食堂にて今日はスペシャルオレンジとシュヴァルグランの2人でご飯を食べていた。メニューはサバの味噌煮…スペシャルオレンジもシュヴァルグランも器用に骨を避け、箸で掴んだ身を口へと運ぶ。
「ん~。私ってサバ味噌好きなんだ。昔見ていたスーパーヒーローの主人公が注文して食べてたの印象的でさ~。」
「賄いのやつかな?僕もよく見てたよ。」
「本当!?私、あの主人公役の人がカッコよくて好きだったんだよね。必殺技とか…ばあちゃん子なところとか…後は普通に顔がイケメンで…」
「…確かに演じてた人はドラマとかCMによく出てたよね。今は見なくなっちゃったけど…」
「言われてみればそうね。けど、サバ味噌みたらどうしても思い出しちゃうんだよね~」
「サバ味噌か…僕が思い出すの釣り堀でのことかな。…サバ味噌というよりはサバのことだけど…大きいのが釣れて…嬉しくて。」
「釣り堀…、私は釣りすらしたこと無いけど…ちょっと興味があるかな。」
「本当!?…その…僕、釣りは得意だから……僕で良ければ教えるけど…」
「いいの?」
「オレンジの予定が合えば…」
「分かった、後で予定確認して空いてる日を送るね。…色々教えてねシュヴァルちゃん?」
「もちろんだよ!」
シュヴァルグランとスペシャルオレンジはデートの約束をしたのだ。
ーーー
デートの日となった早朝、栗東寮の出口にてシュヴァルグランとスペシャルオレンジは合流し、釣り堀まで歩き始める。
「うーん、長袖のシャツと日焼け止めだけでいいって言われたけど…本当に良かったの?シュヴァルちゃん、大荷物じゃない。」
「君に釣りの楽しみを…知って欲しくてね。」
「そっか…ますます楽しみ♪あっ!お昼は私が作ってきたわよ…釣れた魚を食べることを考えて少なめにはしてるけど。」
「本当!?僕はそれが…楽しみだな…」
「大袈裟よ。そういえば、ブルボンさんが…」
………
「それで何とかスペシャルウィークさんのぱかプチが取れて……ん?ここでいいのかな?えーと、木の島?みたいなのが浮いているね。」
「あれはイカダだよ。そのまま僕に付いてきて。…その……2名で予約しました……」
話をしている内に目的地へと着いた2人。シュヴァルグランが手続きを済ませ、スペシャルオレンジも説明を聞いた後、2人はロの形をしたイカダへと移動した。
「…僕たちの席は…ここだね。揺れとかで気分が悪くなったら言ってね。」
「シュヴァルちゃん、まさか私の分の釣竿も持ち歩いていたなんて…」
「…2本同時に…使うこともあるから。…後はエサ付けるだけ。」
「あ!私、やってみたい!」
「…分かった。じゃあ、このダンゴを…丸く整えて…あ!」こねこね
「うんうん。」こねこね
「…触るのに抵抗は無かったか…良かった。次はこうやって…イケスにいれる。」
「おぉ!やってみる!」
エサを付けたスペシャルオレンジはシュヴァルグランの真似をしてイケスへと糸を落とす。
「…上手だよオレンジ。…後は…待つだけ。」
「思っていたより難しくは無くて良かったよ…」
「…僕も…楽しんでもらえているようで…良かった。」
「今さらだけど…どうして私を誘ったの?」
「…えーと、その…あ!ちょっと…じっとして?」
「?」
シュヴァルグランは持っていた帽子をスペシャルオレンジへと被せた。
「シュヴァルちゃん?」
「その…塗ってるといえ……待ってる間に日焼けするかもって…」
「ありがとう。」
「ー!…君はいつでも…僕に勇気をくれるよね。」
「へ?」
「覚えてる?教室での自己紹介…」
………
『スペシャルオレンジです。目標は『スペシャルウィーク』さんみたいに日本一の…偉大なウマ娘になること!目標はダービーとジャパンCで勝つことです!』
『そこは『キングマンゴー』さんじゃないの?』
『いやいやいや!あれはマイラーの皮を被った別次元のウマ娘だから…』
『ジャパンCは『果実姉妹』で勝ってるのは彼女だけだから…いい目標じゃない!…そもそも、私はそこまで言える自信無いし。』
