「最強ってさ…、堕としたくなるよね」理論の堕とされる側であるTS戦闘狂   作:産地直送の焼き鳥

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 感想欄を見ていて『筋肉』とか『ゴリラ』とか『ゴリラゴリラ』とか『ゴリラゴリラゴリラ』やっていますので、ゴリーラ成分を中和したいと思います。

 今回は異能名『超運』の持ち主、中学一年生『阿良々木 錦』ちゃん主観です。
 彼女の簡易的なプロフィールは一話にあります。


学園では授業が始まり、私は知識を学びます

 皆大好き、『阿良々木 錦』でーす!

 

 はい。少しふざけてみました。

 まぁ私は平常時は基本ふざけない感じですし、あまり笑いもしないです。基本的に能面ですが、興奮してくると笑いますよ?

 

 まぁ掲示板の皆にふざけていても、弄られるだけなんでたまにしかしません。貴重な錦ちゃんの姿です。

 

 さてなぜこんなことを考えているかというと。

 

 「総合生徒会長『龍神楽 羅希』様は素晴らしいのです!!何と去年は凶悪な異能犯罪者による学園内テロを複数解決したばかりか、中等部2年だというのに学園を束ねる総合生徒会長に就任したのです!!素晴らしいでしょう?!更に更にです、龍神楽様は身体能力は桁違いに強いことはご存知だとは思いますが、その頭脳も素晴らしいのです!!あの高等部生徒会の会長『探究の賢者』殿と肩を並べるほどの頭脳をお持ちです!実際昨年度の学内模試では学年一位、中等部から高等部まで全ての総合学園生*1が行う学力テストでは数多の高等部の秀才たちを押しのいて学園内三位を獲得しているのです!!更に龍神楽様の実績はこれだけに止まらないのです!何とーーー」

 

 隣の子がとーっても厄介オタクだから、ですね。

 先ほどのは現実逃避です。

 

 この子のあだ名は『オタクちゃん』。見ての通り総合生徒会長の大大大ファンです。

 入学式の時に私の隣に座っていた子ですね。

 あの時の総合生徒会長の演説で崇拝し始めたと思っていましたが、元からだったそうです。

 入学式の後話してみると、総合生徒会長以外の話ならば意外と趣味が合うということも分かりまして、今では私の友達です。

 

 しかしこの子は生粋のオタクでして、この話かれこれ30分近くしています。総合生徒会長についての生まれから異能の特性、趣味思考まで把握しているやばい子です。

 ただまあいい情報源でもあるので聞き逃したりはしないんですが。

 生徒会長が絡まない話ならとてもいい子なんですよ。自分自身でも厄介オタクであると自覚しているそうでして、私が生徒会長の信望者でないと知った途端『今後生徒会と生徒会長の話は私に振らんといてね。私の理性があるうちに伝えとかんと不味いし』と言っていました。

 

 因みに今のは朝の連絡で『生徒会長が今朝、魔物研究会による被害を食い止めました。しかし後処理中ですので事件現場近くには寄らないこと』というのがあったからですね。

 SHRが終わったら私の元に来て、それから今まで興奮しながら喋っています。

 

 …あ、龍神楽さんの今日の着ている服などの情報は要りません。はい。

 

 もう既に入学式から1週間ほど経ってしまいました。時の流れは早いものです。一部の新入生の方々は既に部活・生徒会・風紀委員会に入っていると風の噂で聞いたりしました。

 私も何か部活に入ったほうがいいのでしょうか。

 ひとまずは保留ですね。

 そもそもこの学園1000ちょっと部活・同好会があるみたいですし。

 

 更にいえば、この厄介オタクちゃんも生徒会に入ろうと入会申請を提出したとか。

 

 一瞬脳内に『この厄介オタクちゃんが入れんのか?』とよぎりましたが、そういえばこの子成績はこの学園でもトップクラスでしたね。

 うーん、生徒会長に話しかけられたらこの子気絶しそうで心配なのですが…。

 

 あ、掲示板の皆に言っておきますが私も成績はいいですからね?

