカー生活をしたこともあったペロ。

……掃除ロッカー、めっちゃ落ち着くんだペロよ。狭いところ、すきペロ。ギュってされる感じが最高ペロねぇ…

いつかセリカさんにもギュって抱き締めて欲しいペロ。てか一方的に抱き締めてくるセリカさんは解釈違いだし、こっちから抱き締めたいペロ。

死に際には抱き締めてくれるんだけどペロね?うーん、どーにかして合法的にセリカさんと触れ合えないものか……ノノミさんに後で相談しよ。ペロ。

 

そんでユズさんのロッカーにぎゅうぎゅうに詰まること数分。帰ってきたユズさんに絶叫を上げられて泣きましたペロ。や、忍者ペロロが自分の住処に詰まってたら誰だって絶叫するペロよね。

 

その絶叫を聞きつけたゲーム開発部とセンセにお説教をされてから、事のあらましを説明されたペロ。や、もう知ってっけど。何十回もやってるペロし。

 

 

 

はい、ここまでの流れを簡単にまとめますペロ。

 

まずゲーム開発部とセンセが持ち帰ってきたG.Bibleのデータを見たいですペロ。でも中身を見るにはパスコードが必要不可欠で、ヴェリタスに頼んでも無理無理カタツムリと言われたペロ。

でも、方法がないわけでもないペロ。有能ペロねぇ、凄いペロねぇ。

 

で、そん為にOptimus Mirror System――通称『鏡』ってツールが必要ですってオハナシ。……お使いクエストばかりペロね。クソゲーの第一歩を進んでるペロ、てか人生がまずクソゲーペロ。何千回もセンセを死なせてる忍ペロくんが保証するペロよ。

 

そんでそんで、『鏡』はセミナーに押収されてるペロ。過去になにかやらかしたんだってさ、ペロ。『鏡』でセンセのスマホのメッセージを確認しようとしたり、セミナーの管理する全校生徒の情報にイタズラをしたり……クソガキペロか?

 

「――で、ヴェリタスと組んで生徒会を襲撃しようってこと!!メイド部…C&Cともやり合うことになるから、先生と忍ペロくんも協力してね?」

 

「なるほど、モモイさんは馬鹿ペロね」

 

「うん、お姉ちゃんは馬鹿なんだよね」

 

「モモイは馬鹿なんですか?」

 

「……わ、私も…今回ばかりは……うん」

 

「酷い!?」

 

「安心して、モモイ。私も普段から忍ペロくんに馬鹿とかアホとかマヌケとか言われてるから」

 

「なにも安心できないよ!!」

 

案ずるな、忍ペロくんは案じないペロ。てか頭どーしたペロ?前までは普通にC&Cと敵対するのを泣くほど嫌がってたし、ここまで乗り気ではなかった気がするペロけど……

 

とりま頭をコンコンとノックしてみたけど、いつも通り空っぽだったペロ。偽モモイさんだって線は薄いペロ。

ま、そもそもの目的が『C&C打倒』じゃなくて『鏡を取り返す』だから多少の楽観視は出来るけどペロ……ネルさんが不在だからイけるって思ってそうペロ。

 

「私だって考え無しじゃないよ!とっておきの秘策があるんだって!!」

 

「秘策ペロ?巡航ミサイル数発くらいなら準備するペロよ?」

 

「えっ…ミレニアムを更地にする気!?」

 

「ううん、もっと簡単で単純な作戦だって。まず忍ペロくんがC&Cを倒すでしょ?そして私たちが悠々と差押品保管所に行って目的の物を取ってくるの!!」

 

「ぶち転がすペロよ?」

 

「なんで!?」

 

なんで協力する前提なのか……や、別に可能か不可能かで聞かれれば可能ペロ。でも、今回はあまり手を出すつもりがないペロ。

 

まず第一に、元から忍ペロくんが手を貸さなくても今回の任務は達成出来るペロ。信じてる的なエモい理由じゃなくて、単に"識ってる"だけペロ。

アビドスでのホシノさん救出みたいに不確定要素が濃く混じる場合は全力で手を出すけど、いつまでも手を出してたら()()()()()()()()()。いや、正確には経験が足りなくなる……ってのが正しいペロ。

 

センセには強くなってもらわないと、ペロ。

 

「えー、取り敢えず忍ペロくんは後ろでヴェリタスとかと協力しながら援護に回るペロ。撃ち合いになんて参加したら忍ペロくんの着ぐるみ()が破けるし」

 

