2月に入ったある日、スペシャルオレンジは姉であるメロンスカイとキングマンゴーと共にタクシーへと乗っていた。その場には青い顔で足をガタガタと震われるキングマンゴーの姿があり、メロンスカイとスペシャルオレンジも同じく暗い表情でじっとしていたのだ。
「…」
「ねぇ、病院までまだなの?」
「今トレセン出たばかりだからまだに決まってるでしょ。」
「運転手さん!もっと飛ばせない?」
「…出来ません。」
「…早く着いてよぅ。でないと…ママが…ママが!!」
「落ち着きなさいマンゴー!…ワタシとオレンジだって不安なのは一緒よ。」
「…」
話は少し前に戻る。
ーーー
足が完全に回復したスペシャルオレンジはハードトレーニングへの日々へと戻っていた。
「…ふぅ。どうでしたかトレーナー。」
「悪くないタイムだ。まだ体力的にも余裕が見えるな…これならダービーでも戦えそうだ。」
「本当ですか!?これってブルボンさんのトレーニングのお陰?でも…またあのトレーニングはちょっと…うーん…」
「ぼーっとするな。もう1本、行ってこい。」
「はい!」
「「すみませーん!!」」
コースを走ろうとした直前、スペシャルオレンジの耳に2つの声が入ってきた。振り向くと鹿毛と芦毛のウマ娘がその場で息を切らせていたのだ。
「マンゴー姉とメロン姉?どうしたの?」
キングマンゴーがそのままの状態でスペシャルオレンジの肩を掴み、顔を向けてくる。
「オレンジ、すぐに制服に着替えろ!それで校門に来てくれ!」
「え?」
「お前のトレーナーにはメロン姉が事情を伝えているから…早くしてくれ!」
「わ、分かった。」
スペシャルオレンジはキングマンゴーの指示に従い、急いで着替え…校門へと向かう。すると、1台のタクシーが通り過ぎる…中には見覚えのある3人のウマ娘。そして、続いてキングマンゴーとメロンスカイの乗ったタクシーが自身の目の前へと止まり、スペシャルオレンジはそのまま乗ったのだ。
「ねぇ、メロン姉。前のタクシーに乗ってるのってオリーブ姉たちだよね?何かあったの?」
「母さんが病院に運ばれた。」
「……え?」
ーーー
タクシーは病院へと着く。扉が開くと同時にキングマンゴーはタクシーから飛び出した。
「着いた!メロン姉、私は先にいくから!」
不調により満足に走れない状態のキングマンゴーだが…素早い動きで病院の中へと消えていった。
「オレンジ、あんたはマンゴーと一緒にいて。それで、病室が分かったらワタシに教えて。」
「う、うん…」
スペシャルオレンジもキングマンゴーに続いて病院中へと入る。するとユーズトップガンとキングマンゴーの2人が口を縛られ、オリーブテイオーにより俵担ぎされた姿があったのだ。
「オリーブ姉!?」
「オレンジ…ここは病院だよ。静かにしないと…こうするよ?」
「騒がないから…それで病室は?メロン姉に伝えないと…」
「グレープと一緒に伝えたから安心して。」
「ん!んん!!」
「んんん!」
「暴れるなバカ2人…行くよオレンジ。」
そして、そのままの状態で病室へと向かったのだ。
………
扉を開く…そこには長女のコンドルバナナとベッドに眠る『果実姉妹』たちの母であるラウンドピーチの2人の姿がみえた。するとコンドルバナナは困惑したような顔を見せた。
「あれ?何でお前らここにいるの?」
「母さんが病院に運ばれたってベリーから聞いたからだよ。事故か何かにあったの?」
「…あちゃー、ベリーにだけ教えたのがこうも裏目に出るか…別にケガとか病気ではないぞ。」
「「…はい?」」
オリーブテイオーとスペシャルオレンジ…さらに口を防がれたユーズトップガンとキングマンゴーも首を傾げたのだ。それと同時に部屋へと赤ちゃんを抱いた看護師が入ってきた。
………
「…おめでた…だったのね。はぁ…安心したわ。」
「寧ろ私とベリー以外知らなかったのが衝撃的なのだが?」
「ユズは帰ってないから知らないよ~。というかオレンジちゃんは帰っていたよね?」
「いや、その時は父さんと旅行に行ってたみたいで会えなくて…」
「ありゃりゃ…タイミングが悪かったね。」
「パパもそんな時期に旅行をするなよな…」
