装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―   作:えぴっくにごつ

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2-7:「激突――.44リボルバー」

 突然のオーガの急襲。

 それを、そのすぐ近くで配置展開していた寺院に視点を移して見る。

 

「どぁッ!?――……ッゥ!?」

 

 突然の、爆破のそれかとも思える家屋壁面の荒々しい崩壊に。寺院が腕で身を庇い、驚き戸惑ったのも一瞬。

 直後にその崩壊部の大穴より重々しい動きで現れた、巨大な姿――オーガに。巨大な体躯に、獰猛な顔を持つ魔物の出現に。

寺院は目を剥き、そしてその顔を警戒の険しい色に変えた。

 

「オぉォ?なんだなんだぁ、まだネズミ共が残ってタのかァ?」

 

 そんな凄まじい様相動きを見せて出現したオーガは。次には寺院を見降ろし、さらには周囲にその獰猛な眼で視線を走らせ。

 そしてその顔を身の毛のよだちそうな肉食獣のような笑みを浮かべて、そんな一言を発した。

 

 明かしてしまえば。

 そのオーガは現在このルオンの村を襲う、帝国軍軍団の下の一部隊の指揮官級であった。

 オーガはまた部下を引き連れて、村を略奪行為を目的で荒らしまわっていたのだが。その途中に異音、騒ぎを聞きつけ、並ぶ家屋を破壊し通り抜けてこの場へと現れたのであった。

 

「おいおい、なんダこりゃァ。ふざけた事になってんじゃネぇかぁっ」

 

 そのオーガは視線を走らせ周囲の状況把握を終えると、何か面白く無さそうな声色でそんな言葉を紡ぐ。それは、周囲に散らばり沈む数多の帝国兵達の死体を見てのもの。

 

「ッゥ!」

 

 一方。そのオーガに向けて、迷わずの攻撃行動で応じたのは寺院。

 彼は下げていた89式5.56mm小銃を、狙う暇も惜しみ腰ための姿勢で突き出し構えると。そのトリガーを引き、数発分の銃弾を撃ち放った。

 

「――!」

 

 しかし、その寺院の眼に。想定外の結果、光景が飛び込んだのはその直後であった。

 

「ッ゛!……っ()ぇ……」

 

 なんと恐るべきことに撃ち込まれた5.56mm弾は、しかしそのオーガの身体前面にその全てが防がれたのだ。

 正確には5.56mm弾は、オーガのその胸部を中心に体前面を強く叩きこそしたものの。しかしオーガを殺傷するには到底至らず、僅かに食い込み小さな痣や浅い擦過を付けたのみ。

 そして次にはその全弾は、運動エネルギーを失いパラパラと虚しく地面に落下した。

 

「んな事が――ッ」

 

 一体どれほど強靭な体を。生命力をしているのか。オーガの見せたその姿光景に、寺院は思わず目を剥き言葉を零す。

 

「ヤロォ……――オォガァアアアアッッ!!」

 

 しかし。その悪戯にちょっかいを出すに終わった行動は、オーガの気分を害するには十分であった。

 次にオーガのその獰猛から上がったのは、憤慨を示す雄叫びだ。ビリビリと空気を揺さぶるまでのそれが、周囲へ響き広がる。

 

「何か知らねぇガ……ふざけてんじゃ……ねェゾぉッ!!」

 

 そしてその怒りの感情を行動に表すように。オーガはその手に握り担いでいた、2m丈を越える巨大な金棒状の武器を易々と振るい上げると。

 次の瞬間、寺院目掛けて思いっきり降り下ろした。

 

「っぁ……――ッ!」

 

 今先のオークの雄叫びに少なからず牽制され、その身を庇うようにしていた寺院は。しかしすぐに自身を襲おうとする、その得物とモーションに気付く。

 そして直後。寺院は考えるよりも先に、地面を強く踏み切り背後へと大きく飛んだ。

 

「――ッぅ!?」

 

 直後に。今まで寺院が立っていた場所へ金棒が叩き落とされ、鈍い衝突音と砂埃が上がり、そして衝撃が伝わり襲い来た。

 

「ッ――……冗談……!」

 

 飛んだ先で荒々しくもなんとか受け身を取り、そしてすぐさま起き上がった寺院は。荒い受け身による身の痛みを気にする間もなく、悪態交じりの声を零す。

 見えるは、オーガにより振り下ろされた金棒が、叩いた地面を凹ませ抉った光景。

 一瞬回避が遅れていれば、それに潰され見るも無残な姿になっていただろう。

 その可能性を脳裏に浮かべ、寺院は頬から首元に掛けて、冷や汗を一筋伝い垂らした――

 

 

 

「あれは!?」

 

 背後後方では、祀が驚愕の声を上げる。

 先に見える一件の家屋から出現した、巨大なオーガに。容易ならぬ脅威である事は明らかである、その存在を目の当たりにしての一言。

 

「ッ、オーガッ!帝国軍の指揮官級だッ!」

 

