「ククッ…」
「なっちゃねぇなァ……黒服、手本を見せてやんよ。クーックッックゥ!クッキャアアァッハッハッハァァァァ!!」
「……………ええ、参考にしましょう」
ぶいっ、今日も勝者なダレカちゃんですよ。
昨日は問題児を集めて補習授業部を創設しまして。や、創設したのはナギサさんだけど。
ペロロ狂気に呑まれたり死刑宣告を複数回受けたりセクハラ紛いの発言を受け流したり、この変人代表格と名高いハズのダレカちゃんが馴染んでしまう程度にはヤベェ奴らに囲まれてました。
で、次の日。つまりは今日です。補習授業部の面々が第一次特別学力試験を受けている最中。
「やー、呼び出して悪いんだけどさ。だいじょぶ?バレない?お仲間さんに」
「解っているのでしょう?」
「会話だよ、愉快な会話。好きだろ、そーゆーの」
「ククッ、識っていると。興味深い…実に、興味深いですね。アナタ程の未知とは斯くも恐ろしく、蠱惑的だ。ええ、ええ!許されるのであれば、この語らいも糧とさせて頂きましょう」
「あらら、意外と
「心外ですね。私はアナタや先生には敬意を払っているのですよ?私は観察者であり、探求者であり、研究者――アナタ達は私達の仲間になる資格があると、考えておりますとも」
「安心しろって、そーゆー世界線は
「……ほう?」
さて、どこまでが本音なのやら。この人、嘘はあんま言わんけど要点を隠したりズラしたりするし。コイツも含めて、大人ってやつは腹に一物抱えてやがるから、ラーニングはしないようにしてる。
別にゲマっさん共だけじゃない。センセのコトだってラーニングしねぇよ、てかしたくねぇ。思想が理解出来ないし、理解したとて無益な力しかないダレカちゃんが生半可に『先生』の在り方を学んだらロクな結果にならないからね。
「じゃあ、改めまして。態々トリニティにまで御足労感謝っす。いや〜、
「クククッ…それはまた、面白い偶然ですね。私には必然性を帯びているように感じましたがね」
「さて、どうだろうね。お星様にでも問い掛けてみるか?存外、淡く照らして肯定してくれるかもよ」
「それもまた一興。然し探求者の性と言うべきか…確証バイアスに踊れないのが、残念でなりませんね。現実主義なのですよ、私は」
「ちぇ、つまんねぇの」
――あ、今更だけど。
ダレカちゃんと黒服はテキトーな喫茶店で密会してます。限定的な条件下での空間を構築されてるから、他人からはそもそも認知されない仕様です。
ま、昼間っから外見不審者コンビが喫茶店の隅っこで怪しい会話なんてしてたら、通報もんだからね。てかあんまりトリニティから離れられないし、こーするしかなかった。
無名の司祭の技術力も大したもんだね。技術力もだし、それを扱えるゲマっさん共もね。
「さて、では私からアナタへ問いましょうか。本日はどのようなご要件で?無論、談笑に興じるだけでも宜しいのですがね」
「…端的に言う。マダム――ベアトリーチェが色彩に干渉しようとしてる。色々と済んだらこっちの方でボコボコにしとくから、
「……ほう?」
「なに、面倒な事は言わないよ。たった一つだけ、ベアトリーチェ…いや、ゲマトリアに情報を流して欲しい。たった一人の少女を拉致監禁するよりは簡単だろ?」
「私に、ゲマトリアを裏切れと?ククッ、ククク…!勧誘したつもりが、勧誘され返されましたかね?」
