シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃんは美食バカを取っ捕まえました

 

夜に外に出る、というのは慣れている。

 

ダレカちゃんです。ダレカちゃんです。ダレカちゃんです。んで、夜遊び慣れのダレカちゃんです。

んーま、慣れてるっつーかね?ダレカちゃんの活動時間帯はあんまり昼夜で区切られていないんよな。基本的にはセンセの仕事に付き添ってアッチコッチ行ってるけど、その後にも――それこそ今みたいな、ナギサさんの忠臣(笑)みたいな時には必然的に夜の活動が多くなりまして。

 

でも"夜遊び"ってのには不慣れです。補習授業部の副担任ルートはそこまで体験してないし、それ以外では遊べるような暇もメンタルもないっての。ウケる!は?なにわろとんねん。

 

「スイーツなんてどうでしょう?」

 

と、提案するハナコさん。口元に人差し指を当てる仕草はあざといのに、自然体。こいつ…やりおるわい。とりま惚れました結婚しましょう式場はリナリア学園館跡地ね。

 

「……そいつァ、つまりよォ……スイーツでもどうでしょうってなコトかい?」

 

「いいえ?スイーツでもどうでしょうって意味です」

 

「……………」

 

「……………」

 

「「それで、スイーツでもどうでしょう?」」

 

「…何この、二人の独特な距離感……」

 

お前もその仲間に入れてやるってんだよ!あ、嘘です嘘です嘘松です。コハルさんにはね、養殖変人じゃなくて純粋変人で在って欲しいんだよ。

コハルさんはね、賢い言葉なんて使わないし嘘とか冗談を平然と言わないし、煩悩まみれのハチャメチャバカアホじゃないといけないの。

 

ちな養殖変人はダレカちゃんとハナコさん以外に、多分だけどムツキさんとかツルギさんも含まれるよ。んー、ホシノさんも……や、あの人はちゃうか。ちゃうか……?ちゃうかぁ……。

 

「この辺りは夜でも……というか、夜の方が賑わってますからね。24時間営業のスイーツ店もありますし、あそこの角を曲がって真っ直ぐと行けばモモフレンズの専門店もあるんです!」

 

「あら、ふふっ。意外と詳しいのですね」

 

「ヒフミ、ヒフミ。スカルマンや忍ペロくんはあるのか?」

 

「はいっ!沢山あります!!」

 

「よし疾く行こう」

 

「定休日やぞ?てか定休日やぞ?」

 

つーか通常営業でも夜中はお休み定期。でもヒフミさんだから、閉まってるからこそチャンス!モモフレ取り放題だぜイエェェェェェイッッ!ジャァァスティィスッッ!!的な意味だった可能性も微レ存。

 

我らが光ヒフミさんはこの世界で最も純粋無垢なアウトロー。善悪ではなく"やりたい"か"やりたくない"か、行動指針は倒す棒先よりも不安定で、でも確固たる使命感で強盗暴力裏切りを繰り返す人災。道を歩むのではなく、歩んだ軌跡が"道"と呼ばれるのみ。

 

ヒフミさんに負けた経験のある身としては、ヒナさんとかホシノさんとは別ベクトルで恐ろしいね。うへへ、懇意にしてもろうて。

 

ってなワケで、モモフレ店は閉まってるしアミューズメント施設も同様、童謡に動揺するのはどうよぅ?で、このメンツでラーメンとか牛丼に洒落込むのは洒落てないので、普通に洒落てるスイーツを食べに洒落込みます。

 

キョロキョロとセンセが辺りを見渡しまして、目立つ看板を立てた店を指さす。ところで…キョロキョロって改めて声に出すと変な効果音だよね。どーゆー音なん?キョロキョロって。

 

「あの店なんてどうかな?看板に付いてる限定パフェも美味しそうだよ」

 

「あっ、良いと思います!皆さんはどうです?」

 

「ダレカちゃんとコハルさんは一緒に超絶技巧的空手エアウォーク風タップダンスをしながらメガ盛り牛丼温玉乗せを食べに行く予定だけど……」

 

「わ、私もパフェで良いけど…」

 

「わー無視された」

 

「ダレカちゃん、私と一緒に行こう。超絶技巧的空手エアウォーク風タップダンスには少し自信がある」

 

えっ、何それ初耳。や…あれか、短期間だけどアリウス時代にスイと練習してた時期があったっけ。アズサさんにも見られたかぁ…いやー、ブラックヒストリーだね。てか黒歴史だね。

 

でもアレやると爪先の骨が折れそうになるんだよな……つーか折れた、スイの骨が折れた。

アズサさんの骨を折らせるのもアレだし、普通にパフェろう。まっ、ダレカちゃんは食わんけど。ミキサー食にして長いストロー付けてくれるなら食べれるんだけどね。

 

自前の超長ストローはあるし、カルピスでも飲もうかな。胸んとこのジッパーから入れれば宇宙服でも飲めるって寸法さ。あれ?もしかしてダレカちゃんって天才なん?