「……どうしても、駄目かな?」

 

「センセ、忍ペロくんは前にも言ったペロ。忍ペロくんはセンセに何も期待してないし、大義を成しても当たり前だと思ってるペロ。そんな忍ペロくんに、失望させるの?いつまでも助けないといけないお姫様なの?あなたは」

 

「…………ごめん、今回は私が間違ってたね」

 

「え?え…?もしかして、今回は忍ペロくんが助けてくれないパターン!?縛り有りのボス戦になる感じ!?」

 

「お姉ちゃん、空気読もうよ…元から無理を言って協力してもらってるんだし、事情があるなら強要出来ないでしょ」

 

「モーマンタイ、ペロ!忍ペロくんの分もセンセが身を粉にして頑張るペロよ。知らんペロけど」

 

絶望顔のモモイさんを見届けてから、忍ペロくんは部室を出てヴェリタスのところに向かったペロ。

 

……てかモモイさん、どんだけ忍ペロくんを頼りにしてたペロ?モモイさんって典型的な、強大過ぎる力に溺れて周りが見えなくなるタイプだペロね。

そーゆーところも愛おしいけど、今回はゴメンねペロ。キヴォトスに必要なのは忍ペロくんの"経験"じゃなくてセンセの"選択"。だから、残酷なまでにセンセに頼らないといけないペロ。

 

……いつか忍ペロくんはセンセの前から姿を消すかもしれない。そんな時に使い物にならないんじゃあ、未来はないぜ?センセ…

 

◆◆◆

 

――そんで三日後。

 

ゲーム開発部がTSC2を完成させてミレニアムプライスにエントリーした頃だね。ま、結局はG.Bibleは必要なかったけど。

……や、必要っちゃ必要だったね。G.Bibleからの唯一の助言…『ゲームを愛しなさい』。これがあったから、休まずの三日でTSC2を完成させたんだし。

 

セミナーにC&C、ヴェリタスにエンジニア部を巻き込んだ大騒動。アレはアレでモモイさんがプロットを組むのにかなり影響しただろうね。忍ペロくんは陰でカリンさんの妨害をしたり、ノアさんの足止めをしたりしかしなかったけど。

殆ど全てはセンセとゲーム開発部が主体となって動いて解決した形に落ち着いたね。

 

ま、そんなのはどーでも良くて。()()()()()()は今、エンジニア部の工房に来ております。

 

「あんがとね、ウタハさん。これで全力を出せるっすわ」

 

「…普通、それを――宇宙服を装着してる生徒は枷にしかなっていないと思うんだがね。もちろんキミも例外なくね」

 

「構へんわ。色々と隠せるのは都合が良いし、枷でも付けてないと出来ないこともあるんだよ」

 

「…………あまり、心配させるものじゃないよ。必要なときは宇宙服を捨ててでも本気を出すんだ。本来なら、こんな物…キミには必要ないんだからね」

 

「異界の化け物でも降ってきたら、そーするね」

 

はい、そーゆーワケでやっと宇宙服が直りました。いやー、快適快適!中の空調が涼しいし、動き過ぎたら破ける『忍ペロくん』と違って本気で動けるし。

 

てか『忍ペロくん』で暗躍したことを褒めて欲しい。あんなの雑魚の銃撃でも破けるし、破けたら相手の記憶が飛ぶまで地面に相手の頭を打ち付けないといけないし…大変だった、マジで。

 

 

つーことで、ウタハさんと別れて廊下を走り出します。

 

今頃はゲーム開発部がC&Cから襲撃を受けてる頃かな?ネルさんがセンセとかアリスさんの実力を確かめるんだって。

アリスさんとの1on1が片付くまでは見てるけど、その後はダレカちゃんに付き合ってもらうよ?そろそろ、ダレカちゃんも確かめないといけないし。

 

枷はある。そして、センセも多少は経験を積んだ。だから―― 一度だけ。確かめさせてくれよ?そして、失望させるなよ…センセ?

 

トントコトコトコと廊下を走っていますと、キヴォトスでは聞き慣れた戦闘音が響いてくる。こんな夜更けに暴れるなんて、近所迷惑でしょうが!