「んなわけあるかよ。別に他のメンバーには後でネタバレをしても良いし、なんなら情報を発信するよりも前に個々で話を通せばいいさ。そこら辺は任せるし、口出しもしないっての」
「随分と豪胆な事で。して、その
相変わらず、声に喜色が浮かんでいやがる。コイツはダレカちゃんを『生徒』としては見ていない。いや、『生徒』であることを前提とした未知だからこそ、その興味は『生徒』だってことを重要視させていないんだろうね。
めんどくせぇけど、色々と面倒事をダレカちゃんに集中させるにはベアトリーチェの気を引く事が一番。てか最優先。本当なら黒服と取引なんてしたくないけど、やむなし。
「二つのリターンをくれてやるよ。一つ、ダレカちゃんは黒服と敵対しない。センセは相も変わらずアンタの敵だけど、ダレカちゃんはアンタを直接的に害したりはしないよ」
「…それは『
「
「ククッ、すみませんね。以前、契約の確認を怠ったばかりに手痛い失敗をしたものでして」
「そりゃあ可哀想に。で、二つ目。とっても嬉しい
「予言ですか……以前は『ゲマトリアが崩壊する』と予言されましたが?」
「安心しなされ、別の予言だよ?ネタの使い回しはしませんって。さ、どーする?無理なら無理で、ちょいと危険だけど別の手段を取るけど」
ちな具体的には単身でアリウス自地区に乗り込んでベアトリーチェを五発くらい殴って撤退する。普通に危険だし面倒事になるから最終手段だけど、生存報告とヘイト操作って面で見れば最適解でもあるんよな。
や、ぶっちゃけるとさ。
あんまり継続戦闘ってダレカちゃんには向いてないんだよな。そもそもがストレスやら体調不良やらで体力が削られてるし。
その分を無理やり食い物とかを詰め込んで回復しようとはしてるけどさ、寝起きでゲロるからね。寝起きじゃなくてもゲロる場合もあるからね。
外側は頑丈な身体だけど、なにぶん未成熟なモンでして。三日三晩とか戦い続けたら普通に死ねる。や、三日三晩も持たないけど。
「……ええ、ではその条件を飲みましょう」
「マジで?いやー、感謝感謝。じゃあ予言しよ〜!今回の件、正確にはエデン条約調印式の日からセンセを見守ってみな?業腹だけど、アンタにとっては
「…ほう、良いものと。詳細は……いえ、止めておきましょう。期待して待っているとしましょうか」
「そーしてくれ」
まーた、クックと笑ってるし。カレーでも食べたいの?頼む?喫茶店だしカレーくらいはあるんじゃね?や、知らんけど。
「それでは私も契約を果たすとしましょう。さて、彼女へ伝える
「ええよ?んじゃ、『アンタが捨てたガキが生きてる、しかも予言の大天使を模倣した』って伝えてちょ。あ、ダレカちゃんの正体は秘密ね?飽くまでも、中身の方をヨロ」
「クク、クククッ…承りましたよ」
「サンキュっす」
こーして本日の密会は終わりました。
後はテキトーにダレカちゃんの中の人の目撃情報をばら撒いたり、アズサさん達と一緒に行動していた頃の銃を回収したり。
最近はメメント・モリばかりを使ってたけど、地元のヤツらをぶちのめすんだったら、昔のチャカを使うのが礼儀ってやつだ。
さーて、忙しくなるぞ〜!
◆◆◆
「で、第一次特別学力試験でヒフミさん以外が不合格だったと?」
「ううっ…い、色々とありまして………いえ、あって欲しかったんですけど…」
唸るヒフミさん、カワイイ!
