シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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セリカさんの水着ががががががががががががが




ダレカちゃんはバレます

 

"絶望"とは、斯くも捉え難い。

 

――昔の事だ。

 

もう昔の事で、過ぎ去った過去(後悔)。死者は何も語らないのだろう、過ぎた後悔は取り返しがつかないのだろう。

絶望とは"ぶつかる"ことではない。積み重なり、心臓を圧迫し続ける枷だ。決して振り解けない…振り解くことの許されない罪だ。

 

いっそ無垢で在れれば……願ったりはしないが、想像はする。無垢で、真っ白。そんなアイツみたいになれたら、もっと賢い生き方もあったと思う。

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas.――只々、全ては虚しい。何度も何度も叩き込まれて理解していた筈なのに…それでも、私は()()()()()()()()()()()

アイツが死んだ日…殺されたと知った時。私だけは何も知らなかった。マダムが何かを企て、その中心にアイツはいた。それで――()()()()

 

無知は罪だった。私はアイツを助ける術も、何が行われていたのかも――"死ぬ"という事と残された者の定めすら、私は知らなかった。

 

……なんで、私は前に進める?……どうして…アイツの死を胸にしてともに逝けなかった?これは復讐か?私はもはや学園とも言えない組織を裏切って、何を成したいんだ?

 

『死』というものが理解出来なくて…理解したくなくて、盲目的で在り続けた。そうしないと、否定できなかった。

教え込まれた言葉が思考を放棄させる。でも、否定した。虚しさを否定した。今も肯定と否定を繰り返し、繰り返し、繰り返し繰り返し繰り返し…せめて、衝動に任せて人を助ける。誰かの為なんかじゃなくて、自分の為だけに。

 

――それでも――

 

癖のように呟く。

 

年上として、もしくは不器用な姉として。無垢なアイツに唯一、私が教えれた事だ。もしアイツが今でも生きていたら、きっと純粋なだけに決して崩れない『不屈』な人生を送っていた。

 

だから……私も、そう生きよう。vanitasu(虚しさ)を否定して、仲間も裏切って、只々()()()()と言い続けよう。

 

…いつか、死ぬために。

 

◆◆◆

 

…はい、ダレカちゃんです。

 

気合いと無駄なテンションで乗り切ろうとしてるけど、吐き気MAXで普通に体調不良なダレカちゃんです。

 

原因はアレっす、アズサさんっす。や、別にアズサさんが変なことをしたってワケじゃないよ?てか悪いのはダレカちゃんの中の人だね、つまりセンセのせいだ。ダレカちゃんの責任はセンセの責任だし、全てセンセが悪い。

 

「……………っ!」

 

ドアが開かれて正義実現委員会の二人に連行されて来たのは、白州アズサさんだった。そんで目が合った、

 

……うん。

 

何も思わないほど無情ではないけど、何も言いたくはない。彼女の今後を思うなら、そもそもが()()しないのが正解だ。

 

情は毒にも薬にもならない。ただの凶器だ。包丁と同様、使い手によっては人を殺す武器にも、誰かを守る盾にもなる。

そして、どんな凶器でも触れなければ無害だ。この胸に渦巻く『感情』だって、触れさせるべきじゃない。触れさせたくもない…

 

 

…………さて!ペルソナを切り替えよう!!

 

『ダレカちゃん』は道化だ!嗤うし、笑われる狂人。それはアズサさんの前でも()()()()()

吐き気を抑えろ、てか吐き気なんか日常だろ?元よりストレスフリーな人生なんて送っとらんわ、だから()()()()()()…ピエロ。

 

「ダレカちゃん、彼女とも知り合いなのかい?」

 

「…んーん、初めましてだよ」

 

そう、初めましてなんだよ。だからアズサさん、そんな目を見開くな…!まだ一瞬しか目が合ってないし、しかもこっちは宇宙服やぞ?

今んとこはワカモさんにしかバレてないし、昔と性格を変えまくったら流石のアズサさんでも分からんと思うのだが…?

