シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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ダレカちゃん「彼岸キミ!」
忍ペロくん「彼岸キミ、ペロ!」
戸久銘ムメイ「…彼岸キミ」
ウソーノ・ウラギール「欺瞞に濡れた心の仮面(ペルソナ)

「「「「ガッツファイヤ!!と、言ういう事で………えっ、■!?ゴボボボボボボ……!」」」」







ゴボッ…ゴボボボボボボボホ……!!!??



信頼

 

「なっ……シャーレの先生は重症で動けないんじゃないの!?」

 

「それはつまり、シャーレの先生は重傷で動けないんじゃないのか……と言いたいワケか?ならば肯定した後に否定して、また肯定してやろう。そうだぜ!や、ちゃうが?てかそーなんよなぁ。ねっ、センセ?」

 

「会話の魔球、止めてね?キャッチも返球も出来ないから」

 

怪訝な顔をする女子生徒。現れる筈のない二人――シャーレの先生と秘書が、コハルとミカを庇うように立つ。

 

先程までミカを囲んでいた少女達は怯み、警戒して身を守る武器に手を伸ばすが、青灰の閃光が粉砕してしまったソレは何の役にも立たないだろう。複数の生徒の銃を破壊する威力、それを平然と放つ生徒に、オーパーツで数秒にも満たない戦術指揮を展開した大人。

誇張でしかないと侮っていた『最強』は、その噂すら生温いと思わせる程の超越したナニカ。理解の外、遥か頂点に存在する無二だった。

 

普段は温和な大人。だが、今ばかりは穏やかとは言い難い。目の前で行われた一方的且つ集団での暴力に腹を立てているのか、或いは重傷によって彼女達を気遣う余裕すらないのか。

 

「忠告だぞ。ダレカちゃんが()()()にしてやってるトコロで止めとけ。大事な人を傷付けられて穏やかで入れるほど、ダレカちゃんはセンセみてぇなボンクラじゃねぇんだからな?」

 

「人をボンクラ呼びしないの………でも()()()()()、暴力は。ね?」

 

「あ、あぁ……」

 

「……帰ろう。先生のあんな顔、見たことない……」

 

「………………」

 

何処か怯えたような表情の生徒達。宇宙服の生徒の無機質な声と、言葉以上の感情を秘めた声で語り掛ける大人。既にミカへ暴行を働いていた集団は意思も戦意も折られていた。

逃げるように、小走りで場を離れる生徒達を見届けた二人は散らばった金属片等を片付け、雑談に興じる。

 

「指揮、何点だった?」

 

「んー、69点かな。エ駄死案件」

 

「厳しくない?咄嗟にしては完璧に近い指揮だったよね?」

 

「完璧じゃないから減点なのだわ。でも重傷中なので渋々渋井丸拓男で加算、にゃので90点はあげる。三割のダレカちゃんなら普通の生徒と同じくらいには指揮できるよっ!は?三割程度しか指揮出来てないんだが?ちな睡蓮の花言葉は『終わった愛』とか『滅亡』だし、彼岸花は『再会』や『悲しい思い出』なのだぜ!」

 

「そうだねプロテインだね。ちなみに、全力なら何分?」

 

「一分未満」

 

「ぴえん」

 

「ビナー十体は余裕」

 

「やっぱり過剰かも……」

 

「突然だけどセリカさんへの愛を叫んでもいい?禁断症状で震えてきたんだけど」

 

「怖いよ、この子…」

 

「とりまセリカさんが『がんばれ♡がんばれ♡』って言ってくれてる録音を聴くわ。てかキメるわ……………………………オ゛ホッ…♡」

 

「怖いよこの子」

 

先生はそっと目を逸らした。人間には触れられたくない部分があり、先生もまた耳奥舐めASMRを高性能イヤフォンで聴いている時は一人になりたいモノだ。きっと、セリカの応援ボイスをイヤフォンでキメている生徒も同じ気持ちなのだろう。先生は『大人』なので、横で死刑を叫んでいる少女とは違って目を逸らす選択が出来るのだ。

