シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃんは掃除します

 

『……ウ……あ、ガァ……』

 

―――蠢き、()()()より産まれ落ちる。

 

粘性を帯びる巨体は奇怪、キヴォトスにおいても其れは形容し難い異形であった。無貌の如く()()()()()顔のパーツとは相反した、凶悪なまでに裂けた口。

5m程の灰一色の巨体は人間をベースにしながらも、無数の触覚と強靭な二つの片翼、二種の獣耳、その他にも不似合いで()()()()()ような部位が異形を加速させる。

 

見た者の正気を狂気へと変貌させる。外見のみで、其れはそう物語っていた。

 

『ゼ…ん、セ……タ…ス…け、ル…』

 

脈動する其れはアビドス砂漠に在った。

 

巨腕を虚空へ伸ばし――然し次の瞬間には()()()()()で撃ち抜かれる。被弾した部位は一切の抵抗も無く風穴が空き、黒とも緑とも思える体液が砂漠の砂を汚す。

存在しない瞳で異形が辺りを見渡すと、周囲にはアビドス砂漠を彷徨う無数の機械兵が銃を構え、虚ろな光を仮面より発していた。

 

意思と呼べるモノもない機械兵に遠慮などなく、ただ目の前に存在する敵を排除するのみ。

 

『――――――』

 

発火炎(マズルフラッシュ)を瞬かせながら異形は身体に風穴を開けられ続け、角は砕け、羽根は落ち、触覚は原形を留めず――然し、()()

蠢く、そして肥大する。無貌は先程までの()に固着せず、砂漠の一帯を覆うほどまでに膨大な質量の液体となり――

 

『――じゃ、マ………ナ…喰イ、モノ……』

 

――次の瞬間には先程と同様の姿に戻る。

 

明らかな異常性に機械兵も目部分を点滅させるが、刹那、創造されてから今に至るまで搭載されていたセンサーが背後に生体反応を感知させる。

 

虚空より這い寄る、無数の灰の触角。

 

「っ!?」

 

「――っ!…っ!?」

 

大凡全ての機械兵は触角に絡み取られ、同族ごと撃ち抜こうとも、触角は再生する度に本数を増す。

やがて虚空の触角は灰の異形へ機械兵を献上するように、伸びて身体を穿つ。混ざり、畝り、金属同士が擦れて奏られる異音はオートマタの悲鳴の様だ。

 

食事とは異なる、身体への統合。もしくは吸収して化身を増やす行為。数十体の機械兵は一つの身体に呑み込まれる。触角の咀嚼が終える頃、其れの影は震えて脈動する肉質の灰塊を数十体ほど産み出す。

 

異形より産まれた、異形の兵士。

 

先程までの機械の体とは根本的に異なる肉と触覚のみで構成された身体。さながらゾンビの如く再度アビドス砂漠を徘徊し始める異形兵を、混沌の化身は異空間へと投げ入れて収納するのみ。

 

『こ、ろ……ス…■ヲ…ァ…あ゛…!』

 

誰かを指す言葉、もしくは()()()

 

それは()()としては破綻していた。意味を孕まず、聞き手に依存する空っぽの自称。私、或いは僕、俺、我、某――意味を持たず、然し矛盾するように聞き手が意味を付与してしまう。

混沌の化身は()()()なのだ。もう中身なんてないのか、もしくは最初から最後まで外殻のみで構成された未知なのか。

 

唸り、嘆き、巨腕を伸ばす。

 

その様子は誰かを助けるように、或いは助けを求めるように。

 

只々、其れはまた異空間への裂け目に消えた。

 

◆◆◆

 

はい、合宿一日目です。

 

早速何をやろうか、てか何をするべきか。別に何でもいいんだけど、でも一日目だけは決まってる。てかそーなるようにナギサさんが企んでいるんだよね。

 

さて!じゃあ早速――

 

「――ケイドロをやります!!」

 

