装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―   作:えぴっくにごつ

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3-7:「だが それが逆に自衛隊の陸士の逆鱗に触れた!」

 降下追撃からさほどかからずに、OH-6機は墜落した巨大飛竜の直上へ到着。ホバリング体勢に移行して、そのスキッドをダイナミックに地面に降ろし着けた。

 

「行くぞッ、ヒップホッパーッ!」

「了ッ」

 

 OH-6が地上に降着した瞬間。守屋と二尉、他二名の特戦と空挺隊員も座席より飛び降り降機。

 後続で到着してホバリングから上空支援態勢に入った、軽攻撃機型OH-6の援護の元。何の迷いも無く墜落した巨大飛竜を目指して駆ける。

 

 巨大飛竜にあっては、すでに息絶え動かぬ体となっていた。

 その腹の下には下げていた凝った造りのゴンドラ。少し傾いているが、運よくも天井を上に正位状態で地上に降りて沈んでいる。

 守屋、二尉等の四名は隊形を組み警戒しながらゴンドラに駆け寄り、周囲をまずクリア。それからゴンドラの側面に設けられる乗降扉を見止め、その両サイドに取り付き配置。

 

「爆薬ッ、他は準備」

 

 特戦の二尉がすぐさま一言で示し。それに呼応して特戦の陸曹が扉に爆薬の設置を開始。

 守屋や空挺隊員はそれぞれのM240Gないしショットガンの確認を行う。

 

「さぁ、たぶんお偉いさんとのご挨拶になるぞ――ノーネクタイだがなッ」

 

 自身も装備火器であるMP5を確認しながら、特戦の二尉がそんな冗談交じりの言葉を飛ばすが。反してその表情は尖り真剣そのもの。

 その間にも特戦の陸曹は爆薬の設置を完了させる。

 

「ヒップホッパーッ」

「正面を担いますッ」

 

 そして二尉は守屋を呼び。それだけで守屋はその意図を、守屋に突入の一番手を任せる旨を理解し、そして了解の返答を返す。

 

「よし――スタンバイ」

 

 そして二尉が合図の言葉を発し。

 

「――GOォッ!」

 

 直後、二尉の張り上げる言葉と同時に。特戦の陸曹が起爆装置を起動。

 爆薬が起爆炸裂し、ゴンドラの乗降扉を木っ端微塵にする勢いで吹き飛ばした。

 

「――ッ」

 

 瞬間。

 守屋は抉じ開けられた乗降部から、何の迷いも躊躇も無く内部へ突入。

 一瞬後にはその内部の、荘厳でかつ上品に作られた内装を見止め。しかしそれを冒涜するまでの破撃の様を伴い、その内へと踏み入った。

 

「ッ!」

 

 その直後。

 守屋がその側方に見たのは、迫る人影――襲撃者。

 それは漆黒の色合いの服装の侍女、砕けた言い方をすればメイド。青色の肌に、尖る笹型の耳に闘牛のような角を頭に持つ、この異世界の魔族種族の特徴を持つ女。

 そんな見た目には可憐な魔族侍女が、しかしその手には中程度の長さの剣を持ち繰り出し、そして床を踏み切り飛び出し。

 そしてその可憐な顔には、眼には凄まじい殺気を宿し。

 守屋を仕留めんと、目と鼻の先まで肉薄していた。

 

「――ぐェぷ゛ッ!?」

 

 しかし。次にえげつないまでの苦痛と嗚咽の音を鳴らしたのは――その魔族侍女であった。

 見れば、理由は明白。

 魔族侍女の体、姿は一瞬前のそれから一転。宙空に持ち上がりくの字に屈折している。そしてその口から微かに漏れる胃液が見える。

 

 それを成した理由もまた明白。

 守屋が、低い位置から振るい上げたその拳骨が。魔族侍女の腹部に叩き込まれてめり込み。

 女のその肉を、骨を破壊しながら。打ち砕きながら持ち上げていたのだ。

 

 「殴った方が早い」。

 守屋の再びのその判断の元からの体現であることは、最早言うまでも無かった。

 