ま、夜中だし普通の生徒は寮なり家なりに帰って寝てるだろうけど。校舎は高過ぎて下まで音は聞こえてないし、そもそもの防音機能が優れてるから廊下以外には聞こえてなさそうだね。

 

「んー、こっちか」

 

ぐるっと回って、外に繋がるガラス壁の廊下に出ると――

 

「オラオラオラァ!そんなモンかぁ!?」

 

「くっ…!光よ!!」

 

「ハッ!威力はあっても当たらなきゃあ意味もねぇぞ!!」

 

はい、ネルさんとアリスさんが戦ってます。アリスさんはレールガンを盾にしながら、隙をついて銃身を振り回してる。そんでネルさんは二つの銃に繋がれた鎖を利用して、広い廊下内を縦横無尽に動き回って連射してる。

分かりやすく戦闘スタイルが真逆だね。アリスさんは鈍足高威力な感じで、ネルさんはスピードがある代わりに攻撃が強くて、しかも耐久力もある。……え、ネルさんって弱点ないの?

 

とりま跳弾でセンセが死にそうなので、盾になろっと。

 

「っ!え、忍ペロくん!?」

 

「は?忍ペロくんじゃなくてダレカちゃんだが?」

 

「同じじゃん……いや、そうじゃなくて!状況は把握してる?」

 

「もちろん。ダレカちゃんには独自の情報網があるからね。とりまあの二人の決着が着くまでは見守ってばいいんでしょ?」

 

「それはそうだけど……怪我をしそうだったら、止めれるかな。どっちかが倒れるだけが決着じゃないだろうし」

 

「ええよ?代わりにセンセには逆立ちバニーでミレニアムを一周してもらうけど――おっ、そろそろ終わりそうだな。じゃ、横槍を入れてきまーす!!」

 

「ちょっ…ダレカちゃん!?今とんでもない事を言い残していかなかった!?」

 

ネルさんが空中で身動きが取れなくなってる瞬間、アリスさんが床に向けてレールガンを全力で撃とうとしてますね。いわゆる自爆やね、センセが巻き込まれるから止めてもろうて。

 

一瞬だけ宇宙服の超パワーモードを足に集中させて、レールガンに蹴りを入れて銃口を外に向けさせまして。ついでにネルさんの足を掴んで地面に軽く叩き付けとく。

 

「っ!?なっ…ダレカちゃん!?」

 

「あ゙っ!?んだァ…テメェ!!」

 

「クソお邪魔します」

 

はい、次の瞬間にはガラスを割って外にレーザーが放たれる。ご近所迷惑Part2だね。でもキヴォトスだし誰も気にしないだろ、夜中に閃光弾が投げられる世界だし。

 

地面にコロコロしたネルさんは猫みたいにその場から離れてダレカちゃんに銃口を向けるし、アリスさんは困惑してるね。可愛いね。二人ともお持ち帰りしたいね。

 

「どーも、ネルさん。ハジメマーシテー、ダレカちゃんだよ。ダレカちゃんって呼んでね?」

 

「……ぶち殺すぞ?」

 

「え…ダレカちゃんがカッコよくて可憐で、然し儚くも尊い在り方は醸し出されるアダルティな色気とのギャップで惚れたって?いやん、ネルさんのえっち!」

 

「く、はは…っ。そんなにぶち殺して欲しいなら最初に言えよなァ…!」

 

「え?今なんて言った?身長と同じくらい声も小さくて聞こえなかったよ。あ、小さいのは器量と胸もかぁ!!にゃーっはっはぁ!!」

 

「しね」

 

はい、死ぬほど煽っときます。その隙にアリスさんはゲーム開発部の面々と一緒に逃げてるし、ネルさんだってもうダレカちゃんのことで頭がいっぱいでしょ?

 

で、今からしたいのは普通の戦闘じゃないっす。そんなんヤル旨みもないし、それこそ無駄な労力にしかならない。

だから、これからやるのは訓練であり実験。そして期待と確認。

 

とりまワイヤーで繋いだ形容し難いバールのようなものを投げて牽制しつつ、一応はアクロバチックな動きで銃弾を躱しておく。宇宙服だから当たっても問題はないけど、一応ね?

