シャーレ所属のダレカちゃん   作:ブラウンドック

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あけおめです。

これが書きたくて二次小説を書き始めたと言っても過言。


※懐古③を読みましょう。



転校生

 

「はーい、じゃあ転校生の紹介するね〜。えーっと、どこだっけ……あー、確かあそこだね。ヴァルキューレ警察学校だよね?じゃあ自己紹介してね」

 

「……………ども」

 

「自己紹介して?」

 

「……彼岸…キミ…………むかし、アビドス高校……所属、でした……」

 

「はい、そーゆー事でね。再転校の彼岸キミだよ。学年は決めてないし性別も不明だけど、みんな仲良くね〜」

 

「わぁ♪転校生ですね〜♣︎」

 

乾いた空気とザラザラと砂の擦れる床。窓に映る景色は宛ら形骸化したゴーストタウンに観える土地、アビドス。

嘗ては旧校舎と呼ばれた、現校舎は相変わらず片手で数え切れる程度の生徒しか居ない――()()()()()()()

 

アビドス廃校対策委員会の教室、壇上には最上級生の小鳥遊ホシノともう一人、彼女以外は初めて見るであろう生徒が立っていた。

 

サイズの合わない長袖長ズボンの制服を着た生徒。対となる天使と悪魔の翼、処女雪のような長い頭髪。頭の上には犬と猫の耳が生えて、鬼と悪魔のツノも同様に在る。

人の耳も片方はエルフのように尖っており、何よりも特徴的なのは真っ赤な瞳よりも更に紅く巨大な龍尾だ。様々な生徒の要素を併せ持つ生徒は、無数の十字架で構成された王冠のようなヘイローとは不似合いな程にか弱く細身だ。

 

 

静まり返る教室。一秒、十秒と経った後に黒見セリカは掠れた声で呟いた――

 

「……は?えっ、誰…?」

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「一から整理してもいいですか?」

 

ホシノとキミの代わりに教壇に立ち、アヤネが話をまとめる。彼女も困惑しているが、セリカのように騒がないだけ多少は冷静――とは言い難い。

整理する、とは言いつつも。外面ほどアヤネも冷静ではない。寧ろ冷静な二年組が異様にも思えた。

 

何処からまとめようか、と思考をまとめる最中。おもむろに挙手する生徒が一人。

 

「ん」

 

「はい、シロコ先輩」

 

「…転校生とかの前に、まず聞きたい。何でホシノ先輩はボロボロなの?トリニティで覆面水着団をやった時も居なかったけど」

 

シロコの疑問に皆が頷く。つい数日前に起きたトリニティでの騒動の際にはホシノは不在であり、その後は今日の朝まで入院していたのだ。未だに所々に包帯は巻かれている。

理由についてもはぐらかされ続けていたが、やっと登校しているのだから聞かない選択肢はなかった。

 

たはは、と困ったようにホシノは笑う。数メートルはある触腕だらけな異形の化け物と殺し合った、とは流石に言えない。故にチラリと隣に座る幼子を見て、頷いた。

 

「うへへ……おじさんね、年甲斐もなく喧嘩しちゃったんだよね〜。キミと喧嘩して、ボコボコにされちゃったんだ〜」

 

「あいむ、うぃなぁー。あいむあ、ちゃんぴょん」

 

「……ッ!?ホシノ先輩が、負けた……!?」

 

慄き、取り乱すシロコ。無論彼女だけでなく、アビドスの皆が同様の反応をしている。小鳥遊ホシノの強さは、他校の生徒の殆どを圧倒可能なシロコでも計り知れない程だ。そんな彼女が一方的に傷だらけになっている現状を、言葉一つでは決して受け止められない。

 

改めて彼岸キミに視線を向けて、その深紅の瞳と目が合う。今にも死んでしまいそうな、弱々しく曇った瞳。銃弾一発で数十メートルは吹き飛んでしまいそうな細い体躯。

年齢もシロコには知るところではないのだが、中学生か、或いは小学生にも見える。

 

そんなか弱い存在が、アビドスの最強よりも強い――故に()()()()()()()。戦ってみたいと、色の異なる双眸が輝いていた。

 

「ま、それだけのハナシ。後は何か聞きたいことある?私じゃなくて、キミについてだけど」

 

「じゃあ聞いていい?えーっと……キミ、だっけ?ぶっちゃけ男の子?女の子?あと歳も気になるかも」

 

「……セリカさんの、好きな……性別に、なる。あいらぶゆー。……とし、は……じゅーさんさい」

 

「…………うん?なんか、どっかで同じコトを言われた気が……って、何で抱きつくの!?え、ちょっ!匂い嗅がないで!?どうしてこんなに懐いてるのよ!?」

 

「しゅきぃ……♡」

 

酷く既視感のある返しに、同じく既視感のある行動。不思議と、毎日毎朝毎夜、モモトークの通話で言われている気がする愛の告白。

セリカの思い浮かべる宇宙服の不審者と眼前の幼子は似ても似つかないのだが、心の奥がザワつく。

 