 

 

さーて、もう美食バカ共はトリニティに到着してるかなー?ま、手早く捕まえるケド。

 

◆◆◆

殺、シテ……やル……■…!

◆◆◆

 

「はぁ…はぁ……!な、なんでアイツがトリニティに…ッ!!」

 

――人の波から避け、少女は裏路地に逃げ込む。

 

震える声で事実を自分に言い聞かせるが、この場にそれを否定してくれる()()は居ない。得体の知れない恐怖心だけが喉を震わせ、声は怯えを如実に表していた。

過呼吸気味で白く染まる思考を必死に宥め、額に張り付く自前の紅い髪を後頭部へと上げる。生温い夜風だが、熱く蒸された自分の体よりは十分に涼しい。

 

愛銃の二丁アサルトライフル『ダイナーズアウトロー』の片方を肩から下げる銃ホルダーから抜き取り、軽快に動く脚を緩め、後方の確認をする。

 

「……………に、逃げきれたの…?」

 

三秒、五秒、十秒――遠くからは騒音もするが、付近は静かだ。自分の心臓の音が響いて聞こえてしまう程だった。

 

些かは冷静になり、呼吸も落ち着きを取り戻す。

 

慣れない地域ではあるが、必死なりにも思考を総動員して逃走しているのだ。

小柄な体躯を活かして狭い路地を幾つも経由してきたのだから、幾ら素早くともあの体格では追い付けないだろうと結論付ける。

 

きっと共にトリニティに忍び込んだ部員が尊い犠牲となって時間を稼いだのだろう。微塵も湧かない罪悪感で先輩達の冥福を祈り、まずは一刻も早くゲヘナへ帰ろうと、携帯端末でマップの確認をしようとした刹那――

 

「じゅーんーこーさぁん♡」

 

「え―――ひぃっ!?」

 

「逃げないでくださいよー。ダレカちゃんだってさ、罪悪感はあるんよ?あまりハルナさんとイズミさんを()()()()()()()のにもさ」

 

這い寄るように、いつの間にかピッタリと後方へ現れた存在――宇宙服の巨体。軽快な口先とボイスチェンジャーによって歪みの目立つ声以外は全てが謎に包まれている其れは、汚れた布切れの如くボロボロになった黒舘ハルナと獅子堂イズミを片手で引き摺っていた。

 

考えるまでもなく、少女――赤司ジュンコに追い付くまで引き摺っていたのだろう。

然し特段として、ジュンコはそれについては何も思わない。例えトラックで一晩引き摺られたとしても、キヴォトスの生徒が大事に至ることはない。ならばたかが数十分、意識こそないが先の戦闘中に気絶したのだろう。

 

そも、ハルナに関してはジュンコよりも重度な宇宙服恐怖症が発症している為、会って話すだけなら問題は無いが、戦闘となって闘争心を向けられた瞬間から水に沈む人形のように意識を手放していた。

 

「な、なんでここに……!」

 

「じーぴーえす」

 

「なっ!?」

 

足が竦むジュンコ。宇宙服の人物は捨てるようにハルナとイズミから手を離すと、まるで朝の散歩の一コマを切り取り貼り付けたと錯覚する足取りでジュンコに接近し、彼女の肩から何かを摘む様に取る。

 

錆びたブリキのように僅かに動いた視線で確認すると、それは米粒よりも小さな何かだった。

それを宇宙服の人物を左手の人差し指で軽く押し、次の瞬間には消える――否、指先に()()()のだろう。

 

「コレね、GPSなんだよね。宇宙服の機能」

 

「は…?えっ、いや……そ、そんなの…」

 

幾ら逃げても無駄だったのか――と、そう口にしようとして、然し再び震えだした喉からは言葉が全て吐き出される事はなかった。

 

然し会話とは意思疎通の手段であって、言葉が全てでは無い。掻き消えた言葉の先を読んだのか、宇宙服の人物は可動域の少ない腕で後頭部を掻く仕草をし、矢張り変わらぬ淡々として無機質な声質で返す。

 

「や、このGPSってあんま広い範囲は無理なんだよね。だからジュンコさんがここで止まらずに逃げ続けてたら、超絶天才無敵焼肉定食風黒猫ツンデレ大好き人間モドキなダレカちゃんにはお手上げだったぞ。いやー、惜しい惜しい!ニアピン?や、知らんけど」

 

「……………」

 

暗に、ゴール手前で止まった愚かな走者を嘲笑っているのだろう。普段なら孕まれてもいない言葉の裏を読み取って逆上するのだが、相手が悪い。

 

ジュンコとて自分達がそれなりに強い自覚はある。風紀委員長には及ばずとも、キヴォトスの各地でさながらテロリストのように振る舞い様々な学園の防衛を担う者も戦いながら、今も大手を振ってキヴォトスを闊歩しているのだ。驕りはないが自分を過小評価もしていない。

 

それでも――()()はダメだ。

 