 この学園の普通科は『特別進学学級』と『一般進学学級』に二つに分かれており、一般の方は偏差値55と中堅ですが、特別進学は偏差値65です。そこの特別進学学級に私は在籍しているのです!褒めてもいいんですよ?何も出ませんが。

 そうそう、この国ですが大まかな法律や仕組み・言葉は日本と同じでして不便になったことはありません。地球のパラレルワールド的な世界なのでしょうか。それほど興味はありませんが。

 

 あ、オタクちゃんが落ち着いてきたようです。

 

 「ふぇー、言い切ったぜ」

 「賢者タイムに勤しむのはいいですが、一時限目の授業が始まりますよ?」

 「のわっ!本当だっ!錦ちゃんありがと!ヤッベヤッベ」

 

 さてと、次の単元は…異能基礎学、ですか。この世界で異能に対する知識のために生まれた学問ですね。前世の地球には無かった教科ですので前世知識が使えません。ですので油断せずにいなければ。

 教室から遠いところにある講義室なので、急いだほうがいいですね。教科書とノートを持って…っと。

 

 「早く行きますよ?」

 「ちょ、ちょっと待って!どこやったっけ教科書…

 

 またですかね。

 この前は総合生徒会長ファンクラブがないか学校中を走り回ったために遅刻しかけていましたし、前の前は入学式の時の総合生徒会長のスピーチの録画を見過ぎたせいで課題を朝のSHR前にする羽目になっていましたし。

 ただまあ毎回なんとかなっているので、この癖を直そうという気がオタクちゃんにはありません。一回痛い目合わせた方がいいんでしょうか。

 

 「あのー、錦ちゃん様、すこーしお願いがあるのですが…」

 「はいはいわかりましたよ。教科書ですね。一緒にみましょう」

 「ヤッタァ!!錦ちゃんマジ天使!!」

 

 ガッツポーズをした後、私にバックハグ*2をしてきます。

 …距離感バグっ子というあだ名も追加しといた方がいいかもしれません。

 この距離感に免じて、痛い目に合わせるには今度でいいでしょう。  

 『何』、とは言いませんが、にしてもデカいですね。C、いやDはあるでしょうか。…2、3センチ分けてくれませんかね。

 これが胸部装甲の格差…!!

 

 自身の胸と、背後の感触を比べて小さくため息を吐いてしまいます。

 

 「錦ちゃんどしたん?急に立ち止まって。どこか痛いん?」

 「…いいえ、大丈夫ですよ。早く行きましょう」

 「オッケー!!行こ行こ…、え?早歩き?ちょ、ちょっと待って〜!!」

 

 どこが痛いと聞かれたならば、そうですね…胸部装甲と心、ですかね。

 え?痛む胸ないでしょ、ですって?

 掲示板の皆様、擦り潰しますよ?

 

 ツカツカと歩きながら、追いついてきたオタクちゃんと一緒に講義室へと向かって行きました。

 

 

 ◇◇◇

 

 

 「さぁ、皆さん早く自由な席にお座りください。そろそろ授業が始まります」

 

 メガネをかけた女性教員の方が、大きな黒板の前で生徒たちの誘導をしていました。

 席は自由でいいのですか。…それならば、ここにしましょうか。

 

 「席はここでいいですか?」

 「んー?ええよー、錦ちゃんの好きなところで!」

 

 良かったです。

 私が座った席の位置は、黒板から遠くもなく近くもなく、端っこすぎず真ん中すぎない絶妙な位置を選びました。

 この学園のほとんどの講義室は、黒板がどの席でも見やすいように席が段々となっているためどこの席もほとんど変わりません。

 しかしここらへんがちょうどいいでしょう。理由は特にないです。

 

 席について教科書などを机に置くと、オタクちゃんが話しかけてきました。

 

 「錦ちゃん、錦ちゃん。錦ちゃんさぁ、この前スイーツ好きって言ってたじゃん」

 「はい、そうですね。それがどうかしましたか?」

 「うん!それじゃあ放課後スイーツ食べに行かない?いいスイーツ店見つけたんだぁ!」

 

 おぉ,いいですねスイーツ!!

 この学園は学生数がとてつもなく多いため、日本国内の企業が新たな市場として目をつけました。

 

 なぜなら学園内にはダンジョンが一つあるため、モンスター素材が沢山取れます。それを国や企業に売却しているため、学園もしっかり財産源を持ち、更に学生たちにもダンジョン探索の報酬としていくらか金銭が渡されます。それは普通科の生徒たちにも、微量ですが渡されるのです。

 つまり学生たちは自由に使えるお金が結構あります。

 

 金は天下の回りもの。

 そんなわけで十世代以上前の総合生徒会長が学園内に商業特区をいくつか設置し、各企業に支店を置く許可証を発行しました。

 オタクちゃんが説明したスイーツ店もその一つ。都心にあるお高いスイーツ店の支店です。

 

 あそこのお店にはいつか行きたいと思っていました。

 オタクちゃん、マジナイスです…!

