シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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~懐古中~

崩壊――深く手を繋いだからこそ擦れ違う。
懺悔――言葉が足りないからこそ繰り返す。
憧憬――貴女に成りたかったのに至れない。

懐古は泡沫に溶ける幻想。もう届かぬ『過去』でしかない。故に語られるは崩壊の物語。懺悔の慟哭。憧憬の欠片。




懐古③

 

――三ヶ月が経った。

 

アビドス生徒会の二人と異形の幼子が出会い、保護対象から一種の友情へと変わり始めた頃。

 

相変わらずアビドス高校の状況は変わらない。嵩む借金、利子を返し続ける為に小鳥遊ホシノと彼岸キミは賞金首を捕まえ続け、或いは悪辣な大人に騙されたユメを救う為に走り回っていた。

 

酷く不安定な平和だった。きっかけ一つで崩れ去る青春だった。

()()()()()は、過ごした時間の少なさと彼岸キミの過ぎ去った過去だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

「"闇の跳梁者"……?」

 

生徒会室で、両手に抱えるタブレットに視線を落としてホシノは呟く。

 

億を優に超える懸賞金。酷く曖昧で、夢物語のように感じられて。然し確かに存在した――存在している伝説の暗殺者、或いは殺人鬼。

何百と殺している。何千と傷付けている。バックボーンの見えない小さな暗殺者、その正体を理解するのに酷く時間を要した。

 

――其れを知ったのは偶然だった。

 

()()()()()()()()()()()

 

また大人に騙されたユメを救った際に、偶然手に入れた黒いタブレット端末。借金返済に使えると思っていた其れには数々の犯罪者や賞金首が記録されていた。

スクロールする度に入れ替わる『犯罪者』の写真、情報、所業。その中の比較的新しい記録だ。簡易的に懸賞金と写真のみを乗せた手配書――

 

大きな二つの片翼を広げる小さな影。鬼のようなツノ、全てを薙ぐ龍尾、尖った片耳、それと別に頭部に付くのは獣を想起させる二つ別種の耳。

 

異形のように()()()の部位を広げ、深紅の瞳が特徴的な()が写っていた。

 

「………………」

 

崩壊の亀裂は小さく、然し確かに広がる。

 

◆◆◆

 

「それでねー。その時のタブレット、コレなんだよね。暗殺者さん、言い訳は?」

 

「えー、普通にベアババァに利用されてました。あ、元ご主人様ね?夢見がちなゴミ屑、人を化け物呼ばわりするキモイ異形化け物、自粛しろクソババアで有名なあの人だよっ!」

 

「ちくわ大明神先生のこと?」

 

「ホシノさんはセンセを何だと思ってんだよ……てかベアババァっつってんだろ」

 

「キミが普段からそー言ってからかってるじゃん、先生のことを」

 

「そこまでは言ってないが?心が幼いままに成長してるくせに格付けだけは得意で、引くくらい芯がブレないからケツの穴から手ぇ突っ込んで奥歯ガタガタ言わせてやりてぇって思ってるだけさね」

 

「先生に実家でも燃やされた?」

 

「二割は冗談やて」

 

ケタケタと笑い、宇宙服の頭部のみを装備した生徒はホシノから受け取った端末を操作する。

 

古く、雑な造り。ブラックマーケットで作られた粗悪品なのだろう。おおよその機能は通常のものと比べると粗末で、それこそ賞金首の情報をまとめる為だけの物だ。

インストールされた情報の記録媒体でしかない。一度でもデータを消せば、画面が光るだけの無用の長物となるだろう。

 

「んー、ん?んんーん、あ。スピリット寛寿郎に禿げ狩りの重郎平、歓喜せし欲望の光冠(コロナ)も記録されてるね。懐かしいぜ……あの野郎ども」

 

「知り合いなの?」

 

「全員サンドバッグ(ボコボコ)にして捕まえて単位の足しにしたのです。一応、ヴァルキューレ所属なので」

 

「あははっ、冗談キツイなぁ」

 

「……………」

 

「え?本当にヴァルキューレなの!?」

 

「人を何だと思ってんの?」

 

「法治外の子供(ちびっ子)狂生徒(バーサーカー)

 

「逮捕するぞ女ァ!!」

 

