夏休みに入り…多くの生徒が合宿所へと集まっていた。
「『マーチ』!もっと、ペースを上げろ!後、2本だ!」
「はいっ!」
黒沼トレーナーがチーム所属のウマ娘に指示を送る。その間のスペシャルオレンジはいうと…
「フラワーちゃん、とりあえず100個握ったよ!」
「ではこちらにある400個と合わせてテーブルまで持っていってください。その後は空になっている食器を回収しもらって…そのまま洗っていただけますか?」
「分かった、いってくる!」
「ブルボンさんはそのまま塩おにぎりを作り続けてくださいね。」
「了解しました。」
調理場にてミホノブルボンと共にニシノフラワーのお手伝いをしていた。
ーーー
「はぁ…はぁ…何か…トレーニング以上に疲れた…」
「お疲れ様ですオレンジさん。こちら、フラワーさんから渡されました冷たい緑茶と寒天ゼリーです。」
「ありがとうございます…フラワーちゃんは?」ゴクゴク
「別のお手伝いに行っています。」
「まだ動けるんだ…凄い。ブルボンさん、私…ちゃんと役に立ってましたか?」
「何一つ問題ありませんでした、今日はこのまま休んでください…私はマスターの元に向かいます。」
「はい…お言葉に甘えさせてもらいます…」
ミホノブルボンは大量のタオルとスポーツドリンクを持ち、その場を後にする。スペシャルオレンジの目の前にはトレーニングに励むウマ娘たちの姿が映る。砂浜を走るウマ娘、大きなタイヤを引きずるウマ娘、背後から空き缶をカンカンと叩かれて泳ぐウマ娘…
「…これが合宿か…私も来年には…よし!」
スペシャルオレンジは立ち上がり…何処かへと向かう。
「…あれ?オレンジ?何でここに…」
「シュヴァル、そろそろ走ろうと思うけどいける?」
「分かったよ…『アヤデ』。」
ーーー
「お疲れ様ですブルボンさん!」
「オレンジさん、今日はもう休むようにと…そのクーラーボックスは?」
「キンキンに冷えたオレンジジュースです。後でみんなで飲みましょう!それでその…練習を見学してもいいですか?」
「…マスターに聞いてきますので少しお待ちください。」
クーラーボックスにお気に入りの缶ジュースを詰めたスペシャルオレンジはそのままチームの練習場へと着いた。そして、ミホノブルボンへと声をかけて、返事を待つ。数分後もミホノブルボンが戻ってきて…
「マスターより伝言です。『そんなに走りたければ明日、嫌ってほど走らせてやる。今日は休んで明日に備えろ。』とのことです。」
「そうですか…分かりました。じゃあ、これだけ置いていきますね。」
スペシャルオレンジは合宿所へと帰った。
ーーー
「そこだ、一気に仕掛けろ!」
「はいっ!!」ダッ
「…」
翌日、スペシャルオレンジはチームメイトの併走相手となっていた。黒沼トレーナーに言われた通りの走りをし…チームメイトにかわされた。
「はぁ…はぁ…」
「お疲れ様オレンジちゃん…大丈夫?」
「はい、大丈夫ですよマーチさん。」
『スマートマーチ』…現在、シニア級であり1勝クラスのウマ娘。先行~差しの脚質を得意としているのだが…ここ1年は勝利どころか掲示板にも入れていないため、次のレースに向けて調整をしていたのだ。
「…まだ未デビューでしょ?それなのにトレーナーの指定通りに動くって凄いよ…オレンジちゃん…」
「えへへ…ありがとうございます…」
「…私、次勝てなかったら引退なの。だから…後悔したくないんだ!」
「マーチさん…」
「そろそろ模擬レースに入ろうと思うけど…いけるかしら?」
「はい!よろしくお願いします!」
そして、スペシャルオレンジとスマートマーチは模擬レースを行い…スマートマーチが捉えて勝利した。結局、合宿でスペシャルオレンジが走ったのはその日が最初で最後だった。
ーーー
そして時は一気に流れ、8月に入り…チーム全員で札幌のレース場に来ていた。スマートマーチが出走するのだ。レースは既に終盤…
『先頭はバクシンパワーとマイネルゾンネ!
エターナルトルースは後退か、ハギノブシドウ、デスティニーシチー、スマートマーチ……ここで後方からツクバアズマオーが一気に上がってきた!
さらに後方からマイネルバランシン、カッパドキア、ライフトップガンも前へと迫る!
ツクバアズマオーだ!
ツクバアズマオーがゴールイン!!』
「はぁ…はぁ…」
結果は8着…完敗だった。スマートマーチはウイニングライブが終わった後…チームメイトたちと合流する。まずはミホノブルボンが口を開いた。
「ラストラン、お疲れ様でしたマーチさん。」
「…はい、全力を出せたと思っています。」
「マーチ…お前をまた勝たせるどころか…掲示板にすら…俺の力不足ですまない。」
「いえ!1度、勝利するが出来ました!…あなたでなければ、それも出来ませんでした。」
顔には出さないものの声を震わせる黒沼トレーナー…それに対してスマートマーチは笑顔を返した。さらにミホノブルボンが口を開く。
「マーチさん、あなたには2つの道を選択していただきます。このまま引退し学園を卒業するか、地方へと移籍し走り続けるか…どちらを選ばれますか?」
「…レースには満足しました。このまま引退します。」
「分かりました。では、後日に手続きを…」
「…待ってください!」
「オレンジちゃん?」
今まで黙ったままのスペシャルオレンジだが…ここで口を開いたのだ。
「オレンジさん…まさか止めるつもりですか?」
「違います!マーチさんのラストラン、カッコ良かったです!なので私…それに負けない走りをしたいと思いました!1日だけでしたけど…マーチさんと…合宿で一緒に走ったウマ娘として誇れるように…頑張ります!だから…その…お疲れ様でした!」
「オレンジちゃん…ありがとう。私からもいい?」
「はい!」
「オレンジジュースの差し入れ、ありがとう。…オレンジちゃんは絶対に私に以上に強くなれるよ。私、ずっと応援してるから。」
「マーチさん…ありがとうございます!」
「オレンジ、マーチが引退でチームから抜ける…つまり、これからの俺の担当はお前一人になるってことだ。デビューに備え、これまで以上にキツいトレーニングを行うつもりだが…覚悟はいいな?」
「はい!」
スペシャルオレンジは力強い返事をした。こうして、スペシャルオレンジはチームメイトの引退を見届けたのだ。翌日、合宿所…ではなく、トレセン学園の練習場…
「オレンジ!まだ仕掛けるタイミングじゃない!ペースを落とせ!」
「はい!」
「…やり直しだ。スタートまで戻ってこい。」
「すみません!また、よろしくお願いします!」
レースに向けてトレーニングを受けるスペシャルオレンジの姿があった。
ーーー
「荷物の片付け終わったよ…ブルボンさん、オレンジちゃんの調子はどう?」
「課題はまだたくさんありますが…近い内にデビューすると思われます。彼女も『果実姉妹』…素質は非常に高いので勝つのは時間の問題かと。」
「そっか…フフフ。合宿で一緒に走れて良かったよ。トレーナーにお願いしたかいがあったな…」
「…」
「ブルボンさん、今までありがとう。お姉ちゃんみたいな重賞ウマ娘どころか…1勝で終わっちゃったけど…本当に満足してるから。」
「マーチさん…」
「そういえば私のお姉ちゃんもオレンジちゃんと一緒でスペシャルウィークさんに憧れていたな…おっと、話が逸れたね。また、縁があった時はよろしくね。」
「はい、よろしくお願いします。」