 

 どんなメニューがあるのか話していると、授業開始のチャイムがなりました。

 

 「はい、それでは授業を始めます!」

 

 そう教員が話すとともに、周りの生徒たちは静かになりました。

 私たちも話す口を止め、教科書とノート、筆箱を開きます。

 あぁ、あなた教科書忘れてましたね。…はいどうぞ。一緒にみましょう。

 

 そうしているうちに、いつのまにか教員さんの自己紹介が終わっていました。

 さらっと聞いていましたが、興味ないので明日には忘れそうな内容でした。

 

 「さて、まず最初の授業は小学校などで習ったものの復習といきましょう。皆様それでは教科書9pをお開きください。最初に、『異能区分』というものをすべて言える方はいらっしゃいますか?」

 

 その声とともに自信満々に挙手したりしなかったりと、チラホラ手が上がっていきます。

 ここのクラスは特進、と呼ばれるだけはあるのでおそらくは全員知っているのでしょう。多分答えるのが面倒くさいだけで。

 

 ほら、オタクちゃんも分かっていますしーーーあ、目を逸らしました。

 …授業に集中しますか。

 

 「はい、そこの方。お願いします」

 「はい!えーっと『物質具象系』『物質変化系』『身体強化系』『物質操作系』『精神操作系』『法則改変系』、最後に『複合異能系』です!」

 「全問正解、素晴らしい!!みなさん拍手を!!」

 

 頭に猫耳をつけた少女が答え、見事に全問正解しました。

 その回答に教員が拍手を促し、講義室内に拍手の音が響きます。そして猫耳少女は照れくさそうにしながら、椅子に座っていきました。

 

 「まずは一つ一つ説明していきましょう。『物質具象系』は文字通り『何かを作り出す異能』。炎だったり水だったり剣だったり…。何かしらの特殊能力がついたものを作ることもあります。異能がこもった物質である『秘宝』を作り出すのも彼らが中心です」

 

 教員が大きな黒板に字、そして分かりやすいように絵をかいていきます。

 棒人間が手から炎や水を出している絵です。

 …絵、可愛らしいですね。

 

 「実例を出してみましょう。私の異能は『平和の鳥』」

 

 教員の方が異能を使うと、教卓の上にオリーブを咥えた鳩が現れました。大きさは普通です。

 

 「異能『平和の鳥』は『周囲の異能発動を停止させる鳩を生み出す』能力。君、ちょっと異能を使ってみてください」

 「え、はい…、うわ使えん!」

 

 前列に座っていた男子に教員が指示して、それで男の子が異能を使おうとしましたが不発に終わったようです。

 なるほど。範囲はどれくらいなのか気になる異能ですね。教卓から数m離れている私の『超運』は問題なく発動していますし。

 そんな私の考えていたことは話されることなく、そのまま授業が進んでいきます。

 

 「このように能力を持った物質・生物をつくり出すのが物質具象系。

 次に『物質変化系』。これらは『元ある物質を全く違うものに変える異能』です。基本として体を獣の特徴を持つものに変化する異能が大半を占めます。

 例えば…あなた」

 「はいっ!!」

 「あなたの異能は物質変化系の異能でしたよね?異能の効果を言ってもらってもよろしいでしょうか」

 

 先程七つの異能区分を答えていた猫耳少女です。

 おそらくは猫になる異能とか?

 

 「私の異能は『猫人』!猫の状態と猫獣人の状態の二つになることができる物質変化系の異能です!」

 「はい、ありがとうございます。えー、物質変化系の能力はいろいろありますが…、この系統の中で一番多いのは『自身の体に獣の要素を加える』異能が多いですね。彼女の異能はまさにそれです。」

 

 教員は黒板に猫や犬の絵を描いていきました。

 それと纏められた図が書かれます。それをみながらノートに写していきました。

 

 「三つ目『身体強化系』。これは七つの異能区分の中でも最もシンプルであり、『自身、または他者の強化をする異能』です

 頭脳の強化だったり、足腰の強化だったり、内臓系の強化もあったりします。一番わかりやすくて、しかしそれであるからこそ強い能力です」

 

 身体強化系ですか…。

 身体強化系はわかりやすいからこそ、どんな修行をすればいいのかわかるという点でしょう。

 わかりやすいというのは便利ですよね〜。

 

