シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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1920

 

エッホ、エッホ、そろそろ世界が滅ぶってセンセに伝えなきゃ!エッホ、エッホ!!

 

や、伝えんけど。話すわけないやん。

 

そんなダレ日和なダレカちゃんです。お久しこんにちは。挨拶は大事だからね、ユメさんも言ってたよ。

……ユメさんはもう居ないじゃない。………あー、吐きそう死にそうてか死にたい疑惑増長中なので美少女を吸って回復します。美少女を吸えば回復するって昔のセンセが言ってた。は?昔のセンセはもう居ないじゃない…………はぁ。

 

ホシノさん吸お。

 

「ん?どしたの?…え、ちょっ?なになになに!?ひゃっ!無言でお腹にヘルメット埋めないで!?」

 

「……すぅぅぅぅぅ、すぅぅぅぅぅぅぅぅぅ」

 

「息吸ってばかりで大丈夫なの…?」

 

「あ、お気になさらず」

 

「そっかぁ…」

 

ちな今は宇宙服じゃなくてヘルメットです。少し前に奪いました、ラブさんから。クソ重い宇宙服で異界の自分と戦えるわけないやろぶち殺すぞ!

 

あー、怒るとまたストレスだ。なのでホシノさんを吸いました。……………うん、もうちょっと吸おう。ぬへ…も、もう少しだけ……うへへ…も、もうちょっとだけ吸ってもバレへんやろ……ぐへへへ…!

 

「…………ホシノさん。もし良かったら、少し怒って『次やったら"これ"だからね〜』って言いながら薄い胸を強調してくれません?」

 

「窓から捨てるよ?」

 

「誠にごめんなさい」

 

「………後でノノミちゃん達に頼んでも怒るからね?」

 

「何故バレたし?」

 

()()はそういうこと言わないけど、()()()()()()なら言うでしょ?そういう事だよ、大根役者さん」

 

「言ってくれるじゃん?猿真似先輩」

 

「……………」

 

「……………」

 

「「やっぱり性格悪いなぁ…」」

 

この人って昔馴染みには容赦ないからね。ユメさんに対する態度も、反抗期とはいえ()()だったからな。

てか彼岸キミならまだしもダレカちゃんに対する対応って大体の人が徐々に適当になってくるし。はて、ダレカちゃんは訝しんだ。

 

……はい、閑話休題。

 

今はアビドス中央線です。電車に揺られて電車に揺られてます。電車に揺られてるってことは、揺られてる電車に乗ってるって事なのかもしれない。

 

てか普通に、反転した彼岸キミの居るアビドス砂漠に向かってるよ。センセ達がエデン条約調印式でさっちゃん達とドンパチやってる間に、世界の異物ことキミ*テラーをぶち殺そうって作戦中です。覚えてる?てか覚えてね。覚え覚えられ覚え返してね?

 

「……それじゃあ、そろそろ作戦の確認してもいい?」

 

「ホシノちゃんマジメ〜」

 

「さんをつけなよ、デコ助」

 

「急に辛辣じゃん?」

 

「冗談だよ。昔みたいに呼び捨てでもいーよ?……ま、そんな事より。取り敢えずさ、まず聞きたいんだけど。どうして()()()()()()()()()()()()?」

 

「ふむ……語らねばなるまい。暇そうだから誘った!以上!!」

 

「そういうのいいから」

 

「あっ、はい」

 

ホシノさんが窓の外を眺めながら聞いてくる。砂漠しかないのに、眺めてて楽しいのかねぇ。

でも改めて考えると、我ながらアルさんを巻き込んだのは大胆だったなぁっとは思う訳でしてね。最初は自分一人だったから自己犠牲で討伐するつもりやったんだけどね?片手は()()()()捨てるつもりだったから。

 

……でもホシノさんが作戦に加わってきやがったから、安全マージンを取らされてるんだよ。死なせたくないもん、大事な人だし。

だから今日もダレカちゃんは嘯くのです。本音と本音の合間を隠し通して、堂々とそれっぽい事を語って騙るのです。

 