「…はいっ、掃除をしましょう。この建物、しばらく放置されていたみたいで……このままでは勉強どころではありません…!」

 

補習授業部にはひろーい別館を与えられてまして。寝る部屋とかはそこそこ綺麗に保たれてるのに、どーして他の場所は汚いんだろーねー。

いやー、不思議不思議。汚されたってよりも放置されていたって感じだけど、特定の部屋だけは最低限の掃除をされてるから()()()()()()()を感じるよねってハナシ。

 

ま、深く考えても無駄だろうけど。

 

とりま小賢しいってだけ言っとこ。てか普通に考えたら自分で使うモンは自分で綺麗にしろって事かもしれないし。そこまで言うなら所有権とか管理責任とかも問うコトになるけど、深くは考えない。ボウヤだからね!

 

「じゃあ、どーする?今日は掃除dayにするん?自慢じゃないけど、ダレカちゃんね…不良共(ゴミ)の掃除は得意だけどマジゴミの掃除は苦手なんだよな。押し入れに全部ぶち込むだけになりかねないぜ?」

 

「…宇宙服を脱ぐのはどうだい?そのままじゃあ細かい作業に手こずるでしょう?」

 

「あ?センセ、今ダレカちゃんを究極で完璧な秘書で慄き震えが止まらない、魔性の美人すぎて惚れ惚れ震えが止まらない、しかも誰もが驚く超絶天才的な頭脳に思わずして嫉妬の念すら抱きかねなくて震えが止まらない、的なことを言いやがったか?ケッ、どんだけ震えるんだよテメェは電気マッサージ器か!面白身体に免じてセンセの髪型を世紀末モヒカンにするのだけは許してやろう」

 

「言葉が通じないことに震えが止まらないよ……ただただ、切実に」

 

――と、話していること数分。

 

ダレカちゃんはさっきまで自室の改造とか諸々やってたけど、ヒフミさんから建物ごと大掃除するから動きやすい格好で来てって言われて、今に至るんだよね。

 

まー、まさか私服で出てくるワケにもいかないし。メジェドモドキフォームと迷った挙句に宇宙服で来たわけですが、ヒフミさんは普通に体操服だね。

センセは普通にいつも通りの青と白を基調としたスーツの上着を脱いだ程度。だっさい私服とか灰色スエットで登場されるよりはマシマシのマッシブーンだけど。

 

「お、お待たせ……」

 

「ん?あ、コハルさん。萌え袖って世界を救うと思うんです。つまり体操着似合ってるね、愛してるぜべイベー!」

 

「えっ…と、あ…ありがとう…?」

 

「え」

 

「………?な、なに…?」

 

……ふぁ?え、コハルさんが『ありがとう』って言った?え、怖い……何が起きてる…?てかコハルさんにデレ期なんて存在したのか…!?

 

…いや、そもそもコハルさんと対等な友人関係を構築出来たのは今回が初めてだし、色々と分からんってのはあるけど。

前回までのダレカちゃんって、みんなのオトモダチってよりも庇護対象みたいな感じだったし。外見とか見た目とか容姿とか、ぜーんぶで不幸を体現してるクッソ哀れな生き物だったし。

 

いやー、慣れるまでは介護されてたね!主にアズサさんが世話焼いてくれたけど、前回までのコハルさんは接し方が分からないけどとりま優しくしないと、的な雰囲気だったし。

 

「コハルさん、結婚式はいつにする?」

 

「何の話!?」

 

「あ、まだ早かったかぁ……メンゴメンゴ、忘れてちょーだい。で、いつにする?」

 

「し、しないから!するわけないでしょ!?」

 

「あはは……まだ学生ですからね…」

 

「…わァ…あ……」

 

「泣いちゃった!!」

 

やかましいわセン公。ただコハルさんとセリカさん、両方と結婚できない現実に打ちひしがれてるだけだし。あーあ、どーにかして二人と結婚できないかなー。

まー、それ言い出したら好きな人なんて両手の指じゃ足りないくらいはいるんだけどね。人間って恋する生き物なんだし、しゃーない。愛に生きる変人、ダレカちゃんですとも。

 

「……まだ、ダレカちゃんに結婚は早い」

 

「…………ん?急にどした、アズサさん」

 

「結婚は早い、まだ。お姉ちゃん()は認めないから」

 

「アッハイ」

 

……???