 「さて、どんどんいきますよ?お次はーーー」

 

 考えるのは後にして。授業に集中しますか。私は黒板に書かれた文字、絵をかき取っていきます。

 

 

 

 

 

 

 

 ふう、書き終わりました。なかなかいい感じにノートがまとめられたと思います。

 纏めた結果は

 

 『物質操作系』=特定のものを操作する能力。対象は元からあるもののみ。血液、砂、空気から液体まで。

 

 『精神操作系』=他者、または自身の精神を操り、支配し、精神を研ぎ澄ます。

 集中したり、他者を洗脳する。他にも認識を変えるなどの能力である。

 

 『法則改変系』=物理法則、概念、絶対の定理などを捻じ曲げる。とても複雑な能力である場合が多い。異能者の総数も少ない。

 例として、幸運値の操作、あらゆるものを切断する異能、有名なのは『触れたものに死を与える』異能

 

 となりました。

 私の『超運』も法則改変系の異能ですが、かなり複雑で難しいです。

 最初の頃は私が凄まじいほどに幸運になりすぎて、周囲に被害が出てしまいました。例とすれば、私が通るところは何があろうと青になる、という結果により通行者や交通に被害を起こしました。

 今は全力よりも少し威力を減らして、異能を使っているのです。

 ただ、それだけ強いということでもあるのです。

 

 「最後は『複合異能系』。この能力は二つ以上の異能系統の特性を持った異能です。物質操作系は自由に操作できますが質量は増やせませんし、物質変化系は質量は増やせますが自身の周辺から自由に操作できません。しかし、物質変化系と物質操作系の特性を併せ持った複合異能系は質量を増やしながら操作ができるという芸当ができます」

 

 この複合異能系も持っている人数が少なく、しかしながら強いものが多い。

 ただ使いづらさはピカイチですので、相当な訓練・鍛錬を必要とするようです。

 

 「複合異能系で強い者は、これまでの人物歴史の中で多数います。今代の最強を誰か、とするならば…」

 

 あぁ、教員の方が何を言うのか分かってきました。

 小学生の時に特定暴力団『覇鍾会』の撲滅、及び異能国際大会での単独優勝。中学一年生の際にはこの国の首都にある巨大ダンジョン『虚淵廻廊』最深層の更新などなどを成し遂げた『今世の若き英雄』なんて言われ始めた人。

 そして此度の総合生徒会長。

 

 「『龍神楽 羅希』さん。彼女がこの時代における最強の一人でしょう」

 

 あぁ、本当にすごいですよね。彼女は。あまりの眩しさに脳と目が焼かれそうです。

 あぁ本当に…。

 本当に興味深い人です。

 

 羅希さんのことを考えていると授業の終了を表すチャイムがなりました。

 

 「それでは今日の授業はこれで終わりです!解散!」

 

 次々に生徒たちが教室へと戻っていきます。

 さて、私たちも戻って次の授業の準備をするとしましょうか。

 

 「さぁ我々も行きまし---」

 「錦ちゃん、錦ちゃん!総合生徒会長『龍神楽 羅希』様の実績はアレだけではないのです!なんと異能を使わないという制限を用いても、凄まじいほどの体力成績を残しています!さらにですよ、そんな成績だったので武器を使えばもっと強くなるのではないか、という意見があったんだけど試した武器の全てが一振りで壊れる、という剛腕!それと首都のダンジョン『虚淵廻廊』の攻略は---」

 

 スイッチが入ってしまいましたね…。これは何分くらいで治るでしょうか。

 ひとまずは軽ーく聞き流しながら、私たちは講義室を後にするのでした。

 

 

 ◇◇◇

 

 異能学が終わり、その後三つの授業を受けるとお昼の時間となります。

 

 「それでねそれでね!錦ちゃん!羅希様が完全に追い詰められた時になんと、なんとだよ!副生徒会長が颯爽と現れてーーー」

 「あー、はい。そうですね〜それはすごいです」

 

 私たちが二人でお昼ご飯を買いに行くために購買に向かっている間、オタクちゃんは喋り続けます。

 

 さすがに一時限目の異能基礎学から話し続けているわけではありませんが、先ほどの四時間目の時にまた総合生徒会長の話が出てきたため、こうなってしまいました。

 

 しかしオタクちゃんの光り輝く笑顔で話されているので、なんだか許してしまいます。まさか、これがオタクちゃんの異能力…?!