 

 

 

「さて。私達が来るまでありがとう、コハル」

 

「せ、先生……」

 

「流石だよ。やっぱり正義実現委員会のエリートだね、コハルは」

 

「……うんっ!」

 

先生が頭を撫でると、コハルははにかみ頬を綻ばせる。彼女は彼女の正義に従って動いただけだが、やはり褒められると嬉しい。

きっとこの場()()ならばコハルが居なくても結果は同じだっただろう。だがミカは、人間の汚さを見せ付けられ続けた女の子は、無垢で向こう見ずな正義を知った。明日、或いはもっともっと遠い未来。コハルの成した正義はきっと意味を持つ。

 

だから先生は精一杯の勇気を労い、褒めた。

 

 

一方、ミカはそっと宇宙服の生徒に忍び寄って手を絡める。一種の執着的な行為。宇宙服の生徒はベシンッと手を叩くが、決して離れなかった。

 

「ふぅ……体力全回復っと。………よく殴らなかったね、ミカさん。あと手ぇ離して?恋人繋ぎしないで暑いから」

 

「人を暴れん坊みたいに言わないでくれる?私だって、イロイロと考えてるんです〜」

 

「らしいね。やっと、行動の前に思考が追い付くようになったようで。意固地じゃなくて成長であって欲しい限り。あと手ぇ離せや、宇宙服がミシミシいってるから」

 

「むぅ……嫌な言い方だなぁ。セイアちゃんでしょ、そーゆーの教えたの。ヤな感じぃ〜」

 

「ミカさんからも学んでるよ、パンチの撃ち方ってやつを。お陰様で今ではキヴォトス最強だよ。てか手ぇ離しやがれや、その他人(ヒト)を知らねぇ唇に舌ァ突っ込んでヒイヒイ鳴かせるぞ」

 

「セクハラはダメだよ思うよ。普通に」

 

「ごめんなさい」

 

「………キス、したいの?」

 

「ごめんなさいタイプじゃないです。てか初めてはセリカさんって決めてるし………ちょっ、ミカさん?腕痛いんですケド?え、待って待って…腕折れるんやけど?てかヒビ入ったわ。ダレカちゃんじゃなければ泣き喚いてたゾ?」

 

「……………セリカちゃん、だっけ?ナギちゃんに調べてもらうかな」

 

「惚れるなよ?ダレカちゃんの女なんだから」

 

「そ、そんなに魔性の女なの…?」

 

「へっ……そりゃあアンタ、キヴォトスで一番のナンバーワンやぞ」

 

「へぇ……ふぅーん……」

 

ミカは心に決めた。色々と騒動が片付いたら、必ず『セリカ』という人物に会おうと。昔からセイアの尻尾以外には無関心だった子供が熱中しているのだから、キヴォトスを揺るがしかねない傾国の美少女というのも嘘ではないのだろうと結論付ける。

 

「…………はぁ」

 

「どうしたん?話聞こか?うんうん、それはテメェが悪ぃな、悔い改めな」

 

「傷心の女の子にそーゆー事を言えるの、ある意味ではキミの良いところなのかもね」

 

「察してちゃんは茶化すって決めてんのさ。で、話すなら話せば?センセとコハルさんがイチャついてる間は聞いてやるよ」

 

「………………」

 

数秒、ミカは目を閉じる。

 

いざ話せと言われれば存外、言う事がない。きっと何を言っても宇宙服の生徒――彼岸キミは同情しないし励まさない。

故にミカは彼岸キミに執着的な感情を向けているのだが、心の何処かでは思うのだ。年の離れた子供に人生相談をするのは、もしかしたら憧れのお姉さん(自認)として少しだけ格好が悪いのでは、と。

 

この場には先生(大人)コハル(年下の子)も居るのだから、もし『ダレカちゃん』の中身の年齢が知られていないとしても、色々と思う事はある。

 

思考を重ねた結果、少しばかり抽象的な相談となってしまった。

 

「……()()()()()()。もしも私がとっても悪い子で、魔女で、またとんでもない失敗をしようとしたら……()()は止めてくれる?」

 

