「……あんの野郎ゥ…何処行きやがった!?」
電車さんに揺られてアビドスに到着して早々、センセとはぐれました。
はい、お察しの通りアビドスから依頼を受けまして。なんだっけ…?暴力組織から狙われてて補給が不足している、とかだっけ。
最終的には便利屋とかゲヘナ風紀委員とか企業とか黒服を相手にしてるからさぁ……最初の依頼からめっちゃ派生するんですわ。だから一々最初のきっかけなんて覚えとらんのです。
さてさて、閑話休題。センセが迷子になった話に戻りましょ。
こうなった時は大体、やっと見つけた瞬間に死んだりしてるんです。ダレカちゃんは詳しいんだ!…いやいや、ホンマ洒落にならんて…ストレスで禿げるて。
こーゆーパターンもあったし、対策って呼ぶには烏滸がましいけど……ま、解決策っぽいのはある。伊達に回数は重ねてないんです。
本当ならアビドス高校まで同行するのがいっちゃん安全だったけど、センセが迷子になったのであれば仕方ない。
――とりま、
まずこれまでの経験からして、ダレカちゃんが目の前に居ない限りはセンセは死にません。なので、まずセンセが勝手に死ぬことはない…ハズ。多分、きっと…恐らくは。
まー、あんまり間が開けばダレカちゃんの方が死ぬんですけどね?マジでどーゆー原理?
そんで、ほっといたら砂狼シロコに発見されて無事に高校まで辿り着く。結局のところ、センセを導くのは砂狼シロコの役目で、そういう
「……と、なれば…先に向かうか?んー、でもセンセが居ないと不審者扱いされるし…
…脱ぐか?こんなクッソ重い宇宙服、脱ぎ捨てるか?
でもなぁ…センセが来た瞬間にまた着るのも、変な話だしなぁ……ホシノさんならループ前の状態から面識あるからイけるかもだけど、そもそもループ前のダレカちゃんは宇宙服を着た変人じゃなかったし…"ダレカちゃん"って名乗ってもなかったし。
小さなキッカケで本名バレとかは勘弁したいんよなぁ。つーか、ある程度のループを重ねた段階ではシャーレ秘書としてホシノさんと素顔を合わせたら、そのまんまBAD ENDなんすわ。
色々と勘違いとかが重なるんだけど、大体が
ホシノさん、大人は基本的に信用しないタイプですからね〜。
「……ま、センセが砂狼シロコに回収されてからアビドス高校に行くか」
少なくとも、これまでのパターンからしてダレカちゃんの居ない場所でセンセは死なない。だったら是非とも回収してもらって、そのあとにでもダレカちゃんがゆっくりと行けばいいさ。うーん、天才ダネ!
んー、まあ。多分明日の朝には拾われるでしょーね。だからダレカちゃんは一旦シャーレに帰りましょ。そんでセンセの残してた仕事は終わらせとこう。
ダレカちゃん、ちゃーんと優秀ですし?その気になればセンセがヒーヒー言ってる程度の仕事だったら片手間に終わりますとも。
取り敢えず、邪魔な宇宙服は脱いでから袋にまとめて担ぎ、走って帰った。
◆◆◆
そんで翌日――
「むぐっ!?な、なんだよお前ェ!!」
「このッ…アタシ達の島で暴れやがって!!テメェら!囲め囲め!!」
「ヒャッハァ!雑魚狩りは楽しいねぇ!!」
ダレカちゃんはアビドス高校の校門前でヘルメットを被った変人集団と戯れてました。は?宇宙服を着てるダレカちゃんも変人だって?
っはぁ〜!一線越えたなヘルメット馬鹿共!!こちとら不安からのストレスで徹夜明けなんでぃ!さっきも胃のものあらかた吐いてきたばかりなんでぃ!