 

「良いの?お仲間に協力してもらわなくても」

 

「あ?必要ねぇよ!テメェこそチビ共に助けを請わなくても良いのか?」

 

「んー、チビは遠慮するけど……センセ、指揮して?」

 

「………えっ!?」

 

「チビメイドちゃん、ハンデをやるよ。ダレカちゃんはセンセ程度の指揮だと逆に弱くなるけど、もしセンセがダレカちゃんに適応出来たらチビメイドちゃんなんて軽く倒せるよ。だから――適応されるまでに倒してみ?」

 

「……上等だゴラ。軽口叩けなくまでぶちのめしてやるよ」

 

「…ありがとう、ダレカちゃん。指揮を開始するよ!!」

 

センセがシッテムの箱の領域を広げると同時、視界がボンヤリと青に染まる。

 

相変わらず、慣れない。身体が軽くなる感覚は、生徒の潜在能力を活かしているからだろうね。ま、元から潜在能力を解放してるダレカちゃんにはホンノリとしたバフしかないけど。

視界と思考の一部がヘイローを通してセンセとリンクして、領域内における全ての演算結果のうちのダレカちゃんに必要とセンセが判断した部分だけが送られてくる。

 

「……邪魔、うっとおしい、遅いし無駄が多い…!」

 

自分で動き出した足を引っ込めて、態々センセの指示する動きに合わせる。それが隙となってネルさんの蹴りを頭に受けたけど、まだモーマンタイ。致命的にはなってないし。

 

次にセンセがマーカーした部分にグロック26(メメント・モリ)を撃ち込むけど、次はダレカちゃんの反応が速すぎて銃弾が通り過ぎた瞬間にその場所にネルさんが移動してる。

とことん、センセとダレカちゃんは相性が悪いなぁ。合わせてやってるのに、あっち側がダレカちゃんの反応を逆算しようとして滅茶苦茶になってる始末。経験が足りない。シッテムの箱の本領はこんなもんじゃないのに。

 

銃を奪おうと鎖が巻き付くけど、寸前で手を引っ込めてバールのようなもので打ち返す。ちっ、防戦なんて柄じゃねぇのに。

 

「……センセ、遅い…!脳みそにカタツムリでも飼ってんのか!?」

 

「この…じゃじゃ馬!少しは言うことを聞いてよ!!」

 

「はぁ!?聞いとるはボケぇ!聞いた上で被弾してるから独自判断に切り替えとるんだわ!!」

 

「…………なんだ、コイツら…?」

 

戦闘中において行動の最適解は()()()()()。真正面から真っ直ぐ撃たれても、隙なく避けるには右と左があって、そこに優先順位はない。

だから、シッテムの箱と最適解とダレカちゃんの脳が導き出す最適解は違っていて、同時に二つの解を出されて身体が混乱する。

 

特に今回の相手はネルさんだってのが痛い。絶え間なく空間を動き回って翻弄してくるから、動きの最適解が見えづらい。

そんで、ダレカちゃんは多少の被弾はしゃーなしでの動きを前提としていて、センセは被弾しない道を模索して準最適解を示す。

 

「…気持ちわりぃな、お前」

 

「あ?誰がプリティキュートなイケメンだゴラァ!!ダレカちゃんも愛してるぜ!!」

 

「言ってねぇよ!……お前、本当に()()か?先生の指揮とお前自身の動きで二通りに別れてるのは、まぁ…理解出来なくもない。でもよ、それだけじゃないだろ。何十、何百人の動きを合わせてる見てぇな…あたしの動きも混ざってやがるし……あー!言葉に出来ねぇ!!」

 

……わぁ、流石だね。お察しの通り、ダレカちゃんは他人のトレースを組み合わせて動いてる。ほら、『戸久銘ムメイ』と時に『我が流派は暴食の極』的なことを言ってたっしょ?アレね、マジなんよ。

 

つまり、今のセンセは一度に何百人もの生徒を指揮しているに等しいんだよね。や、何百は言い過ぎか。せめて何十人くらい?

今のセンセには厳しいだろうけど、いずれはやってもらわないと困る。ダレカちゃんの指揮じゃなくても、同時に複数の部隊を指揮する事にはなるんだし。

 

「――さて」

 

「………………うん」

 

時間にして15分くらいかな。マジの戦闘中だったら致命的だし、1on1かつ最硬の鎧を着てるダレカちゃんだからこそ耐えられた。

でも、最低限の調()()は終わっただろ?まだまだ未熟で、互いに合わせきれてないけど――ギリ合格点だ。理想には程遠いけどね。

 

「やれるか?」

 

「愚問だよ」

 

「……ッ!?」

 

「「――往こうか、相棒」」

 

何かが《重なる》。他人故に存在した思考のズレ――致命的なタイムラグが収まって、心臓の鼓動音が同期する。

荒いし、長くは持たない。でも、今なら普段のダレカちゃん以上の力が――神秘が全身を駆け巡る。

 

