装甲列車、異世界へ ―陸上自衛隊〝建設隊〟 異界の軌道を行く旅路―   作:えぴっくにごつ

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ふわっとしたラストバトル。


5-6:「決着 一撃にて――」

「上出来だ」

 

 指揮下の各員からの無力化完了の報告を受け、受け取っての一声を発した会生。

 その会生は、しかし次には前方に視線を向け。

 堂々たる様相で歩み進み始めた。

 

 見据え、そして迫り向かう先。

 それは向こうに、謁見の間の奥の玉座に今も座す、皇帝アルデュスクォだ。

 

 アルデュスクォはと言えば突然の状況の変貌に、その顔には微かに驚きこそ見えるが。その傲岸不遜たる居住まいは、状況から尚揺るぐ事は無く。

 その顔には狼狽などは無く、今の状況に興味深そうな色すら垣間見せていた。

 

 その傲岸不遜の皇帝に。

 しかし会生は、それにこちらも傲岸不遜で真正面からぶつかるように。10.9mm拳銃を手元に控え、ズカズカと間合いを詰める。

 

「――ッぅ、小癪な真似をしますわねッ!」

 

 しかし、皇帝アルデュスクォの側方より。皇帝のそれとは反した、焦りの色を含めての張り上げた声が聞こえ届く。

 第一皇女ヴェシリアがその主。

 父たる皇帝と反して彼女には。今の会生等が敢行した降下突入からの襲撃行動と、そしてその結果を目の当たりにしての、少なからずの驚きと同様の様子が見える。

 

「闇に飲まれ、朽ち果てろ――!」

 

 そして同時にヴェシリアが見せるは、会生の進路を阻み、父たる皇帝をまるで庇うように前に駆け出る動きと。合わせての腕を翳し突き出す姿勢に、魔法詠唱の口の動き。

 

 直後。ヴェシリアを中心に――闇の触手が。

 まるで大木のような大きさの、闇で姿を形作ったいくつもの触手が召喚され。

 それが一斉に飛び出し、会生に飛び掛かった。

 

 闇魔法の一種による、凶悪な攻撃。

 邪法こそ抗生ユニットにより無力化されたが、また別の理である闇魔法は今も敵方に健在。

 それが次には、会生を襲い飲み込むかに見えた。

 

「――暗黒よ、向かえ阻めっ!!」

 

 しかし、会生の後方より透る張り上げられた声が届いたのは瞬間。

 そして、襲い来た闇の触手を阻み迎え撃つかのように。会生の前に――漆黒の壁が出現。

 厳密には半ドーム状の――漆黒のバリア。

 次には、飛び込み襲い来たいくつもの闇の触手達は。その漆黒の壁に次々に激突、まるでぶつけられた熟れた果実のように飛び散り霧散して消滅した。

 

「ッ」

 

会生の前に現れた漆黒の壁の護り。それの成した結果に、微かに目を剥く会生。

 

「アイセイ様っ!」

 

 だが間髪入れずに背後より声が届く。最早聞き間違えようもない、その主はミューヘルマ。

 振り向けば背後の向こうに、堂々と立つ彼女の姿が見え。そしてそのミューヘルマが突き出す腕先には、揺らめく闇の影――闇魔法の発動後に見られる後現象があった。

 すでに想像は容易か。

 今に会生を護って見せた漆黒の壁は、ミューヘルマが。ダークエルフ種族たる彼女が発動した闇魔法であった。

 それがヴェシリアの側の闇魔法を阻み、同一同種の闇魔法の衝突によって対消滅させたのだ。

 

「護りは――お任せください!」

 

 そしてミューヘルマは、会生にそう確たる言葉を紡ぎ寄越す。

 

「――あぁッ」

 

 それを聞き、受け止めた会生は、一言受け取る言葉だけを返すと。

 視線を前方に戻して、堂々たる前進を再開。

 

 闇の壁は揺らめく炎、陽炎のように形態を変貌して、その会生の周りを囲い。突き進む彼を護る。

 

「っぅ――小賢しいッ!」

 

 それに苛立ち痺れを切らしたのか、ヴェシリアは再び闇の触手を出現。巧みな操りで、先よりも複雑な軌道を触手達に描かせて会生を再び襲わせる。

 しかし、それは会生を囲い守る闇の陽炎に飲み込まれ、対消滅する。

 