――何十人かの不良を殴り倒しながら灰色の脳細胞をギュルンギュルンとぶん回す。
(んー、んーーー、センセは対策委員の部室にいる頃かな。そろそろ騒動を聴きつけて出てくると思うんだがね…対策委員の戦闘指揮をしてカス共を蹂躙するハズ。ま、さいきょーなダレカちゃんが大半をぶっ潰しちゃってるんだけどね)
「余所見なんて余裕だな!ぶっ殺してやる!!」
「おん?あー、実際に余裕やからね。ダレカちゃんの宇宙服を破壊したいんだったら
パチパチと全身に当たる銃弾を無視してヘルメット団の乗っていたバイクを掴み、適当に振り回す。そしたらあーら不思議、ヤンチャなお嬢様達がぶっ飛びます。
これ、ストレス発散に丁度いいんですよね〜。コイツらはマジで頑丈だし、死ぬ心配もしなくて良い。念入りに殺し方を仕込まれた奴なら時間を掛けて殺すだろうけど、基本的にキヴォトスではセンセ以外はめっっっちゃ頑丈ですとも。
はいはい、どりゃどりゃ。
そーんな感じで無双していると、そろそろ――
「なっ、何あれ!?学校の前に化け物が居るんだけど!?」
ほら、視界の端に黒い猫っぽい生徒が映った。黒見ちゃんだね、可愛いね。ダレカちゃん、揶揄うと過剰に反応してくれる子が大好物なんです。
今回はどーしよう?セリ虐は健康にいいけど、危ないヤツだって認識されたらホルスさんとオオカミさんが怖いからなぁ。
「……ん、化け物じゃない。宇宙服だね」
「う〜ん、個性的な格好ですね☆」
「えっ…だ、ダレカちゃん!?こんな所で何やってるの!?」
「あ、センセ。どもども、すっごく探したよー。具体的には一晩中血反吐を吐き散らかしながら叫び這いずり回って、苦悶に表情を歪めながら嘗ての後悔に慟哭してたんだよ。あっ、こーら。センセに銃口向けんなって」
「うぐぇ!?」
「……ダレカちゃん、堂々と嘘を吐きながら人をぶっ潰したら駄目でしょう?私の予想では…一旦帰ってから一眠りしてきたってところかな…」
「バレテーラ・三世」
またまた不良生徒を殴り倒していると、バイクとか戦車の駆動音がめっちゃ響く。援軍だろうなー、敵側の。うえーん、ダレカちゃん血潮が煮え滾るくらいこわーい。
チラリとアビドスの面々に視線を向けると、まあ…引き攣った表情ですねぇ。か弱い正義の味方ことダレカちゃんがヤベー奴扱いされるだなんて、辛いですね…苦しいですね……はいはいバニバニ。
「ドーモ、アビドス高校の皆さん。シャーレ秘書のダレカちゃんだよ。ゴリラにロールケーキをあげるのが趣味だよ」
「……凄く怪しい…!……でもシャーレの秘書って言ってるし…先生、あの人大丈夫なの?」
「おや…身長153cmで誕生日が6月25日、趣味が貯金とアルバイトの黒見セリカさんや……ダレカちゃんを疑うのかい?…仕方ないね、センセ。どーぞ疑いを晴らしてください」
「……難しい事を言ってくれるね……ほら、セリカが凄く警戒してるよ。………うん、まあ…一応敵ではないよ?」
うんうん、センセが言うならみーんな信じるでしょ。ホシノさんだけは信じなそうだけど…協調性はある方だし、堂々と襲ってきたりはしないと信じたい所存。
…今更だけど、ホシノさんって大人とか連邦生徒会関連の人を毛嫌いしてるんだよなぁ……ほら、皆が視線を外した瞬間に眼光が鋭くなったよ。ダレカちゃんは外から覗けないタイプの宇宙服だから、気にせず視線を送るけど。
「そっかー、先生が言うんだったらそーなんだろうね。
…何かを察してそうで怖い。声も仕草も変えてるから気付けないハズなんだけどな。偏に第六感って言うべき勘なのかな?あの感覚、意外と無視出来ないからね。
「よろよろー、本名と素顔と性別と声と外見は秘密にしてるけど、どーぞよろしくね〜」
「…君、本当は皆とよろしくするつもりないでしょ?ってか、やっぱり『ダレカちゃん』って名前も偽名だったんだね…」
「心外だなぁ、センセ。やっぱ迷子になった大人が言うことは違うぜ!」
「居なくなったのは君だからね!?」
「は?センセの方なんだが?」
「いーや、ダレカちゃんの方だね。断言出来る」
「……オーケー、オーケー、不良共の前にセンセをぶっ倒す。ちょっと裏まで行こうか」
「……大人を舐めすぎだよ、ダレカちゃん。私程の人間となれば、土下座して許しを乞うまでに一秒も要らない。そんな無様な姿、見たいかい?」
「くっ…!」
「『くっ…!』じゃないわよ!?この馬鹿二人組!!」
「………あの〜、ヘルメット団の皆さんが集まって来てますよ?先にあちらを片付けた方が…」
「ノノミの言う通りだよ、先生。不良を先に殲滅するべき」
はい、3分クッキング〜!