 

「……っ!!ま、まさか…嘘……いや、でも…」

 

アウト?これ、やっぱアウト?しょーじきなハナシ、前回までは素顔で再会してたからアレだけど、今回は素顔どころか体型も隠しとるんよ?なんで分かるの?や、マジでさ…何らかの超常現象が働いてるだろ。

 

「あの子の反応的に、やっぱり知り合いなんじゃないの?」

 

「HAHAHA!そげなバナナ…あっ、正義実現委員会のお二方、五分だけ彼女を借りてもヨロシ?何かあったら責任はセンセが負うから」

 

「えっ…は、はぁ…奥の牢屋の方で話すのであれば」

 

「あんがと、ハスミさん。後でセンセに一回だけ命令出来る『センセ何でも言う事聞く券』をあげるね。そんでヒフミさんにはデカルトさん御用達の焼肉弁当を後で奢るね、理由もなく」

 

「……デカルトさんって誰ですか…?」

 

デカルトさんはデカルトさんだろ、それ以上でもそれ以外でもなく、デカルトさんよりもデカルトさんなんて存在しないしデカルトさんから繋がるデカルトさんはデカルトさん並のデカルトさんだってコト。

 

ま、単なるニート市民やけど。働けデカルト。

 

「じゃ、センセはコハハナに補習授業部の説明ヨロ〜。アズサさんにはついでにダレカちゃん話しとくからさ」

 

「……()()()()だよ、ダレカちゃん。さあ、復唱して?副将が副賞を取った時みたいに復唱して?」

 

「どっちでもいいわ…てかセンセ、ダジャレなんてオヤジ臭いぞ?」

 

「ぐふっ…!」

 

あ、センセが倒れた。知らんけど、てかどーでも良いけど。駄洒落なんか言うタイプじゃねぇのに、無理したな?

 

まー、気ぃ遣わせたのかねぇ。明らかな"訳あり"だし、茶化して事の重要性を薄れさせようとしたのかも。もしくはマジで生徒でカップリングを組んでる駄洒落好きなオッサンが宿った可能性も微レ存。

 

 

 

とりま奥の牢屋エリアにアズサさんを連れ出しまして。見張りの生徒は居ない、てかコハルさんが見張りを兼ねての待機だった。

 

「――さて、ここなら誰にも聞こえないかな」

 

「……………」

 

「Hey、アズサさんや。えーっと、その…連れ出しといてコッチから聞くのも変だけど、()()()()()()に何か用かい?」

 

「……アズサさん、か……そうだよね…もう姉とは呼んでくれないよね…」

 

「まって。ほんとうに、まって。ダメ、勘違いされる……そんなふうに、よんだこと…ない、から」

 

「………っ!やっぱり、キー…!生きていたんだ…!!」

 

「ッスゥ……ふぅ…違います、ダレカちゃんです。リピートアフターミー、ダレカちゃん」

 

「良かった……本当に、生きてて良かった…!…ごめん、キーが大変なときに傍に居られなくて……姉として失格だ…」

 

「ちょっ!な、泣かんといて…!ほら、ハンケチ。女の子の涙は凶器なんだから多用するんじゃありませんっての」

 

「……少し、変わったね。でもやっぱりキーだ…」

 

…断ずるけど、この人は姉じゃない。姉を名乗ってるだけで血縁関係もありません。リアルで『どけ!私はお姉ちゃんだぞ!!』とやってのけただけの、自称姉です。

 

確かに地元では一緒の部隊だったしお世話にもなったけど、何だかんだで別れもテキトーだったからなぁ。

てかあの時のダレカちゃんは感情とか薄かったし、夜逃げの際にも衝動的に裸足で駆け出したマヌケだったんだよなぁ…いやー、あん時は若かったぜ!

 

「キーは…どうしてトリニティに?」

 

「だからダレカちゃんだって……」

 

「むぅ…」

 

「むぅ…って言ってもダメです。コッチにも事情があるんだから、ダレカちゃんと呼んでくんさい」

 

「なるほど、コードネームみたいなモノか。了解した。それで、ダレカちゃんはトリニティ所属なの?」

 

「………一から話すと五時間コースだからなぁ。端的に言うと、部外者。シャーレの秘書やってまして、シャーレのセンセがナギサさんからの依頼を受けたからダレカちゃんも同行した次第」

 

…マジでバレる想定すらしてなかったから、色々と不味い。あのアズサさんだから無闇矢鱈にダレカちゃんの情報を誰かに喋ったりはしないだろうけど、そもそもの問題だ。

 

第一に危惧すべき事は、()()()()()()()だ。『ダレカちゃん』や『戸久銘ムメイ』は素人の演技じゃない、言わば外面じゃなくて内面の()()だ。

別人になった、とも言える。ダレカちゃんの根幹は変貌する無貌、つまりは化身に見立てた軸を内面に幾つも存在させている感じだね。

 