 まあオタクちゃんの異能力は物質具象系なので全く違いますが。

 

 オタクちゃんの笑顔に浄化されそうになりながらも、財布を握り購買へと向かっていきます。

 

 するといきなり、校舎内の全体に、警報が、鳴り響いた。

 

 『今、校舎内に居る普通科の皆さん!!所属不明者の襲撃です!!繰り返します、皆さん、所属不明者の襲撃です!!至急避難してください!!』

 

 その声を聞いた途端、周りにいた生徒の殆どがパニックに陥った。

 陥って無いのは先輩が半分程と、新入生の一部だけ。というかなんで先輩の方々はあんなに冷静なのでしょうか?

 

 「落ち着け、お前ら!前回の襲撃を思い出せ!新入生たちを体育館に誘導するぞ!!」 

 

 ()()()()()…、あぁそういえばこの世界Rー18でしたね。そりゃあ頭が猿な奴が襲撃を起こすでしょうね。

 

 近くにいたメガネの先輩によって周囲の人々が集まり、ある程度動ける人が集団の外側、運動神経が低めの人たちや異能が戦闘向きじゃ無い人たちは内側に。そうして避難所に指定されている体育館に向かいます。

 

 「ね、ねぇ大丈夫だよね?私たち…」

 「大丈夫だよ!多分風紀委員が来てくれるだろうし…」

 「大丈夫、この学校にも風紀委員は幾人か在籍している!その人たちが警備員と協力して鎮圧してくれるさ!」

 

 互いに励まし合いながら、歩いていきます。

 体育館に向かうにつれ、途中にいた生徒たちや教員も加わり集団は肥大化していきます。

 集団の中にいる、ということが少しは心に余裕を与えてきたようです。

 

 私も少しパニックになってしまいました…。失敗です。

 久しく周囲で事件が起きていなかったので、気が緩んでいました。事件の内容?そりゃあレイプやら痴女やら露出狂やらなんやらかんやら、です。

 しかしここ、総合学園内には『龍神楽 羅希』がいます。昨年度の総合生徒会長逮捕とともに、学園内の()()の大半を取り除いたそうです。さらにいえば総合生徒会長が精力的に取り締まりを行っているため、そのような犯罪をする奴も少ない。

 この学園内においてはRー18な世界にかかわらずすこぶる安全なのです。性犯罪率は学園外の1/2ほどという、脅威の減少率です。

 

 龍神楽羅希が総合生徒会長代理に就任してからは、校舎への襲撃があったとしてもせいぜい突発的な襲撃。計画的であっても風紀委員・生徒会の練度はかなり高度なためすぐに鎮圧される、と先輩がおっしゃっていました。

 

 だから私はすぐにこの騒動は終わると思っていました。思っていた、のです。理由もなしに。

 

 

 

 

 「やっぱり来たぞ!バカだなぁ!」

 「ひひっ、可愛い子がいっぱいだねぇ」

 

 避難所に指定されている体育館に行く途中の廊下には、幾人かの覆面の襲撃者がいました。何やら鳥籠のような物と警棒のような武器を持っていました。

 そして、襲撃者の後ろの、鳥籠の中には小さくなって捕えられた生徒たちが。

 

「い、いやぁぁぁぁ!!!」

 

 生徒の一人が、恐怖に陥り叫び声をあげてしまいます。

 その恐慌が周辺に伝達してしまい、一瞬にパニックになってしまいました。

 

 「に、逃げろぉ!」

 「きゃあぁぁぁぁ!!」

 「み、皆、落ち着いて動くんだ!!」

 

 幾人かが冷静に動こうとしていますが、聞こえていません。

 そんなうちに、襲撃犯たちは持っている警棒を使って生徒たちに襲い掛かります。

 

 「オラァ!!」

 「皆、逃げ、アガッ!!」

 

 男子生徒がすぐさま気絶させられました。

 他にも女の子たちが警棒によって気絶させられていきます。

 

 「男は置いとけ、女は『鳥籠』の中に入れろ!!」

 

 気絶してしまった女の子たちを鳥籠のような形の道具に近づけると、女の子が小さくなって鳥籠の中に入ってしまいます。

 

 「お、こっちは胸がデケエじゃねえか。ひひ!」

 「よーし、どんどん回収していくぞ!」

 

 下卑た声の男たちが、気絶させた女の子たちを次々と鳥籠の中に入れていきます。

 見目が良いもの、身体の肉付きが良いもの…、何のために襲撃に来たのかよくわかります。

 

