シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃんは渋り散らかします

 

………本体は居ねぇな。

 

あ、どーもダレカちゃんです。今は宇宙服は限定的にしか着てないけど、心はダレカちゃん風味なダレカちゃんです。

 

現状を端的に説明しましょう。

 

暇なセンセを連れてアビドスに来まして。後々で面倒になるから暇な時にビナーの居場所を調節しつつ、アビドス復興を目指して暇潰しのお宝探しに興じていたら、異界の彼岸キミの手下集団にこんにちはしてしました〜!殺すぞ〜!!

 

怒りのあまり《カルペ・ディエム》を連発していたら、化身の成り損ないさんからの誠意で精神汚染を頂きました〜!

ダレカちゃんの気分次第で全員生き埋めにしてやる事も出来るんだぞってことで!てか触手やん、啜れるやん。ラーメンのTV的なアレにも出れるかもね。は?何言ってんだ?触手はラーメンじゃない定期。

 

……ま、とりま宇宙服の頭だけを装備したままに交戦してます。理由?ひっでぇ表情だからホシノさんに見せられないんだよなぁ、ホンマに。

 

あたーま潰して〜♪爆発させて〜♪…………吐きそう、てかマジで精神的にキツイ。こりゃあ七囚人も慄く人殺しだな……もう静かに死なせて欲しい。や、ちゃんと戦うけどさ。

 

「いーち、にーぃ、さぁん……少し飛ばしてじゅうご」

 

「おっと!……この触腕、嫌な雰囲気……触れない方が良さそうだね」

 

「気持ち悪いからなぁ……流石のダレカちゃんも卓上調味料をひっくり返してしまうね。は?卓上調味料ってなんやねんて」

 

「情緒不安定かな?」

 

「それを言うなら、最強無敵な才子佳人ことダレカちゃんに恐れ慄き脱帽して即告白してしまいそうだ…だろ?」

 

「情緒不安定だね」

 

「確定形にされた……ぴえん超えてぱおん」

 

「え、なにそれ?もしかして次世代の『ぴえん』的な?うへへ……こんどみんなの前で使って、アップデートしたおじさんを披露しようかな!」

 

適当にホシノさんが蹴り上げた触手野郎を神秘砲で木っ端微塵にして、適当にホシノさんがシールドバッシュでまとめた触手野郎どもをまとめて木っ端微塵にして、適当にホシノさんが揺らしているアホ毛を三回ほどモフっておく。

 

連携って言えるほど高尚なモンでもなくて。

 

要は役割が決められてるから、それに準じて動くだけ。初動はホシノさんで、隙だったりのアタックチャンスを作る。

それを丁寧に拾って、殺す。昔とやってる事は同じだよね。それこそ昔はホシノさんの方が圧倒的に速くて硬くて強かったから、自動的に最初に飛び出すのがホシノさんでして。

食い散らかした後の木っ端を彼岸キミが片付ける。……ん?昔から連携なんてしてなくね?バッテリー解散だわ、てか最初からバッテリーを組んでなかった定期。

 

個人プレーだけで暴れるチビ二人とか絵面どうなんよ。

 

「……ホシノさん、先に言っとく。()()はホシノさんじゃあ倒せない」

 

「へぇ……でもキミは殺したよね。どういう原理?」

 

「簡単。完全に消し飛ばせばいい」

 

「……うーん、なら無理かなぁ。そーゆー装備じゃあないしね」

 

「足とか頭を潰してくれたら、後は片付けるから。よろよろ〜」

 

ちな、装備が整ってたら木っ端微塵も可能なんだってさ。化け物かな?でも実際、ヒナさんの紫ビームとかミカさんの謎隕石は有効なんだよなぁ。

パンデミックな世界線ではそもそもが爆発特攻だったけど。野郎ども!爆弾は持ったか!?って宣言するマコトさんには腹抱えて笑ったね。や、笑える精神状態ではなかったけど。

 

ちな最大メタは『パンちゃん』だよ。意味わからん……マジで意味わからん。謎生物を生成するなし。

 

とりまホシノさんが触手共の足を撃ったり盾で潰したりして、ダレカちゃんが銃で消し飛ばしてます。数は30くらいか?