はい、補習授業部んトコに戻ってきました。ちょうどテスト終わりでセンセが合否の発表をしてましたが、まあ……うん、何回繰り返しても結果は変わらんよ。
上手く盤面操作をしたらハナコさんとかアズサさんはどーにか合格まで持って行けるけど、そーなるとコハルさんが責任感でぺっちゃんこになる。つまりコハルさんだけは一次試験での合格がクッッッソ難しい。てか見たことない。
「ダレカちゃん、何処に行ってたの?」
「そりゃあセンセ、アレだよ。キヴォトスを実験場にしようと企む黒幕的な人物と内緒の密会をして来たんだよ」
「そっか。で、何処に行ってたの?」
「屋上で日向ぼっこ」
ダレカちゃんの経験則から語るに、普段から戯言しか言っていない人物が普通に有り得ない事を言うと冗談だとしか受け取られない。
これもダレカちゃん作戦とエボンの賜物だね。センセを騙すの気持ちよすぎだろ!うへへ。
でも実際、これって何事もなく平和に今回の件を一旦は解決する最後のチャンスではあったんだよね。
この後の試験はナギサさんにとことん邪魔されるけど、一回目だけは如何なる操作もされていない。ナギサさんも明言してるし、ダレカちゃんも断言する。
だから、最初の機会を逃したからには補習授業部はナギサさんと対立するしかなくなった。
「それで、この後はどうするのでしょうか?何事もなく解散、という訳にもいかないのでしょうね。ふふっ、合格するまで続ける、というのも考えられませんね♪」
「な、なんで楽しそうなの…!みんな連帯責任で不合格なのに!!」
「…一旦、ナギサの判断を仰ぐよ。君たちはテストの問題を持ち帰って、自室で勉強ね。明日までには私かダレカちゃんから連絡するよ」
「むっ…そうか。だったら先生の待機命令に従う。ダレカちゃん、帰ろう」
「や、帰らんけど?てか一緒のトコには帰らんけど?」
「っ!?!?」
「え?アズサさんは何に衝撃を受けていらっしゃる?」
んー、明日からは合宿かぁ。
一応はダレカちゃんも寝泊まりする予定だけど、また部屋を改造してシャーレ第二休眠室みたいな自室を作らないとね。
まさか宇宙服で寝る訳にもいかないし、だからって脱いでるところをみられたくないし。
ま、逆に宇宙服を置いとけばダレカちゃんが居るって偽装できるけど。夜は主にそーゆー手段を用いて外に出て、諸事情を片付けますっす。
「ほーら、帰った帰った!これからセンセとダレカちゃんはナギサさんと逢い引きするんだぞ!!」
「あ、逢い引き!?三人で…誰もいない部屋、偉い人たちの闇……だ、ダメ!えっちなのはダメなんだから!」
「こいつぁ驚いたねぇ…理解が及ばねぇ」
「お仕事だからね?何も怪しくないし、大人として生徒には手を出さないから」
「舌は出すけどね」
「ダレカちゃんシャラップ!」
忘れんぞ、イオリさんの足を舐めたの。キモすぎて絶句したもん。喉奥で軽く悲鳴が飛び出たもん。ヴァルキューレの生徒として逮捕しそうになったんだもん。
とりま変人四人衆を帰らせまして。アズサさんが腕に引っ付いて来たから、ペロロキャンディをヒフミさんに渡して回収してもらった。
この後と言えば、ぶっちゃけると夕暮れまでは補習授業部用の問題集を作ったりテストを今の内から作成したり。
その後、ナギサさんとご対面だね。
そのご対面でも新しい情報は特にないし。や、センセには衝撃情報だけど。今のセンセは補習授業部の概要とかしか聞いてないし。
今日聞くのは、エデン条約についてと補習授業部を作った真の目的だ。補習授業部が生徒を退学させるために作られたこと、そしてセンセには無駄に生徒を退学させない為にもエデン条約の阻止を企む裏切り者を見付けてもらうってコト。
それにセンセが反発して、遺憾なことに対立する形になるんだよなぁ。
「さて、さてさてさーて。じゃあ問題集でも作るか!」
「……今更だけど、ダレカちゃんって勉強出来るの?いや、学年も分からないけど」
「ん?基本的には小学生から高校三年生までの全範囲は完璧だよ?各校ごとの専門教科はあやしいけど、少なくとも今回の範囲はモーマンタイっす」
「はい、これさっきの第一次特別学力試験の問題。解いてみて?」
「えぇ…面倒臭い。三十分ちょーだいな」
普通にやればもっと掛かるけど、ゆーて答えを知ってるテストなんてマッチョの筋トレと同様よ。複数の教科はあるけど、モーマンタイ。ぺしぺしと書いてミョンミョンと書き書きして、はい終わり。
ケアレスミスもないだろーし…てか字がデカイな。宇宙服着てるから細かい字を書きづらいんだよ、マジで。
「はい終わった!」
「はやっ!?」
「ぬへへ。今、ダレカちゃんを度し難い程までの天才で美人で、憂いの残るペン先は嘗て栄えた国を表現しているように儚く、そして豪奢で知的、天才という言葉すら生温い鬼才に慄き慟哭しそうだって言った?」
「ちょっと何言ってるのかわからないね」
一応、テストは満点でした。ま、当然だけど。ここで間違いでもあったら、トリニティの教科書を全て五周はするわ。
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