きっと存在しない疑惑を頭の中で否定していると、ニマニマと悪戯に笑うホシノは敢えてとぼけた様に、そして皆に充分過ぎる程聞こえる様に呟く。

 

「あ、言い忘れてたけど。この子、()()()()()()()()()ね」

 

 

「………………………………は?」

 

「こっちが素の性格だよ。ダレカちゃんの姿は……まあ、うん。色々とあるらしいけど、別人格とかではないらしいよ」

 

「た、助けてアヤネちゃん!?情報過多で脳みそ破裂する!!ダレカちゃんの中身って毛深い中年巨漢じゃなかったの!?」

 

「え、ひどっ……」

 

「……セリカちゃん。流石にそれは言い過ぎでは……」

 

「アヤネちゃんが言ったんでしょ!?」

 

「ふふっ♡ダレカちゃんの中身、こんなに神秘的な子だったんですね〜♦︎お持ち帰りしちゃいたいですね♡」

 

「ん、ダレカちゃんなら納得。先輩より強い生徒は、きっとダレカちゃんしかいない」

 

「何でノノミ先輩もシロコ先輩も一瞬で受け入れられるの!?あのダレカちゃんだよ!素手で戦車を破壊したり隕石の跡みたいにクレーターを作ったりするダレカちゃん!!」

 

「あいの、ぱわぁー」

 

「くっ…!私に対する執着…確かにダレカちゃんだ…!」

 

「ぎゃっぷ、モエ?けっこん、する…?」

 

「いや、しないけど……でも毛深い中年巨漢よりは………いやいやいや!相手は子供だし…!!」

 

儚く消えてしまいそうな外見。しかし『ダレカちゃん』の時と変わらない贅力でセリカに抱き着く幼子。セリカも前のように無理やり引き剥がそうとは思わない。それどころでは無い、とも言えるが。

 

元気いっぱいに不良を殴り飛ばして悪魔のように高笑いするずんぐりむっくりな巨体宇宙服の生徒と、セリカ以外とは目も合わせずにボソボソと言葉も拙い小さく幼い生徒。とてもじゃないが、セリカとアヤネには同一視は出来なかった。

 

――一方で、シロコとノノミは納得していた。

 

シロコは野性的な本能で、ノノミは『小鳥遊ホシノ』という先輩の軌跡を見てきたからこそ察してはいた。

 

宇宙服の生徒『ダレカちゃん』への違和感――

 

ずっと、何かに必死そうだった。誰よりも強いのに、必死だった。小鳥遊ホシノや空崎ヒナのような強者故の余裕はなく、それなのに取り繕われた外面は()()()()()()()()()()のソレだったのだろう。

 

寡黙で拙い性格が『素』なのだとしたら、『ダレカちゃん』として接していた際はどれだけ無理をしていたか。痩せ細り、雑に伸ばされた長髪や長袖で隠されてはいるが、顔以外に残る多様な傷痕。普通の暮らしでは決して付かないソレは、彼岸キミの人生の大半を物語る。

 

「キミくんちゃん、聞いても良いですか?」

 

「……ん、えーよ……」

 

「キミくんちゃんって……ノノミ先輩、その呼び方はどうなんですか…?」

 

「うーん…結局、男の子か女の子かが分かりませんでしたので。ダメですか…?」

 

「かま、へん……()()()、ので……よき。なつかしい」

 

昔、同様の呼称で彼岸キミを呼ぶ先輩がいた。彼岸キミがホシノに視線を向けると、ホシノも苦笑いする。もうこの世で二人だけの、小さな懐古がそこにはあった。

 

「………?ではこのまま呼びますね☆それじゃあ改めてまして、質問です!先程、『昔はアビドス高校所属だった』と言ってましたよね?それって、どういう事ですか?」

 

「あー、それはおじさんが答えようかなー。良いよね、おチビさん」

 

「かまへん、よ……チビノ、さん……」

 

全ては話せない。ホシノも全ては知らないが、少なくとも大人に利用され"闇の跳梁者"と呼び恐れられていた話は避けるべきだろう。

無論、それ以外も同様だ。初対面で梔子ユメを殺しかけた話。彼岸キミが自分の翼を裂いて差し出した事、最後はホシノの言葉によってアビドスを去った経緯。少なくとも今、戻ってきた友人を紹介する場面で話すべきではない。

 

「簡単に説明するとね、ブラックな場所で働いてたキミを昔の生徒会長が拾って来たって感じかな。歳は置いといて、一応はみんなの先輩って事になるのかな?アビドス高校の所属ではあったからね」

 

「どやぁ」

 

「でも先輩扱いしなくてもいーよ。調子に乗って膝枕とか要求してくるし」

 

「もーまん、たい。ホシノ、には……たのまない。チビ、だし……()()()()、から…」

 