「二割は冗談だって」

 

「ならしょうがないかぁ…」

 

嘗て、小鳥遊ホシノと彼岸キミは相棒に等しかった。共に暮らし戦場では背中を預け、普段から二人で行動し。唯一の友――親友だった。

 

二年前とは交わす言葉の数が違う。幼子は宇宙服のヘルメットで隠しているが、きっと表情も異なるのだろう。

互いに()()()()()、それなのに何処までも過去の再現だ。

 

ずっとこうしていたい。

 

胸を占める願望。ホシノが無責任に言葉に出来ない切望。

 

――()()()から何も進めていない。

 

変わることを恐れている。また変貌する事に酷く恐怖している。もう見守ってくれる先輩はいない。先駆者のいない未知は何よりも怖かった。

 

それでも――

 

「………進まないとね」

 

「…ちゃんと、前に歩ける?逃げ続けてきたのに……後ろしか見ていないのに。カイザーの件だって自分が()になる選択肢を選んだくせに」

 

「でもキミが邪魔をした」

 

「■じゃないさ。後輩で、先生で、或いは■に遺ったユメの希望、夢が残した足跡。その意味……分かるよね」

 

――稚拙なラーニング。本質の変化、変貌、変質。彼岸キミの在り方を変え続けてきた本能だ。あの時、ホシノを助けたのは四人の後輩と一人の大人と、彼岸キミの中に存在する梔子ユメの心。

 

何処までも二人は過去に囚われている。沢山の手を差し伸べられても、きっと二人は互いの傷を舐め合う事しか出来ない。

故に、ホシノが歩を進めるのであれば()()()を脱却する他ない。

 

籠った息を捨てる。

 

深く大きく息を吸い、目を開けた。ホシノは初めて自分の欲望に従い、未来を切り開く覚悟を決める。

 

「………彼岸キミ、私と取引をしよう」

 

「へぇ……嫌いな『大人』のモノマネ?らしくないね、初めての流れだよ」

 

「あっそ。で、取引ね。()()()()()()、だから()()()()()()()()()()()

 

「……………………」

 

「……………………」

 

「……はぁ…」

 

沈黙にため息が零れる。見据えた瞳には先程までの淡い熱はもうない。

 

「…失望させてくれるなよ。()()って、そういう事か?」

 

更に深く、深く、()()()()()。共依存を続ける――否、深めるのだとホシノは言っているのだ。どの物語でも深い依存は身を滅ぼす。救いのないバッドエンドとなる。

 

ホシノの提案はキミを失望させるには充分過ぎた。

 

「勘違いしないでくれるかな。私は別に、私自身がキミを求めているワケじゃないよ」

 

「………」

 

「アビドスには()()が必要。いずれ私は――私達は()()になる。私が卒業して、次にシロコちゃんとノノミちゃんも卒業して。最後に残る二人だっていつかは卒業する」

 

「そんなの、どーとでもなるでしょ。後輩が必要なら適当にかっ攫らって来る。金が必要なら稼いでやるよ。■である必要性はない」

 

「ううん、キミが必要。アビドスには彼岸キミが必要だよ」

 

色の違う双眸が彼岸キミを見据える。真っ直ぐと曇りなく、純粋に求めている。

 

故に考える――何故、彼女に求められているのか。

 

強いからか?否、ホシノは強さに固着しない。

 

シャーレの立場か?否、先生がいる手前では秘書など意味を成さない。

 

彼岸キミがアビドスに所属するのは簡単だ。連邦生徒会長が築いたヴァルキューレ警察学校での全てを捨て、アビドスの中学校にでも転校するだけだ。

私立ネフティス中学校はもうないが、ホシノが生徒会長代理としてアビドス高校に中等部でも追加すれば年齢の問題も無くなるだろう。

 

無論、全て可能であると同時に彼岸キミが取らない選択肢だ。

 

思考するまでもなく断る――筈なのに、交差する瞳だけは切実だった。その()()に気付けと語り、そんな気持ちは非合理的で偽物だと騙る。

 

「……もっと端的に言えば?頭ん中でごちゃごちゃ考えて、建前ばかり並べて。()()()()()()()なんて似合わないぜ?」

 

「手厳しいなぁ……察してちゃんは嫌いじゃないでしょう?」

 