「まずさ、ダレカちゃんは決めてる事がありまして。ダレカちゃんは結構人助けはします。キヴォトス最強だから、ポンポンと助けて回ります」

 

「うん。そーゆー学校だもんね、キミのところは」

 

「でかい声で言わんでね?………ま、だからミカさんだけを例外的に助けないってことはないんだけどさ。そこで決めてる事、つまり条件がありましてと」

 

「可愛い子しか助けないとか?」

 

「人を何だと思ってるの?銃でぶち抜いても死なん生徒よりも毛ぇフサフサだったり鋼鉄の身体だったりの一般市民の方が多く助けとるわ。普通に、極々普通に、ダレカちゃんが助けんのは()()()()()()()()()()だけだよ」

 

「…………簡単な条件だね」

 

「そうでもねぇさ……本当にね。ま、泣きたくなったら『助けて』って言いなよ。王子様は他の姫様を救うのに忙しくても、野良猫くらいはその辺をうろついてるカモだからね。暇なら気まぐれで助けてくれるかもよ?や、知らんけど」

 

「その猫ちゃん、悪魔だったり天使だったり、龍とか犬とか鬼だったりしない?」

 

「ヒト未満の野良だよ、寄せ集めのツギハギなだけの」

 

ケタケタと無機質に笑い、宇宙服の生徒は大人の尻を蹴り上げて牢の外に向かった。

 

◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆

 

「……………」

 

「ダレカちゃん?」

 

「……センセ、ワガママ言ってもいい?」

 

「…珍しいね。キミが私に、自分の行動について聞いてくるのは」

 

()()()()()()()()()なら迷わないぜ?でもさ、()()()()()()()()事柄についてやるってなら、聞くさね。勘違いしてるだろーけど、別にセンセに迷惑かけて悦んでるワケじゃないし」

 

「………だったら、私の答えは決まってる――()()()。責任は(大人)が取る……それが答えさ」

 

「…サンキュ。んじゃ、ダレカちゃんはヒナさんのトコに行ってケツ蹴飛ばしてくる。センセはセンセのやるべき事と、ついでにやるべきじゃないことまでやっとき」

 

「そうするよ」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

――コンコン、と乾いたノック音が響く。

 

日は沈み、雨続きの空は相変わらず雲に覆われていた。閉じたカーテンの隙間、ベッドに横たわる小柄な生徒は憂鬱にも外を眺めていた。

然し普段は誰も寄り付かない自室に響くノック音。鈍い頭で思考を重ね、居留守をしようと決める。仕事だろうと友人だろうと、今ばかりは煩わしかった。

 

「………………」

 

やがて、もう一度音が鳴る。今度は先程よりも強く、何かを訴えるようにも感じた。

 

少女――空崎ヒナの根本は真面目で純粋だ。確かに存在する面倒臭がり屋な一面すら他者の前では完璧に隠す程、その性質は顕著なのだ。

普段は使わない居留守への罪悪感に、平然と耐えらはしない。誰だろうと、一度だけ顔を見よう。顔を見て直接断って、要件を後日に回してもらう。それが今の精一杯なのだと訴えよう。

 

決めてからはすぐさま行動に移す。

 

重い身体を引き摺るようにベッドから起き上がり、チェーンとロックを外してドアを開ける。

 

「………誰?」

 

声を掛けると同時にドアを開けると、見慣れない生徒が立っていた。

 

乱雑に伸ばされた白髪と、様々な背景を連想させる濁ったルベライトの双眸。小柄な体躯はヒナと同程度だが、病的なまでに痩せている事によってヒナよりも小柄で、幼く見える。

男子とも女子とも思える整った顔立ち。唯一、パンツスタイルのヴァルキューレ警察学校の制服を着ているので身元だけは察しがつく。

 

混沌なまでに特徴の多い外見だが、特にヒナの意識を持っていったのは身体中に巻かれた血だらけの包帯だ。頭には、ゲヘナの生徒で言うところのツノや獣耳が生えている部分に何重にも包帯を巻かれ、然し滲む血の量はまるで()()()()()()()()()()()()ように思えた。

