Fate/incident night   作:桜野 ヒロ

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ホントは主人公視点にしようかと思いましたがこれはこれでいいやと思いました。


Prolog Ⅱ

 ライダーを召喚して時間が少し経ち。

 私は、冷蔵庫にある液体(けつえき)の入った瓶を取り出してそれを飲み、リビングで大の字でソファに座り込む自身の契約者(サーヴァント)へと、視線を向けた。

 ……朱勾(あかまが)を彷彿とさせるその振る舞いに若干な苛立ちを感じながら、それを抑えて彼に声を掛けた。

 

「外に出るわよ、ライダー」

 

「んェ? 

 召喚したばっかで疲れたろうに……休める時には休むもんだぜお嬢ちゃん」

 

「休憩ね……悪いけど、それよりも貴方の力を測る必要があるの。

 早く立ちなさいライダー、その槍は玩具だと言うのなら、大人しく寝ておけば言いけれど?」

 

 強い魔力の流動を感じるその槍を見ながら、煽るように言う。

 ……いや、煽るの方が正しいだろう。

 彼が大の字になりながらも、傍らに置いているソレは間違いなくサーヴァントの切り札である宝具だ。

 彼らを象徴する其れを馬鹿にすることは彼らの生き様を馬鹿にするも同義。

 ならばこそ、

 

「言うじゃねぇの、嬢ちゃん。

 ───────そこまで言うならいいぜ、途中で魔力切れで撤退なんて無様は晒すなよ?」

 

 こうして、彼等も動こうとする。

 近くに掛けていた臙脂色のコートを羽織り、黒の手袋を付けて私はライダーを連れて外へと赴く。

 サーヴァントかはどうかは不明ではあるが、それに見合うであろう存在がいる。

 今朝の吸血鬼事件、その犯人だ。

 ソイツは非常にわかりやすく、和歌山駅周辺で獲物を狙い血を啜っている。

 

 ……ここ五日間全て、似たような事件があったのだから間違いは無い。

 そいつは今日も、和歌山駅にいるハズ。

 

 外に出て、私は和歌山駅まで足を運んだ。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 和歌山駅周辺に到着し、直ぐに周囲に視線を配る。

 なんてことの無い、くたびれた姿のサラリーマン達が家へと足を運ぶ。

 若い男女が極小数ではあるがその中に混じって別の場所へと歩いている。

 それだけだった。

 欠伸が出そうなくらい平和な光景が私の目の前に映し出されていた。

 だが、

 

『嬢ちゃん、いるぜ』

 

 ライダーは違った。

 彼は、和歌山駅付近の不動産関連の会社のビルの屋上に顔を向けていた。

 霊体化させてはいるが、今にも解くのではないかと思わせる程の殺意が仮面の下から漏れ出ていた。

 その闘志はまさに幾重の戦場を超えた英雄そのものだった。

 そしてビルの屋上、そこにはスーツを着ており髪を七三分けにした眼鏡をかけた男がいた。

 どこにでもいる普通のサラリーマンのような男のその姿に肩透かしを食らった。

 

「人は見かけによらず……とは言うけど流石に大それた驚異ではないと感じてしまうわね」

 

『あ、そうか嬢ちゃんは霊体化したサーヴァントが見れてねぇのな』

 

 ……サーヴァント? 

 そんな疑問が浮かんだ直後、男のいるビルの屋上に閃光が奔る。

 その光は日光そのもの。

『太陽』のルーンであると確信した私が顔を上げた次の瞬間には、メガネの男は灰へと姿を変えていた。

 あの男はやはり死徒、そしてあの『太陽』のルーンを使ったのは恐らくはライダーの言う───────

 

『悪い、ちと失礼』

 

「キャッ───────!?」

 

 敵はキャスターなのか、そんなことを考えていた私をライダーが突然と脇腹に抱えて跳躍した。

 敵のいるビルへと着くと彼は直ぐに私を離し、再度

 

「ワリーな」

 

 短く、そして雑に謝るのだった。

 彼への怒りを抑え、真正面を見つめる。

 そこには赤い槍を携えた幼さを残す少年が、足元にある灰を見つめていたのだった。

 

「コイツは……無関係の人を殺した。

 だから、殺したんだ」

 

 ポツリと、淡々とつぶやく少年。

 ……気のせいか、槍の形はライダーのと酷似していた。

 