「ちなみに、どーしてダレカちゃんの正体が分かったの?」

 

「…いや、キーはキーだろう?」

 

「格好も雰囲気も話し方も、五感で推理できる部分は全て隠したつもりなんだけどなぁ…」

 

「なんだ、そういうこと?だったら簡単」

 

「………ほう?続けて?」

 

「私の()()って事だ」

 

「………ほう?終わって?」

 

何言ってんだ?この人、マジで何言ってんだ?てか姉じゃないし、姉って呼んだ覚えもない。

 

「取り敢えず、この際だから互いの抱えてることとか目的は秘密にしよう。情報の漏洩、ダメ、絶対ってコトで」

 

「…キー、聞いて。私は…あそこを裏切っている」

 

「アズサさん、聞いて。ダレカちゃんの言葉をちゃんと聞いて」

 

「許せなかったんだ……キーを殺した、マダムが…私的な復讐だったのかもしれない。私にはキーしかいなくて、そのキーを喪ったと思って…!」

 

「………ごめん…しんぱい、かけて…」

 

あっ、罪悪感で死にそう。

 

色々と事情はあるし、結局は自分の為に組織から逃げて殺されかけたりもしたけど…仮にも姉と自称して寄り添ってくれた相手を置いて地獄から逃げたんだよなぁ。

ぶっちゃけ、洗脳教育の落ちこぼれ同士だし…や、洗脳教育に関しては落ちこぼれてナンボだけど。落ちこぼれたって事は、染まりきってないって事でもあるし。

 

「…一つだけ教えて。キーは、あそこに戻りたい?」

 

「え、やだ。てか潰す予定」

 

「そっか、だったら協力する。元より私もその予定だったから」

 

「………ま、互いの守秘義務は守ろう。無闇な情報開示は事の失敗を招くからね」

 

悪いけど、あそこを潰すのはダレカちゃんとセンセだ。アズサさんに頼るつもりはないし、気付かせる間もなく終わらせる。

あの日々の中で、ダレカちゃんがマダムの教えに染まらなかったのはアズサさんをラーニングしてたからだ。きっと、ダレカちゃんの根幹にあって全てを形作る枠組みとして存在するのがアズサさんの『不屈』だ。

 

もう、じゅうぶん寄りかかった。

 

何度も折れたし、諦め掛けた。その度に()()()()、と言い続けられたのはアズサさんのおかげだ。なら、もう頼れない。アズサさんには一人の女の子として、友人たちとの青春を過ごして欲しい。

 

「ところで」

 

「ん?」

 

「キーが…というかシャーレの先生が受けたトリニティの依頼って?さっきの場所に集まってた生徒が関係あるの?」

 

「あー、そのことね。一応、アズサさんにも関係あるよ?」

 

「私も?」

 

「ティーパーティが新しい部活を作って、センセを顧問に据えようとしててね。その部活――補習授業部って言うんだけど、前回のテストで落第した問題児を集めて強制勉強させるって感じのやつ」

 

「なるほど…?」

 

本当は怪しい生徒を集めてトリニティの裏切り者を探すゴミ箱だけど、今から説明する必要性もない。アズサさんのことだから、説明したら自首しそうだし。

てか説明しない方がダレカちゃんも黒幕として動きやすい。

 

一応、最終的な目的が地元をぶっ壊すことだって伝えてはいるから、黒幕こと『ウソーノ・ウラギール』の正体がバレたとしても邪魔だけはしなそうだし。

 

「簡単に言えば、みんなでお勉強しよ〜!って事だね。記憶したか?」

 

「うん、理解した。ところで、今更だけど…どうして高校に居るんだ?キーは――」

 

「天才だから。オーケー?後、外では絶対にダレカちゃんって呼んでね?」

 

この後、五万回くらいリピートアフターミーさせた。いいかい、ダレカちゃんはダレカちゃんだよ。ダレカちゃん以上にダレカちゃんで、でもダレカちゃん以下のダレカちゃんだってダレカちゃんだ。

ダレカちゃんはダレカちゃんとダレカちゃんによってダレカちゃん足り得ているから、つまりはダレカちゃんなわけだ。

 

そしてアズサさんはダレカちゃんになった。

 

や、嘘だけど。

 






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