特に上半身から腰にかけてに、その傾向が多く見られる。とてもじゃないが、平然と歩き回れる出血量には見えなかった。

 

「っ!……あなたは……」

 

「彼岸キミ………元、()()()()()()……へや、に……いれて?」

 

「アリウス……ッ!?」

 

「こえ、デカイ………はいる、ね……部屋」

 

今、一番聞きたくない名前を平然と言い放った生徒は無遠慮にもヒナの部屋に押し入る。慌てて腕を取って止めようとするが、ヒナ以上に幼い体付きであるにも関わらず、体幹がブレない。逆にヒナが引き摺られかけ、思わず手を離してしまった。

 

やがて部屋に入った子供は妙に手馴れた動作で窓辺に置いてあるクッションを抱き締め、ベッドに座った。

 

反射的に立て掛けてある銃を構えそうになるが、全くと言っても良いほど敵愾心を感じない。憎々しいアリウス派の生徒である筈なのに、見た目相応の無気力な意志薄弱児にしか見えないのだ。

 

「………ヒナさん、も……すわれば……?」

 

「…………目的は何?アナタは誰なの……いえ、彼岸キミ…と言ったわね。聞いたことがある……っ、思い出した。過去にはアビドスで活動していて、その後に災厄の狐と行動していた生徒ね。その後は、私には分からないけど………」

 

「連邦生徒会長に、つかまって………ん、ヴァルキューレ、に……所属。それ、だけ……」

 

「……元アリウス所属、と聞いたけど。この状況で、私の前で――それを語る意味は理解しているの?」

 

「ん。うそは、いわない。あやしいなら……警戒、するなら………手足、()()?」

 

「は?何を――」

 

――刹那、ベキッと。静かな空間に異音が鳴る。

 

ヒナは目を疑った。縫合痕や火傷の痕が多過ぎる腕、それ自体も充分驚嘆に値した。だが、()()が歪に、痛々しく、本来は曲がらない方向へと()()()()()

誰もが頑丈で、強靭で、怪我はあれど重傷なんて滅多にない世界。そんなキヴォトスで骨折した住民なんて数える程した見た事がなかった。

 

少なくとも、発泡スチロールの様に容易く折れて()()()()()()のだ。

 

「っ……。じゃ、つぎ……」

 

「やめなさい――!!」

 

「おっけ」

 

「……………」

 

「………え、なに……?」

 

「…何が目的なの?」

 

酷くあっさりと従う子供。困惑したが、それこそが狙いの可能性だってある。ヒナは真っ直ぐとルベライトの双眸を見据え、問い掛ける。

 

「彼岸キミ、あなたはアリウスのスパイなの?」

 

「ちゃう、よ…?」

 

「なら――ッ」

 

「ちゃんと、はなす。目的、ある。ヒナさん、の……ケツを蹴りにきた。しり、出して……ドーゾ」

 

「……………は?」

 

「――じゃーん」

 

子供はおもむろに、背負っていたナップサックから()()()()()を取り出す。ヒナは武器かと警戒するが、瞬時に()()が酷く見慣れた物であると理解した。

理解してしまったから、思考が止まって混乱してしまったのだ。それは大切な友人のアイデンティティで、いつも先生の横に在る存在で、こんなにも弱々しい子供には不似合いな物。

 

それを――宇宙服のヘルメットを無表情で掲げると、彼岸キミはかポリと頭に装着して言い放つ。

 

「――やっほー!ドーモ、ヒナ=サン。美人か思った?ザンネン!ダレカちゃんでしたー!!は?美人なんだが?てか性別不明系神秘的美形なんだが?」

 

「………頭痛くなってきた…」

 

「だいじょぶ?二の腕揉む?けっ、揉めるだけの脂肪なんてありゃしねぇっての。それなのに体温はクソ高いよ、セクシー狐とか隕石ゴリラとかの抱き枕にされる程度には」

 

「一旦帰って?また明日、予定空けるから」

 