 

あんまり見続けると精神が汚染されて反転しちゃうから、手早く殺しましょうね。ちな触手な化身さんの素材は不良生徒とかオートマタです。

別世界の彼岸キミの命令で餌でも探しにきてたんかねぇ。や、罪悪感で死にそう。てか何で生きてるん?死んだら?……………あー、精神汚染されてるぜよ。

 

「――直線上に誘導する。固定砲台、よろしくね」

 

「楽なお仕事ですこと。コレ使ってちょ、ワイヤー的なワイヤー風味のワイヤー」

 

「ありがとねー。おじさん、実はあやとりが得意なんだよね〜」

 

「そのこころは?」

 

「拗れた性格と人生だったからね。親近感?………ありゃりゃ?とっておきのギャグだったんだけどなぁ」

 

「重すぎて潰れちゃうよぉ……ホシノさんのデブ」

 

「は?」

 

「あ、ごめんなさい。だから撃たないで?痛っ、痛いって!誰を撃ってる粉バナナァ!!」

 

「まだ撃ってないよ。今から撃つよ」

 

「ひえっ…ピエン伍式・夢夜ノ花鳥風月《(あらため)》」

 

チクチクとダレカちゃんの宇宙服ヘルメットを撃ちながら、ホシノさんが触手どもの間を走り抜けてワイヤーを絡める。

半数以上を絡めてからワイヤーを引くと、あーら不思議!直線上に元不良学生や元オートマタ、元ゴリアテな化身の成り損ない共が重なるではありませんか。

 

それを最大チャージの神秘砲で消し飛ばしまして。なんとなんと、ワイヤーまでまとめて消し飛んだので残りは地道に殺さないといけません。ふぁっく。まじふぁっくゆー。

 

「ドーン、ドーン!カルペ・ディエムをドドーン!!即ち相手は死ぬ!!ターンエンドだぜ!ファー!弱い弱い!!」

 

「うへぇ、馬鹿みたいな火力だね〜。アレを消し飛ばすってどんな威力なの?」

 

「や、そもそもアレがやっけぇのよ。神秘でも恐怖(テラー)でもないんだし、つーか与えられる筈の役目が与えられてないんだし、不死性もうっすいってハナシ」

 

「………へぇ。後で教えてね?」

 

「ヤ!」

 

まー、システムに不具合が起きてるっつー事だけど。感染元?的な略称"キミ*テラー"の権能が普通に作用してたら『簡易バフ&デバフ付き人格抹消恐怖(テラー)量産機』だったんだけど、そもそも同じ世界に彼岸キミが二人もいる時点で権能が半端になるのもしゃーなしよな。

 

あー、テラー化したときの記憶が蘇るなぁ……ゲロ吐きそう。多面性の表が入れ替わる感覚って、自分が嫌いな自分の部分を強制的に無意識的に無遠慮的に、何者でもない自分自身の手で引摺り出される感覚なんだよな。

 

常に()()()()()状態になる、の最上級。そりゃあキヴォトスも滅ぶわな。

 

「……っ!キミ、気の所為じゃなければだけど。あの化け物、増えてない?」

 

そー言ってホシノさんが指差す先。

 

最初は30くらいだった触手の化け物。元生徒だったりゴリアテやらオートマタやらドローンやら、バリエーション豊かな肉塊。

それが()()()()()()()()()()()に増えてますねぇ。捕まったらホシノさんはR18みたいな事になりそうな化け物集団ですね。や、ホシノさんなら細切れにして一人で殲滅しそうだけど。

 

「おん?……あー、ホシノさん…アレね?肉塊を二つ以上に分けるとそれぞれが別で再生するんス。つまり増殖。ミカヅキモだね♪」

 

「見た目的にはアメーバだよ………ん?じゃあさ、私たち…()()()よね?普通に消耗戦だし」

 

「所がどっこい!アレをまとめて殺しきる最強無敵な奥義があるとしたら?………使いたくなかったけど、渋々…本当に血涙流して地団駄踏んで苦汁と辛酸を飲んで、熟考に熟考を重ねて検討に検討を重ねて検討する事を検討して、泣く泣く嘶くナナハン7台難なく並べて長眺めして、でも他ならぬホシノさんの為だから仕方なく……使いましょう、ダレカちゃん式三大奥義の一つを!!」

