装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―   作:えぴっくにごつ

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チェストとは〝知恵捨て〟と心得たり。


4-9:「〝チェスト関ヶ原〟」

「――GOGOGOッ!」

 

 会生率いる観測遊撃隊は、巨大獣を中心とする帝国軍の陣地までを、一気に押し上げる。

 それぞれが互いを援護しながら手早く交互に駆け。そして城門前空間の眼前まで踏み込み。

 再びの散会展開、バリケードに残骸への遮蔽から。激しい銃火を唸らせての近接戦闘を開始。

 

「!、ぐぁ!?」

「がぁ!?

 

 要たる巨大獣が沈んだ事による狼狽に。元よりこれまでの自衛隊側の火力投射により、少なくないまでに損耗し崩れていた帝国軍部隊は。

 観測遊撃隊の火力の前に晒され、易々と、そしていよいよ崩れ沈みだした。

 

「タンゴダウンッ!」

「ヒット、ワンダウンッ!」

 

 観測遊撃隊各員の的確な撃ち込みに。帝国軍側の残存兵は次に次にと、沈み削られる。

 

「ぬッ?」

「ッ!?」

 

 その各員の激しい銃火銃声が容赦なく響く中。そして自分等もまた苛烈な戦闘を行う最中で、しかし会生や寺院が向こうに動きを見止めたのは直後。

 それは今に城門前色場のど真ん中で、反特性ユニットの効果によって崩れ沈んだ巨大獣の動き。

 一度沈んだ巨大獣は、しかし満身創痍の姿様子ながらも。その巨体に違わぬ堅牢さを持つのか、再びその片足をつっぱり立て、起き上がろうと試みる姿を見せていたのだ。

 

「どんだけゴっついんだッ!?対戦車火器をッ!」

 

 その様子を見て悪態を上げ。続けて対応、火力投射の必要性を見止め、対戦車火器の用意を指示する言葉を発し上げる寺院。

 

「――いやッ」

「えッ?」

 

 しかし、それを無用と取り下げる一声を、会生が直後に発する。

 一瞬それに訝しむ寺院だが、次には寺院もその理由に気づく。

 戦闘の音に混じり、接近する鈍く重々しい唸り――エンジン音が聞こえ。そして音源たる、城門前空間より側方へ伸びる通りの向こうより。

 ――かなりの速度、いや爆走にも近い勢いで。突っ込んで来るRCVの姿が目に飛び込んだ。

 

 そして、周り込んで来たのであろうそのRCVは。次には城門前空間に至り突入。

 巨大獣の、必死に巨体を起そうと突っ張りふんばっていたその巨木のごとき片脚に。しかしそこを目掛け、突っ込み――激突。

 

 ゴギャ゛――と、鋼鉄がぶつかり、肉が拉げる嫌な音を響き上げ。

 RCVは車体の正面装甲での激突で、音の通りに巨大獣の脚を拉げへし折り。巨大獣の図体を、ドシンと再び地面に沈み落として見せた。

 

「ぬッ」

「ッぉ、後ろ来るぞッ!」

 

 さらに自衛隊側の強襲はRCVの突入に留まらない。

 会生等の背後より正面街路を押し上げ、突っ込んで来たのは第32戦闘群 戦車班の90式戦車。

 退避する会生等の間を割って抜け、バリケードの残りを踏み潰し跳ね除け、また別角度より巨大獣に突入。

 体当たりを盛大にかまして、巨大獣に肉に骨の拉げる音を上げさせる。

 

「行けェァッ!」

 

 その90式戦車の車体には、第12戦闘団のぼっけもん等の一個分隊が跨乗(デザント)していた。

 次には分隊は飛び降り展開。戦闘行動をすかさず始め、周囲で浮足立ち散在していた帝国兵達を瞬く間に撃ち仕留める。

 同時に、90式上では残り跨乗していた隊員が操る、車載の12.7mm重機関銃が火を吹き。

 巨大獣の頭部周り、急所となる場所に。執拗なまでに念入りな投射を、重々しい銃声を唸らせて縫い付けるように注ぎ叩き込む。

 それに巨大獣は短く悲鳴を上げたが、次にはそれも潰え。重い機関銃の銃声に掻き消される。

 