「やぁよ。今日じゃないと意味ないし」

 

「………先生を守れなかったこと、やっぱり怒ってるの?……いいよ、ダレカちゃんなら。何をされても、文句は言えない」

 

「え?じゃあ(自主規制(ンナンナ))を(自主規制(えっちぃのは嫌いです))して、(自主規制(オロロンチョチョパァ))に(自主規制(ずむずむいやーん))を(自主規制(はみ出したぁ〜い♡))するね。いいね?いいよね?」

 

「……ふふっ、今の少しだけ先生に似てたかも」

 

「ギリ名誉毀損だろそれ。ダレカちゃんに謝って欲しいかも」

 

「……………するの?(自主規制(ゴツゴツのアハン))を…」

 

「捕まんのはアンタやぞ?てか目の前にヴァルってるキューレがいるの、理解してる?」

 

――閑話休題。

 

コホンと一息をつき、ヒナは改めて眼前の生徒を視界に納める。見慣れた宇宙服のヘルメットこそ被ってはいるが、身体は負傷に負傷を重ねている。

ヴァルキューレの白い制服も赤黒い血で汚れ、然し出血は止まっているらしく乾いた血が包帯と制服を硬くコーティングしているようにも見えて、やはり痛々しい。

 

なによりも――本人が自分の傷について全く気にしていないのが、歪で異様で、今まで『ダレカちゃん』という人物に感じていた印象とは毛色の異なる気味の悪さを感じてしまう。

 

血に濡れた包帯や衣服は元より、自ら折った右腕や、顔より下に見える縫合痕などの多量で異質な傷跡。比べるべきではないが、数刻前に目の前で撃たれた大人よりも重傷なのは火を見るよりも明らかだった。

 

傷も、多重人格じみた二面性も。その全てが『ダレカちゃん』の――彼岸キミの底知れない闇を覗かせる。

 

「……それで、ダレカちゃんは私に何か用?」

 

()()()、ヒナさん。ダレカちゃんじゃ……センセを守れない。守れなかった」

 

「ッ…!……私だって守れなかったわ」

 

「そやね。横っ腹ぁヒットしてたね」

 

「…ごめん、なさい………」

 

「おん?んー…うんむ、その謝罪を受け入れよー。さて、所で助けてくれにゃいか?疾くセンセを守りたいから」

 

「……なんで、私なの……?どうして簡単に赦せるの……ッ」

 

「んにゃ、カオス理論って知ってる?よぅわからん事象やら現象やらに決定論的な法則が存在することを示す理論なんだけどさ、そんな事は一切合切欠片も微塵も全く関係なくて。とりまセンセを助けたいから力を貸しておくれよ」

 

「……………」

 

「え、なにその胡乱な目。もしかしてダレカちゃんのこと愛してんの?てか恋しちゃってんの?うへー、最近はロリっこによく告られるぜ。ダレカちゃんねぇ〜!センセを守ってくれる人がァ〜!タイプだなァ〜〜!!あと黒耳ツンデレバイト戦士猫娘、通称セリカさん」

 

 

――厄介な人だ、とヒナは思った。

 

生徒の為に平気で頭を下げる大人とは別の意味で、彼岸キミは()()()()。先生ほど一貫していなくて、それなのに誰かを守ろうと必死なのだ。

そこにはヒナの気持ちも先生の傷も()()()()()と言い切っている。()()()()()()()()()と尻を蹴飛ばしに来ているのだ。

 

きっとこの場に来たのが先生であったなら、もっとやり方は違った。ヒナを気遣い、無力を共に背負ってくれて、それでも無理だと懇願したなら立ち止まる事も許してくれただろう。

 

然し今、この場所に立っているのは達観して『大人』を貫く一人の女性ではなく。目的の為になら友人の気持ちも無視して立ち直りを強制する『子供』だ。我儘で向こう見ずな、年相応の振る舞いをする生徒だった。

 

――だからこそ、不安にもなる。

 

「…ダレカちゃんが私を頼るのは、私が他のみんなよりも強いからなの…?この罪悪感で、走り続けるべきなの……?」

 