 私たちは、それらを観察した後すぐさま逃げました。

 なぜなら警備員の方々が来たからです。

 

 「全員武器を捨てて投降しなさい!」

 「はっ!やるわけねえだろ!!武器構えぇ!」

 

 警棒と盾を持ってやってきた警備員の方々と、襲撃者たちが追突しました。そのうちに大部分の生徒たちは逃げ出すことができたようです。戦況は見た感じ人数差としては警備員の方が勝っていますが、襲撃者たちが持っている警棒のようなものは恐らく秘宝。少し戦いの行先が不安ですが、それよりも気になることがあります。

 なぜ、風紀委員の方々がここにいないのでしょうか?

 

 「に、錦ちゃん!早く逃げよーよ!」

 「…いえ、まだです。私は行くところがあります」

 

 私はオタクちゃんに『先に逃げていて下さい』と言ってから、校舎の駐車場へと向かいました。

 背後からは「え、え?う、待って、錦ちゃん!」と言いながら付いてくる足音がしました。…優しいですね。逃げても良いですのに。

 ゆっくりと、襲撃者たちにバレないように走りながら向かいました。

 

 少し走ると駐車場が見える位置にある、一階の教室に辿り着きました。

 駐車場で行われている戦闘がここからだとよく見えます。

 

 そこでは風紀委員と襲撃犯との戦闘が見えました。

 

 「はぁ!!」

 「効かんわ!!」

 

 駐車場に植えてある木の近くでは、木刀を持った風紀委員が浮遊している襲撃犯と戦っていました。

 戦況としては襲撃犯の方が優勢。

 

 至極当然ですね。

 風紀委員が使う木刀のリーチは精々長くて1mですが、それよりも遠くから襲撃犯は狙えます。

 木刀使いさんは攻撃を捌きがらなんとか戦っていますが、かなり疲労しているようです。

 

 しかも襲撃犯側には浮遊の異能者の他にもまだ何人か残っています。しかし他の風紀委員は今戦っている風紀委員の下に倒れているのです

 

 これは…かなりマズイですね。

 

 「おい、お前!何が目的だ!!」

 「あ?理由。そうだなぁ」

 

 木刀の風紀委員が時間稼ぎのために話しかけます。恐らく援護の風紀委員がくることを狙っているのでしょう。そして襲撃者は余裕綽々とその問に答えます。

 

 「肉便器って知ってる?」

 「…は?」

 

 襲撃犯のその答えに、風紀委員の方は固まってしまいます。

 

 「いやぁ、俺らの同好会で使ってる『肉便器』が壊れそうだからさぁ?新しいの調達しようと思ったわけ!そんで、だ!可愛い可愛い後輩ちゃんたちがきたじゃないか!こりゃあ…狙うっきゃねえよな?

 風紀委員さんよぉ!!」

 

 覆面をつけたまま高笑いした襲撃犯は、最後の言葉とともに空中からのラリアットを放ち、咄嗟に風紀委員は木刀でガートをしましたがそれごとへし折られます。

 そのまま木刀使いの風紀委員は呻き声を上げながら、倒れました。

 

 「はい、おーわり♪」

 

 覆面をつけていてもわかるくらいの下衆い声。

 次第に校舎中に散らばっていた襲撃犯たちが戻ってきます。『鳥籠』を持ちながら。

 私たちと襲撃犯たちの間はかなり離れているので詳しくはわかりませんが、一つの『鳥籠』の中には三人程度の生徒が恐らく入っています。

 その『鳥籠』が八つほど。

 

 襲撃者たちは今いるので20人くらいですかね?

 先ほど警備員と戦っていた人たちはまだいないので、彼らを入れれば25名ぐらいの数になるでしょう。

 …どうしましょうか。なぜ風紀委員が来なかったのか気になってここに来ていたので、この後どうするのか決めていません。

 すると隣から泣き声が聞こえてきました。

 

 「…うぇぐ、うぇ、ひっく…。に、錦ちゃん…あの鳥籠に入ってるの委員長だよ…。ヤダよぉ、いやだよ…。風紀委員も負け、ちゃったし…。うぐ、ひ、ひぅ…」

 

 委員長…、ああオタクちゃんの同じ小学校の子ですか。確かオタクちゃんのお友達。そして私たちのクラスの学級委員長になっている子でもあります。

 