「多少は強くなれるかな……なんて思ったけれど。

 実際はなんの経験値にもならない、取るに足らない雑魚だったよ」

 

 言いながら、彼が槍を構え私たちへと視線を向けた。

 ───────視線に込められた殺意を前に、思わず息を呑んでしまう。

 ライダーも迫力が凄まじいものだったが、それすらも容易に超えてしまった。

 だが、ライダーは気負る事無く少年に応じて槍を構えた。

 さりげなく私の前へ立ち、守るように。

 ライダーの槍を初めて認識したのか、少年が眉間に皺を寄せ舌打ちをした。

 

「その槍……なんで持ってるの?」

 

「さぁな、オレが聞きたいくらいさ。

 ところで……テメェから血の匂いがするが人を殺したのか?」

 

 飄々と答えたライダーは一転して、どこか静かな怒りを感じさせながら少年に訊ねた。

 ライダーの問いに少年はあっけらかんとした様子を見せながら頷いたのだった。

 

「あぁ、僕は自分のマスターを殺した」

 

「バーサーカーか? 

 とてもじゃねぇがマトモな理性はしてなさそうだな」

 

「いや、ランサーだ。

 ……とてもいい女性だった、好きだった。

 ───────だから殺したんだ。そうすれば、僕は()を越えれると思ったから」

 

 その言葉には、切実さがあった。

 同時に、やはり狂気もあった。

 そしてその言葉を聞いたライダーからは怒りが溢れていた───────

 

「誰を超えるか走らねぇが、女を殺した時点でテメェはソイツを越えられねぇよ!!」

 

 言葉と共に、ライダーが疾駆する。

 十メートルにも満たなかった二人の間合いは一瞬で無くなり、深紅の槍二つが衝突し火花を散らし合う。

 ライダーの言葉を聞いてか、少年……ランサーのサーヴァントはさらに深く眉間に皺を寄せ初太刀の力押しを制した。

 その幼い体格とは裏腹に、ライダーが力負けし後方へと弾き飛ばされる。

 彼とて舐めていたのでは無いだろう。

 マスターを殺めたと聞いた時から、ライダーは明らかに怒りで燃え上がっていたのだから。

 そんな状態で、子供だからと加減する程お人好しでは無いだろう。

 

 故に、今のは純粋な力負けなのは明白。

 現時点で勝ち目は薄いものだろうが……あんな見栄を張って見せたライダーだ。

 なにか奥の手……ではないが搦手があるのだろう。

 私はそう信じ、ライダーに声を掛ける。

 

「ライダー」

 

「任せな嬢ちゃん……勝負はこっからさ!!」

 

 言いながら、彼が指を鳴らす。

 刹那、彼の胸当てからルーン文字の刻まれた石が数個落ち、肥大化し密着し、鳥の形となった。

 人造の使い魔……と言ったところだろうか。

 彼はその鳥に、「行け」と短く指示を出すと鳥は勢いよくランサーに向かって突進する。

 

「こんなの、子供騙しだ」

 

 言いながら、ランサーは目前に迫る取りに向かって……ではなく自身の周辺に文字が刻まれた石を投げる。

 そして、石が反応して結界を作りランサーの周囲を守る障壁となった。

 だが、突進してくる石鳥は身体から強力な光を発しながら自壊した。

 その光を至近距離で食らったランサーは思わず数歩たじろぎ、目を手で覆った。

 

「クソッ……姑息な手を……!!」

 

「へ、知らねぇもの食らうのは慣れっこと思ったけど違う感じかい? 

 師匠に教えてくれ無かったモンで殺されたんだもんな」

 

 ライダーの言葉に、ランサーがピクリと身体を震わせる。

 ……どうやら、ライダーはランサーの正体に心当たりがあるらしい。

 ランサーも悟ったからこそ動揺が身体に出たのだろう。

 

「……まだ二度しかやり合ってないのに僕の真名に察しがついたの?」

 

「おうとも。なんせお前の父ちゃんとは生前知り合ったしな……なんだ、よく見りゃ顔も瓜二つじゃねぇの」

 

「ならやっぱり……あなたも正体が絞れたね。

 だろう、フェルディア」

 

 フェルディア。

 ケルト神話に出てくるアイルランドの光の御子と呼ばれる大英雄クーフーリンの旧友。

 そして、その親友と殺し合いの果てに殺された。

 そんな男が、あの陽気な男なのだとしたら? 