まず一番前にホシノさんを送ります。ここでポイント!さっきぶちのめした不良生徒二人をダレカちゃんが装備して、グルグルと振り回しまーす!!
すると、あーら不思議!ホシノさんを前に出した意味もなく、1分で敵の6割が片付きました〜!……ま、その代償は重いんだけどね。ハハッ!
「……うっぷ…目が回った…」
「…みんな、そこの馬鹿秘書は気にせずに撃っても大丈夫だよ。多分サンクトゥムタワーから落としても死なないから」
……あんの野郎ゥ…好き勝手言いやがって!後で殺す!は?後でぶっ生かすのだが?取り敢えず自宅に隠してるえっちな本を全て机の上に並べてやる。
その後、センセが指揮したアビドス高校の皆さんが無事にヘルメット団をボコボコにしましたとさ。めでたしめでたし。
◆◆◆
(……何処かで見たような……既視感?…いや)
――否、と小鳥遊ホシノは断ずる。
あんな
なのに、やはり第六感とでも言うべきなのだろうか。戦場においては決して無視のできない『直感』が何かを訴えていた。
「……ねえ、ダレカちゃん」
「なんだい、ホシノさん?」
恐らくは校舎前まで攻めてきていたであろう不良達を蹴散らした後、部室に戻る最中。ホシノは離れて後ろを歩く生徒に声を掛けた。
後輩達は気にしている様子もないので、この妙な感覚を覚えているのはホシノだけなのだろう。少なくとも、宇宙服の不審者がお土産に持ってきたチョコレートよりは優先度が低いのは確かだ。
声をかけたのは良いものの、次の言葉が咄嗟には出てこなかった。
何を聞きたいのか。そも、何を答えてくれるのか。自身でも分からない答えを眼前の人物が知っている訳もなく。
気まずい数秒を過ごしてやっと、ホシノは無駄な策を弄するのをやめた。伝わるかも分からないのだから、シンプルで良いのだ。それ以上は自分自身に求めていない。
「私たちさ、何処かで会ったことある?」
「…むっ、ナンパか?デート先はどこにする?」
「うへ、勘弁してよ〜。おじさん、もう恋だの愛だのにうつつを抜かす様な歳でもないんだからさ」
「奇遇だね。ダレカちゃんも精神的には御老人なんだよね。気が合いそうで何より」
「…あまり、ユーモアのセンスはなさそうだね」
「辛辣ゥ!?なにさなにさ!どーせダレカちゃんはつまらなくて退屈で倦怠的なヤツだよ!!」
「んー、そこまでは言ってないよ?」
特段、発言がつまらないとは思わない。どちらかと言えば好ましく、仲間内にはいないタイプで新鮮でもあると感じた。ウィットに富んでいると言えるだろう。
然し、やはりユーモアのセンスはない。
(…だって、冗談に聞こえないんだよね…)
本気で語っているわけでもないのに、発言に現実味が帯びている。嘘か真かは置いといて、冗談を冗談として受け取られない可能性があるだけでも致命的だ。
ならば全て本当の事かと言えば、普通に有り得ない。多少の特異現象すら非現実的で、物語の中の出来事と認識される現代社会。ホシノが稀に感じる『違和感』は、普通にありえない事象を肯定しているに等しかった。故に、本能ではそうだとしても理性では否定しているのだ。
「ダレカちゃん、本名は?」
「ないしょ」
「何処の学校所属?」
「ひみちゅ」
「男の子?女の子?」
「いーわない」
「…本当にシャーレの秘書?」
「うーん、想像に任せるよー?」
結局のところ、何も明かすつもりはないのだろう。
それを、
分からないのに、胸の内で激情が渦巻いているのは何故なのだろう。
どうしてか、目の前の人物ならば答えを知っている気がした。それと同時に、絶対に教えてくれないという確信も存在した。
「うーん…やっぱとっても怪しいね、キミ」
「モーマンタイ、何かあったらセンセが全責任を取って焼き土下座するから。てかさせるから」
「わぉ、理不尽だね」
前で過剰に反応する先生を見て、ホシノもまた作った笑みで返す。このような所だけは、自分と目の前の人物の根底は似ているのだろう。
Happy END解放条件
・彼岸キミ、及びキミ*テラーの存在未証明。
・生徒の生存。尚、生徒と証明されていない者は含まない。
・前任者との邂逅、託される。
・生存する。
True END解放条件
・彼岸キミを識る。
・運命を捻じ曲げ、生存する。
「………だれか、たすけて…せん、せ……」