 さらにそれに後れを取るなと言うように。各隊の各員、各班・分隊が駆け込み踏み込んで来て。

 一角では軽装甲機動車が乗りつけ。

 それぞれもまた苛烈な銃火を唸らせ、戦闘の光景を展開する。

 

 巨大獣に、周囲の制圧無力はは。最早時間の問題といって良かった――

 

 

 

「……ぐぉ……!?」

 

 巨大獣の上。巨大獣に背負わせ設けた座上席で、しかし苦悶の色で唸る男の姿がある。

 纏うその軍服は装飾品が目に見えて多く飾り、他の帝国軍将兵よりも明らかに身なりが良い。

 その顔は厳つく、傲岸不遜な色を漂わせるそれ。

 しかし今に在っては、正体不明の現象により座上する巨大獣が崩れ。おまけに異質な物体の強襲体当たりに打たれ揺さぶられ。

 それらによって男の顔は歪み、意識は揺らめいていた。

 

「……!?」

 

 しかし、そこへ意識は上書きされる。男が感じ取ったのは、気配――凄まじい殺気。

 それに、下がっていた視線を咄嗟に上げる。

 

 

「――ち ぇ え え え え え え――」

 

 

 見えたのは、真上宙空に身を置くシルエット。

 それは、何らかの奇声を伴い。得物であろうそれを振るい上げて、男への降下軌道を取っている。

 

 

「す と ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ッ ッ ッ ! ! !」

 

 

 直後には、劈くまでのそれで男の耳に届いた奇声。

 シルエットと合わせ、それが男が見た最期の光景となった――

 

 

 

「――す と ぉ ぉ ぉ ぉ ぉ ッ ッ ッ ! ! !」

 

 ズ ッ ッ パ ァ――。

 

 劈く――〝ちぇすと〟の掛け声と合わせて。

 90式の跨乗より巨大獣へと飛び移った、第12戦闘団の二等陸士が。得物の日本刀を跳躍降下から薙いで降ろし、巨大獣に跨っていた男へと強襲。

 

 直後には、その男の身体を斜めにザッパリと断ち。

 討ち取り、その首級を上げた。

 

「ぁ゜ぇ゛……?」

 

 最早、声にならない声だけを漏らして。男はほぼ真っ二つになった上半身より鮮血を噴き出しながら。

 次にはグラリと身を倒し崩し、巨大獣上より落騎。

 グシャリと。その下の地上地面へ落ちた果実のように崩れて沈んだ。

 

「いかに――」

 

 そんな男の姿を、男に成り代わって巨大獣上に立ち構えた二等陸士は。その成果――男の正体が首級に値する者かを、零しながら見下ろす。

 

 そんな中。巨大獣の周囲は雪崩踏み込んで来た陸上自衛隊各隊に無力化され、ほぼその掌握化に収まりつつあった。

 

 その内で、巨大獣の元。崩れた男の周りにまたザカザカと集まって来たのは第12戦闘団の隊員等。

 そしてその近くには会生等、観測遊撃隊の面子に。そして追い付いてきたミューヘルマも居合せた。

 

「!、あれは……っ!」

「え?殿下!」

 

 そんな中で、男の正体の見分を始めようとした第12戦闘団隊員だが。

 ミューヘルマがその向こうより何かに気づき。付き添っていた祀の制止も聞かずに駆け寄って行ったのはその時。

 

「む?」

「すみませんっ!確認をさせて……――!」

 

 そして第12戦闘団の隊員を割って通り、その男の身体を確認するミューヘルマ。

 凄惨な姿となったその男の姿に、たじろぐ部分がないでは無かったが。今はそれよりもミューヘルマの知る、ある事実が先に衝撃として来た。

 

「……第一皇子……ゲルティヅフク……!」

 

 そしてミューヘルマが驚愕に目を剥き、そんな名前を零したのは直後であった。

 