 あのランサーの正体も大方の予想が着く。

 ランサーの言葉に、ライダーは突如として槍に魔力を込めた。

 

「そう思うなら、試すか? 

 この朱槍の刺し味を───────!!」

 

「宝具……!? まだ序盤だって言うのに何を───────」

 

 言いかけて、私はふと思った。

 フェルディアという男が持っている槍は恐らくゲイ・ボルクだろう。

 周囲には自身らの戦闘を監視するものはいない。

 口封じも兼ねて、ここで全力で殺しに掛かるのは好都合ではある。

 止めること無く、私は彼が宝具を発動させるのを待った。

 

「防ぐに決まってる───────!!」

 

 だが、向こうも待つほど愚かではなかった。

 宝具を撃たせまいとライダーに急接近し、心臓目掛け、槍が空を切る。

 

「待てよ、まだまだこっからだ」

 

 余裕綽々とした様子でライダーは足で二回、床をノックする。

 刹那、自壊した石鳥に刻まれたルーン文字が煌めきそこから鎖のような魔力の光が現れランサーの腕と足に絡みついた。

 ランサーが驚きと、冷や汗を顔に浮かべながらライダーを睨んだ。

 

「成程、床に散らした石の魔力を感知されないように……!!」

 

「悪いな、早速だがその命を貰うぜ……!!」

 

 後ろへ跳び、ライダーが紅の死線の名を叫ぶ───────!! 

 

■穿つ(ゲイ・ボルク)死翔の槍(デジェネラシーズ)───────!!」

 

 名とともに放たれるその死線は、高速を纏いランサーの心臓に向かって放たれた。

 迫る、迫る、迫る。

 その槍は、死を纏い光線となりながら。

 心臓を食い破らんと、夜空を駆け抜け少年の胸へと迫る。

 ライダーの戦巧者ぶりに一先ずの決着を見届ける。

 安堵と期待。

 そう思っていた私を嗤うかのように、薄らと銃声が聞こえライダーの槍を弾いた。

 

「───────誰だっ!?」

 

 ライダーが弾丸が飛んできた方向を睨む。

 ……周囲のビルには人影はない。

 私は、直ぐに遮蔽物になるであろう屋上への入口の扉へと走る。

 だが、遅かった。

 ───────腹部に、鋭い痛みが奔る。

 

「っ……!!」

 

 致命傷では無い、それが不幸中の幸い。

 SR(スナイパーライフル)? 

 傭兵か、しかしなぜランサーを守るように? 

 ……さては、既に新しいマスターを作っていたのだろうか。

 いや、ただのマスターがサーヴァントの宝具を弾くなんて芸当は出来ないだろう。

 そして、ライダーの口ぶりからしてランサーが自身のマスターを手にかけたのは少し前なのだろう。

 つまり───────

 

「同盟をしていた……ってとこかしら」

 

「あぁ……そういえばサクラコはそんな契約をしていたな。

 だが、契約者の彼女は亡くなったのに護ってくれるなんていい人たちだな」

 

 ランサーはライダーを一瞥し───────彼に背を向けた。

 

「どういうことだランサー?」

 

「僕は君に事実上、敗北した。

 これ以上、続けたとしても父を……クーフーリンを超えることなんて出来ない」

 

 槍の柄を握る力は強く、それは敗北した事に対する苛立ちであるのは容易に見抜けた。

 

「また会おうよフェルディア、次はアンタを倒すから」

 

 ライダーの返事を聞かずに、彼はその場から消えた。

 ランサーが姿を消したのを確認したライダーは、直ぐに私の方へと駆け付けた。

 

「大丈夫か、腹撃たれたろ!?」

 

「ええ、致命傷では無いわ。

 多分……さっきのは警告のつもりで狙撃してきたんだと思うわ」

 

「なんでそう思ったんだ?」

 

「普通、お腹に当てれるなら頭を狙うでしょう? 

 聖杯戦争なら、そっちの方が手っ取り早いし……それにしても」

 

 舐められたものだ、と出そうになった言葉を飲み込む。

 ここで怒りを露にしても意味が無い。

 顔は知らないが確実に突き止めて、次は倍返ししてやる。

 そんな意思を秘め、私は自身の血が出ている腹部に治癒魔術を施し、ライダーに視線を向けた。

 

「ごめんなさい、侮られた無様を晒すなんて」

 

「いいや、ありゃ見えねぇ敵がやり手なだけさ。

 しかし……宝具だって言うのに弾かれたのはビビった。

 アレは多少の魔力は感じられたが……やはり嬢ちゃんの言う通り凄腕のスナイパーなんだろうな」

 

「……気になってはいたけど。

 その嬢ちゃんって呼び方辞めてくれない? 