メロンスカイとグレープスカイも合流し、コンドルバナナから事情を聞くと、その場で脱力する果実姉妹たち。眠るラウンドピーチの隣には栗毛のウマ娘の赤ちゃんが眠っていた。すると、扉から誰かが入ってきた…グラスベリーだった。
「あ…もう生まれてたんだ。というかお姉ちゃんたち来たんだ。」
「「ベリィィィ!!」」
「わっ…ユズ姉ちゃん?マンゴー姉ちゃん?」
「「あmえnせiで#なhdはが!」」
「…ちょっと、何言ってるか分からない。」
「病室で騒ぐな!」
「痛っ!」ポカッ
「あう!」ポカッ
そのままグラスベリーへと迫ったユーズトップガンとキングマンゴーだったが…コンドルバナナによるゲンコツで沈み、オリーブテイオーにより部屋の端へと投げられる。
「Zzz…」
「それにしても母さんの顔…久しぶりにみたなぁ。」
「そういえば今日ってママの誕生日だったよね。これからはこの娘も一緒に祝うことになるね。」
「言われてみればそうだな…そうだ!お前らに…ハッピーバレンタインだ。」
そう言うとコンドルバナナは全員に小箱を渡した。中を開けると高級そうな1口サイズのチョコが入っており…受け取った全員がその場で完食した。
「美味しい~♪」
「ありがとうバナナ姉。」
「あぁ、それ食ってこれからも頑張れよ。3倍…合計21倍のお返しを期待しているぞ。」
「そんなに食べれるの?」
「まぁ、チョコでも構わないが…私としては全員に私の分も走って欲しいと思っている。それが私の願いだ。」
「バナナ姉…」
「オレンジ…今年、クラシックのお前は特に応援してるから。」
「ありがとう!メロン姉とマンゴー姉に続いてダービーを勝つよ!!」
「んじゃ、食ったならベリー以外はさっさと帰れ。母さんが起きちゃう。」
「バナナ姉!?」
そのまま、6人は病室から追い出されて…
「お前らが来てたことはちゃんと伝えておくから。」
「またねお姉ちゃんたち…次は学園で会おうね。」
そして、グラスベリーにより扉が閉じられた。
ーーー
「ってことがあったんだよね。」
「…オレンジのお母さんが無事で良かったよ。」
数日後が経ち場所は東京レース場、スペシャルオレンジは右肩に固定バンドを着けたシュヴァルグランと共にレースを見にきていた。今回もキタサンブラックの応援である。
「シュヴァルちゃん、ケガの治りは順調?」
「…来月には治ると思うけど…皐月賞には戦績的に間に合わないかな。治ったらダービーを目指すことにするよ。」
「そっか…」
「ほらほら…もうすぐキタサンが走るよ。…そういえばダイヤとクラウンはいないんだね。」
「うん…サトノ家のウマ娘も出走してるから今回は学園から映像で見るみたい。」
「そうなんだ…始まったよ。」
ゲートが開く。キタサンブラックはいいスタートをきり、前から2番手のポジションについた。そして、2番手をキープし続けレースはいよいよ終盤に入る。
『先頭はマイネルポルトゥス!
マイネルポルトゥスが10バ身以上の差を広げたまま最終コーナーを駆けていきます!』
「キタちゃん…届くかな?」
「…心配ないよ。」
『マイネルポルトゥス先頭だが…徐々に差を詰められきたか。
2番手争いにグラムザフラッグとキタサンブラック…ここでキタサンブラックだ!
キタサンブラックが抜け出した!』
「はあぁぁぁ!!」
キタサンブラックが仕掛けて先頭に立つと、そのまま後続を突き離しにかかる。そして…
『キタサンブラックだ!
3バ身差でキタサンブラックがゴールイン!
完勝です!
2番争いにグラムザフラッグかサトノラーゼンか!』
「や…やったーー!!」
パチパチパチパチ
勝利によりガッツポーズを取るキタサンブラック。観客席から惜しみ無い拍手が送られた。
「キタちゃん勝ったね!」
「…うん。だけど皐月賞に出るためにはもう1回くらいは必要かな。僕も頑張らないとな…」
「その前にケガを治そうね。あ!そういえばヴィブロスちゃんって受験結果はどうだった?」
「合格だったよ。あと、オレンジに会いたがっていた。」
「本当!?その時は私の妹も一緒に連れてくるね。紹介するよ!」
「ありがとう。えーと、この後だけど…」
「銭湯行こっか!」
「…え?うん…?」
その後、シュヴァルグランの背中を流すスペシャルオレンジの姿があった。