「……敢えて言うなら、優秀なスナイパーだったら誰でも良かったんよね。でもメタ的なハナシになるけど、この時期なトリニティ側とゲヘナ側の人材は使えんし。逆にゲヘナからマークされてる奴らがフリーになるタイミングだから、アルさんが最適解だったってだけのハナシよ。指名手配されてるし」

 

「へぇ。確かに優秀だよね、便利屋の子たち。前は先生の指揮があったから楽にあしらえたけど」

 

――言わんけど、更に付け加えるなら。

 

あの事件…騒動?に関わらない生徒が限られてるんだよな。全員が必要とは言わんけど、バタフライ・エフェクトとかでセンセが死んだらクソやん。

ダレカちゃん的にはダレカちゃんが出向いてエデン条約云々全てを解決してもいいんだけど、そう上手くいかないのが世の中でして。

足りないもん、手が。あと三人くらいダレカちゃんが居たら世界を平和に出来るよ、たぶん。あ、もう一人はいるね。テラーだから殺すけど。

 

「じゃあついでに、もう一つ質問ね」

 

「好きな女は黒髪猫系ツンデレバイト戦士生徒だよ?抱きつかれたらお粥三杯は余裕よ」

 

「聞いてないよ。そうじゃなくて、その……うん、()()()()()()()()()()?」

 

ホシノさんがホシノノンと指差してるのはダレカちゃんお手製素材は中の人の羽根の頑丈鞄ですね。

うん、確かに動いてる。怖いね、ホラーだね。怯えたふりでトマト喰ってるビナーをカルペ・ディエムで撃ち抜くのもアリやね。意外とセンセの死因にならないビナー君を敢えて倒す必要はないけど。

 

「ふむ……到着まで時間もあるか。ならば紹介しましょう!今朝に攫ってきたパンちゃんです!!」

 

「うわキモっ」

 

「上の口は正直だなぁ」

 

カバンの隙間から覗くパンちゃんが心做しか泣いてます。てかパンちゃんに心ってあるのか?人間未満はダレカちゃんにも飾り程度の心はあるんやし、謎生物パンちゃんにも心はあるよな、きっと。パンだって生きてるんだど!

 

 

あ、ちなアルさんは別ルートで敵さんの本拠地に向かってます。スナイパーが前衛組と一緒に敵前に出てくるなんて阿呆やんけ。あ、キヴォトスは阿呆の巣窟やった……

アルさんにはアルさんの役割……ってゆーか、超絶優秀な狙撃手にしか出来ん仕事がありますので。ミユさんが暇だったらミユさんに頼んでたけど。マジで。

 

「んじゃ今のうちに作戦を再確認しましょ」

 

「おじさん、さっきそー言ったんだけどなぁ」

 

「知らぬ存ぜぬ。まず、今から向かうアビドス砂漠の地下帝国(仮)にはキヴォトス崩壊を目論むエイリアン(仮)がいます。前に砂漠で朽ちてた公民館の地下道にいたヤツらの本体ね?ここまではオーケィ?」

 

「キミが色々と隠してるのは伝わったかな」

 

「理解が早すぎてなにより。んで、まずは()()()()()()エイリアンを地上に引き摺り出します。前みたいな雑魚どもは爆弾祭りとパンちゃんで一掃するから、後はダレカちゃんとホシノさんの超絶激ウマ連携で()()()()にしますです」

 

「わぁ、計画性の無さが露見してるね〜」

 

「黙らっしゃいな。それで引き摺り出したら物理的に削って、削って、削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って削って――アルさんに託した()()()でトドメを刺します。簡単でしょ♡」

 

「削る工程が多すぎて果てしなくない?えっ、そんなに大きいの?そのエイリアン疑惑のある誰かさんって」

 

「半永久的に再生するゾイ」

 

「………うへ」

 

「ま、パンちゃんも再生する個体を連れてきたし同じだネ」

 

「再生する個体」

 

「消費期限までは数時間あるし、存分に戦ってくれるよ!」

 

「消費期限」

 

さーーて、頑張って命懸けのサブクエストに挑みますかね。本命はベアおばだからね。手始めにテラーな残りカスを一掃しましょ。

 

 

 

 

「……………」

 