決して越えられない壁と言うものがある。何百Mもあり突起もない壁を越えられないように、空崎ヒナや目の前の宇宙服――『ダレカちゃん』と名乗る謎の人物は埒外の存在だった。

単純にスペックが段違いなのだ。そも、此方の攻撃が効かなく、相手の攻撃は一撃で意識を刈り取って来る。身体能力も天と地の差があり、技術的な面でも自分に勝る点がないとジュンコは理解させられている。

 

もっと単純な話、美食研究会が片手でカウントする間に全滅させる事が可能な相手に対して、ジュンコは何が出来るのか――考えるまでもない。

 

「……あのさ、君たち一昨日も暴れてたよね?」

 

「あ、暴れてはないから……変な料理を出す店があって、ハルナが爆発させただけだし…」

 

「"だけ"て……あんまダレカちゃんよりナチュラルボーン狂人をせんといて?ダレカちゃんの変人濃度が薄まるでしょうが」

 

「そんなこと言われても…」

 

もはや逃げる事は諦めたジュンコはARを力の抜けた右手に持ち、立ち尽くす。

 

その様子にカラカラとわざとらしく宇宙服の人物は笑い、今度はハルナとイズミを両脇に挟んで持ち上げた。

その際にイズミは『ぐえっ』と声を上げたので、意識は戻っているが狸寝入りをしているのだとジュンコは察した。それに気付いてか否か、持ち上げた張本人はポジションを確認するように何度と揺らし、位置の調節を試みていた。

 

もう戦闘にはならないことに安堵したのか、途端に疑問符が生じた。一応は前方後方を軽く見渡し、やはり手っ取り早く目の前の宇宙服へ聞くことにした。

 

「その…アカリは?見当たらないんだけど」

 

「おん?あー、アカリさんね?なんか車に積んでたロケランでパーティーしてたけど、そろそろセンセとか正義実現委員に捕まったんじゃね?ダレカちゃんはセンセの言うことなんて聞かない問題児だから速攻その場から逃げ出したアホ三人を単独で探して取っ捕まえたんだけどね」

 

「そっか。って、あれ?ダレカちゃん、先生と仲悪かったっけ?暇があれば一緒にいるイメージだったけど」

 

「ん?ダレカちゃんはセンセのアンチ勢代表だぞ?仲良しだけどアンチ勢。だから毎週月曜日の朝七時にセンセの恥ずかしい動画をSNSにアップしてるやん。あ、前のやつ観た?部屋で玩具の手裏剣投げて、自分に返ってきてたやつ」

 

「あっ、見た見た!アレのGIF画像がトレンド入りしてたけど、やっぱり本人は気付いてなかった?」

 

「気付いてなかったなー。あの『大人の手裏剣(笑)』ってやつでしょ?センセってエ……興味のある単語が入ったトレンドしかタップしないから、そーゆーのは基本的にはみないんだよな」

 

「へぇー、あんまりミーハーじゃないんだ。そういえば、この前さ。先生が美食研究会のアカウントをフォローしてたんだよね」

 

「えぇ……てか、アレって爆発予告アカっしょ?」

 

「ち、違うから!美味しくて接客の良い店は個人的にもリピートするし、ホントかは分からないけど前に店の店員が『箔が付く』って嬉しそうにしてたし……」

 

「意外にも店側にハイリターンがあるんよな。ハイリスクだけど…………お?そろそろセンセ達が来るっぽいね」

 

「え?…あ、ホントだ」

 

談笑に花を咲かせていると、遠くから複数人の足音が聞こえてきた。トリニティ自地区でも特に寂れた場所なので、偶然人が集まってきたという事はないだろう。

 

大きな宇宙服の手で器用に携帯端末を操作している人物を横目で見て、ジュンコは大凡を察する。

ここまで来て抵抗する気もないので、この後は正義実現委員に拘束されるか、もしくは先生の監視の元でゲヘナ風紀委員会に引き渡される筈だ。

 

これまでは捕まる度にダレカちゃんが直接空崎ヒナに連絡して引き渡されていたが、トリニティ自地区でそれも難しいだろう。本来、このエデン条約が控えた時期にゲヘナとトリニティがお互いの生徒の立ち入りを快く思わず、疑ってしまうのは仕方のない話なのだ。

 

「んじゃ、また暇なときにデートしましょッス」

 

「前は寿司だったから、次は焼肉が良い!」

 

「我儘な腹ぺこお嬢さんだなぁ……ま、笑顔プライスレスだしいっか!代わりに風紀委員の隠し撮り、頼むぜ?特にイオリさんの」

 

「いいけど………何に使ってるの?」

 

「ないしょ♡」

 

ダレカちゃんが『ぐえぇぇっ!?』と呻くイズミの腹を腕で締め付けつつ口元に添えた内緒マークは、やはり友人であるジュンコにも謎でしかない本性を更に隠している気がした。

 





ちなジュンコお手製隠し撮りの使い道は20話『ダレカちゃんはクソゲー開発部の子を驚かせます』の冒頭ちょい下です。主な使い道です。
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