「何ッ、皇子にごつかッ?」

 

 それに。第12戦闘団隊員の内の一等陸尉が、確認のための問う言葉を向ける。

 

「何ですって!?帝国の皇子!?」

「敵の総大将か」

 

 そこへさらに、ミューヘルマを追いかけて駆け、ないし歩んで来た祀に会生が。追いつくと同時にその言葉を聞き留め、驚きないし確認の声を上げる。

 

「かと思います、外交会談の場で姿を見たことがある……第一皇子本人かと……っ」

 

 それに、足元の男の亡骸を驚愕醒めぬ様子で見つめながら。回答を返すミューヘルマ。

 

 

 その言葉は正しかった。

 今に仕留められ、地面に崩れている男こそ。ガリバンデュル帝国の第一皇子、ゲルティヅフク。

 暴虐の皇子として、その称号を欲しいままにし。

 帝国軍が行ったあらゆる戦争に自ら赴き、殺しを、虐殺を、処刑を遊戯のように楽しみ。女子供に価値あるものを奪い、人々に恐怖を植え付けて来た存在。

 

 その暴虐の皇子の。しかし凄惨ながらも、なんともあっけない最期の姿がそこにあったのだ。

 

 

「……第一皇子!最重要人物じゃない……それが……」

 

 次に驚きの声を上げたのは祀。

 それは、最重要人物たる存在を。しかしあっけなく排除してしまった事による問題、懸念事項を浮かべて零すもの。

 

「――しかし、こちらの団司令部の用命は、〝チェスト関ヶ原〟にごつッ」

 

 だがそこへ、言葉が割り込まれる。

 その主は今にまさに、巨大獣からズダンと飛び降りてきて。得物の日本刀を片手で構え直す姿を見せる二等陸士。

 

 ――〝チェスト関ヶ原〟とは、島津家の隠語で〝ぶち殺せ〟の意である。

 

 改めて言うが、第12戦闘団は敵将の首級を上げる事に特に執着し。すでに各隊員にも確保は二の次である事が指示命令されている。

 二等陸士の今の言葉はそれを示すもの。

 もっとも、前にも言ったように。

 脅威、危険因子となる存在の排除を最優先とし、確保拘束を二の次とする方針は。現在の自衛隊全体の方向性としても少なからず同じものであったが。

 

「…………」

 

 自衛隊各員が、それぞれの意見に在り方を交わす中。

 ミューヘルマは祖国を襲い支配した仇敵の一角の。しかしそのあっけない末路を足元に見て、何か複雑そうな色を浮かべている。

 

「今は考え込む暇は無いぞ」

「!」

 

 しかし、直後に背後から来たのはそんな言葉。それは他ならぬ会生からのもの。

 

「取り戻すんだろう?国を。その最終局面はこれからだ」

「……」

 

 振り向いたミューヘルマに、会生はさらに言葉を続ける。

 

 そんな会話の一方で、周囲では止まっている暇は無いと行動作業が続いている。

 75式ドーザが巨大獣の巨体をしかし押し退けて、正面城門の前より排除。

 開かれた針路を、その上をやはり当然のように伸び、城門の向こう内部へと続いている線路軌道を。

 進んで来た《ひのもと》が重々しい走行の音を立てて、さらに堂々と押し進む。

 

「征羅ちゃん、祀ちゃん!いよいよ踏み込むぞッ」

 

 そして、徐行速度で押し進んでいく《ひのもと》の。その機動車たるDD14の運転席から飛ばし寄越される声。

 DD14の主任運転手たる安雲が窓から顔を出し、会生や祭りに促す声を動きと共に寄越している。

 それこそいよいよの王城への突入を、それに後れを取らぬよう伝え促すもの。

 

「了――行くぞッ」

「……はい!」

 

 それに端的に返し。そしてそれを取り次ぐよるに会生はミューヘルマに促す。

 それにミューヘルマは、思う所を吹っ切るように返し。

 

 ――そして各員各隊は、いよいよ王城へと踏み入った。

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