あと、キツネさんや。電車内での尾行ならホシノさんにバレないようにしてね?優秀無敵な最強ダレカちゃんにはバレバレだけどね。

あ、今の余裕かまして殺される最強ポジっぽいかも!にへへ。勝つさ。言っとくけどそっちが挑戦者(チャレンジャー)だからな。

 

◆◆◆◆◆◆

 

――暗い地の底、灰色の肉で構成された領域。

 

ヌチャリ、ヌチャリとナニカが蠢いている。それは王のように、それは王に縛られる数百の兵のように。

異様なまでの空間は何処までも狂気に呑まれていた。その呻きは嘗ては生徒だった少女や砂漠を彷徨うオートマタ。喰われて穢れて、灰の触手に全てを犯されたゾンビに等しい。

 

「ア……ヴぁ……」

 

嗄れた老婆のような声を漏らすのは、二つの眼球があるべき場所から灰の触手を生やす少女だ。この領域の主に喰われ、半端に変貌した不良生徒の末路。

 

「――、ガ、――、ガ、――」

 

機械の駆動音に粘液が滴り、壊れた筈の部分を触腕が覆う。小型のドローンからゴリアテ、砂漠に捨てられた電車の貨物車両まで。

無機物に至るまで触手は兵の一端へと変貌させる。無機質に、無感動に、仮初の命と使命を与えられたそれらは主の敵を待つ。

 

 

やがて山のように膨れる灰肉の頂点に座る()()は貌のない頭部を忌々しげに持ち上げる。

 

「……時ハ、来た……センセ、を…助けル……助け、ヨウ…今度コそ…」

 

数mはある巨体。辛うじて人間の形を保ちつつも、その頭部は無貌。粘性を纏う何十もの触角と強靭な二つの片翼、二種の獣耳、額に生える鬼の角――()()()()()其れは無貌の巨人だ。

見る者の正気を奪う化け物は罅割れた王冠のヘイローを掲げ、無貌の王は何百の呑み込み犯し造り上げた兵に指示を出す。

 

「みんナ、待機…して、て………彼岸キミ、は……必ズ、クる。殺ソウ――セカイを」

 

幼く浅く、其れは立ち上がった。

 

一つ、一欠片。またヘイローが砕け、その身体は脈動してより強力に、より大きくなる。全ての枷が外れた先にあるのは死か、或いは崇高への道なのか。

いずれは破滅する事も自覚しながら、無貌の巨人は力を蓄える。成り代わるために。潰えた道を、また繋ぐ為に。

 

 

 

 

 

 

――其れは1920回、恩人を死なせた。

 

この世界の幼子よりずっと少なく、まだ浅く。何万と繰り返した彼岸キミとは掛け離れた経験値。

然し死なせた。目の前で何度も救えず、絶望し続けた。足りない経験、足掻く気力もなく――堕ちた。死に際に色彩と邂逅した。そして、()()()()()()()()()

 

彼岸キミは次の世界に向かった。

 

だが()()は残された。

 

恩人――先生のいない世界を過ごし、その末に自身の裏面を覗き見る災害と邂逅してしまったのだ。

もう繰り返せないのだと理解し、それなのに自分の何十、何百倍も繰り返している存在がこの世界にはいる。それが妬ましく、それなのに救えていない事が憎くて。

 

()()()()()

 

その世界に設定されたシステム――彼岸キミの次元移動。その()()()()()。同じ彼岸キミ、同じ目的。故に可能だ。

どちらかが死ねば()()()()()()()()のみ。本来、彼岸キミが二人いるという状況は異常なのだ。世界の許容量から外れている。

 

この世界の彼岸キミが『ダレカちゃん』として在るのもまた、世界に障害を引き起こされた故なのかもしれない。

 

触腕の巨人は時を待ち、その瞬間は確かに訪れる。

 

斯くして同一な筈の幼子と巨人は邂逅する。殺し合い、その果てを決める。

 

 





彼岸キミ⇒(次の世界へ)⇒ダレカちゃん化

彼岸キミ⇒(先生の居ない世界に残る)⇒無貌の巨人化

つまり分岐ルートの別人です。繰り返せるから足掻けるダレカちゃんと、もう繰り返せないからやけっぱちな無貌の巨人さん。素敵だね。

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