本当は分かっている。ヒナが贖いをもとめているのであれば求めているのであれば、こんな質問は不要なのだ。普段以上に『役目』に没頭すれば良い。

 

なのに、聞いてしまった。

 

今の空崎ヒナは彼岸キミよりも幼く、泣いてしまいそうな子供だ。震える声は、凛としてゲヘナの最強に君臨する風紀委員長には似ても似つかず、だが間違いなく彼女の本音だ。

 

無力を嘆く少女に対し、ヘルメットを被る生徒はベッドの上でパタパタと足を一定テンポで揺らしながら答える。

 

「決めんのはヒナさんだよ。ダレカちゃんは強制するけど、気持ちが折れたら人間はそこまでだからね」

 

――でも、と。ヒナの言葉を塞ぐように彼岸キミは続ける。

 

「ヒナさんは挫けてるけど、折れてはいない。だからだよ。ダレカちゃんはね、ヒナさんが強いから頼ってるんじゃない。不器用で、面倒臭がり屋で、鈍感で、それなのに自分の『役目』に必死な空崎ヒナを信頼してるんだ。不器用なヤツは好きだぜ?」

 

「っ!」

 

「贖いならセンセに求めろよ。簡単に許してくれるから。ダレカちゃんは今、ヒナさんの前に立っているんだよ。この場にはセンセなんて居ないし、ダレカちゃんとヒナさんは対等な友人だ。だから()()()()()、対等に立って共に進むことを強制するぜ」

 

ヘルメットの先、真紅の双眸と視線が重なる。こんなにもボロボロで、今にも死んでしまいそうなのに。その生徒は力強くヒナを肯定する。ヒナが自分で否定してきた弱さを、絶大な信頼を持って肯定し続ける。

 

故に、少女も紫紺の双眸を重ねる。

 

何処か『ダレカちゃん』を通して見ていた先生の姿を、今だけは忘れる。贖罪なんて理由は後付けでも良い。ヒナの根本、風紀委員会委員長ではなくて『空崎ヒナ』としての本音。

 

 

「私は――」

 

 

酷く、打ちのめされていた。疲れているのに止まれなくて、でも大切な人が殺されかけて、足が止まった。走り続ける方法は知っているのに、走り出す方法は分からなくて。

自分がもっと強ければ、先生を守れた。自分がもっと強ければ、先生の敵討ちをする勇気もあった。もっと強ければ。もっと強ければ。

 

回る思考に嫌気が差して、意気消沈してしまって。ヒナは逃げ隠れるように自分の部屋に籠っていた。

 

本当は、ドアなんて開けるつもりはなかった。

 

それなのに開けてしまったのは、()()を待っていたからだった。赦してくれる大人、或いは罰してくれる友人。

助けれなかったのに、助けて欲しかった。浅ましいと自覚しながら傷に浸る。どれだけの重責を背負おうとも、空崎ヒナはまだまだ子供だったのだ。

 

「私はただ――」

 

それでも。

 

誰よりも強い人から頼られた。自分よりも強い人から、素直に『助けて』と言われた。年下の子供から、()()()()()()()()()()()()と教えられたのだ。

 

故に少女の決意も固まった。

 

もう一度立って、どんな結果も見届けるという勇気が湧いた。

 

 

「―――友達に頼られたから、応えたい」

 

 

部屋の暗闇に紫紺の眼光が淡く煌めく。

 

今だけはせめて、先生にも見せていない『弱さ(ほんしつ)』で接してくれた友人に、報いたいと少女は願った。

 

◆◆キヴォトスコソコソ噂話◆◆

 

ダレカちゃんの後付け付属パーツ(翼やツノ、獣耳)は取り外し()()は自由だよ!四肢をもぐ程度の痛みと出血はあるけど、数日で再生するよ!お得だね♪

 

ちな彼岸キミ*テラーと戦う前に全部ちぎって来たので、物凄く身軽(血も少ない)な状態だね。

 





自主規制は自主規制です。
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