 その存在の詳しくを、続けてはストゥルが発し上げた声で端的に伝えて見せる。

 その間にも、寺院がそのオーガに襲われる光景が次には巻き起こる。

 寺院は辛うじてそれを回避して見せたが、間一髪の肝の冷えるその姿に、祀やストゥルは思わず目を瞑り背けそうになった。

 

「っぅ……各員、火力投射をッ!いやっ、編制本隊に火力支援を――ッ!」

 

 直後に祀は、周囲に展開する各員へのオーガへの火力投射を命じようとし。しかしすぐさまそれ以上の火力の必要性を考え、装甲列車編制(ひのもと)へのりゅう弾砲による曲射火力投射の要請の考えを口にする。

 が。

 その祀の横を、スッと一人の影が通り抜けたのはその時だ。

 

「えっ?ちょッ」

 

 祀はすぐにその人影の正体に気付く。その正体は、他でもない会生だ。

 その会生の動きはズカズカと堂々たる様子で前方へ歩んで行くもの。その進行方向はあろうことか、いやむしろ無論とも言うべきか。オーガの出現した方向であった。

 

「会生、なにを!?」

「俺が抑える」

 

 祀の向けて発した声は、それに驚きそして引き留めようとするものであったが。会生は祀に向けてそんな端的な解答を寄こし、そして止まる様子など微塵も見せない。

 

 そしてその会生は。手にしていた9mm機関けん銃を放る様に離して、下げて降ろすと。

 自身の身体前、胸前にタスキ掛けで装着装備していた〝ある〟装備火器を取り外して手に取り。続けては、それを〝組み立て〟始めた。

 

 

 

「……チィぃっ、すばしっこいヤツだァ」

 

 金棒のすさまじい一撃が、しかし空振りに終わり。

 オーガは忌々し気に言葉を漏らしながら、一度金棒を戻して構え直す様子を見せる。

 そんなオーガの背後、崩壊して大穴の開いた家屋のそこからは。オーガの指揮下の兵であろう、オークなどの帝国兵達が次々に出てきて姿を現す。

 

「――ッ!」

 

 一方、驚愕に目を剥いていた寺院は、しかしすぐに意識を取り直し。

 小銃を突き出し構え、考えるよりもとにかくの攻撃応戦行動を取ろうとした。

 

《――寺院、退避しろッ》

 

 しかし刹那。寺院の耳にその装着するヘッドセットより飛び込んだのは、そう伝え指示する声。それは聞きなれた他ならぬ会生の声。

 

「!」

 

 それを聞き留めた直後に寺院は思考を切り替え。

 側方にあった別の家屋を、その開け放たれた玄関扉を見止めると。そこを退避場所とすぐさま定め、地面を踏んで飛ぶようにその場寄り離脱行動を取った。

 

「ガハハッ!逃げようってかァ?子ネズミがぁ、そんナんすぐに燻り出してヤラぁ――ッ!」

 

 そんな目の前の退避した寺院のそれを、オーガは逃走のものと思い。そして重い声で笑い上げながら、その金棒を景気付けのように振り回すと。

 寺院を追いかけるべく、その一歩を踏み出そうとした――

 

 

 ――鈍く、重い轟が。

 ドン――と。いやドゴン――と、何かをぶつける域の音が木霊したのは、その瞬間だ。

 

 

「――!?――ゴォ゛ッ!?」

 

 同時に、名状し難いまでの衝撃と不快感が、オーガの身を襲った。

 正確にはオーガの鳩尾を。何か尖りしかし非常に硬い物体が、殴る――いや殴ると言うには凄まじすぎる強さで、狙い突いて叩き込まれたかの様な衝撃と振動。

 

 その衝撃に驚くべき事にそのオーガの巨体は、地面を擦って叩き戻され。

 オーガはその巨体を少し〝くの字〟に曲げて、獰猛なその口より胃液を吐き漏らしていた。

 見れば、オーガの鳩尾には肌肉が窪み凹まされて、生々しいくっきりとした痣が出来上がっていた。

 

「ナっ!?」

「頭ッ!?」

 

 その異常に、取り巻く帝国兵達が騒めき出すが。

 それをよそに、カラン――と。何かが音を立てて、オーガの足元の地面へと落ちる。

 それは、金属製の円柱――銃弾であった。

 

「か……ぁぁ?……ぁあ゛ッ!?」

 

 唐突に襲った衝撃打撃に、その体に痛み苦しみを感じながらも。

 オーガはそれ以上に己を加害したその現象に怒りを覚え、それを露にした声色を吐きながら、顔を起こして前方向こうを視線で刺す。

 

 その向こうに、それは――ヤツ居た。

 立ち構え、片腕を突き出す姿勢で堂々とそこに在るは――紛れも無く、会生(ヤツ)だ。

 

 そしてその突き出した腕に持ち構えられるは、凶悪過ぎる得物。

 .口径44弾を用いる、大口径長銃身リボルバーカノンだ――

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