『………!偉大なウマ娘、か。』
………
「僕も…英雄『ディープインパクト』に勝った……『ハーツクライ』みたいな…"偉大なウマ娘"になりたい!」
「…ハーツクライ、か。…ごめんシュヴァルちゃん。彼女のことを悪く言うつもりは無いのだけど…私にとっての彼女たちはトラウマなの。」
「ディープインパクトに勝ったから…」
「違う!有マ記念じゃないの…『死のダービー』、覚えている?」
「大王『キングカメハメハ』を筆頭に11人のウマ娘が当時のレコードタイムに到達、その後出走していた7人がケガをして、その内4人がレースから引退した。故に『死のダービー』……だったよね?」
「…引退した内の1人が私の姉『コンドルバナナ』。」
「ー!」
「その時ばかりは…走るのが嫌いになったよ。今もドリームトロフィーで活躍しているキングカメハメハ、バナナ姉をゴール前で差しきって2着に入ったハーツクライを始め、『ハイヤーゲーム』、『ダイワメジャー』、『スズカマンボ』、『コスモバルク』と…後々も活躍したウマ娘たちが憎く感じた。」
話を聞いたシュヴァルグランは帽子と共に顔を伏せた。
「オレンジ…」
「…ごめんね、シュヴァルちゃん。結局、悪く言っちゃっているな…シュヴァルちゃんの憧れてるウマ娘なのに…言っておくけどバナナ姉本人は自慢話にしているよ。凄い同期と走ったって!」
「オレンジは…コンドルバナナさんが大好きなんだね。」
「…うん。今でこそ『果実姉妹』、なんて呼ばれているけど…みんな、ケガで学園を去ったバナナ姉の分も走ろうと頑張ってた部分はあると思う。とにかくずっと走り続けた『オリーブテイオー』、有マ記念でバナナ姉の同期全員をねじ伏せた『ユーズトップガン』、バナナ姉の勝てなかったダービーを勝った『メロンスカイ』、何か化け物になった『キングマンゴー』、そして…私たちの入学直前にラストランの高松宮記念を勝った『グレープスカイ』。流石に私がこんな凄い姉たちに並べるとは思っていないけど…」
「…。僕の姉さん…『ヴィルシーナ』なんだ。」
「ー!ヴィクトリアマイルを連覇した…」
「僕にも凄い姉がいる。…今度の宝塚記念に出走予定なんだ。去年…君のお姉さん…キングマンゴーが勝ったレース。オレンジ、僕と一緒に……!」
チャポン
「あっ!かかったみたい!」
「…。そのまま少し待って。」
「う、うん…」
「…よし。リールを巻いて。」
「こうかな?」
シュヴァルグランの指示に従い、リールを巻き始めるスペシャルオレンジ。シュヴァルグランがタモを構える。
「見えた!これって…鯛?」
「うん、マダイ。…結構大きいのが釣れたね。」
「記念に写真撮ろっか♪」
「…いいよ。」
シュヴァルグランとスペシャルオレンジは並んで釣ったマダイと共に写真を撮る。そして、シュヴァルグランは手際よく、マダイに付いた釣り針をペンチで外した。
「これって食べていいやつ?」
「買取りにするから…大丈夫だよ。」
「やったー!私も半分出すよ!」
「オレンジが…楽しめたなら…僕も嬉しいよ。…初めての釣りで…良いのが釣れて……良かった。君の本心に少し触れることもできた。」ボソッ
「シュヴァルちゃん、厨房ってある?早速お刺身で食べようよ!」
「あるにはあるけど…オレンジ、捌けるの?」
「任せて任せて!ユズ姉をよく3枚下ろしにしてるから。」
「………」
「いや、流石に冗談だからね?笑うところだからね?」
「…だ、だよね。……オレンジ!」
「どうしたの?」
「今日はその…僕のわがままに…付き合ってくれて……あ、ありがとう!」
「私こそありがとうだよ。とりあえず、お刺身にして食べよっか♪」
その後、2人はマダイの刺身とスペシャルオレンジが持ってきたおにぎり、ポテトサラダを食べる。そして、口をあーんと開けてスペシャルオレンジからの刺身を待つシュヴァルグランの写真がキタサンブラックたちのグループLANEへと送られ…シュヴァルグランがアタフタしたのは別のお話。