 そして今度にあってはそれだけに留まらない。

 ミューヘルマの生み出す闇の陽炎の護りは、ヴェシリアの闇の触手の軌道を、まるで引火した炎のように遡り伝う。

 

 同種の闇魔法同士は対消滅を起こす。そしてそこから先は、術者の魔力の大きい側に利が傾く。

 闇の陽炎は大波、濁流のように巨大化して押し上げる。

 その先に居るは、第一皇女ヴェシリア。

 

「!!――ぁ……――」

 

 己の眼前を覆い迫る、闇の濁流。

 その間際に、ヴェシリアは理解する。

 その恐ろしい闇の濁流の主――ミューヘルマが。その内に宿すは、己よりもはるかに巨大な闇の理の力ということに。

 

「――お父様――」

 

 最後に、声にならない声で零したヴィシリア。

 そしてその刹那には、彼女はその身を漆黒の濁流に飲み込まれ。

 その内で、その体を崩し溶かすように消滅――儚い最期を迎えた。

 

 

 

 巨大な闇の陽炎を護りとして伴い、堂々たる様相で押し進み。

 

 会生は、玉座に座す皇帝アルデュスクォとついに相対した。

 

「――一応言う、投降しろ」

 

 大帝国の皇帝と言う存在を前に。今もなお、畏怖に値するオーラを絶やさぬアルデュスクォを前に。

 しかし会生はまた、微塵の動揺も見せぬ堂々たる様相で。

 愛用の10.9mm拳銃を突き出し構えて向け、訴え告げる一言を向ける。

 

 しかし、そのアルデュスクォは。

 すでに孤立無援の窮地であるにも関わらず。

 そしてここまでに息子を失い、今もまさに娘をも失ったというのにも関わらず。

 恐怖も、狼狽も、怒りすらも見せる様子は無く、優雅なまでに玉座に座している。

 

「――面白い、称えるに値する」

 

 そして投降を訴えた会生に向けて。しかしアルデュスクォが零し返したのは、何かそんな一言。

 

「多くの困難に残酷を、潜り抜けて来た強き者と見る――ならば、理解できるのではないか?」

 

 そして、アルデュスクォが寄越したのはそんな問いかけの言葉。

 

「この世界の残酷さを。救いに値しない、無に喫するべき数々を――世界は、永劫の闇と無に帰すべきなのだ」

 

 そして紡ぎ告げる、そんな言葉。

 

「理解できるはずだ。いや――何人も真には理解しているはずなのだ」

 

 そして零され。

 

「君は、それを成せる巨大な者と成り得る――賛同する気は無いか?永劫の、安寧のために――!」

 

 静かに、まるで導くように片腕を翳し。

 皇帝アルデュスクォは、そんな誘う言葉を会生に紡いだ――

 

 

 ――鈍く、しかし劈く〝銃声〟が響き上がった。

 

 

 皇帝アルデュスクォの胸に。胸部、心臓に大穴が開いた。

 次には、アルデュスクォは玉座の背もたれに叩きつけられるように身を揺らし。そしてその口からも一筋の血を零し、玉座の上で力を失い身を崩し沈んだ。

 その絶命は、見るに明らか。

 

「――」

 

 それを成した主は、最早言うまでも無いか。

 反対正面には、銃口よりうっすらと硝煙を上げる10.9mm拳銃を構え。その引き金を己が指で引き切った、会生の堂々立ち構える姿がある。

 

 会生の一撃が。

 叩き込まれた銃弾が。

 皇帝アルデュスクォの命を浚い、討ち仕留めたのであった。

 

 そしてそれこそが、会生の回答。

 

 この残酷で悲劇溢れる世界を終わりにすべく、無に喫し永劫の闇に包むべくための、世界滅亡の旅路に。会生を招くアルデュスクォからの誘い。

 

 しかしそれを。

 懸命に生き、抗う事を。それを諦め自棄へと走った者の、耳を貸すに値しない戯言と両断する。

 我武者羅の歩みを譲らぬ事を信念とする、会生の答えであった。

 

「――一抜けたければ、一人で逝け」

 

 そして、討ち仕留め。向こうの玉座上で崩れ亡き姿となった皇帝アルデュスクォに向けて。

 会生は淡々と、しかしそこに確固たる意志を見せる姿で。

 その最期に告げる一言を、叩きつけた――

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