 

「三大奥義?」

 

「使い勝手の良い技と、使い勝手の悪い広範囲技と、人生一度っきりの使い勝手が悪すぎる技。その二つ目ッス」

 

ちな一つ目が《カルペ・ディエム》だよ。使い勝手が良い奥義だから連発してるけど、めっちゃ疲れます。

セリカさんとイチャイチャしてたからまだ余裕だけど、普通の低燃費宇宙服ダレカちゃんならバタンキューしてたね。あー、セリカさんを吸いたい。

 

「そっか。で、どうすればいい?」

 

「時間稼ぎして♡100匹まとめて殺るなら、一分くらいは」

 

「しょうがないなぁ〜!可愛い後輩のために…おじさん、頑張っちゃうぞ〜!!」

 

「ひゅー、ありったけのワイヤーと手榴弾をあげるから、やっちゃえバーサーカー!別にアレを倒してしまっても構わんのだぞぃ!!」

 

「出来そうならね〜」

 

出来ないって言わんのがホシノさん節よなぁ……さーて、ではでは。このままじゃあ護りたいモンも守れないし、ポリシー投げ捨てて本気をだそうかな。

 

◆◆◆

 

深く、深く。

 

息を吸う。

 

メメント・モリが右手で構えられ。対する左も同様に脈動するヴァニタスが握られている。

二つの拳銃より発せられる灰光が高まり金切音を鳴らす。その音波にホシノは顔を歪め、背が冷える。神秘の伴った銃撃、そう断言するには異様が過ぎたのだ。

 

(〜〜ッッ!このっ…()()()()()()()は昔から変わらない…!!)

 

()()()()だ、と少女は悪態をつく。これだけの圧を放ちながらも一切の警戒をしていない。今、もしも触手に飲まれた化け物を通せば――彼岸キミは抵抗もせずに殺されるだろう。

言わば()()()()()()で、体力も気力も注ぎ込んだ一撃を放とうとしているのだ。

 

――ホシノには理解できない。

 

何故、たった一人の小柄な自分に全てを委ねれるのか。何故、嘗て自分を拒絶した女を信頼出来るのか。何故、迫り来る恐怖の体現から目を逸らして集中できるのか。

 

その雰囲気に気圧されつつ――俄然、ホシノの脚は速度を増す。

 

地面スレスレまで体勢を低くし、構えた盾ごと正面から触手に侵されたナニカへ体当たりする。妙に柔らかい感覚ごと異形は弾かれ、空中に投げ出された所をワイヤーで縛られる。

ブチブチ、と何かが裂ける音と同時にワイヤーで引かれ、他の異形に向けて投擲。不確かな足取りの其れらには銃を用いずとも体勢を崩させるのは容易だ。

 

今ばかりは増殖することも厭わずに、ホシノは異形の足をショットガンで射ち壊す。宇宙服の生徒が言う所の()()()()()()()な異形は躱す術を持たないのだろう。

 

水気を含む嫌な音を立てて異形共の足は爆ぜる。そしてボコボコと膨張するように肉と灰の触腕が異音を鳴らし、数秒を持って増殖した。

 

精神を狂わせるような惨状を前に、決して鈍らないホシノは自分自身への()()()を覚える。

 

(………なんだろう?凄く、嫌な気分……目の前の光景だけじゃない。自分でトラウマを掘り起こして、黒い何かが広がる感覚……もしかして、精神汚染?……あまり、見ない方が良さそう)

 

負の感情が増幅される感覚を自覚し、吐き気を覚える。後ろの後輩への罪悪感や、今も消えない先輩への気持ち。

盾の裏に隠しているコンバットナイフで喉元を掻き切れば楽になれるのに、と心の底で自分が呟く。

 

増殖する半不死身の軍勢。積み重なる精神汚染。何処かこの世界には相応しくない相手を目の前に、やはり長期戦は不可能であると悟った。

そも、最初の一体に遭遇しただけで自分を含めたアビドス生徒は脂汗を滲ませて恐怖に飲まれ掛けたのだ。きっと一時間も戦えば精神に異常を来たすだろう。

 