「ッ」

 

 まだ魔族侍女をその拳骨打撃で持ち上げながらも、守屋は別方の殺気に気づく。

 それは確か。反対側方の方向からは別の侍女姿の女が。虎の特徴を持つ獣人の女が、同じく中剣を下げ繰り出しながら、守屋の隙を狙い迫っていた。

 

「――ッ゛あ゜」

 

 しかし、次にはその虎獣人の侍女は奇妙な声を漏らし、そして勢いよくもんどり打った。

 同時に聞こえたのは短く連続した破裂音。

 角度を変えてみれば、虎獣人の侍女の額には赤黒い穴が開けられている。

 

「――ダウンッ!」

 

 それを成したのは、守屋の背後より踏み出しながら、その手にMP5を構え突き出す姿を見せる特戦の二尉。

 守屋に続き、守屋の死角をカバーしながら踏み込んだ二尉が行った射撃行動が。虎獣人の侍女を仕留めて見せたのだ。

 

 二名の襲撃者を突入の瞬間に退け無力化。

 さらに立て続けに、ゴンドラ内に特戦の陸曹と空挺隊員が踏み込み。守屋を正面に他三名は散会展開。

 

「クリアッ!」

「ナシッ!」

 

 特戦陸曹と空挺隊員はそれぞれの担う方向に、アクティブな敵影が無い事を確認して知らせの声を張り上げる。

 

「!」

 

 しかし、特戦二尉だけは視界の端に動きを続けるシルエット――守屋の姿を見る。

 床を蹴り、踏み出す動きを見せる守屋。

 その突っ込む先は、その向こうにあるボックス型の上品な客席スペース。

 その内にはそこに立ち、こちらに何か手を翳し向ける。何らかの攻撃行動かもしれぬ動きを見せる人影があった。

 

 ドグッ、と。

 

 次には鈍い、物体がぶつかる濁音が響き。

 

「ぐぅぁ……ッ!」

 

 そして悲鳴が。苦し気な、そして高くか細い声が掠れ響いた。

 

「――」

 

 見れば、守屋はゴンドラ内の壁際に踏み込み。その強靭な腕を突き出し伸ばして、今先の人影の首を鷲掴みにして捕まえ、持ち上げて壁に叩きつけていた。

 

 そして静かに、冷たいまでの眼でその人影、人物を見据える守屋。

 

「……くぅぁ……!」

 

 守屋の手中に捕縛されたのは、一人の女――少女であった。

 16歳程か。年相応のあどけなくも可憐な、白い肌の凛とした顔立ちが。長く可憐な黒髪に飾られている。

 眼は真紅。そして耳はこのまたこの異世界のエルフ族のように笹型に尖ることから、なんらかの亜人族、魔族である事が伺える。

 そして纏う漆黒の上品なドレスに、頭に関するティアラから。少なくとも見た目だけで判別するなら高貴な身分である事が予想できた。

 

 その右腕の先には揺らめく不気味な気体状の黒球――闇魔法による魔弾が見えたが。

 生み出され、放たれようとしていたであろうそれは。だが次には守屋に締め上げられ集中を欠いた影響か、炎を消すように消滅した。

 

「く、ぁっ……汚らしい手を離せ……この、無礼者が……っ!」

 

 その少女は、その次には可憐な顔に似合わぬ荘厳な物言いで。己を捕縛した守屋に、そんな言葉を発して寄越した。

 

「わた……余を、帝国皇帝アルデュスクォが娘……グリュツリス第二皇女と知っての狼藉か……っ!!」

 

 さらに立て続けに。その少女は守屋を必死に睨みつける形相を作り。そしてそう名乗る言葉を張り上げて寄越した。

 

「知ったことでは無い。自分は其方の命令系統には無い」

 

 しかし。

 それに守屋が返したのは。恐るべきまでに冷たい瞳と、淡々とした声色でのそんな返答。

 