 「やだよぉ、いやだよぉ…うぅ…」

 

 オタクちゃんは目がいいです。

 総合生徒会長を目で追いかけているうちに、目が良くなったと自分で言ってました。

 それで『鳥籠』の中に友達がいるのに気づいてしまったのでしょう。オタクちゃんは友達がいっぱい居ますしね。私も話し相手はオタクちゃんの他にも結構居ますが、オタクちゃんは友達皆と仲良しです。

 

 彼女らが居なくなってしまった未来を想像してしまったのでしょうか。

 …仕方ないですね。

 

 教室の窓から身を乗り出し、外に出ました。

 

 「…え?錦ちゃん?」

 

 泣き声のまま、私の名前を呼びます。

 

 「教員の方にこのことを伝えにいって下さいますか?」

 

 私が何をするのかわかったのでしょう。私のスカートの端を握って、涙を流しながら首を振ります。

 …あぁ襲撃犯たちが全員戻ってきたようです。早くしないと。

 

 「大丈夫。大丈夫ですよ。安心して下さい。私はあの人たちを救出して戻ってきますから。…大丈夫ですよ」

 

 ゆっくりとスカートを握るオタクちゃんの手を離します。

 そしてオタクちゃんの手を握りながら、こう言いました。

 

 「お願いします。行ってきて下さい」

 「…!」

 

 私がそういうと大量の涙を流しながら、頷きました。

 「ぜった’’い‘’にもどっでぎで!」と言いながら体育館へと向かって行きます。

 

 まあ多分来ないでしょうけど。そもそも普通科の教員の方々は戦闘向きではありません。戦闘できるのは体育教員くらいでしょうか。しかし学生がたくさんきているはずの避難所の防衛に精一杯でしょう。警備員の方々も同様です。それに呼べたとしても、その間に逃げられてしまうでしょう。

 先ほどのはオタクちゃんをこの場から遠ざける嘘です。

 

 …さて私も行きますか。

 

 足早に襲撃犯たちのところへと向かいます。

 すると彼らが私のことに気づきました。私のことを敵だと思ったのでしょうか。油断なく警棒を構えます。

 

 そして『鳥籠』の中の彼女たちは最後の希望か、と思っているのでしょう、私のことを見てきます。

 

 しかし私は

 

 「あぁ…あなたたちに会えて、私は幸運です!!」

 

 恍惚な顔で、顔を赤らめ、手を広げてそう叫びました。

 私がこう言ったことで、捕まった生徒たちは絶望に変わり、襲撃犯たちの顔は安心しました。

 

 「ふぅ、脅かすなよ。志願者みてえな奴か?いいだろう。よし、こん中に入ってもらおうか」

 

 私の様子を見て一人の男が空っぽの『鳥籠』を持って近づいてきます。

 リーダーだと思われる浮遊の襲撃犯は、まだ警戒してますが最初ほどでもありません。

 

 こんな姿を見せたら恥ずかしいですから。

 だからオタクちゃんには離れてもらったのです。オタクちゃんには綺麗なままで居て欲しいのです。

 

 「にしても…、いい顔してんなぁ?よーし帰ったら俺が一番目でたのしもーっと!」

 

 あぁ幸運です。本当に。

 だって…

 

 「さーてと、『鳥籠』のドアを開けてっと。さぁ、入っデ!?」

 

 こんなに無防備な姿を見せてくれたのですから。

 

 『鳥籠』を持って近づいてきた男のスマートフォンが急に爆発しました。

 多分『偶然にも』オーバーヒートして回路がおかしくなったんでしょう。

 

 「もう一度言います。私はあなた方に会えて幸運です」

 

 雰囲気が変わった私に、襲撃犯たちは武器を構えます。当然ですね。そりゃあそうするでしょう。私でもそうすると思います。

 

 ---ですが、遅い。

 もう既に皆さんは技の範囲内です。

 

 「あなた方は私に会ってしまい、本当に不運ですッ!」

 

 私はにっこりと笑いました。

 黒く、黒く、ドス黒く。

 私の笑みは怖いですので。これもまたオタクちゃんを逃した理由でもあります。

 ほら、私の笑みを見ただけで、恐怖している。

 

 今立っている位置から普通科の生徒が小さくなって鳥籠の中に入っているのが分かります。

 幸いにも襲撃犯たちが壁となって私の笑みは見られていなかったようです。しかし、『鳥籠』の中にいるのは全て見目麗しい女の子達ばかり、です。襲撃者たちが彼女たちに何をするのか一目でわかってしまいます。