「……へぇ…照れ屋さんだなぁ〜。どれどれ、みんなの代わりに()()()()がやったげるよ、膝枕」

 

「………え、いらな……むぐっ…!ぐ、ぬぬ……」

 

「このっ……力つよいなぁ…!シロコちゃん!この悪ガキ縛って!」

 

「えぇ……?これは……仲良し?」

 

「仲良しですね☆」

 

「意外ですね。見たことないです、ホシノ先輩のこういうタイプの悪ふざけ」

 

説明と言うにはあまりにも言葉が足りないが――誰もが納得した。ホシノが『先輩』として『守るべき後輩』に接するのではなく、昔馴染みの悪友と戯れる姿。普段から演じているわけではないが、これも一つの素なのだろう。

 

斯くしてホシノがキミを首四の字固めで絞め落とそうとする事件はあったが、同時に龍尾によってホシノも首を絞められ、両者痛み分けで片付いた。

 

「はぁ…はぁ……という事で、改めまして。転校生の彼岸キミだよ。みんな、適当にヨロシクね〜」

 

「とりま、よろ…しく……っす」

 

尚、彼岸キミがまともに登校する事は基本無いものとする。

 

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆

 

「うっへぇ……そうなるかぁ。こりゃあスイちゃんも予想外やね。ねえ、()()はどう思う?」

 

「…………………」

 

「んー、流石にまだ回復しないか。しゃーない、しゃーない!ナイアーラトテップがクトゥグアの焔で焼肉されたんだし、ちょーっとかかるかもね〜。感謝しろよぉー?ウルトラビューテフル美少女なスイちゃんが華麗に綺麗に美麗に助けて上げたんやし」

 

ヒビ割れたヘイローを冠する少女は、灰色のソレに一方的に話しかける。それは脈動する肉の『繭』だった。何も無い『黒』の空間に巣食う異形は、灼かれた魂を癒す。

その傍らに座り込み、独り言を続ける少女。濡羽色の長髪を雑に束ね、『黄衣』の深いフードを被る。黄金の瞳は何も無い空間を眺め、しかしその瞳は確かにこの世界の『彼岸キミ』を眺めている。

 

――異界からの来訪者は、この世界と自分の世界を比べている。

 

あの日、睡蓮スイは()()()()()()()()。その末路が自分で、逆に()()()()()()()()末路がこの世界の彼岸キミだ。

傍らの『繭』はその副産物に過ぎない。酷く滑稽で、救いようのない物語。

 

「難儀だよねー、互いに。かわいそー、かわいそー。スイちゃんも、キミも。もっともっと被害者ヅラしてもいいのになぁー。もっともっと恨んでもいいのになー。健気だなー、かわいそーだなー。ただ、『外』を夢見た末路がコレだぜ?いやー、やっぱ『大人』はクソだぜ!カッ、ペッ!!」

 

昔、睡蓮スイはアリウスの『外』に憧れた。彼岸キミも感化され、初めて人間として『希望』を持った。

 

その末路が、一人は最善を求めて世界のループに呑まれ。もう一人は神秘が変質し、全てのループ世界に『終わり』を付与し続けている。

 

「なーにが『青い青春の日々(ブルーアーカイブ)』だよ、スイちゃんとキミの青春は何処じゃってハナシよな。元気に二人で青春する世界線どこ?ここ…?まー、無理だわな、有り得んってコトよな、ないもん。そんな世界。正史にはスイちゃん達は存在しないし」

 

淡々と、そして幼さを隠そうともせずに少女は語る。短い手足をバタバタと動かして嘯く。

 

きっと、もう()()()彼岸キミと睡蓮スイが隣りに立って笑う日は来ない。あの日、あの場所で。互いのどちらかを殺さないと、()()()()()()()()()()のだから。

彼岸キミは全てに罪悪感を持つが、睡蓮スイの罪悪感は彼岸キミ一人に注がれる。他はどうなっても良い、大人が居ないと成り立たない世界なんて、皆いつかは『大人』になってしまう世界なんて――

 

「――滅ぶべき、だよなぁ」

 

悪意も善意もなく、そうするべきだからそうする。あるのは、嫌悪感のみ。彼岸キミ以外は全て総じて虚しく、滅ぶべき。そして――彼岸キミを『神秘』に縛り付ける『先生』は、自分ではなく、彼岸キミでもなく、別世界の自分の生徒に殺されるのが良い。

 

舞台なんて、勝手に整う。故に睡蓮スイはただ待つのみ。ボーッと過ごし、たまにお昼寝をして。偽物の彼岸キミの回復と、彼女が舞台を用意するのは待つのみ。

 

 

 

 

 

 

 

「―――ね?ちゃんと見届けてね?先生でもそうじゃなくてもいいけど、読んでるんでしょ?聞いてるんでしょ?スイちゃんが、わざわざ、今この場で、分かりやすーく『説明』してあげたんだし」

 






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