『夜空』でいいわよ、私としてもサーヴァントとは仲良く付き合いたいもの」

 

 私の言葉に、ライダーはきょとんとした様子を見せたが直ぐに首を横に振った。

 

「そうだな、よろしくなヨゾラ!!」

 

 ……少し発音がおかしいのは、区別したつもりなのだろう。

 何はともあれ、私とライダーは二人で帰路に着くことにした───────

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 帰り道、何事なく帰っていたつもりだった。

 ……ある光景を見てしまうまでは。

 

「なんでアイツ……ったくもう!!」

 

 その光景とは、嫌いな男である朱勾が……達哉が死徒に襲われて防戦しながら逃げているというものだった。

 父から譲り受けたと自慢していた青色の槍が、警官の制服を着た死徒相手に何度も向かい、達哉自身も『火』のルーンで対抗してそして『風』のルーンで相手の距離を空けながら粘り強い防戦を見せていた。

 私は、霊体化しているライダーに余力はあるか訊ねた。

 

「ライダー、まだやれる!?」

 

『任せろ、ヨユーだ』

 

 心配する必要などないのが分かってしまうほど明るいトーンで答えるライダーに若干、彼をまたも彷彿とさせながら私は彼を援護するべく、走って向かった。

 距離は一キロ程だろうか、それならライダーに連れてもらえばいいか。

 そんなことを考えながらも、彼なら私達が着くまでなら余裕で耐えれるだろうと結論を出す。

 ……彼は嫌いだ、魔術師のクセに明るい性格が気に食わないし、家族を大事に大事にを言い続ける姿なんて殺したくなる。

 

「───────けど、アイツの笑う顔は嫌いじゃない」

 

『あ? なんだ嬢ちゃん、さっき遠くから見えた男に惚れてんのか?』

 

 しまった。

 心の声が、一番聞かれたくない部分が達哉に似てる男に聞かれた。

 ……あの時(……)の事を思い出して、ついつい漏れてしまった。

 

「いいでしょ、そんなことは!! 

 ほら、さっさと行く!!」

 

『へいへーい……家に帰ったらたっぷりと弄るかぁ』

 

 殺してやる。

 静かな怒りを胸に、私はライダーと共に達哉の元へと向かうのだった。

 

 

 ━━━━━━━━━━━━━━━

 

 

 少し走り、達哉の姿が近付く。

 周囲を見渡すと、彼の父であり現朱勾の当主である男、朱勾龍大海(あかまがたつおみ)も見えた。

 彼が達哉を家であろう館へと指を差して避難するように指示を出したのだろうか、多少渋った様子を見せながらも達哉は屋敷の中に入っていった。

 龍大海は以前に亜種聖杯戦争に参加した事が有るという噂がある。

 それに、達哉に戦い方のあれこれを教えているのも彼本人だ、少なくとも先程まで防戦で耐えていた達哉よりはマシに戦えるのだろう。

 

「ライダー、とりあえずはあの死徒を殺して」

 

 ここで龍大海を助けとば朱勾に同盟関係とかを持ちかけやすくなる。

 ……まぁ、それを呑むかはあの家次第ではあるが。

 あの家は三流もいいとこの魔術師被れ。

 令呪すらあるか怪しいが……だが、なにも聖杯戦争だけの同盟でもない。

 この土地に巣食う、魔術師殺しの元魔術師の家系である『霧島家』を掃討する時に力を借りるだったり、他にもある。

 そんな意図、ライダーは知る由もないから仕方ないとは仕方ないが。

 

 ───────ライダーは、まさかの龍大海に対して矛先を向けていた。

 

 いつの間にか、私の傍を離れて。

 少しびっくりはした。

 けれど、ライダーからしたらあの男はマスター候補。

 それは、あの男の魔力で分かったのだろう。

 彼は死徒を屋敷へと入らせて、龍大海に襲いかかった。

 

「ライダー、待ってその男は殺したら駄目よ!!」

 

「いいや、殺す。

 此奴はここで殺さなきゃならねぇ」

 

「な、お、お前───────!?」

 

 龍大海は目を丸め、驚いた様子を見せる。

 