――もって10秒。内、半分はネルさんの後半五秒の動きを完全に演算……いや、"予知"する為に使う。ダレカちゃん(センセ)なら、そうする。

再度人工筋肉を使い、極端にネルさんとの距離を詰めてバールのようなもので力任せに薙ぐ。銃と鎖、そしてネルさん自身が後ろに下がることで威力を殺されるが、もう全て"予測"した。

 

「5、4、3――」

 

「チッ……適応しやがった…!」

 

ネルさんが距離を取ろうと床を蹴るのを"予知"、そしてコンマ5秒後に居る場所の天井をメメント・モリで撃ち抜いて瓦礫を降らせる。

勿論、ネルさんならこの程度で怪我はしないし避けるだろうね。でも、避ける方向はすでに"予知"している。予測を越えた限定的な予知――ダレカちゃんの五感とセンセの操るシッテムの箱の権能がリンクして初めて成せる。

 

「2――」

 

「このッ…しゃらくせぇ!!」

 

一瞬だけ神秘を込めた銃弾はネルさんの銃に付属してる鎖に被弾。壊れないけど、歪む。あともう二発くらい撃てば壊れるだろうね。

ネルさんだってそんくらいは察してるだろうし、そうさせないように動く。だってネルさんは戦闘中の高速移動に鎖を多様していて、今の最高の10秒にネルさんが適応出来ているのも鎖で小さな体を補助しているからだ。

 

一瞬の焦りは、銃を持つ生徒は皆共通の動きを誘う。やぶれかぶれとも言えるし、ネルさんレベルともなれば必殺の最適解にもなる行動――一点集中の乱射。

 

受ければ宇宙服がまた壊れるかもね。でも、受けなければ問題ない。一瞬だけ宇宙服の人工筋肉を起動させて、()()()()()。多少の被弾は覚悟の上で、でも致命的なダメージは受けない距離。そして、こっちに残された最後の1秒での最適解を取れる距離。

 

「1―――メメント・モリ、最大出力……《カルぺ・ディエム》」

 

「なっ!?」

 

センセの指揮があって威力を増した、EXスキル(必殺技)。只々、暴力的な迄に強力な神秘を込めた灰の瞬光。

 

キヴォトスの一般住民が受けたら死ぬだろう。生徒でも当たりどころが悪ければ同様で、最強格のネルさんやツルギさんでも数日は動けないハズ。

ま、()()()()()()()けどね。今の10秒は領域内における全てを"予知"している、絶対的な時間だ。その対象はダレカちゃんとネルさん()()()()()()

 

「ダメぇ!!」

 

「うおぉ!?あ、アスナ!?」

 

ちゃんとアスナさんの"直感"も"予知"している。態々ネルさんを下がらせてアスナさんの手の届く範囲にして、《カルぺ・ディエム》の一撃もガラスを割って外に飛び出すように計算してる。

 

アスナさんだったら、この一撃を致命的だと"直感"してネルさんを助ける。そう"予知"して、そうなるように設計した。

 

「――はい、ダレカちゃんとセンセの勝ちね」

 

「…………指揮、を…終了………つ、かれ…た…」

 

ダレカちゃんだってめっっちゃ疲れてるわ!!貧弱なセンセと同期して脳みそもシッテムの箱に合わせて酷使して…あー、なーにが"予知"だよ。今の段階で10秒も出来たんだから合格点どころか首席入学だわ。死ぬほど疲れたけど。

 

でも、これでセンセも分かったでしょ。センセにはまだまだ経験は足りない。これまでのループではダレカちゃんのラーニングした人が少なかったから多少はマシな指揮は出来ていたけど、今はこれまでの全ての経験がダレカちゃんを構成している。

 

つまり、全てのループの中で今のダレカちゃんが一番強くて、一番指揮が難しいってこと。しかも今回は宇宙服という名の枷をつけてるし。枷がなかったら2秒くらいかな?もっと短いかもね。

 

「精進、しないと……ね…」

 

「あんま長くは待ってやんねぇよ?」

 

「……直ぐに、追い越すからね…」

 

「………うん、待ってる」

 

…取り敢えずセンセを背負って逃げ出した。倒れたセンセを庇ってメイド共の相手なんかしてられるか!ダレカちゃんは部室に帰らせてもらうぞ!!

 






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