 

え、ダレカちゃんの結婚ってアズサさんからの許可制なのか?初耳だわさ、初めて耳にするんだわさ……てか、つまりはいつかセリカさんをアズサさんに紹介しないといけないん?

 

わぁ…どうしよ、緊張する。セリカさんみたいなアビドス登録遺産をアビドス外に出したら、あまりにも可愛すぎてまた誘拐されちゃうでしょ…いや、アビドスにアズサさんを連れて行けばいいかな?

 

「……アズサさん、黒い猫って好き?しゅきしゅきだいしゅき?」

 

「猫?……嫌いじゃない、と思う」

 

「そっかー、なら良き良き!」

 

ぶいっ!ダレカちゃんの将来は明るいぞ〜!……まずはセンセを生かさないとな……憂鬱。取り敢えず、近日中でいっちゃん危険なのは特別試験でゲヘナに行くときだな。

ナギサさんの腹心としても動くから建物爆発自体を阻止は出来ないから、シッテムの箱に頼ろう。……なんだっけ、スーパー……スーパー…あ、アロ…?あ……アホな…スーパー・アホナ・チャンバリア?

 

うん、スーパー・アホナ・チャンバリア?を張ってもらおう。なーに、試験中も継続戦闘を実施してもらえば勝手にバリアも張られるし、しかも爆発で試験も台無し!クククッ……罪悪感で死にそうですね…

 

「……ところでダレカちゃん、どうして宇宙服なんだ?」

 

「聞かれてるよ、ヒフミさん!」

 

「ええっ!?わ、私に聞かれましても…」

 

「……?いや、ヒフミではなくてダレカちゃんに聞いたんだが…」

 

「…あ、その…ダレカちゃんは勘違いしてるのではなくて、おそらくはすっとぼける感じのネタを――」

 

「やめて!?ネタの解説はハートブレイクだから…!てかコレさっきもやったゾ……おいこらセンセ!何笑ってやがる!!無駄にでけぇ胸をモグぞ!?」

 

「酷い!?」

 

「っ!え、えっちなのはダメ!ダメなんだからぁ!!」

 

「コハルさん、今のをえっちだと思うのは末期でっせ……猟奇的だよ、もう…」

 

え、疲れるぞ…?ネタを解説する狂人に、ネタを理解してくれない天然に、全てにえっちを創造(想像)するムッツリ。

 

この後にはハナコさんも来るんやろ?疲れ疲れて疲れ果てるわ…ヒフミさんもツッコミ役に見えて単なるアウトローだし、意外とツッコミ気質がありそうなハナコさんもダレカちゃんと同様にボケ偽装するし。

 

てかさ、ダレカちゃんがツッコミを入れる時点で異常なのよ?理解して?自覚して?ダレカちゃんにツッコミ入れられる人、マジで危機感持った方がいいよ。

 

「ところでハナコちゃんは…?」

 

「――お呼びですか?」

 

「ひゃっ!?な、なんで耳元で囁くんですか!?」

 

「ふふっ、どうしてでしょうね♡」

 

なんでスク水なのか。ま、ツッコミは入れんけど。てか真面目なハナシ、宇宙服の奴が他人の格好に突っかかるのは普通にイミフやわ。

 

だから、そーゆーのはマイベストフレンドなコハルさんにまっかせるよー。やったれバーサーカー!いてこましたれ、ムッツリーニ!!