そんな不安を消し飛ばそうと手榴弾を投げ、ずっと先――化身の成り損ないである軍勢の後方を爆発させる。

 

今もホシノが正気で戦い続けていられるのは、守るべき後輩から発せられる異様な雰囲気と金切音のおかげだ。

ホシノがこの世界で最も信用していて、問答無用で味方になる相手。宇宙服のヘルメットのみを被る小柄な後輩――彼岸キミ。

 

ふと視線を向けると、心做しかヘルメットの奥で赤い双眸と目が合った気がした。

 

声に出さずとも唇で準備の進捗を問えば、控えめながらも確かに頷かれる。

二つの銃口から瞬く光は灰を塗り潰す《白》――否、白を飾っただけの、無色だった。

 

「三秒」

 

「了解だよ」

 

色々な生徒を見てきて、千差万別な神秘の在り方を知っていた。最高峰の神秘を有する小鳥遊ホシノである故に、()()()()と判る――まるで装甲を無視する様な、存在すらも喰らう暴風だ。

当たれば耐えられない。盾もキヴォトスの住民としての肉体も関係無しに。

 

「ちょっと転んでてね!おりゃ!!」

 

壁を足場に空間を跳び回り、ワイヤーで前線に躍り出た異形の足を斬る。

無論、数秒と経たずに増殖して再生するのだろう。だがその数秒、ホシノがその場から移動するのに必要な数秒があれば充分だった。

 

――無風でありながら暴風で肌を打つ感覚。

 

圧倒的な何かから逃げるように、ホシノは異形の頭を蹴りつつ大きく跳躍して、宇宙服の頭部分のみを被る小柄な生徒の後方へと下がった。

 

刹那――

 

「呑め、喰らい無に帰せ――《ネモ》」

 

「……ッ!」

 

其れはあまりに逸脱していた。

 

()()()()、風より素早く。度し難くも不可視の衝撃波が全てを呑み喰らい、目視が叶う頃には()()のみが残る。

自らの起源に対する反抗の暴力。nemo(誰でもない)、故に誰かになりたかった生徒の声無き叫び。

 

()()になりたくて、然し知られたくなくて()()()()で行動し。()()()()を繰り返し続けた生徒の末路。いずれ消える自身の在り方こそが"ネモ(誰でもない)"だったのだ。

 

十数メートルはある地下通路を埋め尽くす"透明の神秘"。音で硝子を割るように、二つの銃口から出ているであろう透明な何かは100を超える異形を砕き、砂のように崩壊させた。

 

十秒にも満たない時間。それだけで化身の成り損ないが消滅するには充分だった。

 

「…………」

 

「き、キミ…?」

 

「……………ぬわぁぁぁ!疲れたぁぁ!!もう動けん!セリカさんを吸わないと動かん!てかホシノさんのアホ毛をモフモフしないと動きたくなぁいぃ!!」

 

「………ぴえん超えてぱおん」

 

「あ、ちな"ぱおん"も古いっすよ」

 

「っ!?!?」

 

――斯くして、放たれた一撃は抵抗を許さず"化身の成り損ない"を尽く殲滅した。

 

 

 

 

 

「……負ケタ、けど……その程度。次は……■が、オ前ヲ殺す。未完の化身、ト…共に……」

 

◆◆◆オマケ◆◆◆

 

ダレカちゃん式三大奥義

 

《カルペ・ディエム》

・神秘の暴力。銃口から穿つ灰光。技術や技、と言うよりはループを重ねて蓄積された神秘を雑に放っているだけ。

最大威力までは数秒の貯めがある為、避けれる生徒は避ける。ただし先生の集中指揮により数秒先を予知している場合、その欠点はあまり意味を成さない。

 

《ネモ》

・無色透明の何か。メメント・モリとヴァニタスの二丁の拳銃を同時に使う為、ポリシーも重なり、酷く限られた状況でしか使えない。

ある意味では自殺用の技。"ネモ(誰でもない)"、だからこそ自分を観測して瞳に映す相手も不要。

 

《???》

・自爆。燃える。

 







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