 しかしながら、直ぐにルーンを発動させて結界を作った。

 更には指を鳴らして、道路に仕込んでいたのだろう『炎』のルーンを起動させてライダーに戦闘を仕掛けた。

 ライダーには効かないが……炎は目くらましの代わりに起動させたのだろう。

 

「チッ、ウザってぇ!!」

 

 言いながら槍で炎を切り払うライダーに次に襲いかかるのは『旋風』だった。

 距離を取りながら、龍大海は炎で視界が遮られたのを利用したのだろう。

 ライダーはその旋風に少し龍大海との距離が離された。

 先程、達哉が死徒に見せたようにやったことと同じ事だ。

 それよりも、魔術の質はこちらの方が圧倒的に上でもある。

 しかし───────

 

「悪ぃが、テメェの手の内は大体把握済みだ」

 

 ライダーにそれは無効だった。

 飛ばされながらもライダーは槍を投げて、龍大海の肩を貫いた。

 

「悪いな、お前は災厄だ。

 本当なら生かしてやりてぇが……ここいらで消しとかねぇとマズイ事になるんだわ」

 

 もしかして二人は亜種聖杯戦争での主従だったのだろうか? 

 ライダーの口ぶりから生まれた、そんな疑問と共に彼が、龍大海へと近付く。

 令呪で止める? 

 けれども、彼の言葉が気に掛る。

 ライダーは言った、龍大海を災厄だと。

 彼とは数時間の仲だが、それでも人柄は概ね掴めているつもりだ。

 なんの確証もなく彼は赤の他人の事を厄災などとは言わない。

 だが……その理由を知りたい。

 この男───────霧島龍大海が災厄たる理由と、ライダーが彼を憎む理由を。

 

「待ちなさいライダー、何故そこの男が災厄なのかを答えなさい。

 でなければ……令呪を使ってでも止めるわ」

 

「…………仕方ねぇか。

 コイツは───────ッ!?」

 

 ───────膨大な魔力の渦が朱勾の屋敷を包み込み、青白い光が発せられる。

 それは、サーヴァントが呼び出された証拠。

 まさか達哉を家に入れたのは、サーヴァントを呼び出させる為だったということか!! 

 そうとなればマズイ……!! 

 私はライダーに直ぐに、警戒するべく声を掛けようと───────

 

「へっ、なんだ早速サーヴァントがいたなぁ!!」

 

 したが、遅かった。

 屋敷から逃げる死徒。

 腕は欠損していて、彼の顔は焦燥に満ちていた。

 そして私の耳に響く、凛々しくも荒々しい女性の声。

 上から聞こえ、顔を上げると───────

 

「ぁ───────」

 

 思わず、声が漏れてしまうくらいに、可憐な顔をした少女が空を舞っていた。

 瞳には眼帯を付けており、甘栗色の、髪の毛は後ろに纏めていた。

 その小さな体躯には、桜の絵が彩られた着物を纏っていた。

 腰には数本の刀が差されているのが、彼女がとても好戦的かつ攻撃的な人物なのを現していた。

 腰の数本から、一つだけ鞘のみのモノがあり彼女の手を見ると───────その手には刀が握られていた。

 その刀を、ライダーに目掛けて放り投げる。

 ライダーはやりで刀を弾き飛ばしたが───────突然として、彼を包み込む程の爆発が起きた。

 ライダーはそのまま吹き飛ばされ、壁へと衝突した。

 

「チィッ!? ……逃げろ、ヨゾラ!!」

 

「あ? 逃がすわけねぇだろ!!」

 

 刹那、同時に余った鞘を私に向けて投げ飛ばした。

 その鞘は目に止まらぬ速さで空を駆け、私の腹部を突いた。

 それも、先程撃たれた場所をドンピシャに。

 収まりかけていた痛みがより一層強まり、私はその場にうずくまった。

 

「クッ……あぅ……っ……!!」

 

 内側から針で刺されるような痛みが襲い、どうにかして動きたいと言うのに身体が言う事を聞いてくれない。

 そして、そんな私の前に獲物を見つけた猛獣のような瞳で私を見る少女が空から降り立つ。

 腰から刀を抜き、私へと刃を向けた。

 

 至近距離で見るその姿はやはり可憐で、美しかった。

 

 ───────嗚呼、なんて、魅力的なの

 

 胸中に抱いた思いは固唾と共に飲み込み。

 私は───────

 

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