 

「な、なな…何でスクール水着なの!?掃除するから動きやすい格好でって言ったでしょ!?」

 

「よっ、ナイスツッコミ!」

 

「はて、動き易い格好と聞きまして…ではスクール水着でも問題ないのでは?汚れてもすぐに洗い流せますし」

 

「むっ…確かに、案外理にかなってるな」

 

「そうかな…そうかも…?センセに聞いてみよか?」

 

「……いや、普通に変だと思うよ?」

 

「…………………え、それだけ?もっと、こう…イオリさんとかカリンさんにしてるみたいなセクハラを交えて、ダレカちゃんには再現不可能なキモいことを平然と言ってのけたりしねぇの?」

 

「君が私をなんだと思ってるのか、小一時間ほど問い詰めたい…!」

 

「小一時間ほど罵倒するが?」

 

「オーケー、オーケー…久々にキレちゃったよ。屋上に行こうよ、今から…!」

 

「上等だゴラァ!ダレカちゃん式二十四のくすぐり刑で沈没させたるわァ!!」

 

「そっちこそ覚悟しなよ。私の土下座は音速すら凌駕するからね」

 

「くっ…!」

 

「『くっ…!』じゃないでしょ!喧嘩はダメだし、水着はもっとダメ!!」

 

「あら、まあ……」

 

クッソ正論やん。とりまハナコさんは仕方なく着替えに行ったし、センセのことはコハッコハのコハルさんに免じて許してあげた。

 

――それから十分くらい。

 

ハナコさんが戻ってきてから草むしりをしたり、ガラクタを片付けたり、建物内のモップがけをした。

ちなダレカちゃんは力仕事をしました。技巧派のダレカちゃんだけど、最強すぎてパワー系と勘違いされちゃってる節があるんだよなぁ。雑魚相手にはパワーで押し潰すのが手っ取り早いってだけだよ、マジで。

 

 

 

で、掃除を開始してから半日くらいで粗方終わりまして。

 

全員、意外にも掃除が手慣れてるからね。コハルさんは正義実現委員会で掃除してるし、ハナコさんはそもそもが優秀だから何でも出来る。

アズサさんはヒフミさんの指示に完璧に応じていたから、めっちゃ効率が良かった。あえて言うなら、ダレカちゃんがアレだね…宇宙服が邪魔だったね。ぴえんこえてぱおん。

 

「さて、こんなところかな?」

 

「…センセ、それは『掃除は大体終わったし、一週間程度の合宿を考えたらこれくらいで終わらせるのが無難かな』って事か!?」

 

「なんで態々事細かに説明を挟んだの…?」

 

んー、掃除するってのは気持ちがいいね。自分の部屋は基本的に放置気味だから、大掃除をすると開放感がある。

や、自室が汚ったないってワケじゃないよ?寮の部屋はそもそもが物を置いてないし、居る時は居る時でベランダを全開放してるから、最低限以上の換気はしてる。

シャーレの第二休眠室は知らん!アレはガラクタの倉庫みたいなモンだし、どーとでもなれってなもんだよ。

 

「あ、まだ一箇所だけ残ってますよ?」

 

「あれ、そうでしたっけ…?」

 

「はい、屋外プールが♡」

 

はい、ってなワケで屋外プールに移動しやした〜。フッ軽な生徒たちだよね。ウイさんとかユズさんは、多分敢えて移動する手間とか重い足取りを考えてその場で話そうとするし。

 

で、屋外プールに来てみますと…まー汚い。放置されてたプールって感じだね、普通に。他の学校みたいに態々水を残していないだけでも儲けもんだけど。

 

「……科目に関係ないし、掃除しなくてもいいんじゃない?始めだしたらキリがないでしょ」

 

「…いいえ、コハルちゃん。考えてもみてください!キラキラと輝く水で満たされたプール、楽しい合宿、はしゃぎ回る生徒たち……楽しくなってきませんか?蠱惑的で♡」

 

「こ、こわく…?え、なに…何か私に分からない高度な話してる!?」

 

してるよ、きっと。試験にひとりでも落ちたら連帯責任でみーんな退学だって知ったら、この子はどんな顔をするんだろうね。

 