 ですが、興味ない。

 

 他人が犯されようが、孕まされようが、傷つけられようが、殺されようが…、私は一切の興味がありません。

 

 しかし、オタクちゃんは違うのです。

 あんな発言と、暴走癖もありますが私の友達です。そしてオタクちゃんは優しいのです。

 クラスメイトが居なくなったら、悲しむほどには。

 

 でしたらーーー

 

 私は動くのです。オタクちゃんには興味があるから。その笑顔に興味があるから。総合生徒会長に対するその情熱に興味があるから。

 泣いているオタクちゃんなんて、情熱がないオタクちゃんなんて興味は微塵もないのですから。

 

 「それでは皆様ご拝聴!!」

 

 逃げようとするもの、私を倒そうとするもの。色々居ます。

 浮遊系の異能者は逃げずに向かってきました。先ほど風紀委員にやっていた空中からのラリアットですね。出来るだけ上空に上がっていっていますが私の異能は空中にも、地中にも届くのです。

 

 私の異能は『超運』。

 『自身が望む結果に収束していく』異能。そもそも運、というものはこの世にありません。

 サイコロを振る時、角度、投げる力、空気の流れ、温度、湿度…。この世の全てを計算すれば、『サイコロの目が次何になるのか』など簡単に証明できる。そこに運は有らず。この世の全ては偶然ではありません。必然です。

 

 しかし私の異能はそれらを捻じ曲げる。

 私が異能を使えば確定的に『6』が出ます。理論も、過程も、要因もなしに。

 コンピュータがいくら計算しても次の目は『6』です。コンピュータが全力を持ってして『1』を出す振り方を出しても、その場合は全力で私が異能を使えば『6』が出る。

 1/6の確率などお構いなしに。

 

 私は昔、この異能を十分に制御できていませんでした。

 しかし、今は制御できる。練習しましたからね。ならば、今度は指向性の幸運を、狙った人・物に。

 相手にとっては不運を。私にとっては幸運を。

 いつも無意識に使っている常時発動ではない、指向性の異能攻撃。

 

 「あなた方(襲撃者たち)の旅路に細やかな幸運(不運)を」

 

 有名スポーツ選手がルーティンに拘るように、異能もまたルーティンによって効果は安定します。

 指先を襲撃者たちに向け、中指と親指を合わせ、いわゆる指パッチンの形を作りだす。

 

 浮遊の異能力者が空中から、警棒を持った奴が正面から向かって来ています。

 そして『鳥籠』を乗せたトラックが今にも走り出そうとしています。

 しかしもう遅いです。

 

 私は指を鳴らした。

 

 「それでは---good luck♪」

 

 パチンッ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「あ、あぁ、あ」

 

 トラックのタイヤが石を踏んでパンクし、浮遊していたものは異能の調子が乱れて落下し、正面から来たものは何もないところで足が滑り、靴の紐が解け、警棒が突然折れ、スマフォの回路が乱れ爆発した。

 誘拐された生徒たちが入った秘宝『鳥籠』は全く傷もついてないが、襲撃犯たちは重軽傷を負っている。

 

 先程声を漏らしていた彼は幸いにも転んだだけ。

 しかし仲間たちが倒れたことで、一瞬で立場が逆転したことで精神が病んだ。

 

 そしてこの光景を作り出した本人が、彼ら襲撃犯たちに微笑みかける。

 

 「さて…皆様」

 

 にっこりと、黒い笑みで、柔和に微笑む。

 転がった襲撃犯を見下ろしながら、阿良々木錦は優しく告げた。

 

 「投降…していただきますよね?」

 

 襲撃犯たちに残された選択肢は、もう既に一つしかなかった。

 

*1
『国立異能鍛錬総合学園 学園生徒』の略。

*2
後ろからハグするあれ。ググれば写真出てくるで。




 



 次回はみんな大好きパワー イズ ジャスティス!!な「龍神楽 羅希」総合生徒会長です。彼女の第一人称の元、話の中でちょくちょく出ている迷宮探索科とダンジョンが出てきます。
 
 ところで…、エロ漫画に『エロダンジョン』というジャンルがあるのは、心が汚れた大人の方々はご存知だとは思いますが…。
 いや、特に意味はないですよ?

 ※秘宝図鑑は後でまとめて出します。異能者図鑑も後でまとめるかも…?

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