 明かせば。

 ここまで正面戦闘を担当して来た第1方面隊は、ここまでにこの異世界の各地での数々の帝国軍の暴虐、残酷を、残虐性を目にしてきており。

 その関係から帝国に、その皇族への少なからずの憎悪があった。

 そして自衛隊が徹底した帝国軍の殲滅戦に傾倒し、暗黙で認可している理由でもあった。

 

「皇女だと?――本当にご本人で?影武者などではない保証は?」

 

 そこへ特戦二尉が割って入り、守屋に捕縛される皇女グリュツリスを名乗る少女に質問を飛ばす。

 この場の指揮官と言う立場上、最低限の敬語で取り繕ってこそいるが。そこには皮肉の色が同時に含まれていた。

 

「我が皇室は……影身者などと言う姑息なものは必要としない……!」

「どうだかな」

 

 それにまた苦し気な様子ながらも返すグリュツリス。しかしそれに返るは守屋の端的で皮肉気な言葉。

 

「っ……どこまでも愚弄を……!貴様、顔を覚えたぞっ!いずれは貴様の一族郎党を残らず焼き、根絶やしにしてくれる!!」

 

 そんな守屋に。グリュツリスはその可憐な顔にしかし剣幕を作り、脅し宣告する言葉を降ろす。

 

「――やってみろ」

 

 しかし。それに直後に守屋が返したのは。

 その顔に凄味を作り、一層のドスを利かせてのあまりにも冷たい言葉。

 

「っぅ!?」

 

 それに、グリュツリスの顔は引き攣り歪んだ。

 

「其方がそれを行うと言うのなら、此方も応報を躊躇はしない。千切り、砕き、其方の全てを無残な慣れ果てと沈めるまで、行いを続けるぞッ」

 

 そして叩き返される、守屋よりの宣告。

 何より家族、親族というものを大事とする守屋にとって。今のグリュツリスの言葉は禁句と言っても良く、守屋の逆鱗に触れたのだ。

 

「……ぅぇ……っ」

 

 そこまでその可憐な顔に剣幕を張っていたグリュツリスが。しかしそれを解いて溶かし、その顔をくにゃと歪めたのは直後であった。

 辛うじて歯こそ食いしばっているが、それは明らかに張っていた虚勢が限界を迎えて溶けた様子。

 

 守屋の比類無き気迫、オーラを前に。グリュツリスの虚勢は容易く、そして見事に砕かれてしまったのであった。

 

「おいおいっ」

 

 流石に見かねたのか。そこまで状況を見守っていた特戦の二尉が声を割り入れる。

 

「――興が覚めました。泣きじゃくるだけの娘っ子を甚振る趣味は無い」

 

 そんな二尉を他所にと言うように、守屋はそんな言葉と同時に手の力を解き、グリュツリスを開放。

 

「ぅぇ……うぐっ……」

 

 グリュツリスはその身をずるりと落とされて、ゴンドラ内の床に落ちてへたり込み。守屋の足元で、堪えようとしてしかし堪え切れぬ嗚咽を漏らし始める。

 

「ったく……収穫はこれだけか?――スタンリー1よりコントロール、こちらはクリア。内部で第二皇女を名乗る少女を一名確保――」

 

 それにやれやれといった様子を見せつつ、二尉は指揮所に向けた通信を開き。現状を報告する言葉を送り始めた――

 

 

 

 ――結局。

 

 確保されたのは。それから確かに皇族であると確認された、留守を守っていた第二皇女グリュツリスのみ。

 

 他に帝都残っていたのは、一部の帝国軍部隊や親衛隊部隊のみで。皇帝やその他の皇族はもぬけの殻。

 脱出を図ろうとした馬車列の方も、唯一残る第二皇女グリュツリスを逃がそうとする囮であった。

 

 そんな収穫結果を伴い。

 帝都に残っていた帝国軍部隊は排除され、あるいは少数が投降。戦闘は終結。

 ガリバンデュル大帝国帝都、グテュソリュービは陥落。

 

 自衛隊の手によって制圧され、その掌握下に置かれる事となった――

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