「むしろ好きだが?」

 

「じゃあ察してよ。気付いてよ、親友の気持ちくらい」

 

「湿度高いなぁオイ、除湿機つけるで。ポチりとな」

 

「あっ、中の水捨てといてね」

 

「後輩使いが荒いぜ…」

 

――()()()――

 

そう言えない少女が居る。手を伸ばせない、不器用で言葉足らずな女の子は言っているのだ。助けるから、助けて――と。

まるで幼子のような交渉は、しかし畏まった礼儀や褒美よりも彼岸キミの心を動かしてしまった。

 

「……はぁ、 ちょい待ち」

 

「うん?」

 

「電話するんだよ。………あー、もしもし。ん……彼岸、ッス……転校する。よろ〜………うんっ、おまたて☆」

 

「えっ……は?キミってもしかしてバカなの!?」

 

「あ?泣かせるぞ?」

 

「泣いてあげようか?」

 

「………はぁ!?むしろダレカちゃんが泣くんだがァ!?」

 

「合理性のない売り言葉に買い言葉……生きづらそうだねぇ」

 

「お互いにな。つーことで、手続きとか諸々掛かるけど……とりま、また後輩になってやるよ。宜しく仲良くおねしゃっすね。あっ、でもセンセにバラしたらアビドスの借金が三倍になると思えよな」

 

「…は、はは……よろしくね」

 

互いに違う形になり、再び交わる。拗れた道筋に苦笑いを浮かべながら小鳥遊ホシノは久しく、そして新たな後輩を歓迎した。

 

◆◆◆

 

はい、ダレカちゃんだよー。

 

オリチャー発動!なんか知らんけど、フラグでも建ったのかしらん?なんてRTAみたいなことをダレカちゃんはダレカちゃんは真顔で呟いてみたり。

 

んー、こうなってくると今後の予定を変更せんとなぁ……本来はアビドス組をトリニティに送ってサッちゃんによるセンセぶち殺し計画を阻止する予定だったけど……や、断片的には使えるか?

とりまその頃にはキミ*テラーをダレカちゃん一人で討伐してマダムぶち殺し作戦に参加する予定だったけど、それはそれで安定性に欠けてたんだよな。

 

ほら?ダレカちゃんって最強やん?

 

過去の彼岸キミとはいえ、最強格が恐怖(テラー)化したらヤベェのよな。外野が手を加えた半端恐怖(テラー)ならどーとでもなるけど、相応の"神格"があるヤツが完全顕現したらクソゲーの始まりダヨ。

 

ダレカちゃん単体だと100負けて、レプリカとはいえ《クトゥグアの魂杖》があれば三割五分は勝てる。

 

なーのーでー!

 

()()()()()()()()()

 

キヴォトス最強の戦力を自陣営にかっ攫うんだから、相応のクエストを受けてもらいましょう。

なぁに、死にやぁしませんよ。触手の化け物に尊厳を犯されて苗床にされて新しい触手の化身になるだけよ。アハッ、コラテラル・ダメージじゃんね☆

 

まっ、死ぬ気で守るけどさ。

 

ホシノさんがいれば五割……や、六割で勝てる。運が良ければ腕を犠牲にしなくても良くなるね。必要なら躊躇無く犠牲にするけど。

腕の一つや二つ、可愛いおにゃのこを救うと考えれば安い安い。赤髪だって相手が女の子だったらもう片手も喰わせてたわな。そして無刀流神避を極めてたさ。えっ、最強か?

 

とりまオリチャーで色々と改変させるけど、状況悪化はしないだろうね。暁のホルスを除くアビドス組はセンセの護衛に回すし、しょーじきサッちゃん相手にホシノさんは過剰戦力だったからモーマンタイ。

 

残る問題はキミ*テラーだけ。それも実質裏技ありありギミックボスだからヘマしなきゃ殺せるし。

 

 

つまりこーゆーハナシよ。

 

 

イカれたメンバーを紹介するぜ!

 

ループ系廃棄物のダレカちゃん!!

アビドスユメモドキことホシノさん!!

キミ*テラー特化の盗んだパンちゃん!!

計画的に巻き込まれるアルさん!!

 

 

ふっ……完璧な布陣だぜ。

 





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