んー、秘書として時間の調節を頑張らないとな……青春を犠牲にしてまで勉強漬けにはさせたくないし、遊ぶことで適度なストレス発散にもなるし一体感も生まれるから…頭ごなしに否定するってのも違うんだよね、きっと。

 

「…確かに、こうして放置されてしまったプールを見ていると……何だか寂しい気持ちになりますね」

 

「ノスタルジックに浸ると?へへっ、エモいじゃん」

 

「えっと、ノスタルジックとは違うと思いますが…」

 

「うん、そのサイズだったら…昔はきっと使われていた時期もあったんだろう。元々は賑やかな声が響き渡っていた場所なのかもしれない。それでも、こんな風に変わってしまう……『 Vanitas Vanitatum』、それがこの世の真理」

 

「………?」

 

「コハルさんが宇宙猫みたいな顔してる……宇宙服とおそろいだね。ちなオールがvain(虚しい)的な意味だよ」

 

「古代の言葉ですね。『Vanitas Vanitatum(全ては虚しいものである)』……確かに、そうなのかもしれません」

 

…………。

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas――ホント、ひっでぇ言葉だ。言葉自体の響きは嫌いじゃないし、一つの思想として認めるけど…悪用が過ぎるぜ、マダム。

虚しいって断ずるクセに、復讐だけは肯定する。その歪さすら気付けない程までに追い詰めて、掌握して、兵士にする。悪趣味だな、全く。

 

「――今から遊びましょう!」

 

「えっ…は、ハナコちゃん!?」

 

「今から掃除して、プールに水を入れて、みんなで飛び込んだりしましょう!明日からは頑張ってお勉強をし続けなければいけませんし、となると今日が最後のチャンスです!」

 

「……うん。たとえ全てが虚しいことだとしても、それは今日最善を尽くさない理由にはならない。問題ない、ちゃんと水着は持ってきている」

 

「……………」

 

「あ、アズサちゃん!?早っ…もう着替えに行ったんですか!?」

 

「さあ、ヒフミちゃんも!コハルちゃんも早く水着を――いえ、何でも良いので濡れても良い格好に!」

 

「……うーん、でも確かにここだけ掃除しないのも何だか気持ち悪いですし…私も、着替えてきます!!」

 

「え、ええっ!?わ、私もなの!?………あー!もうっ、着替えてくればいいんでしょ!!」

 

 

 

……全てが虚しいって性根が訴えてきても、最善を尽くせる。アズサさん、それが出来る人間がどれくらいいるんだろうな。

少なくとも、■は無理だった。だからアズサさんのラーニングに頼って、今もこの場にいる。

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas

 

なぁ、マダム。きっと…アンタの教えはアンタの予想通り、今の■を苦しめてるぜ。その指導者としての才覚を、センセみたいに活かせなかったから…破滅するんだ。

想うよ、ずっと。一歩違えば■の隣に居たのがセンセじゃなくてアンタで、教えるのが憎しみじゃなくて愛情だったら…全てが違ってた。

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas

 

こんな想像も虚しい。ああ、虚しいだけだよ…破滅するマダム、哀れで虚しいマダム。救いの道は閉ざされていて、クソッタレなループの中でも明確に救えない側にいる大人。

 

vanitas vanitatum, et omnia vanitas

 

せめて、この頭にこびり付いた言葉だけを引き摺ってやる。アンタの失敗作として、アンタの愚かさを証明し続けてやる。

そして――記憶しろよ、マダム。アンタが都合良く使い続けた言葉がお前にも適用されるって事実を。

 

 

「……ダレカちゃん?急に静かになったけど、どうしたの?」

 

「ん?いやぁ、水着の素晴らしさについて脳内で作文を書いてまして。聞く?聞き及ぶ?」

 

「聞き及んではいないよ?」

 

…今は、最善を尽くそう。それが存在証明だから、今も明日もそうし続ける。いつか、虚しくないって思える日まで。

 






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